厚生年金は、主に会社などの適用事業所に勤める人が加入する公的年金制度の一つだ。保険料は毎月の給与や賞与から控除され、将来の年金給付の財源となる。
結論からいうと、厚生年金保険料を払い過ぎた場合、年末調整や確定申告で直接還付されるわけではない。原則として、会社に確認し、必要に応じて会社を通じて年金事務所へ届出内容の確認・訂正を行い、給与調整や返金で精算される。
一方で、給与明細で「2か月分引かれている」「退職月に賞与から控除されている」ように見えても、制度上は正しい控除であるケースもある。
本記事では、厚生年金を払い過ぎているか確認する方法、年末調整で戻らない理由、実際に払い過ぎが疑われるときの対応手順をわかりやすく解説する。
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厚生年金を払い過ぎているか確認する方法
厚生年金を払い過ぎているか確認するには、まず保険料の計算方法を押さえる必要がある。
厚生年金保険料は、毎月の給与から決まる「標準報酬月額」と、賞与から決まる「標準賞与額」に保険料率をかけて計算される。
厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、事業主と被保険者が半分ずつ負担する。そのため、給与や賞与から控除される被保険者負担分は原則として9.15%である。
ただし、実際の給与額に直接9.15%をかけるのではなく、標準報酬月額の等級に当てはめて計算する点に注意しよう。
厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料の本人負担分は、次の式で確認できる。
厚生年金保険料の本人負担分
- 毎月の保険料:標準報酬月額 × 9.15%
- 賞与の保険料:標準賞与額 × 9.15%
標準報酬月額は、基本給だけでなく、残業手当、通勤手当、住宅手当などを含めた税引き前の報酬月額を、一定の等級に当てはめて決める。
現在の標準報酬月額は、1等級の8万8,000円から32等級の65万円までに分かれている。たとえば報酬月額が21万円の場合、標準報酬月額は22万円となり、本人負担分は「22万円 × 9.15% = 20,130円」となる。
賞与については、税引き前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた額を標準賞与額とする。厚生年金保険では、標準賞与額の上限は1か月あたり150万円である。
たとえば賞与が40万円の場合、標準賞与額は40万円となり、本人負担分は「40万円 × 9.15% = 36,600円」となる。
国民年金との違い
国民年金と厚生年金では、保険料の決まり方が異なる。
| 国民年金 | 厚生年金 | |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 自営業者・フリーランス・学生などの第1号被保険者 | 会社員・公務員など厚生年金の適用事業所で働く人 |
| 保険料の決まり方 | 原則として一律 | 標準報酬月額・標準賞与額に応じて変動 |
| 令和8年度の国民年金保険料 | 月額17,920円 | 該当なし |
| 負担方法 | 原則として本人が全額負担 | 事業主と本人が折半 |
給与明細で確認する際は、「厚生年金保険料」の欄を見よう。健康保険料、介護保険料、雇用保険料、所得税、住民税などと並んで控除されているため、社会保険料全体の金額だけで判断しないことが大切だ。
給与明細で確認するときの具体例
毎月の月収が21万円で、賞与が年2回・各40万円の場合を例に確認してみよう。
確認の流れ
- 報酬月額21万円は、標準報酬月額22万円に当てはまる
- 毎月の本人負担分は「22万円 × 9.15% = 20,130円」
- 賞与40万円は、1,000円未満の切り捨て後も標準賞与額40万円
- 賞与1回あたりの本人負担分は「40万円 × 9.15% = 36,600円」
- 賞与支給月は、毎月の厚生年金保険料とは別に賞与分の保険料も控除される
給与や賞与から控除する場合、被保険者負担分の端数が50銭以下であれば切り捨て、50銭を超える場合は1円に切り上げる。たとえば12,345.50円は12,345円、12,345.51円は12,346円として控除される。
ただし、端数処理には事業主と被保険者の間で特約がある場合もあるため、細かい差額が気になる場合は会社に確認しよう。
払い過ぎが疑われるケース・払い過ぎではないケース
厚生年金保険料は会社が計算・控除するため、通常は大きな払い過ぎは起こりにくい。ただし、退職時や賞与支給時、複数事業所で勤務している場合などは確認が必要だ。
| ケース | 確認したいこと | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 月途中で退職したのに退職月分まで控除されている | 退職日の翌日が資格喪失日。 原則として資格喪失月の前月分まで納める。 | 払い過ぎの可能性があるため会社へ確認する。 |
| 月末退職で2か月分控除された | 月末退職では翌月1日が資格喪失日となり、退職月分まで保険料が必要。 | 必ずしも払い過ぎではない。 |
| 退職月に支給された賞与から保険料が控除された | 資格喪失月の賞与は、月末退職など一部を除き保険料控除の対象外となる。 | 会社へ確認する。 |
| 標準報酬月額の等級が実際の報酬と大きく違う | 4月〜6月の報酬で決まる定時決定や、固定的賃金の変動による随時改定を確認する。 | 給与担当者へ標準報酬月額を確認する。 |
| 2か所以上の適用事業所で勤務している | 二以上事業所勤務の届出により、報酬に応じて保険料を按分する必要がある。 | 届出状況を会社または年金事務所へ確認する。 |
| 同じ月に入社・退職し、さらに同月に別の年金制度へ加入した | 一定の場合、先に喪失した厚生年金保険料が不要となり、還付の対象になることがある。 | 会社に確認し、必要に応じて年金事務所の案内を受ける。 |
退職時の控除は誤解が生じやすい。特に「2か月分引かれたから払い過ぎ」とは限らないため、退職日、資格喪失日、給与計算の締め日を確認することが重要だ。
厚生年金は年末調整で還付されない
厚生年金保険料を払い過ぎた場合でも、年末調整の手続きで厚生年金保険料そのものが還付されるわけではない。
年末調整は、会社が給与から源泉徴収した所得税および復興特別所得税と、その人が1年間に納めるべき税額との差額を精算する手続きである。
つまり、年末調整で精算されるのは所得税等であり、厚生年金保険料の過徴収を直接戻す制度ではない。
年末調整で戻るのは「所得税の過不足」
年末調整では、給与所得者の扶養控除、配偶者控除、保険料控除、住宅ローン控除などを反映し、1年間の所得税額を計算し直す。
厚生年金保険料は社会保険料控除の対象になるため、所得税を計算するうえでは関係する。しかし、これは「所得税の計算上、控除として反映される」という意味であり、払い過ぎた厚生年金保険料自体が年末調整で返ってくるという意味ではない。
そのため、給与明細の厚生年金保険料が誤っていると感じた場合は、年末調整を待つのではなく、まず勤務先の給与担当者や社会保険担当者に確認しよう。
確定申告でも厚生年金保険料そのものは戻らない
確定申告は、1月1日から12月31日までの所得と税額を申告する手続きで、原則として翌年2月16日から3月15日までに行う。
給与所得者でも、給与収入が2,000万円を超える場合や、給与所得・退職所得以外の所得が一定額を超える場合などは確定申告が必要になることがある。
ただし、確定申告で精算されるのも所得税等であり、厚生年金保険料の過徴収そのものを戻す手続きではない。
厚生年金保険料の計算誤りや控除誤りが疑われる場合は、確定申告ではなく、会社を通じた確認・訂正・精算が基本となる。
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厚生年金の還付を受けるには?
厚生年金保険料の還付・精算は、年末調整や確定申告ではなく、原則として会社を通じて行う。
給与や賞与から控除された本人負担分は、会社が事業主負担分と合わせて納付しているため、誤りが疑われる場合も会社の給与担当者・社会保険担当者に確認するのが第一歩だ。
還付・精算までの流れ
- 給与明細・賞与明細で厚生年金保険料の控除額を確認する
- 標準報酬月額・標準賞与額・退職日・資格喪失日を確認する
- 払い過ぎが疑われる場合は、会社の給与担当者や社会保険担当者に相談する
- 会社が必要に応じて届出内容を確認し、年金事務所へ訂正・確認を行う
- 過徴収が確認された場合、給与での控除額調整や会社からの返金で精算される
会社をすでに退職している場合も、まずは当時の勤務先へ確認しよう。給与明細、賞与明細、退職日が分かる書類、源泉徴収票などを手元に用意しておくと説明しやすい。
会社側で確認が進まない場合や、制度上の扱いが分からない場合は、管轄の年金事務所へ相談する方法もある。ただし、厚生年金保険料は会社が納付する仕組みのため、実際の訂正や精算は会社を通じて進むことが多い。
入社月に退職した場合は還付対象になることがある
厚生年金の資格取得月に資格喪失し、さらに同じ月に厚生年金または国民年金の資格を取得した場合、先に喪失した厚生年金保険料の納付が不要となることがある。
この場合、日本年金機構から対象の会社宛てに厚生年金保険料の還付についてのお知らせが送付され、還付後に被保険者負担分が会社から本人へ返される流れになる。
短期間で転職した場合や、同じ月に入社・退職があった場合は、保険料の控除が正しいか確認しておくとよい。
現在の厚生年金保険料を計算してみよう
厚生年金保険料が正しいか確認したい場合は、まず給与明細の厚生年金保険料欄と、日本年金機構の保険料額表を照らし合わせてみよう。
確認のポイントは以下の通りである。
- 給与明細の厚生年金保険料欄を確認する
- 標準報酬月額がどの等級か確認する
- 賞与明細で標準賞与額と控除額を確認する
- 退職月や入社月の場合は、資格取得日・資格喪失日を確認する
- 2か所以上で勤務している場合は、二以上事業所勤務届の有無を確認する
標準報酬月額は、毎年4月・5月・6月の報酬月額をもとに定時決定され、原則として9月から翌年8月までの保険料の基礎になる。
そのため、4月〜6月に残業代や手当が多かった場合、9月以降の標準報酬月額が上がることがある。これは必ずしも払い過ぎではなく、制度上の決まりに基づくものだ。
一方で、固定的賃金の変動により報酬月額が大きく変わった場合は、随時改定の対象になることがある。給与が大きく変わったのに標準報酬月額が長く変わっていない場合は、会社へ確認してみよう。
保険料を「抑える」より、正しく確認することが大切
厚生年金保険料は、報酬実態に基づいて計算される。意図的に4月〜6月の給与を調整して保険料を下げようとする考え方はおすすめできない。
また、厚生年金保険料は将来の年金額にも関係する。保険料が高いことだけを悪いものと考えるのではなく、給与明細の控除額が制度に沿って正しく計算されているかを確認することが大切だ。
「払い過ぎかもしれない」と感じた場合は、自分だけで判断せず、給与明細や賞与明細を持って勤務先へ確認しよう。
厚生年金の払い過ぎは会社を通じて確認しよう
厚生年金保険料は、標準報酬月額・標準賞与額に基づいて計算され、事業主と本人が折半して負担する。
年末調整や確定申告で所得税が戻ることはあるが、厚生年金保険料そのものの払い過ぎは、原則として会社を通じて確認・精算する必要がある。
特に、退職月の控除、賞与支給時の控除、標準報酬月額の等級、複数事業所勤務の届出は、払い過ぎの疑問が出やすいポイントだ。
まずは給与明細・賞与明細を確認し、気になる点があれば会社の担当者に相談しよう。退職済みの場合も、当時の勤務先に確認することが第一歩となる。
一方で、厚生年金は将来の年金につながる大切な制度である。保険料の金額だけでなく、将来の年金見込み額や老後資金全体もあわせて確認しておくと安心だ。
お金の手続きや将来資金について不安がある場合は、必要に応じて専門家へ相談し、納得したうえで家計や資産形成の方針を整理しよう。
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出典
日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(更新日:2024年8月9日)
日本年金機構「厚生年金保険料額表」
日本年金機構「保険料の計算方法について」(更新日:2021年7月2日)
日本年金機構「賞与にかかる保険料はどのように計算するのですか。」(更新日:2025年9月11日)
日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」(更新日:2025年9月1日)
日本年金機構「退職した従業員の保険料の徴収」(更新日:2012年3月30日)
日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」(更新日:2025年10月16日)
日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」(更新日:2025年9月11日)
日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」(更新日:2025年12月25日)
日本年金機構「国民年金保険料」(更新日:2026年4月1日)
国税庁「No.2662 年末調整のしかた」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.2020 確定申告」(更新日:2025年4月1日)
国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」(更新日:2025年4月1日)


