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私はIFAとして日々様々なアセットクラスの情報収集をしているのですが、直近多くのIFAがドル建て社債に注目しているという話をよく聞くようになりました。
IFAにとって債券は非常に身近な存在ですが、投資家の皆様向けの情報はネット上にもまだまだ少ない状況です。
そこで今回のコラムではにわかに注目を浴びているドル建て社債(劣後債、CoCo債含む)について投資家の皆様が知っておくべき知識や投資前のチェックポイントをお伝えできればと思います。
ドル建て社債とは
そもそも社債とはなんでしょうか。社債とは特定の企業にお⾦を貸し、その際に発生する「利金を受け取り、満期時には元本を返してもらう権利」を有価証券にしたものです。ドル建て債券の場合は投資家が貸す資金、利金、償還金が米ドルになります。
次に劣後債とはなんでしょうか。
劣後債とは通常の社債と比較して元本や利金の支払い順位の低い社債のことを指します。例えば発行元の会社が破綻をしたと想定してみましょう。この場合、劣後債の保有者へは普通社債の保有者への返還をし終わった残存資産の中から元本等が支払われることになります。通常の債券と比べてリスクが⼤きいのですが、代わりとして高い⾦利が設定されることが一般的です。
また、劣後債の中には永久劣後債と呼ばれる債券も存在します。
通常の債券は償還日が決められているのですが、永久劣後債には満期日の設定がありません。その代わり初回コール日という日付が設定されています。これはどういうことかというと、元本の償還が初回コール日以降のどこかで発生する、ただし最終的な期限はない、ということになります。
基本的には初回コール日で元本償還をするケースの方が多いのですが、過去には初回コール日に償還されない銘柄もありました。永久劣後債については劣後債のリスクに加えて、償還期限が未定なリスクもありますから、更に高い利回りを期待することができます。
最後にCoCo債についてです。CoCo債は主に欧州の金融機関が発行する債券で、「Contingent Convertible Bonds」の略称です。日本語では偶発転換社債と訳すことが出来ます。
CoCo債には発行体である金融機関の自己資本比率(正確にはCET1比率)があらかじめ定められた水準を下回った場合、元本の一部または全部が削減される、または、強制的に発行体株式に転換されるなどの仕組み(トリガー条項)が付与されています。
そのため、通常の劣後債や永久劣後債と比較して更に高いリターンが期待でき、年率リターンが10%以上となる銘柄も存在します。
さてここからは様々な種類があるドル建て社債に投資する際のチェックポイントについてお伝えできればと思います。
チェックポイント①投資先
最も重要なのは投資先です。私が普段ウォッチしている銘柄でも日系、外資、金融機関、事業会社など様々な銘柄があります。こういった銘柄の中には財務状況がよく、今後の見通しが明るい会社もあれば、赤字企業で社債の発行を繰り返している会社も存在します。
もちろん後者の方が利回りが高いのですが、劣後債等の場合は企業の破綻時には弁済される順番が劣後していますので、投資に値する会社かどうかは丁寧に検証する必要があります。
また、CoCo債に投資する場合はトリガー条項と現在のCET1比率を確認することも忘れてはいけません。トリガーに引っかからないであろう銘柄を選ぶのが主目的ではありますが、過度に売られている銘柄を探すなど投資チャンスの発見にも使うことが出来ます。
チェックポイント②格付
投資先検証の際に参考になるのが各銘柄に付与されている格付です。
ほとんどの債券は世界的に著名な格付け会社ムーディーズ、S&P、フィッチのいずれかもしくは複数の格付けが付与されています。
格付けの細かい定義については各社のHP等を参考にしていただきたいのですが、 AAAを最上級AA,A.BBB,BB,B,CCC・・・という形になっています。この中でBBB以上の債券は投資適格債と呼ばれ、それ以下の格付けのものよりも元金や利金の支払い確実性が高いと見込まれます。
格付けがAであれば絶対大丈夫だ、などといったことはないのですが、低格付けの債券に投資をする際などは銘柄分散をするなどの工夫が必要になるかもしれません。
チェックポイント③ 金利との関係
3つ目のチェックポイントは金利との関係です。ドル建て債券の場合はアメリカの金利の動向を確認することが重要です。
まず前提として、投資家の皆様が購入できる債券のほとんどは既に発行されたものになります。(新発債もありますが、割合としては既発債の方が多くなります。)
また、債券の特徴として世の中の金利が上昇するとそれまでに発行された債券の価格が下落することが多いです。逆に世の中の金利が下がった場合には債券の価格が上昇することになります。
あくまで一般論ですが、金利のピークで債券を購入できた方は高い利回りを満期まで享受し続けるか、単価の上がった債券を売却し、インカムゲインに加えてキャピタルゲインを獲得するという選択肢を保有することが可能になります。
ですので、債券購入時には政策金利含む今後の金利動向も確認しなければなりません。
チェックポイント③リターン
3つ目は利回りです。当たり前のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、実は外債に投資する場合はリターンの水準だけでなく、受け取り方についても注意が必要となります。
というもの債券にはインカムゲインのみのリターンと債券単価を考慮したリターンの2つがあるからです。以下のような例を想定してみましょう。
債券単価95 クーポン5% 残存年数1年
既発債を発行時より安く購入できたというイメージですが、この場合皆様が受け取るリターンはどのような計算になるでしょうか。
まずインカムゲインですが、5%/95=約5.3%となります。これは設定されているクーポンが債券単価100に対しての利回りであるため、債券単価を安く購入できた方はよい高いインカムを受け取ることになります。
そして償還時には95で買った債券が100で償還することになり、キャピタルゲインが5発生しますので、合計の利回りは約10.5%となります。
以上は残存年数が1年のケースでしたが、例えば以下のようなケースだとリターンの受け取り方が償還時に大きく偏っていることがイメージできるかと思います。
債券単価80 クーポン2% 残存年数5年
債券はインカムゲインを主目的として保有する方も多くいらっしゃいますので、購入検討している銘柄がどのようなインカム・キャピタルゲインの構成になっているかは必ずチェックしていただきたいです。
チェックポイント④為替リスクについて
最後のチェックポイントは為替リスクについてです。
直近為替のボラティリティは非常に高まっており、場合によっては債券利回り以上の為替損を被る可能性もございます。ただしドル建て債券の場合は償還してもドルで保有し続けることができ、また新たなドル建て債券で運用することができます。
短期的に為替でマイナスになってもドルベースで増やしていくことができれば損益分岐点となる為替水準は下がっていく計算になります。
とはいえ為替は時に急激な変化を見せることが多く、損益分岐点や為替が○○円になるといくらのプラス(もしくはマイナス)なのかは事前にチェックしておくといいでしょう。
購入について
このコラムをお読みいただいた方の中には「ではとりあえずどんな銘柄があるのか確認してみよう」と思われた方もいらっしゃるのではないかと思います。
そこでコラムの締めとして、ドル建て債券がどこで購入できるのかについてお話させていただければと思います。
主な購入方法としては対面証券、ネット証券、IFAの3つがあります。このうちネット証券に関しては一部の銘柄しかオープンにしておらず、特に利回りの高い銘柄についてはほとんど購入不可能です。
もし幅広い銘柄の中から選びたいという方は是非複数の証券会社を利用できる私のようなIFAをご利用されることをお勧めします。SBI証券や楽天証券でも取引可能ですので、既に口座をお持ちの方はこれまでの取引に加えてIFA経由でしか販売されていない債券を購入することができるようになります。
また、前述のチェックポイントについて、ご自身で考える時間や手間をかけられない方もいらっしゃるかと思いますが、そういった場合にはIFAがご希望に合う銘柄をおすすめしたり、ご一緒にチェックポイントを確認することができます。
少しでもご興味お持ちいただけたようであれば、ご連絡いただければ幸いです。