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分散投資は資産運用の基本的な考え方だ。ジャンルの違う投資先で運用することで、投資効果を高めることができるだけでなくリスクを抑えることも可能になる。
そのために、資産のポートフォリオを作成するとよい。
しかし、分散投資とポートフォリオの違いや、リスクという言葉の意味について混同や誤解を生むことも多い。
ポートフォリオの作り方に悩んでいるのなら、ぜひ参考にしてみてほしい。
この記事ではこれらの意味や考え方、分散投資のためのポートフォリオの組み方について解説する。
分散投資とポートフォリオの意味と違い
分散投資とは
投資先や購入タイミングを分散させる投資手法を指す。投資先を分散させることで、ある銘柄が値下がりしても他の銘柄により損失をカバーできる可能性がある。
投資タイミングを分散させれば購入価格の平均値で投資商品を保有することができる。1度にまとめて購入して高値づかみとなってしまった、と後悔しなくて済む。
代表的な時間分散の手法として「ドルコスト平均法」がある。一定金額を定期購入することで購入価格を均し、着実な投資を目指す。
ポートフォリオとは
投資資産の構成を指す。円グラフをイメージすると分かりやすい。
現金や外貨預金、株式、債券など複数の運用資産について、何をどのくらいの割合で保有しているかを具体的な銘柄別に示すものだ。
ポートフォリオを組むことで資産状況をより明確に把握できる。
投資先の偏りや増減がポートフォリオではっきりと分かるため、自分の投資スタンスに合う投資ができているか確認するのも容易だ。
分散投資とポートフォリオの違い
上記の内容をまとめよう。
- 分散投資:資金を複数の投資先で運用すること。
- ポートフォリオ:どの金融商品にどんな割合で資産配分するかを具体的に決め、組み合わせたもの。
分散投資は投資手法を表し、ポートフォリオはより具体的な投資先で構成された資産割合を総合して示したものである。
株式や債券、不動産など複数の投資先で資産運用する考え方・状態は分散投資だ。
「株式のA銘柄を10%とB社の社債を20%保有している」のように投資商品や投資割合が明確で、複数組み合わされている状態をポートフォリオという。
アセットアロケーションについて
関連用語として、投資の世界では「アセットアロケーション」という言葉も使われる。
アセットアロケーションとは大まかな資産配分のことだ。アセットアロケーションで「株式・債券」などの投資分野を決め、ポートフォリオで具体的な金融商品の銘柄や保有数を決定する、というイメージを持つと違いを理解しやすい。
リスクと相関係数の基礎とポートフォリオ作成のポイント
分散投資ができるポートフォリオを組むために、リスクと相関係数について理解しておこう。
リスクとは
資産運用におけるリスクとは、値動きの幅を指す。投資商品は価格変動があるため、将来いくら手元に戻ってくるかはその時の状況次第だ。
投資における価格の不確実性(ぶれ)を表すのがリスクである。
リスクは、リターンとセットで捉えるとよい。リターン(利益)が大きい金融商品は、リスク(価格の不確実性)も大きくなる。
リターンが少ないなら、リスクも少ない。株式と預金のリターンとリスクを比較すると理解が深まるだろう。
株式は値上がり益や配当など預金では得られない利益を受け取れるが、株価下落の可能性もある。
預金は預けている額が減ることはないが、受け取れる利息も限られる。この場合、「株式はリスクが大きく、預金はリスクが小さい」と表現できる。
相関係数とは
ふたつの資産の値動きがどのくらい関連しているかを示す指標だ。
相関係数を計算することで投資商品同士の値動きに関連性があるか分かる。相関係数には以下の3種類がある。
正の相関:相関係数が1に近い。
正の相関関係にある投資先の組み合わせでは、同じ値動きをするため分散投資の効果はない。
負の相関:相関係数が-1に近い
負の相関関係にある投資先の組み合わせは真逆の値動きをすることから、分散投資の効果が高い。
相関なし:相関係数が0に近い
相関がない投資先の組み合わせは互いの値動きに関連性がなく、市場動向次第で分散投資の効果が変わる。
相関係数から分かるポートフォリオのポイント
負の相関関係にある投資商品でポートフォリオを組めば、リスクを抑えた分散投資を実現できる。
注意したいのは、負の相関関係にある金融商品のセットは、マイナスとプラスの組み合わせになるということだ。
リターンとマイナスを相殺するため、資産総額で見るとリターンが抑えられてしまう。
分散投資の効果を高めるには、負の相関関係にある投資商品を保有するだけでなく、資産全体で目標リターンを狙えるポートフォリオを組むことが大切だ。
分散投資におすすめのポートフォリオ例
具体的にどのような点を意識してポートフォリオを組めば良いのだろうか。相関係数の参考値とポートフォリオ作成のプロセスについて紹介する。
相関係数から考える投資資産の組み合わせ
我々の年金資金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の相関係数を参考にしてみよう。
国内債券×国内株式:-0.158
外国債券×国内株式:0.060
国内債券×外国株式:0.105
国内債券×外国債券:0.290
外国債券×外国株式:0.585
外国株式×国内株式:0.643
国内債券と国内株式は0に近いが負の相関傾向にある。外国債券と国内株式の組み合わせは相関がほぼなく、外国株式と国内株式は正の相関、つまり同じ値動きをする傾向が伺える。
債券同士の組み合わせも正の相関が強いかと思いきや、為替や市場の違いなどの影響で正の相関が低めになっており興味深い。
なお、この相関係数はGPIFが2020年4月1日から適用した指数であり、今後の相関係数については市況により変動する。
ポートフォリオの作成例
投資金額を把握する
資産総額のうち、いくら投資資金に回すか検討する。現金や預金もポートフォリオの一部として扱い、投資資金との割合を確認しよう。
投資スタンスを決めてアセットアロケーションを考える
投資資金の内訳を大まかに考えよう。まずは国内株式・外国株式・国内債券・外国債券にそれぞれ25%ずつ分散投資するポートフォリオを初期の基準とする。
ここに自分の投資スタンスを反映させると考えやすい。
ポートフォリオを作成する
アセットアロケーションをより具体化していく。中長期投資の場合は運用期間を長めに設定できるため、ある程度のリスク(価格のぶれ)を取ることで運用効果を狙いたい。
投資先と投資タイミングを分散させながら時間をかけて資産を育てていこう。
まとめ
分散投資のためのポートフォリオ作成において課題となるのは、膨大な種類の金融商品から自分で投資先を選出しなければならないということだ。
何から着手すればいいか分からない、仕事が多忙で時間が取れないなど、様々な事情でポートフォリオ作成が先延ばしになることも多い。それは非常にもったいないことだ。
投資は、時間を味方につけることで成功のチャンスがさらに広がる。
ポートフォリオを組むのに最も効率がよいのは、投資の専門家(IFA)に依頼することである。
「資産運用ナビ」から相談可能だ。時間と資産を有効活用するために、いち早く一歩を踏み出そう。