年金だけでは毎月の生活費が足りず、資産から取り崩し始める。そのとき、NISAと特定口座のどちらから売ればよいか迷ったことはありませんか?
調べてみると、「非課税のNISAは最後まで残す」という意見もあれば、「NISAから使ってよい」という意見もあります。預金を先に使うべきかも気になるところです。順番を間違えて、税金で損はしたくない。かといって、節税を気にするあまり手元の現金が足りなくなるのも心配です。
しかし、NISAと特定口座のどちらから取り崩すかに、誰にでも当てはまる正解はありません。一般には、特定口座から先に売り、NISAを後に残す考え方がよく取られます※1。ただ、口座ごとの含み損益や、そのお金を使う時期、手元の預金の額によって、税金で損をしない順番は変わります。
※1 NISA口座の商品は、持ち続けている間の値上がり分に税金がかかりません。2024年からのNISAは非課税で持てる期間に期限がないため、後に残すほど非課税で運用できる期間が長くなります。
この記事では、預金・NISA・特定口座の役割、売る前に確かめたい税金と非課税枠、口座の状態ごとの順番、売ってから入金されるまでの段取りを紹介します。ご自身の口座で取り崩す順番を決めるときの参考にしてください。
- 「特定口座から先」はいつも正しい?
- 値下がりした商品はどの口座から売る?
- 夫婦で口座が分かれているときは?
- 売ってから入金まで何日かかる?
※税制・NISA制度の情報は2026年9月時点のものです。
毎月いくらずつ取り崩すかを先に決めたい方は、「投資信託はどう取り崩す?定額取り崩しと定率取り崩しの違いと積立・運用のやめ時」をご覧ください。
NISAと特定口座はどちらから取り崩す?基本は特定口座から
迷ったら、特定口座から先に売り、NISAは後に残すのが基本です。
ただし、NISAの商品に含み損がある、数年以内に使う予定がある、2023年までのNISAで非課税の期間が終わる商品がある場合は、この順番が当てはまらないこともあります。
「特定口座から先」と言われる理由
特定口座で投資信託を売ると利益に20.315%の税金がかかり、NISA口座で売れば利益に税金はかかりません。そう聞くと、税金のかからないNISAから先に売ったほうが得に思えます。
それでも特定口座から先に売る考え方が広く取られているのは、NISA口座の非課税がいつまでも続くからです。2024年からのNISAは、非課税で持てる期間に期限がありません。NISAの商品を売らずに残しておけば、この先の値上がり分にも税金はかかりません。
反対に、NISAの商品を先に売ると、その商品がこの先値上がりしても、その分を非課税で受け取れなくなってしまいます。特定口座から先に売るのは、NISAで非課税のまま運用できる期間をできるだけ長くするための考え方です。
「特定口座から先」が当てはまらない場合
「特定口座から先」という順番は、NISAの商品がこの先も値上がりしていき、そのお金を長く持っていられることを前提にしています。
しかし、実際の口座はそう単純ではありません。NISAの商品に含み損があれば、「非課税で増やす」という前提そのものが崩れてしまいます。数年以内に使う予定のお金なら、NISAに残しておける期間もわずかです。反対に、特定口座の商品が買ったときより値下がりしていれば、特定口座から売っても税金はかからず、先に売る理由はさらに強くなります。
この前提が自分の口座に当てはまるかどうかは、各口座の含み損益・使う時期・預金の額で判断できます。
| 判断の軸 | 確かめること | 順番への影響 |
|---|---|---|
| 含み損益 | 各口座の商品が、買ったときより値上がりしているか | NISAに含み損があれば、NISAで売ると損失が税金の計算で使えない。特定口座に含み損があれば、特定口座から売っても税金はかからない |
| 使う時期 | そのお金を何年以内に使う予定か | 近く使うお金は、NISAに残しても非課税で運用できる期間が短い |
| 預金の額 | 生活費と急な出費に使える預金がいくらあるか | 預金が少ないと、値下がりしている商品でも売ることになる |
ネットで意見が分かれるのは、書き手ごとに想定している口座の状態が違うためです。ご自身の口座を表に当てはめて、どちらから売るかを決めましょう。
預金は使い切らずに一定額を残す
税金がかからず値動きもない預金から先に使えば、いちばん安全に思えます。
しかし、預金を先に使い切ると、相場が大きく下がった時期に生活費が足りなくなったとき、値下がりした投資信託を売るしかなくなってしまいます。投資信託は売る手続きをしてから入金されるまで、およそ4〜5営業日かかるため、急な出費にもすぐには間に合わなくなってしまいます。
預金は取り崩す順番の先頭にも最後にも置かず、値下がりした時期でも商品を売らずに暮らせる額を残しておきましょう。何か月分を残せばよいかは、年金の額や今後の支出の予定で変わります。
詳しくは「60代の資産運用ポートフォリオはどう決める?残す現金と運用に回す額の決め方」をご覧ください。
預金に残す額が決まったら、残りの資産をNISAと特定口座のどちらから使うかを決めましょう。では、この2つの口座は、売るときに何が違うのでしょうか。
NISAと特定口座は売るときに何が違う?
NISA口座で売れば利益に税金はかからず、特定口座で売れば利益に20.315%の税金がかかります。
一方で、特定口座には同じ年の利益と損失を相殺する仕組みがあり、NISA口座にはありません。次の表は、評価額100万円分をそれぞれの口座で売った場合の試算例です(手数料は含めていません)。
| 売る口座と商品の状態 | 買ったときの金額 | 損益 | 税金 | 手元に残る金額 | 売った後のこと |
|---|---|---|---|---|---|
| 特定口座・値上がり | 70万円 | +30万円 | 60,945円 | 939,055円 | 100万円を手元に残すには、約106万5,000円分を売る |
| 特定口座・値下がり | 125万円 | −25万円 | 0円 | 100万円 | 損失25万円を、同じ年に同じ口座で出た利益と相殺できる |
| NISA・値上がり | 70万円 | +30万円 | 0円 | 100万円 | 翌年以降に70万円分の枠が戻る |
| NISA・値下がり | 125万円 | −25万円 | 0円 | 100万円 | 損失25万円はなかったものとされる。翌年以降に125万円分の枠が戻る |
| 預金 | — | — | 0円 | 100万円 | 投資信託はそのまま残る |
手元に残る金額が100万円を下回るのは、特定口座で値上がりした商品を売る場合だけです。ただ、ほかの4つも、売った後に起きることはそれぞれ違います。
特定口座は利益に20.315%の税金がかかる
税金は、売った金額のうち利益の部分にかかります。上の例なら、利益30万円に20.315%をかけた60,945円です。生活費として100万円が必要なら、税金の分を見込んで約106万5,000円分を売ることになります。源泉徴収ありの特定口座なら、この税金は売ったときに差し引かれ、確定申告をしなくても手続きが済みます。
20.315%の内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です。2027年1月からは防衛特別所得税が加わりますが、同時に復興特別所得税の税率が下がるため、合計の20.315%は変わりません。
同じ投資信託を何回かに分けて買っている場合、高い時期に買った分を選んで売れば、税金を抑えられそうに思えます。ところが、取得費は、買った金額の合計を買った口数の合計で割った平均の単価で計算します。どの時期に買った分を売っても、売った金額に占める利益の割合は保有分全体と同じです。
源泉徴収なしを選んでいる特定口座では、売った利益を自分で確定申告します。ご自身の特定口座がどちらなのか、口座のある銀行や証券会社に聞いて確かめておきましょう。
特定口座の損失は同じ年の利益と相殺できる
特定口座で売ると、利益が出るたびに税金を取られるだけと思われがちです。実際には、同じ特定口座の中では、その年の利益と損失が自動で相殺されます。口座を管理する証券会社などが、売るたびに1月1日からの損益を計算し、あとで損失が出れば、差し引きすぎた税金を口座に戻す仕組みです。
たとえば、春に特定口座で30万円の利益を出し、60,945円の税金が差し引かれていたとします。秋に同じ口座で値下がりした商品を売り、25万円の損失が出ました。その年の利益は差し引き5万円になり、差し引かれすぎていた約5万円の税金が口座に戻ります。
値下がりした商品を特定口座から先に売れば、その年の利益にかかった税金を減らせます。NISAの商品には手をつけないため、値上がりすれば非課税のまま持ち続けられます。
別の証券会社の特定口座で出た損失と相殺するには、確定申告が必要です。ただし、特定口座の利益を確定申告すると、その利益が国民健康保険料の計算や、70歳以上の医療費の自己負担割合の判定に含まれてしまいます。戻ってくる税金より増える保険料のほうが多くなる場合もあるため、申告する前に、お住まいの市区町村の窓口で保険料への影響を確かめましょう。
NISAの損失は売るとなかったものとされる
NISA口座で持つ投資信託や株は、売ったときの利益にも、受け取る分配金にも税金がかかりません。その代わり、値下がりした商品を売ったときの損失は、税金の計算上なかったものとされます。特定口座の利益と相殺することも、翌年以降に繰り越すこともできません。
同じ25万円の損失でも、特定口座で出れば、その年の利益にかかる税金を最大で約5万円減らせます。NISAで出た損失は、税金を1円も減らさないまま確定してしまいます。
NISAで売った枠は翌年以降に戻る
2024年からのNISAでは、非課税で持てる期間に期限がなく、生涯で持てる金額は買ったときの金額で1,800万円までです。商品を売ると、その商品を買ったときの金額の分だけ、翌年以降に枠を使えるようになります。売った年のうちには戻りません。
枠が戻るなら、NISAから先に使っても困らないように思えます。ただ、戻った枠を使うには、改めてお金を入れて商品を買う必要があります。生活費として使ったお金で、NISAの商品を買い直すことはできません。戻った枠が役に立つのは、ほかに投資に回せるお金がある場合です。
特定口座の商品を売ってNISAで買い直すかどうかは、取り崩しとは別に考えましょう。
詳しくは「特定口座の投資信託はNISAで買い直すべき?税金と手取りで比べる判断のしかた」をご覧ください。
2023年までのNISAの商品には非課税の期限がある
非課税で持てる期間に期限がないのは、2024年からのNISAだけです。2023年までのNISA(一般NISA・つみたてNISA)で買った商品には期限があり、一般NISAは5年、つみたてNISAは20年です。期間が終わると、売るか、特定口座などの課税口座に移すかを選びます。2022年に一般NISAで買った商品なら、2026年の年末で非課税の期間が終わります。
課税口座に移すと、移した日の終値が買ったときの金額とみなされ、その後の値上がり分には税金がかかってしまいます。期限が近い商品は、取り崩しの順番でも先に考えましょう。
詳しくは「旧NISAの非課税期間が終わったらどうする?含み損がある人ほど注意したい税金」をご覧ください。
では、実際の家計では、どの口座から売ればよいのでしょうか。
ケース別に見る取り崩しの順番
同じ毎月10万円の取り崩しでも、口座の含み損益やお金を使う予定によって、先に売る口座は変わります。
自分がどのケースに近いかを知るために、まず手元の口座を1つの表にまとめましょう。
自分の口座を1つの表にまとめる
夫婦それぞれに口座がある場合も1つの表に入れておけば、世帯のどの口座から使うかを1枚の表で決められます。次の表は、65歳の夫と63歳の妻の世帯を想定した記入例です。金額はすべて仮の例です。
| 名義・口座 | 評価額 | 買ったときの金額 | 含み損益 | 使う予定 |
|---|---|---|---|---|
| 夫・普通預金 | 300万円 | — | — | 毎月の生活費の不足分 |
| 夫・定期預金 | 200万円 | — | — | 2〜3年以内の出費(住まいの修繕など) |
| 夫・特定口座(源泉徴収あり)投資信託A | 800万円 | 600万円 | +200万円 | 5年以上先 |
| 夫・NISA 投資信託B | 400万円 | 300万円 | +100万円 | 10年以上先 |
| 夫・2023年までのNISA 投資信託C(2022年に一般NISAで購入) | 90万円 | 100万円 | −10万円 | 2026年末に非課税の期間が終わる |
| 妻・NISA 投資信託D | 200万円 | 180万円 | +20万円 | 10年以上先 |
表にすると、同じ投資信託でも口座ごとに状態が違うことがわかります。この世帯では、特定口座の投資信託Aに200万円の含み益があるのに対し、2023年までのNISAで買った投資信託Cは10万円の含み損を抱えたまま、年末に非課税の期間が終わります。
評価額と買ったときの金額は、証券会社の取引画面にある保有商品の一覧で確かめられます。銀行や証券会社の窓口で買った商品なら、担当者に一覧を出してもらいましょう。
次のケースは、どれも年金だけでは毎月10万円(年120万円)が足りない世帯を想定しています。金額はすべて仮の例です。
| ケース | 先に使う口座 | 理由 |
|---|---|---|
| ①特定口座に含み損の投資信託がある | 特定口座の値下がりした投資信託 | 税金がかからず、損失をその年の利益と相殺できる |
| ②NISAに含み損、特定口座に大きな含み益がある | 預金に余裕があれば預金、なければ特定口座 | NISAで売ると損失が相殺に使えないまま確定する |
| ③2年後に大きな出費を控えている | 口座にかかわらず、出費の分を何回かに分けて現金にする | 近く使うお金は、NISAに残しても非課税で運用できる期間が短い |
| ④夫婦で口座が分かれている | 非課税の期間が終わる商品、次に特定口座 | 夫婦の口座を1つの表にまとめ、期限のある商品から使う |
ケース①特定口座に含み損がある
特定口座に、評価額300万円・買ったときの金額360万円の投資信託があります。NISAの投資信託は値上がりしています。
この場合は、特定口座の値下がりした投資信託から売るのが最初の候補です。1年分の120万円を売ると、そのうち24万円が損失になり、税金はかかりません。同じ年に特定口座で利益を出していれば、その利益と相殺されます。NISAの投資信託には手をつけずに済むため、値上がりが続けば非課税のまま持ち続けられます。
ただ、値下がりした商品を先に売ると、その商品が値を戻したときの利益は受け取れなくなってしまいます。値下がりの理由が相場全体の下落なのか、商品の運用方針が変わったためなのかで、売ってよいかの判断は変わるため、担当者に確かめてください。
詳しくは「60代の投資信託・株の売り時は?利益確定・損切りと保有継続の判断」をご覧ください。
ケース②NISAに含み損があり特定口座に含み益がある
NISAには評価額400万円・買ったときの金額500万円の投資信託、特定口座には評価額800万円・買ったときの金額500万円の投資信託があるケースです。
どちらの口座から売っても、不利な点が残ってしまいます。1年分の120万円を売った場合の違いを表にまとめました。
| 売る口座 | 税金 | 手元に残る金額 | 売った後のこと |
|---|---|---|---|
| 特定口座 | 約9万1,400円 | 約110万8,600円 | 利益45万円に税金がかかり、手取りが減る |
| NISA | 0円 | 120万円 | 損失30万円が、税金を減らすことに使えないまま確定する |
| 預金 | 0円 | 120万円 | 預金が120万円減り、次の値下がりへの備えが少なくなる |
預金に余裕があれば、1年ほど預金から生活費を出し、NISAの投資信託の値動きを見る方法があります。値を戻せば、損失を確定させずに済みます。
預金に余裕がなければ、特定口座から売る方法が残ります。税金が約9万1,400円かかってしまいますが、NISAの投資信託は売らずに持ち続けられます。NISAで損失を確定させても、税金は1円も減らないためです。
詳しくは「老後資金の取り崩し中の暴落対策!生活費を守る現金の使い方と売却額の見直し方」をご覧ください。
ケース③2年後に大きな出費を控えている
2年後に住まいの修繕で300万円を使う予定があり、預金は生活費の1年分ほどしかありません。投資信託の大半はNISAにあり、特定口座にあるのは100万円分だけです。
この場合は、どの口座から売るかより先に、2年後までに300万円を現金にしておく方法を考えましょう。特定口座の100万円分だけでは足りないため、NISAの投資信託も一部を売ることになります。
NISAを後に残す考え方は、長く持っていられるお金のためのものです。2年後に使うお金は、NISAに残しても非課税で運用できる期間が2年しかありません。支払いの直前に値下がりすれば、修繕費を払うために値下がりした商品を売ることになってしまいます。使う時期が近いお金は、口座の種類にかかわらず、何回かに分けて現金にしておきましょう。
ケース④夫婦で口座が分かれている
65歳の夫と63歳の妻の世帯で、夫は特定口座に投資信託A(含み益200万円)、2022年に一般NISAで買った投資信託C(含み損10万円)、NISAに投資信託Bを持っています。妻もNISAで投資信託Dを持ち、生活費は夫名義の普通預金から引き落とされています。
この世帯で最初の候補になるのは、投資信託Cです。非課税の期間が終わる2026年末までに売れば、今の価格のまま税金をかけずに現金にできます。課税口座に移すと、移した日の終値が買ったときの金額とみなされ、その後の値上がり分に税金がかかってしまいます。
次の候補は、夫の特定口座の投資信託Aです。含み益があるため税金はかかってしまいますが、夫と妻のNISAは非課税のまま残せます。
夫婦で口座が分かれている場合は、売ったお金が入る口座の名義にも気をつけましょう。夫の特定口座を売ったお金は夫名義の口座に、妻のNISAを売ったお金は妻名義の口座に入ります。生活費を引き落とす口座と名義が違えば、そのたびに振り替える手間がかかってしまいます。
【診断】自分の口座で使う順番を確かめる
ケースに当てはめても迷うときは、次の診断で目安を確かめてください。預金の額、期限のある商品、口座ごとの値上がり・値下がり、近いうちの大きな出費の5問に答えると、どの口座から使うかの目安がわかります。
どの口座から先に使う?取り崩しの順番診断
預金・NISA・特定口座の今の状態に答えると、どの口座から生活費を出すかの目安がわかります。選ぶと次の質問に進みます。
次にやること
預金が生活費の半年分に届かないと、相場が下がった時期に、値下がりした商品を売るしかなくなってしまいます。値下がりしていない時期に少し多めに売って、預金を増やしておきましょう。
どの口座からいくら売るかは、税金、NISAの枠、預金の額、夫婦の口座を合わせて決めるものです。IFA(特定の銀行や証券会社に属さず、独立した立場で資産運用の相談に乗るアドバイザー)なら、ほかの金融機関の口座も含めて、あなたの口座の数字で順番を一緒に決められます。
\ どの口座から使うか、IFAに無料で相談できます /
資産運用ナビでIFAに無料相談するこの診断は、ご回答をもとにした目安を示すものです。特定の売買を勧めるものではありません。税金とNISAの扱いは2026年9月時点の制度に基づきます。
売る日を年金の支給月に合わせて決める
取り崩す口座が決まったら、年金が入る月と、投資信託を売ってから入金されるまでの日数から、売る日を決めておきましょう。
順番が正しくても、引き落としの日に預金が足りなければ、慌てて売ることになってしまうからです。
投資信託は売ってから入金まで4〜5営業日かかる
投資信託は、売る手続きをしたその日に現金になるわけではありません。換金を申し込んでから口座に入金されるまで、およそ4〜5営業日かかります。正確な日数は、売る手続きの画面で確かめるか、担当者に聞いてください。
月末に生活費が引き落とされる口座なら、月の半ばまでに売る手続きを済ませておきましょう。売るときに信託財産留保額が差し引かれる投資信託もあり、差し引かれるかどうかは交付目論見書に載っています。
年金が入らない奇数月に向けて売る
年金は、偶数月の15日に、前月までの2か月分が支払われます。15日が土日祝日にあたる場合は、その直前の平日です。
年金が入る偶数月は預金に余裕があり、年金が入らない奇数月に預金が減ります。毎月売らなくても、2か月ごとに売って奇数月の支出に備える方法があります。次の表は、特定口座の投資信託Aから2か月ごとに売る場合の1年の例です。
| 時期 | すること | 確かめること |
|---|---|---|
| 1月 | 前年にNISAで売った分の枠が戻る。証券会社から年間取引報告書が届く | 前年に売った金額と差し引かれた税金 |
| 偶数月15日 | 年金2か月分が振り込まれる | 預金の残高 |
| 奇数月の初め | 特定口座の投資信託Aを約21万円分売る(手取り約20万円) | 税金を差し引いた手取り |
| 奇数月の中旬 | 売ったお金が入金される(申込みから4〜5営業日) | 月末の引き落としに間に合うか |
| 12月まで | 2023年までのNISAで非課税の期間が終わる商品を、売るか課税口座に移すかを決める | その商品の含み損益 |
※ 手取りは、評価額に占める利益の割合が25%(投資信託Aの例)として計算しています。
毎回の売却は定期売却サービスで自動にできる
毎月や2か月ごとに売る手続きをするのが負担なら、証券会社の定期売却サービスを使う方法もあります。楽天証券の定期売却サービスでは、受け取る金額・保有口数に対する割合・受け取りを終える時期のいずれかを指定し、受取日を1日〜28日の間で選べます。NISA口座の投資信託にも設定できますが、同じ口座で積立を設定している投資信託には設定できません。
定額で売るか、定率で売るかによって、毎月の受取額と残高の減り方が変わります。
詳しくは「投資信託はどう取り崩す?定額取り崩しと定率取り崩しの違いと積立・運用のやめ時」をご覧ください。
年に1回は順番を見直す
今年決めた順番が、来年も同じとは限りません。値動きで口座ごとの含み損益は変わり、NISAの枠も年明けに戻ります。年間取引報告書が届く年明けに、各口座の含み損益が大きく変わっていないかを確かめておきましょう。
とはいえ、口座が複数の金融機関にまたがっていると、含み損益を1つの表にまとめるだけでも手間がかかってしまいます。
口座をまたいだ取り崩しの順番は相談して決める
複数の口座から取り崩すなら、口座をまとめて見てもらえる相談相手と順番を決めると、税金や手元の現金の見落としを防げます。
どの口座から売るかは、税金・非課税枠・預金の額・夫婦の口座を合わせて考える判断だからです。
窓口で見てもらえるのはその会社の口座だけ
どちらから売ればよいかは、いつもの銀行や証券会社の窓口で聞けば答えてもらえそうに思えます。しかし、窓口が把握しているのは、その会社に預けている口座に限られます。NISA口座は1人1つしか持てないため、特定口座とは別の金融機関にNISA口座を持っている人もいるでしょう。
その場合、窓口で「どちらから売ればよいか」を聞いても、その会社の口座の範囲での答えになってしまいます。夫婦の口座や、別の金融機関で持つ商品の含み損益まで合わせて考えるには、口座をまたいで話を聞いてくれる相手が必要です。
IFAなら口座をまとめて相談できる
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の無料相談では、ほかの金融機関に預けている口座も含めて保有資産の状況を伝え、取り崩す順番を相談できます。相談には各口座の取引残高報告書を持っていきましょう。保有している商品と評価額を、相談の場で一緒に確かめられます。
資産運用ナビでは、特定の金融機関に属さない資産運用アドバイザー(IFA)を無料で探して相談できます。どの口座からいくら売るかを、あなたの口座の数字で一緒に決められます。
詳しくは「60代の資産運用はどこに相談する?IFAがおすすめな理由と選び方」をご覧ください。
NISAと特定口座のどちらから取り崩すかは、口座ごとの含み損益、そのお金を使う時期、手元の預金の額で決まります。NISAに含み損がある、近く大きな出費がある、非課税の期間が終わる商品がある。こうした場合は、「特定口座から先」の順番が当てはまらないこともあります。
\ どの口座から使うか、資産運用のプロに無料で相談 /
NISAと特定口座の取り崩しでよくある質問
取り崩しを始めてもNISAで積立を続けてよいですか?
続けることはできます。ただし、NISAで売った分の枠が戻るのは翌年以降です。同じ年に売りながら積立を続けると、積立の分はその年の年間投資枠(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)から使います。楽天証券のように、積立を設定している投資信託には定期売却を設定できない証券会社もあります。
2023年までのNISAの商品はいつ売ればよいですか?
非課税の期間が終わるまでに、売るか課税口座に移すかを決めましょう。2024年からのNISAに移すことはできません。課税口座に移した場合は、移した日の終値が買ったときの金額とみなされ、その後の値上がり分に税金がかかってしまいます。
特定口座の損失とNISAの利益は相殺できますか?
できません。NISA口座の利益はもともと非課税で、NISA口座で出た損失も、特定口座の利益と相殺することや翌年以降に繰り越すことはできません。
高齢者向けのNISAはいつ始まりますか?
開始時期は未定です。2025年12月に公表された令和8年度の税制改正大綱では、NISAの見直しとして、つみたて投資枠を0〜17歳も使えるようにすることや対象商品の追加などが盛り込まれましたが、65歳以上などの高齢者に限った措置は含まれていません。取り崩す順番は、今の制度をもとに決めましょう。
出典
- 国税庁「No.1535 NISA制度」
- 国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
- 国税庁「No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費」
- 国税庁「No.1476 特定口座制度」
- 国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税に関するQ&A」
- 国税庁「NISAに関するQ&A」(令和元年7月)
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト NISAを知る」
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト よくある質問」
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト 2023年までのNISA」
- 金融庁「令和8(2026)年度税制改正について 税制改正大綱における金融庁関係の主要項目」(公表日:2025-12-26)
- SBI証券「特定口座での税金の源泉徴収や還付について教えてください」
- SBI証券「『年間取引報告書』について教えてください。」
- 楽天証券「投信定期売却サービス」
- 資産運用業協会「投資信託なんでもQ&A 分配金・換金/償還」
- 資産運用業協会「投資信託のコスト」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 横浜市「株式等の譲渡所得や配当所得などにより確定申告する方へ」
