退職金が振り込まれたものの、このまま預金に置いておいてよいのか迷ったことはありませんか?
銀行からは運用商品の案内が届き、知人からはNISAを始めたと聞きます。ただ、何から手を付ければよいのかがわかりません。今から投資を始めて、減ってしまったら取り戻す時間があるのかも気になります。
こうした迷いを減らすためにも、商品を選ぶ前に、年金で足りない生活費と手元に残す現金を決めましょう。
退職後は収入が年金中心になるため、使う予定のあるお金まで運用に回すと、値下がりした時期に売って生活費にあてることになってしまいます。何年も使わないお金がいくらあるかがわかってから、運用するかどうかと、どの商品を使うかを考えましょう。
この記事では、今の状況ごとに最初にすることと、運用が必要かどうかの決め方を紹介します。あわせて、預金・個人向け国債・投資信託・株式の違いと、始めるまでの手順もまとめました。資産運用を始めるときの参考にしてください。
- 退職後に最初に決めること
- 預金だけで持つと物価の上昇でいくら目減りするか
- 元本保証で運用できる商品と、その条件
- 株式・ETF・投資信託の手間の違い
※本記事の制度・数値は2026年9月時点のものです。
60代の資産運用の始め方は今の状況で変わる
資産運用の始め方は、まだ投資をしていないのか、すでに投資信託や株を持っているのか、資産を取り崩して暮らしているのかで変わります。まずはご自身がどれに当たるかを確かめましょう。
| 今の状況 | 最初にすること | そのあとに決めること |
|---|---|---|
| まだ運用していない(退職金を受け取った・受け取る予定) | 年金の見込み額と毎月の生活費を書き出す | 手元に残す現金と、運用に回す額 |
| 投資信託や株をすでに持っている | 持っている商品と金融機関を一覧にする | 投資先の重なり・手数料・売るか持ち続けるか |
| 年金生活で資産を取り崩している | 毎月いくらを、どの口座から取り崩しているかを確かめる | 取り崩す額と売り方 |
どれに当たるか迷う場合や、次に何を決めればよいかを知りたい場合は、次の診断を使ってください。4つの質問にタップで答えると、最初にすることと次に読む記事がわかります。答えられない質問は「わからない」を選びましょう。
まだ運用していない人は年金と生活費の確認から始める
まだ運用をしていないなら、最初に書き出すのは年金の見込み額と毎月の生活費です。年金の見込み額は、ねんきん定期便や「ねんきんネット」で確かめられます。すでに受け取っているなら、年金振込通知書に書かれた手取りの額を使いましょう。生活費は、通帳やクレジットカードの明細から、ここ数か月の支出を拾い出します。
退職金を受け取った直後は、金融機関から運用の案内を受けることがあります。この2つの数字が出る前に契約すると、手元に残す現金が決まらないまま運用額だけが決まってしまいます。案内を受けたら、年金と生活費を書き出してから話を聞きましょう。
すでに投資している人は保有資産の見直しから始める
すでに投資信託や株を持っているなら、新しく買う前に、今持っている商品を一覧にするところから始めます。銀行、証券会社、ネット証券と口座が分かれていると、別々に買った投資信託が同じ米国株に投資していることがあります。一覧にすると、手数料の高い商品や、同じ投資先に偏っている商品が見えてきます。
保有している商品の一覧の作り方と整理の順番は、60代の投資信託の見直し方で紹介しています。
資産を取り崩している人は取り崩し方の見直しから始める
年金で足りない生活費を、投資信託を売って補っている方もいるでしょう。毎月同じ金額を売る方法では、相場が下がった月ほど多くの口数を売ることになってしまいます。取り崩しをすでに始めているなら、毎月の取り崩し額と、どの口座から売っているかを確かめるところから始めましょう。
決まった金額で売るか、決まった割合で売るかの比べ方は、投資信託の取り崩し方で紹介しています。
資産運用が必要かどうかは年金で足りない額で決まる
運用が必要かどうかは、年金で足りない生活費を預金でまかなったあとに、何年も使わないお金が残るかどうかで決めましょう。残らないなら、無理に運用しなくても暮らしは成り立ちます。
年金と預金で支出が足りるなら運用しなくても困らない
総務省の家計調査(2025年)では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は月26万3,979円でした。これに対し、年金などの収入から税金や社会保険料を引いた手取り(可処分所得)は月22万1,544円です。平均すると、毎月約4.2万円を貯蓄から補っていることになります。
この平均の不足が65歳から90歳まで25年続くと、合計は約1,270万円です。預金がこの額に、介護や住まいの修繕などに備えるお金を足しても足りるなら、運用しなくても生活費に困ることはありません。
ただし、この計算は物価が変わらない前提です。物価が上がると毎月の支出も増え、預金で補う額は計算より多くなってしまいます。預金だけで持つと決めた場合も、物価が上がった分だけ取り崩す額が増えることは見込んでおきましょう。
10年以上使わないお金があるなら運用を考える
反対に、生活費の不足分や予備費を取り分けてもお金が残るなら、その残りは運用を考えるお金です。たとえば夫婦で金融資産が3,000万円あり、年金で足りない生活費3年分や介護への備え、10年以内の予定支出として1,280万円を取り分けると、1,720万円が残ります。
このお金を10年以上預金に置いておくと、物価が上がった分だけ、将来買えるものが減ってしまいます。一方で、全額を運用に回すと、値下がりしたときに減る金額も大きくなってしまいます。残ったお金のうち、いくらを運用に回すかは、手元に残す現金と運用に回す額の決め方で順を追って紹介しています。
年金を受け取るまでの数年を貯蓄でまかなう場合や、毎月の不足が平均より大きい場合は、資産が何歳までもつかを先に確かめましょう。試算の手順は、老後資金の取り崩しシミュレーションで紹介しています。
投資が怖いなら減っても困らない金額から考える
投資が怖いと感じるのは、どれだけ減るかがわからないからではないでしょうか。株式は、長い目で見れば物価の上昇を上回るリターンが期待できる一方、短い期間に大きく下がってしまうこともあります。全世界の株式の値動きを表す指数(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス、米ドル建て)は、2007年10月末から2009年3月9日までに58.38%下落しました。
1,000万円をすべて全世界の株式で持っていれば、約580万円減る計算です。しかし、株式に回すのを300万円にとどめ、残りを預金や個人向け国債に置けば、同じ下落でも減るのは約175万円で済みます。
怖さを減らすには、何%下がるかではなく、いくら減っても暮らしを変えずに済むかを先に決めましょう。「旅行を1年見送れば済む」「生活費には手をつけずに済む」のように金額が決まれば、運用に回す額も株式の割合も、その範囲で選べます。
\ 自分は運用したほうがいい? /
預金だけだと物価の上昇で目減りしてしまう
預金は元本が減らない一方、物価が上がると、同じ金額で買えるものが減ってしまいます。しかも、年金は物価と同じだけ増えるとは限りません。
物価が上がると同じ預金で買えるものが減る
預金に置いておけば、少なくとも減ることはないと考える方は多いでしょう。たしかに、預金の額面は減りません。しかし、総務省の消費者物価指数では、2025年平均の物価(総合)は前年より3.2%上がりました。物価が上がり続けると、額面が同じでも、そのお金で買えるものは減ってしまいます。
今の1,000万円で買えるものが、物価の上昇でどれだけ減るかを計算しました。
| 物価の上昇率(1年あたり) | 10年後 | 20年後 |
|---|---|---|
| 1% | 約905万円分 | 約820万円分 |
| 2% | 約820万円分 | 約673万円分 |
| 3% | 約744万円分 | 約554万円分 |
※ 預金の利息を0とし、今の1,000万円で買えるものを基準に計算しています。
物価が1年に2%ずつ上がり続けると、20年後には、1,000万円で今の約673万円分のものしか買えなくなってしまいます。65歳で預けたお金が、85歳のときには約3割目減りしてしまう計算です。
年金額は物価と同じだけ増えるとは限らない
年金額は、物価や賃金の動きに合わせて毎年度見直されます。ところが、令和8年度の改定では、物価が3.2%上がったのに対し、年金額の引き上げは国民年金(基礎年金)で1.9%、厚生年金(報酬比例部分)で2.0%でした。
これは、物価より賃金の伸び(2.1%)が小さかったため賃金の伸びで改定し、さらにマクロ経済スライドという仕組みで0.1〜0.2%差し引いたためです。マクロ経済スライドは、年金に加入している現役世代の人数の変化と平均余命の伸びに合わせて、年金額の伸びを抑える仕組みです。
年金の伸びが物価に追いつかない年が続けば、年金で足りない生活費は少しずつ増えていきます。預金だけで備えるなら、取り崩す額が年々増えることも見込んでおきましょう。では、元本を減らさずに物価の上昇に備える方法はあるのでしょうか。
運用に使う商品は元本保証があるかどうかで分かれる
元本保証があるのは、預金と個人向け国債です。債券・投資信託・株式には元本保証がなく、値動きで買ったときの金額を下回ってしまうことがあります。その代わり、物価の上昇を上回る値上がりや利息が期待できます。
| 商品 | 元本保証 | 値動き | 換金 | 主な手数料 | 向いているお金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 預金 | あり | なし | いつでも引き出せる | なし | 数年以内に使うお金 |
| 個人向け国債 | あり | なし | 発行から1年たてば換金できる(直前2回分の利子相当額が差し引かれる) | なし | 3〜10年後に使うお金 |
| 債券(社債など) | なし | 金利が上がると下がる。発行した会社が破綻すると戻らない | 満期前は時価で売る | 商品による | 満期と使う時期が合うお金 |
| 投資信託 | なし | 投資先による | 1日1回決まる価格で換金する | 購入時手数料・信託報酬 | 10年以上使わないお金 |
| ETF(上場投資信託) | なし | 連動する指数による | 取引時間中に市場で売る | 売買手数料・信託報酬 | 10年以上使わないお金 |
| 個別株 | なし | 大きい | 取引時間中に市場で売る | 売買手数料 | 減っても暮らしに影響しないお金 |
※ 手数料は金融機関や商品によって異なります。
投資信託の手数料や投資先の比べ方は、60代向け投資信託の選び方で紹介しています。
元本保証があるのは預金と個人向け国債
預金は、金融機関が破綻しても、預金保険で1つの金融機関につき元本1,000万円までとその利息が守られます。利息のつかない決済用預金は全額が対象です。ただし、外貨預金は預金保険の対象になりません。
個人向け国債は、満期の元本と半年ごとの利子を国が支払います。金利が下がっても年0.05%の最低金利が保証され、1万円から1万円単位で買えます。発行から1年たてば途中で換金でき、その場合は直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。元本を減らさずに預金より高い利息を受け取りたいお金は、個人向け国債に置く方法があります。
元本保証がない商品は値下がりで元本を下回ることがある
債券は、満期まで持てば額面の金額が戻ってくるのが原則です。ただ、金利が上がると満期前の価格は下がり、途中で売ると損失が出てしまうことがあります。発行した会社が破綻すれば、元本が戻ってこなくなってしまいます。
投資信託は、集めたお金を運用会社がまとめて株式や債券に投資する商品です。値動きは投資先で決まり、株式に投資するものほど大きく動きます。毎月分配型のように分配金を受け取れる商品もありますが、分配金の一部は、投資した元本の払い戻しに当たることがあります。分配金が支払われると、その分だけ投資信託の値段(基準価額)は下がってしまいます。
退職金で勧められた商品は手数料を金額で聞く
退職金を受け取ると、金融機関からファンドラップや仕組債、退職金専用のセットプランを案内されることがあります。ファンドラップは運用を任せる報酬が毎年かかり、仕組債は条件によって元本を大きく下回ってしまうことや、途中で売れないことがあります。退職金専用のセットプランは、定期預金の優遇金利がつく期間が数か月に限られていることが多く、一緒に買う投資信託の手数料もかかってしまいます。
案内を受けたら、担当者に「1年間に払う手数料は合計でいくらか」「いつ、いくらで換金できるか」を金額で聞き、書面で見せてもらいましょう。すでに提案された商品や、買った商品を点検する方法は、60代の投資信託の見直し方で紹介しています。
元本保証で高利回りをうたう勧誘は受けない
「元本は保証します」「必ず儲かります」と言って高い利回りをうたう勧誘は、詐欺の可能性があります。金融庁も、「上場確実ですので、必ず儲かります! 元本も保証します!」のような勧誘例を挙げて注意を呼びかけています。
電話やSNSで知り合った相手から投資を勧められたら、その業者が金融庁の登録を受けているかを、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」で確かめましょう。登録のない業者とは取引しないでください。
株式・ETF・投資信託は管理の手間で選ぶ
株式に投資する方法は、個別株・ETF・投資信託のどれを使うかで、自分でしなければならないことが変わります。毎月どれだけの時間を運用に使えるかで選びましょう。
| 個別株 | ETF | 投資信託 | |
|---|---|---|---|
| 何に投資するか | 1つの会社の株 | 株価指数などに連動する多くの銘柄 | 運用会社が選んだ、または指数に連動する多くの銘柄 |
| 買い方 | 取引時間中に市場で、100株単位 | 取引時間中に市場で、銘柄ごとに決まった単位 | 1日1回決まる価格で、金額を指定して |
| 銘柄選び | 自分で選び、決算を確かめ続ける | どの指数に連動するかを選ぶ | 運用会社が銘柄を入れ替える |
| 積立 | 自分で買い増す | 口数を指定して自分で買い増す | 毎月決まった金額で自動で積み立てられる |
| 主な手数料 | 売買手数料 | 売買手数料・信託報酬(一般に投資信託より低い) | 購入時手数料(かからないものもある)・信託報酬 |
個別株は銘柄選びを自分で続ける
個別株は、1つの会社の業績で値段が動きます。高配当株や株主優待を目当てに買う方も多いものの、業績が悪くなれば配当が減り、優待が廃止されることもあります。1社の値下がりの影響を小さくするには銘柄数を増やすしかなく、そのぶん決算を確かめる手間が増えてしまいます。
会社の決算を読むのが楽しみで、その時間を取れるなら、個別株を一部持つのもよいでしょう。ただ、生活費を配当だけでまかなおうとすると、株式に回すお金が大きくなり、値下がりしたときに減る金額も大きくなってしまいます。
ETFは株と同じように取引所で売買する
ETFは、証券取引所に上場している投資信託です。日経平均株価や全世界の株式などの指数に連動するものが多く、1本で多くの銘柄に投資できます。株と同じように取引時間中に値段を見ながら売買でき、指値注文も出せます。
一方、買うときは株と同じように、銘柄ごとに決まった単位で口数を指定します。投資信託のように「毎月3万円ずつ」と金額を決めて積み立てるには、手間がかかってしまいます。
投資信託は少額から自動で積み立てられる
投資信託は、金額を指定して買えるので、毎月決まった金額で自動的に積み立てられます。どの銘柄を持つかは運用会社が決めるため、自分で決算を確かめる必要はありません。NISAのつみたて投資枠で買えるのは、金融庁に届け出された投資信託とETFに限られます。
株式投資と投資信託のどちらから始めるか迷ったら、手間の少ない投資信託から始め、慣れてきたら個別株を一部加えましょう。
60代で資産運用を始める手順
始めるときは、年金と生活費の書き出し、残す現金の決定、口座と商品選びの順に進めます。商品から選ぶと、値下がりしたときに生活費まで売ることになってしまいます。
| 手順 | すること | 次に進む目安 |
|---|---|---|
| ① | 年金・生活費・資産を書き出す | 年金で足りない毎月の額が出た |
| ② | 手元に残す現金と運用するお金を分ける | 10年以上使わないお金が残った(残らなければ運用せず、預金と個人向け国債に置く) |
| ③ | NISA口座を開いて商品と買う時期を決める | 減っても暮らしを変えずに済む範囲で、運用額と株式の割合が決まった |
| ④ | 年1回、配分と取り崩し方を見直す | 毎年決まった時期に確かめる |
手順①年金と生活費を書き出す
年金の手取り、毎月の生活費、夫婦それぞれの預金・投資信託・株式・保険を1枚の紙に書き出します。これから受け取る退職金や保険の満期金も入れましょう。年金の手取りから生活費を引いた額が、年金で足りない毎月の額です。
手順②手元に残す現金と運用するお金を分ける
年金で足りない生活費の数年分、急な出費や医療・介護への予備費、10年以内に使う予定のお金を足した額が、手元に残す現金です。残りのうち、値下がりしても暮らしを変えずに済む額を運用に回します。目的ごとの金額の出し方は、60代の資産配分の決め方で紹介しています。
手順③NISA口座を開いて少しずつ買う
運用に回すお金が決まったら、NISA口座で投資信託などを買いましょう。NISAは18歳以上なら誰でも口座を開け、1年に360万円、生涯で1,800万円まで投資できます。NISA口座で得た売却益や配当・分配金には税金がかかりません。60代からNISAを始めてよいか迷う場合は、60代からのNISAの始め方を参考にしてください。
退職金をまとめて運用に回すときも、一度に全額を買う必要はありません。何回かに分けて買えば、買った直後に下がったときの損失を小さくできます。どの投資信託を選ぶかは、60代向け投資信託の選び方で費用と投資先の比べ方を紹介しています。
手順④年1回見直す
始めたあとは、毎年決まった時期に、運用資産の配分と取り崩す額を確かめましょう。値上がりして株式の割合が増えていれば、一部を売って決めた割合に戻します。退職、年金の受け取り開始、介護の始まりなど、暮らしが変わったときも見直しましょう。取り崩しを始めてからの売り方は、投資信託の取り崩し方で比べています。
\ 手順①②を自分の数字で決めるなら /
自分で決めきれないときはIFAに相談する
手順を読んでも、自分の数字に当てはめると決めきれないことがあります。そのときは、迷っていることに合わせて次の記事を読むか、資産運用の専門家に一緒に決めてもらいましょう。
迷っていることに合わせて次に読む記事
| 迷っていること | 次に決めること | 記事 |
|---|---|---|
| 誰に相談すればよいかわからない | 相談先の選び方 | 60代の資産運用の相談先の選び方 |
| 持っている商品をどうするか | 持ち続けるか・売るか・乗り換えるか | 60代の投資信託の見直し方 |
| いくら運用に回すか | 残す現金と運用額 | 60代の資産配分の決め方 |
| NISAを始めてよいか | 口座と始める時期 | 60代からのNISAの始め方 |
| どの投資信託を買うか | 費用と投資先 | 60代向け投資信託の選び方 |
| どう取り崩すか | 取り崩す額と売り方 | 投資信託の取り崩し方 |
IFAに相談すると自分の数字で進め方を決められる
銀行や証券会社の担当者に相談すると、提案できるのはその会社で扱っている商品です。資産が複数の金融機関に分かれていると、担当者に見てもらえるのは資産の一部だけになってしまいます。
一方、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)は、金融商品仲介業者として登録を受け、証券会社と提携して資産運用の相談に応じる専門家です。2026年8月末時点で679者が登録されており、そのうち約4割にあたる265者は2社以上の証券会社と提携しています(金融庁の登録一覧をもとに編集部で集計)。
相談には、年金の振込通知書やねんきん定期便、通帳、持っている商品の取引報告書を持っていけば足ります。年金で足りない額の計算から、残す現金、運用額、どの口座で何を買うかまで、自分の数字で一緒に決められます。相談先の選び方は、60代の資産運用の相談先の選び方で紹介しています。
資産運用ナビでは、金融機関に属さない資産運用アドバイザー(IFA)を無料でご紹介します。
\ 何から始めるかをプロと決める /
60代の資産運用でよくある質問
始める年齢、退職金がない場合、始める金額、配当での生活、夫婦での管理について、よくある質問に答えます。
60代から資産運用を始めるのは遅いですか?
遅くはありません。65歳の平均余命は、男性19.47年、女性24.38年です(厚生労働省「令和6年簡易生命表」)。65歳で運用を始めても、20年前後は資産を使いながら運用を続けることになります。ただし、使うまでの期間が短いお金は運用に回さず、10年以上使わないお金だけを運用に回しましょう。
退職金がなくても資産運用はできますか?
できます。退職金がない場合も、手順は同じです。年金で足りない生活費と予備費を預金で取り分け、残ったお金があれば少額から運用しましょう。投資信託なら、毎月決まった金額で積み立てられます。取り分けたあとにお金が残らないなら、運用より、年金の受け取り方や働き方を先に考えましょう。
いくらから始めればよいですか?
金額の決まりはありません。投資信託は、金融機関によっては少額から積み立てられます。大切なのは、始める金額より、値下がりしたときに減る金額を暮らしを変えずに受け止められるかです。
高配当株の配当で年金の不足を補えますか?
補うことはできますが、必要な元本は大きくなってしまいます。たとえば年金で足りない額が月4.2万円なら、1年で約51万円です。税引き前の配当利回りが3%でも、配当だけで補うには約1,700万円分の株式が必要になり、配当には税金もかかってしまいます。配当・分配金と、決まった額を売る方法との比べ方は、配当・分配金で年金を補う方法で紹介しています。
夫婦のどちらが運用を管理すればよいですか?
口座は名義人ごとに分かれるので、夫婦それぞれの資産をまとめた一覧を作り、2人で共有しましょう。一方だけが管理していると、その人が病気になったとき、もう一方はどこに何があるかわからなくなってしまいます。年1回の見直しは2人で一緒に行いましょう。
【まとめ】60代の資産運用は残す現金を決めてから始める
資産運用は、商品を選ぶところからではなく、年金で足りない生活費と手元に残す現金を決めるところから始めます。
生活費の不足分や予備費を取り分けても10年以上使わないお金が残るなら、その一部を、減っても暮らしを変えずに済む範囲で運用に回しましょう。元本を減らしたくないお金は預金と個人向け国債に置き、物価の上昇に備えるお金は投資信託などで持ちます。
自分の数字に当てはめて決めきれないときは、口座をまたいで資産を見てもらえる専門家に相談して決めましょう。
\ 書き出した数字でそのまま相談できる /
出典
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「消費者物価指数 全国(最新の年平均結果の概要)」(公表日:2026-01-23)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額は前年度からどのように改定されたのですか。」
- 日本年金機構「マクロ経済スライドとはどういうものですか。」
- MSCI「MSCI ACWI Index (USD)」ファクトシート(2026年8月31日時点)
- 金融庁「預金保険制度」
- 預金保険機構「保護される預金等の範囲」
- 財務省「個人向け国債を知る」
- 日本証券業協会「「毎月分配型の投資信託」とは?」
- 金融庁「預金・融資等に関する相談事例等及びアドバイス等」
- 日本証券業協会「仕組債とは」
- 金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」
- 日本取引所グループ「他の投資信託との違い(ETF)」
- 日本取引所グループ「売買単位(内国株の売買制度)」
- 日本取引所グループ「よくあるご質問(ETF・ETN等)」
- 金融庁「NISAを知る」
- 金融庁「つみたて投資枠対象商品」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
- 金融庁「金融商品仲介業者登録一覧」(2026年8月31日現在)
※ 本記事は2026年9月時点の制度にもとづいて作成しています。特定の商品を勧めるものではありません。
