年金だけでは毎月の生活費が少し足りない。積み立ててきた投資信託を取り崩そうとして、毎月いくらを、どう売ればよいか迷ったことはありませんか?
退職や再雇用で給与が減ると、投資信託を生活費に使う段階に入ります。ところが、今月はいくら売るか、値下がりした月も売るのかを毎回決めるのは負担です。売りすぎて、お金が早く尽きてしまわないかという心配もあるでしょう。
こうした迷いや不安は、取り崩し方を先に決めておけば減らせます。基本は、毎回同じ金額を売る「定額取り崩し」と、残高の一定割合を売る「定率取り崩し」です。
年金で足りない分を補うために取り崩すなら、定額取り崩しで始めて、年に1回残高を見て金額を見直す方法をおすすめします。定率取り崩しは残高が長く残る反面、受け取る金額が年々減り、足りない分を補えなくなってしまうためです。証券会社の定期売却サービス※に設定しておけば、毎月売る判断をする必要もありません。
※ 定期売却サービス:保有している投資信託を、あらかじめ決めた金額や割合で、毎月などの頻度で自動的に売るサービス。サービスの内容は2026年9月時点のものです。
この記事では、年金で足りない額から取り崩す額を決める手順と、定額取り崩しと定率取り崩しで受取額と残高がどう変わるかを試算で紹介します。積立をやめる時期と、運用を終える目安もまとめました。取り崩し方を決めるときの参考にしてください。
- 定額取り崩しと定率取り崩し、生活費に合うのはどっち?
- 毎月売る手間は減らせる?
- 積立はいつやめればいい?
- 投資信託は何歳まで持つ?
投資信託の取り崩しは年金で足りない額から決める
定額取り崩しか定率取り崩しかを選ぶ前に、年金で足りない額が1年でいくらになるかを決めましょう。
定期売却サービスを設定するときに入れるのは、定額取り崩しなら毎回受け取る金額、定率取り崩しなら売る割合です。どちらの数字も、年金で足りない額がわからないと決められません。足りない額より多く売れば残高が早く減り、少なく売れば足りない分を預金から出すことになってしまいます。
年金で足りない額を月額で出す
足りない額は、毎月の支出から年金の手取り額を引いた金額です。年金額は、ねんきん定期便や年金振込通知書に載っています。支出は、実際の金額に近づけるため、通帳やクレジットカードの明細からここ数か月の平均を出しておきましょう。
見落としがちなのが、毎月は出ていかない支出です。固定資産税、自動車の保険や車検、家電の買い替え、旅行などは、年に1〜2回まとめて出ていきます。1年分を足しておき、取り崩す額に上乗せしましょう。
たとえば、年金の手取りが月22万円、毎月の支出が27万円なら、足りない額は月5万円です。年に1〜2回の出費が合計20万円あれば、1年で取り崩す額は5万円×12か月+20万円で80万円になります。この記事では、この年80万円を例に試算を進めます。
額が決まると、次に気になるのは「その額で何歳まで足りるか」でしょう。保有している資産全体で何歳まで足りるかは、「老後資金の取り崩しシミュレーション!年金と生活費から使える額と資産寿命を試算」で試算してみてください。
取り崩す投資信託と手元の現金を分ける
取り崩しを始める前に、急な入院や住まいの修理に使う現金は、投資信託とは別に確保しておきましょう。そのお金まで投資信託から出そうとすると、相場が下がっている時期でも売らなければならなくなってしまいます。
生活費を入れる預金口座に置いておきたいのは、少なくとも1〜2か月分の不足額です。投資信託は売ってから入金されるまで数日かかるので、その間の支払いを預金でまかなうためです。
そのうえで、取り崩す投資信託を決めましょう。複数の商品を持っている場合は、値動きの小さい商品から売るのか、すべてから同じ割合で売るのかも決めておくと、毎月どれを売るかで迷わずに済みます。
手元に残す現金をいくらにするかは、「60代の資産運用ポートフォリオはどう決める?残す現金と運用に回す額の決め方」を参考にしてください。
売り方と見直す日を決める
足りない額と取り崩す投資信託が決まったら、あとは、定額取り崩しと定率取り崩しのどちらで売るか、何か月に1回売るか、いつ計画を見直すかを決めれば取り崩しを始められます。年80万円を取り崩す例に当てはめると、次のようになります。
| 決めること | 決め方 | 年80万円を取り崩す例 |
|---|---|---|
| 1年で取り崩す額 | 月の不足額×12か月+年に1〜2回の出費 | 5万円×12か月+20万円=80万円 |
| 取り崩す投資信託 | 手元に残す現金を除いた分から選ぶ | 保有する投資信託2,000万円 |
| 取り崩し方 | 生活費の不足を補うなら定額取り崩し、残高を長く残したいなら定率取り崩し | 定額取り崩しで年80万円 |
| 売る回数 | 毎月・隔月・年1回から選ぶ | 毎月 |
| 見直す日 | 年に1回、日を決める | 毎年の誕生月 |
表の中で、あとから受取額と残高を大きく変えるのは、定額取り崩しと定率取り崩しのどちらを選ぶかです。同じ投資信託を売るのに、定額取り崩しと定率取り崩しでは何が違うのでしょうか。
定期売却サービスで選べる取り崩し方の違い
証券会社の定期売却サービスでは、毎回受け取る金額を決める定額取り崩し、保有している口数のうち売る割合を決める定率取り崩し、受け取りを終える年月を決める期間指定での取り崩しから選べます。
毎回の受取額が同じなのは定額取り崩しだけで、定率取り崩しと期間指定での取り崩しは、売るときの基準価額によって受取額が変わります。
定額取り崩しは毎回同じ金額を売る
定額取り崩しは、毎回5万円のように金額を決めて売る方法です。受け取る金額が毎回同じなので、年金と合わせて毎月決まった額で生活費をやりくりできます。
ただし、売る口数は毎回同じではありません。多くの投資信託では、値段である基準価額を1万口あたりの価格で表します。基準価額が1万円なら、5万円を受け取るために売る口数は5万口です。基準価額が8,000円に下がると、同じ5万円のために6万2,500口を売ることになります。値下がりした月ほど多くの口数を手放すため、値下がりが続くと、残高が早く減ってしまいます。
定率取り崩しは保有口数の一定割合を売る
定率取り崩しは、保有している口数の1%のように、割合を決めて売る方法です。値下がりした月は受け取る金額が小さくなり、値上がりした月は大きくなります。売る口数は基準価額に左右されないため、値下がりした月に多くの口数を手放すことはありません。
野村アセットマネジメントは、100万円を定額取り崩し(毎回1万円)と定率取り崩し(毎回1%)で取り崩した場合を比べています。運用による増減を考えない場合、定額取り崩しは100回で資産がなくなってしまいます。定率取り崩しでは、100回目でも36万円以上が残る結果でした。
その一方で、定率取り崩しは受け取る金額も少しずつ減っていきます。同じ例で計算すると、1回目に1万円だった受取額は、100回目には約3,700円です。残高が長く残る代わりに、生活費に回せるお金が減ってしまうのが定率取り崩しの特徴です。
期間指定での取り崩しは終える年月を決めて売る
期間指定での取り崩しでは、最後に受け取る年月を決め、保有している口数を残りの回数で等分して売ります。定口数と呼ばれることもあります。たとえば10年で使い切ると決めた場合、毎月、そのときの保有口数を残りの回数で割った口数が売却の対象です。
売る口数は毎回同じなので、受け取る金額は基準価額に合わせて変わります。決めた年月に保有口数がゼロになるため、「90歳までに使い切りたい」「子どもに残さず自分で使いたい」と考える人に合う方法です。ただし、決めた時期より長く生きた場合の生活費は、別に残しておきましょう。
| 売り方 | 決めるもの | 毎回の受取額 | 基準価額が下がったとき | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 定額取り崩し | 1回に受け取る金額 | 毎回同じ | 多くの口数を売るため残高が早く減る | 生活費の不足を毎月決まった額で補いたい人 |
| 定率取り崩し | 保有口数に対して売る割合 | 毎回変わる | 受取額が減る。売る口数は値段に左右されない | 残高をなるべく長く残したい人 |
| 期間指定での取り崩し | 最後に受け取る年月 | 毎回変わる | 受取額が減る。売る口数は値段に左右されない | 決めた年齢までに使い切りたい人 |
定期売却サービスなら決めた方法で自動的に売れる
どの売り方を選んでも、毎回自分で売り注文を出す必要はありません。証券会社の定期売却サービスに設定すれば、決めた日に決めた方法で自動的に売られます。今月は売るか、いくら売るかを毎月考えずに済むのが、このサービスを使う理由です。
ネット証券では、楽天証券、SBI証券、マネックス証券が定期売却サービスを提供しています。SBI証券は2025年12月から定率取り崩しと期間指定での取り崩しも選べるようにし、マネックス証券は2026年7月にサービスを始めました。いずれもNISA口座の投資信託に使えます。
| 項目 | 楽天証券 | SBI証券 | マネックス証券 |
|---|---|---|---|
| 選べる売り方 | 金額指定・定率指定・期間指定 | 定額指定・定率指定・期間指定 | 受取金額を指定 |
| 金額指定の最低額 | 1,000円以上(1円単位) | 1,000円以上(1円単位) | — |
| 定率指定の割合 | 0.01〜50%(1回の上限金額を設定できる) | 0.1〜50%(1回の上限金額を設定できる) | — |
| 受け取る頻度 | 毎月・奇数月・偶数月・希望する月から選ぶ(受取日は1〜28日) | 毎月・奇数月・偶数月から選ぶ(売却日は1〜27日か月末) | 毎月 |
| 多く受け取る月の設定 | 金額指定で年2回まで増額できる | 定額指定でボーナス月を設定できる | — |
| NISA口座 | 使える(ジュニアNISAを除く) | 使える(ジュニアNISAを除く) | 使える |
| 売ったお金の入金先 | 証券口座の預り金。銀行口座への自動出金も設定できる | — | 証券総合取引口座 |
※ 出典:楽天証券「定期売却サービス」、SBI証券「投資信託『定期売却サービス』機能拡充実施のお知らせ」(2025年12月3日)、マネックス証券「投信定期売却サービスの提供開始!NISAにも対応!」(2026年7月15日)
設定の前に、使えない条件も確かめておきましょう。楽天証券では、同じ口座で積立設定がある銘柄は定期売却に指定できません。設定時の評価額の50%以上を1回で売る設定もできません。SBI証券では、ETFや外貨建てMMFのほか、口数を指定して買った投資信託が対象外です。
また、自動で売る以上、相場が大きく下がった月も売却が続いてしまいます。値下がりした月に売るかどうかを、サービスが決めてくれるわけではありません。だからこそ、定額取り崩しと定率取り崩しのどちらを設定するかで、何年も先の受取額と残高が変わってきます。
定額取り崩しと定率取り崩しの受取額と残高を比べる
年金で足りない分を補うために取り崩すなら、定額取り崩しで始め、年に1回残高を見て金額を見直しましょう。
定率取り崩しは、運用がふるわない年はもちろん、順調な年が続いても、受取額が足りない額を下回ってしまうためです。
定額取り崩しと定率取り崩しを、次の仮の例で比べました。65歳で投資信託を2,000万円持ち、1年目は年80万円(月約6.7万円)を取り崩します。定額取り崩しは毎年80万円、定率取り崩しは毎年その時点の残高の4%です。1年目の受取額はどちらも80万円で同じです。利回りは毎年一定とし、税金や手数料は考えていません。
年3%で運用できた場合
| 年齢 | 定額取り崩しの残高 | 定額取り崩しの受取額 | 定率取り崩しの残高 | 定率取り崩しの受取額 |
|---|---|---|---|---|
| 65歳 | 2,000万円 | 80万円 | 2,000万円 | 80万円 |
| 70歳 | 1,881万円 | 80万円 | 1,890万円 | 75.6万円 |
| 75歳 | 1,743万円 | 80万円 | 1,787万円 | 71.5万円 |
| 80歳 | 1,583万円 | 80万円 | 1,689万円 | 67.6万円 |
| 85歳 | 1,398万円 | 80万円 | 1,597万円 | 63.9万円 |
| 90歳 | 1,183万円 | 80万円 | 1,509万円 | 60.4万円 |
※ 残高は各年齢の年初、受取額はその年に取り崩す額。利回りは毎年一定と仮定した計算例で、将来の運用成果を示すものではありません。
定額取り崩しは、値下がりが続くと残高が早く減ってしまいます。それでも年3%で運用できれば、90歳の時点で1,183万円が残ります。毎年80万円を受け取り続けても、この例ではお金が尽きることはありません。
定率取り崩しは、90歳の残高が1,509万円と、定額取り崩しより326万円多く残ります。ただし受取額は毎年少しずつ減り、90歳では年60.4万円です。足りない額の年80万円より約20万円少なく、月にすると約1.7万円足りなくなってしまいます。運用が順調でも、定率取り崩しでは使えるお金が年々減っていきます。
運用益がゼロだった場合
| 年齢 | 定額取り崩しの残高 | 定額取り崩しの受取額 | 定率取り崩しの残高 | 定率取り崩しの受取額 |
|---|---|---|---|---|
| 65歳 | 2,000万円 | 80万円 | 2,000万円 | 80万円 |
| 70歳 | 1,600万円 | 80万円 | 1,631万円 | 65.2万円 |
| 75歳 | 1,200万円 | 80万円 | 1,330万円 | 53.2万円 |
| 80歳 | 800万円 | 80万円 | 1,084万円 | 43.4万円 |
| 85歳 | 400万円 | 80万円 | 884万円 | 35.4万円 |
| 90歳 | 0円(89歳で終了) | 0円 | 721万円 | 28.8万円 |
※ 条件は年3%の表と同じ。利回りを0%とした計算例です。
運用益が出ないと、定額取り崩しは毎年80万円ずつ残高が減り、89歳でなくなってしまいます。受取額は最後まで80万円のまま減りませんが、90歳以降に使えるお金は残りません。
一方、定率取り崩しは90歳でも721万円が残ります。ところが受取額は、70歳で年65.2万円、80歳で年43.4万円まで減ります。足りない額の年80万円と比べると、70歳ですでに約15万円、80歳では約37万円足りなくなってしまいます。投資信託にお金が残っていても、足りない分は預金など別のお金から出すことになります。
生活費の不足を補うなら定額取り崩しを選ぶ
2つの表を比べると、定額取り崩しと定率取り崩しのどちらにも、運用がふるわなかったときに困る点があります。定額取り崩しは残高が尽き、定率取り崩しは受取額が足りなくなってしまいます。
しかし、年金で足りない分を補うという目的に合うのは定額取り崩しです。定率取り崩しでは、運用が順調な場合でも、受取額が足りない額を下回ってしまいます。定額取り崩しで残高が尽きる心配は、年に1回残高を確かめ、計画より減っていれば取り崩す額を下げることで小さくできます。
残高を長く残すことを優先したい場合や、決めた年齢までに使い切りたい場合は、定率取り崩しや期間指定での取り崩しを選ぶのも1つの方法です。それぞれ、次の工夫と組み合わせましょう。
| 優先したいこと | 選ぶ売り方 | 組み合わせる工夫 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 生活費の不足を毎月決まった額で補いたい | 定額取り崩し | 年1回の見直しで、残高が計画より減っていれば取り崩す額を下げる | 値下がりが続く時期も同じ額を売るため、残高が早く減る |
| 残高をなるべく長く残したい | 定率取り崩し | 受取額が減った分は、預金から出すか支出を抑える | 運用が順調でも、受取額が足りない額を下回る |
| 決めた年齢までに使い切りたい | 期間指定での取り崩し | 期間を過ぎてからの生活費に充てるお金を、別に残しておく | 決めた年月に投資信託の残高がゼロになる |
定率取り崩しを選ぶ場合、割合は、1年で取り崩したい額を今の残高で割って決めます。この記事の例なら、80万円÷2,000万円で4%です。こうすれば、1年目の受取額が足りない額と同じになります。
【計算】自分の金額で受取額と残高を比べる
表の試算は、2,000万円から年80万円を取り崩す例です。自分の投資信託の評価額と年金で足りない額を入れると、定額取り崩しと定率取り崩しでそれぞれ何歳にいくら残り、毎年いくら受け取れるかを確かめられます。
どちらの取り崩し方でも、試算のように毎年同じ利回りで運用できるわけではありません。取り崩しを始めた直後に相場が大きく下がった場合は、取り崩す額を見直しましょう。見直し方は、「老後資金の取り崩し中の暴落対策!生活費を守る現金の使い方と売却額の見直し方」を参考にしてください。
定額取り崩しで年80万円と決めても、毎月少しずつ売るか、年に1回まとめて売るかで、受け取るお金は変わるのでしょうか。
定期売却は毎月か隔月に設定して年1回見直す
売る回数は毎月か隔月にしておくと、基準価額が低い日に1年分をまとめて売ってしまうことを避けられます。
回数を決めたら、売ってから入金されるまでの日数を見込んで、手元に現金を置いておきましょう。
毎月・隔月・年1回のどれで売ればよい?
年80万円を取り崩す場合、売る回数によって、1回に売る額と手元に置いておきたい現金が変わります。
| 売る回数 | 1回に売る額 | 手元に置く現金の例 | 値動きの影響 | 手間 |
|---|---|---|---|---|
| 毎月 | 約6.7万円 | 1〜2か月分の不足額 | 売る日が12回に分かれ、1回の影響が小さい | 設定すれば自動 |
| 隔月(奇数月・偶数月) | 約13.3万円 | 2〜3か月分の不足額 | 売る日が6回に分かれる | 設定すれば自動 |
| 年1回 | 80万円 | 売った80万円を預金に移し、1年かけて使う | 1回の基準価額で1年分の受取額が決まる | 年1回の注文 |
※ 年80万円を取り崩す仮の例。
年1回にすると注文の手間は減りますが、売った日の基準価額しだいで、1年分の受取額が大きく変わってしまいます。毎月や隔月なら売る日が分かれるため、1回の値動きで1年分の受取額が決まることはありません。定期売却サービスを使えば手間もかからないので、毎月か隔月で設定しておきましょう。
毎月売る場合でも、固定資産税の納付月のように、出費が重なる月は出てくるものです。楽天証券の金額指定では年2回まで増額する月を、SBI証券の定額指定ではボーナス月を設定でき、その月だけ多く受け取ることも可能です。
毎月決まった額を受け取る方法には、毎月分配型の投資信託から分配金を受け取る方法もあります。ただし、分配金は運用で得た利益とは限らず、元本の一部を払い戻す「元本払戻金(特別分配金)」の場合もあります。分配金で受け取る方法と定期売却との違いは、「毎月分配型の投資信託は老後の年金代わりになる?定期売却との違いと必要な元本」で紹介しています。
売却から入金まで4〜5営業日かかる
投資信託は、売ったその日に現金になるわけではありません。換金を申し込んでから口座にお金が振り込まれるまで、およそ4〜5営業日かかります。
定期売却サービスで指定するのは、楽天証券では受取日、SBI証券では売却日です。楽天証券では売ったお金が証券口座の預り金に、マネックス証券では証券総合取引口座に入ります。生活費の口座で使うには、証券口座から銀行口座へ出金する手続きが必要です。楽天証券では、売却代金を銀行口座へ自動で出金する設定もできます。
NISA口座で売ったお金の入金先も、同じ証券口座です。NISA口座から直接、銀行口座に出金されるわけではありません。家賃や公共料金の引き落とし日の直前に売ると、入金が引き落としに間に合わなくなってしまいます。1〜2か月分の不足額を預金に置いておけば、入金を待つ間の引き落としにも困りません。
NISA口座で売ると翌年以降に枠が戻る
NISA口座の投資信託を取り崩しても、売った分の非課税枠は翌年以降に再び使えます。NISAの非課税保有限度額は簿価(買ったときの金額)で管理されるため、売った商品の簿価分が翌年以降に戻ります。
ただし、NISA口座で出た損失は、特定口座や一般口座の利益と相殺できません。値下がりしているNISAの投資信託を売っても、税金の面で損失を取り戻す手段はありません。預金、NISA口座、特定口座のどれから先に使うかは、この扱いも含めて決めましょう。使う順番は、「NISAと特定口座はどちらから取り崩す?預金も含めた老後資金の使う順番」を参考にしてください。
年1回は残高と受取額を見直す
定期売却サービスを設定すれば、あとは自動で売られていくだけです。だからこそ、年に1回は計画どおりに進んでいるかを確かめましょう。
確かめるのは、残高が計画より大きく減っていないかと、受取額で生活費の不足を補えているかです。年金額や医療費が変われば、足りない額も変わります。定額取り崩しなら1回に売る金額を、定率取り崩しなら割合を、定期売却サービスの設定から変えましょう。見直す日を誕生月などに決めておくと、忘れずに確認できます。
売る仕組みが整うと、次に迷うのが「これまで続けてきた積立は、このまま続けてよいのか」です。
積立をやめる時期と運用を終える目安
積立は、収入が減って家計から積立額を出せなくなったら、減らすか止めましょう。
運用を終える時期は、そのお金を使う時期と、自分で管理を続けられるかどうかで決まります。何歳になったらやめる、という決まりはありません。
収入が減ったら積立を減らすか止める
再雇用で給与が下がったり、退職して年金生活に入ったりすると、それまでの積立額を家計から出すのが難しくなります。無理に続けると生活費の預金が減り、急な出費のときに投資信託を売ることになってしまいます。
積立を止めることと、投資信託を売ることは別の手続きです。積立の設定を止めても、新しく買うのが止まるだけで、保有している投資信託はそのまま運用が続きます。2024年からのNISAは非課税で持てる期間に期限がないため、NISA口座の投資信託も、積立を止めたあと非課税のまま持ち続けられます。
全部止めるか迷う場合は、積立額を減らすのも1つの方法です。給与が減った分だけ積立額を下げれば、家計の負担を抑えながら運用を続けられます。
取り崩しながら積立を続けるときの注意点
生活費のために投資信託を売りながら、同じ投資信託に積立を続けると、買うことと売ることを同時にしている形です。楽天証券では、同じ口座で積立設定がある銘柄を定期売却に指定できません。取り崩しを始めるなら、その投資信託の積立は止めましょう。
一方で、当面使わないお金が預金に多く残っていて、NISAの非課税枠を使いたい場合もあるでしょう。そのときは、取り崩す投資信託とは別の商品で積立を続けましょう。生活費のために取り崩すお金と、長く運用するお金を別の商品に分けておけば、どちらのお金を売っているのかで迷いません。
運用を続ける期間は使う時期で決める
取り崩しを始めても、現金に替えるのは近いうちに使う分だけで十分です。65歳から取り崩しを始めれば、使い終えるまで20年、30年と続きます。数年以内に使うお金は預金に移し、使うのがずっと先のお金は運用を続けましょう。年3%で運用できた試算では、定額取り崩しで毎年80万円を受け取っても、90歳で1,183万円が残りました。
楽天証券のコラムで山崎俊輔氏は、60歳の時点で投資をどう続けるかは、継続雇用で給与がどれだけ下がるか、配偶者との年齢差、退職金や企業年金の水準などを書き出すと方向が見えてくるとしています。そのうえで、投資の終わり方に影響するのは、年齢よりも「リタイア時期」と「健康」だと指摘しています。年齢が同じでも、いつから、どれだけ取り崩すかは家庭ごとに違います。
投資は何歳になったらやめる?
投資をやめる時期を、年齢で決めている人は多くありません。野村アセットマネジメントが投資をしている人と過去にしていた人に「どのような場合に投資をやめようと思うか」を聞いたところ、60代で「75歳くらいになったら」と答えた人は12%、「80歳くらいになったら」は6%でした。
60代で最も多かった答えは「自分で投資判断や運用資産の管理ができなくなりそうだと感じたら」で、32%です。「年金を受け取るようになったら」は7%でした(野村アセットマネジメント「投資信託に関する意識調査2024」。20歳以上の11,908人への複数回答)。投資をやめる時期を決めるのは、年齢そのものより、自分で管理を続けられるかどうかです。
管理を続けられるか不安が出てきたら、保有している商品の数を減らし、定期売却のように自動で動く仕組みに切り替えておくと、毎月の確認や売買の手間を減らせます。どの口座に何を持っているかを一覧にして、家族と共有しておきましょう。取り崩しの時期に本人の判断能力が低下すると、証券口座が凍結され、取引ができなくなってしまいます。取り扱う証券会社は限られますが、本人と家族があらかじめ代理の契約を結んでおけば、家族が取引を続けられる「家族サポート証券口座」という仕組みもあります。保有資産を一覧にする手順は、「60代の投資信託はどう見直す?保有資産の一覧化と重複・偏りの整理手順」を参考にしてください。
健康に不安が出たときも、診断を受けた直後に慌てて全部を売る必要はありません。使う時期が近いお金から順に預金へ移していけば、値下がりした時期にまとめて売ってしまうことを避けられます。一部を売るか全部を売るかの決め方は、「60代の投資信託・株の売り時は?利益確定・損切りと保有継続の判断」で紹介しています。
今の状況に近いものを、次の表で確かめてみましょう。
| 今の状況 | 積立 | 保有している投資信託 | 取り崩し | 次にすること |
|---|---|---|---|---|
| 再雇用で給与が減った | 減らすか止める | 持ち続ける | 生活費が足りなくなってから始める | 給与と支出から、積立に回せる額を出し直す |
| 退職して年金生活に入った | 止める | 持ち続ける | 足りない額で始める | 取り崩し方と売る回数を決め、定期売却を設定する |
| 数年以内に使う予定が決まった | 止める | 使う分だけ売る | 続ける | 入金までの日数を見込み、支払日より前に預金へ移す |
| 値動きの確認や売買が負担になった | 止める | 商品の数を減らす | 定期売却で自動にする | 保有している商品と口座を一覧にする |
| 健康に不安が出てきた | 止める | すぐに全部は売らない | 続ける | 保有の一覧を家族と共有する |
積立、保有、取り崩しの組み合わせは、年金額と使う予定によって家庭ごとに変わります。年金で足りない分をどう受け取るか、無料相談で取り崩し計画を整理しませんか。
\ 取り崩し計画を無料で相談 /
取り崩し計画を自分で決めきれないときはIFAに相談する
取り崩す額や売り方を自分で決めきれないときは、年金額とすべての口座の残高をまとめて見てもらえるIFAに相談しましょう。
定額取り崩しと定率取り崩しの違いがわかっても、自分の場合にいくらを、どの口座から、どちらの売り方で売るかまで一人で決めるのは簡単ではありません。
口座ごとの設定だけでは資産全体の計画にならない
定期売却サービスを設定できるのは、その証券会社の口座にある投資信託だけです。銀行と証券会社、あるいは複数の証券会社に投資信託を持っている場合、口座ごとに設定すると、資産全体でいくら売っているのかは自分で合計しないとわからなくなってしまいます。
どの口座から先に使うか、定額取り崩しと定率取り崩しのどちらにするか、いくらを預金に残すかは、すべての資産を合わせて決めるものです。相場が大きく下がった年や年金額が変わった年には、取り崩す額も直す必要があります。そのたびに一人で決めていては、毎月売る判断をしていた頃と同じ負担が続いてしまいます。
IFAなら取り崩しを始めたあとも同じ担当者に相談できる
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)は、特定の銀行や証券会社に所属せず、資産運用の相談に乗る担当者です。年金額と毎月の支出、預金と投資信託の残高をもとに、取り崩す額や売り方を一緒に決められます。取り崩しを始めたあとも、年1回の見直しを同じ担当者に相談できます。
相談の前に、新しく資料を作る必要はありません。証券会社の取引画面で保有している投資信託と評価額を見せ、通帳で預金残高と毎月の年金額を伝えれば、話を始められます。定期売却サービスを使っている場合は、その設定画面も見せましょう。
銀行や証券会社、FPなど、相談先ごとの違いは「60代の資産運用はどこに相談する?IFAがおすすめな理由と選び方」で紹介しています。
相談するIFAを探すなら、資産運用ナビが便利です。金融機関に属さない資産運用アドバイザー(IFA)を無料で紹介しています。年金で足りない分をどう受け取るか、あなたの年金額と保有資産をもとに相談してみてください。
\ 年金で足りない分の受け取り方を相談 /
投資信託の取り崩しに関するよくある質問
定期売却サービスに手数料はかかりますか?
SBI証券では、定期売却サービスの利用に手数料はかかりません。ただし、売却する投資信託によっては信託財産留保額が差し引かれます。特定口座や一般口座で売って利益が出た場合は、利益に20.315%の税金がかかります。
定率取り崩しの割合は何%にすればよいですか?
決まった割合はありません。1年で取り崩したい額を、今の投資信託の残高で割って決めます。年80万円を2,000万円から取り崩すなら4%です。こうすると、1年目の受取額が足りない額と同じになります。
取り崩し中に相場が下がったら売るのを止めたほうがよいですか?
定期売却サービスでは、相場が下がった月も設定どおりに売却が続く仕組みです。手元の預金で数か月分の不足額をまかなえるなら、その間の売却額を減らす方法もあります。下落したときの見直し方は、「老後資金の取り崩し中の暴落対策!生活費を守る現金の使い方と売却額の見直し方」で紹介しています。
投資信託は何歳まで持っていてよいですか?
何歳までという決まりはありません。2024年からのNISAは非課税で持てる期間に期限がないため、年齢を理由に売る必要はありません。そのお金を使う時期と、自分で管理を続けられるかどうかで、持ち続ける期間を決めましょう。
出典
- 野村アセットマネジメント「資産の取り崩し方法における『定額』と『定率』の違いとは?」
- 野村アセットマネジメント「投資信託に関する意識調査2024」(公表日:2024-04)
- 三井住友DSアセットマネジメント「人生100年時代の資産設計シミュレーション」
- 楽天証券「定期売却サービス」
- SBI証券「投資信託『定期売却サービス』機能拡充実施のお知らせ」(公表日:2025-12-03)
- SBI証券「投資信託定期売却サービスとはどのようなサービスですか?」
- SBI証券「NISA対応の投資信託定期売却|3つの方法と取り崩しの考え方」(公表日:2026-05-21)
- マネックス証券「投信定期売却サービスの提供開始!NISAにも対応!」(公表日:2026-07-15)
- 資産運用業協会「投資信託なんでもQ&A 分配金・換金/償還の知識」
- 資産運用業協会「基準価額と分配金」
- 資産運用業協会「投資信託のコスト」
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト よくある質問」
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト 2024年からのNISA」
- 国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
- 楽天証券 トウシル「最後はどうする?50~60歳、年齢別で考える投資の『終わり方』」(公表日:2023-08-22)
- 日本証券業協会「家族サポート証券口座」
