- REITがどんなものなのか知りたい
- REIT投資のメリット・デメリットを理解したい
- REITを選ぶ時に注目すべきポイントが知りたい
投資信託とは、投資家から集めたお金を一つの大きな資金としてまとめて、運用のプロが株や債券などに投資を行う仕組みの金融商品だ。
投資信託を検討する中で、分散投資に興味を持ち始めると、「REIT」という選択肢も気になり始めるのではないだろうか。
とはいえ、自分の投資目的に合致するのか、判断に迷う人も少なくはないだろう。
本記事では、投資先の選択肢としてのREITについて、詳しく解説する。
特徴やリスクを概観し、選び方についても丁寧に説明した。
ぜひ最後までお読みいただき、投資判断の一助としていただきたい。
REITとは
まずは、REITの基本情報を確認する。
そのうえで、REIT投資のメリットやリスクについても整理していく。
REITの仕組み
REIT(Real Estate Investment Trustの略、リートと読む、不動産投資信託)は、投資家から集めた資金で不動産を購入し、そこから生じる賃料収入や売却益を投資家に分配する仕組みの金融商品である。
REITは、1960年代に米国で誕生した仕組みだ。
日本では、2000年に投資信託の運用対象に新たに不動産等が加わり、J-REIT(日本版リート)が始まった。
日本取引所グループ によれば、2024年5月現在で58銘柄が取引されている。
REITの仕組み
REITとは、投資法人が不動産を取得し、保有不動産の賃貸や売却によって得られる収益を投資家に分配する仕組みの金融商品(投資信託)である。
投資家はREIT投資を通じて、間接的に不動産に投資をする。
REITの法律上の分類は、「投資信託」だ。
投資信託は「会社型」と「契約型」とがあり、日本で投資信託といえばほとんどが契約型だが、J-REITとして上場している銘柄はすべて会社型である。
以下は、REIT(会社型)の仕組みである。
- 不動産への投資や運用を目的とする法人(不動産投資法人)が、株式に似た投資証券(投資口)を発行し、投資家はこれを購入する
- 投資法人は集めた資金を使って、オフィスビルや商業施設、住宅などの不動産を取得する
- 取得した不動産が生み出す利益(賃料収入や、不動産売買益)が、運営コストや税金を差し引いた後、投資家に分配金として支払われる
REITと不動産投資の違い
不動産に投資する方法には、不動産への直接投資と、株式やREITを通じた間接投資がある。
REITは、リスクが分散された、少額で不動産に投資できる仕組みだ。
- 投資家は、物理的な不動産を取得
- 投資家の主な収入源は、賃料収入と売却益
- 固定資産税が発生し、売却時には譲渡所得税が課される
- 通常、数百万円以上の大きな初期投資が必要
- 不動産会社の株式購入
- 投資家は、不動産業を営む会社の株式を購入
- 投資家の収入は、会社の業績に依存する
- 配当の原資は、法人税差し引き後の「税引後利益」
- 一般的に数十万円から投資できる
- REIT投資
- 投資家は、不動産投資法人が発行する証券に投資
- 投資家の収入源は分配金。分配金の額は、主に賃料収入に依存する
- 分配金の原資は、「税引前の利益」
- 数千円から数万円と比較的少額での投資が可能
REITの種類
REITは投資対象、投資地域(J-REIT、海外REITなど)、上場・非上場、運用スタイル等の切り口でさまざまに分類できる。
ここでは日本の投資家にとって重要な、J-REITの「投資対象資産の用途による区分」を紹介する。
- J-REITは主に、投資対象となる不動産の種類に基づき「単一用途特化型」と「複数用途型」とに分けられる
- 「単一用途特化型リート」とは、オフィス、住居、商業施設、物流施設、ホテル、ヘルスケアなどの特定種類を対象に投資するもの
- 「複数用途型リート」は、複数の種類の不動産に分散投資を行うもの。2つの異なる用途の不動産に投資する「複合型」と、 3つ以上の異なる用途の不動産に投資、または用途を限定しない投資の「統合型」とがある
reitの種類やreitの資産形成について、より詳しく知りたい方はチェックしてほしい。
REIT投資のメリット
次に、REIT投資の特徴についてメリットの側面から整理する。
REIT投資は、不動産投資と株式投資の利点を兼ね備えた独特の投資形態で、以下のようなメリットがある。
不動産の分散投資が行える
REIT購入で、複数の不動産への投資が少額から可能になる。
これにより、リスクの分散とポートフォリオの安定化を図ることができる。
少額から投資できる
不動産投資には通常大きな初期投資を必要とするが、REIT投資では、保有不動産を小さく分けた「投資口」を購入する。
このため、比較的少額で不動産に投資ができる。
2024年5月現在、多くの銘柄が1口あたり50万円を下回る価格で取引されており、40%超は10万円以下である。
流動性が高く、現金化が容易
REITは株式市場で取引されるため、高い流動性を持ち、必要に応じて迅速に資金を回収できる。
安定した配当収入
REITは、配当可能利益の90%以上を投資家に分配することで法人税が課税されない。
投資家は不動産収益を法人税なしで受け取れるため、REITの分配金利回りは株式配当利回りよりも高い。
また、REIT分配金の原資は多数の物件からの賃料収入が主なので、概ね安定している。
インフレに強い
不動産の賃貸料や資産価格等は物価に連動する傾向が強いため、インフレ時にはREIT分配金の増加要因となり、対策としても有効である。
REIT投資の始め方
一般的にREITは証券会社を通じて購入できる。
ここでは、SBI証券を例にとり、口座開設から実際の購入方法までを確認しよう。
口座を開設して入金する
証券会社に口座がなければ、まず行うべきは「口座開設」である。
SBI証券では、Webおよび郵送により申し込みできる。
以下は、Web上で完結する口座開設のステップである。
- SBI証券の「総合口座開設申込フォーム」にアクセス
- Web上で情報の入力し、本人確認書類等をアップロード
- (おおむね1〜3営業日程度)口座開設完了通知を受け取る
- アカウントの初期設定(振込先の銀行口座など)
- 手数料プランを決める(「スタンダードプラン」か「アクティブプラン」)
- 購入代金を入金する(「即時入金」「リアルタイム入金」「振替入金(ゆうちょ銀行)」「銀行振込」)
NISA口座を使う場合は、総合口座の申し込みと同時にNISA口座も開設しておこう。
REIT個別銘柄を購入する
実際にREITを購入するステップは、以下のとおりである。
- SBI証券にアクセスし、「国内株式 > REIT」を選択
- 売買した銘柄名(証券コード)を指定
- 取引の種類を選択(「現物買」「現物売」「信用買」「信用売)
- 注文内容を入力(「株数」「注文方法および価格」「注文期間」「預かり区分」)
- 取引パスワード入力し、「注文確認画面へ」をクリックして発注
REITの売買ルールは、現物株式とほぼ同じだ(以下参照)。
取引時間内であればその時の売買価格で取引できる。
- 信用・貸借取引の対象であり「空売り」も可能
- 「指値注文」「成行注文」が可能
- 呼値の刻みや制限値幅は株式に準拠する
- 売買単位は銘柄ごとに決められる
投資信託やETFを購入する
REITは、以下のような方法で購入できる。
- REITの個別銘柄を選んで購入する(前のステップで紹介済み)
- REITをポートフォリオに含めた投資信託を購入する
- 「東証REIT指数」に連動するREIT型ETF(上場投資信託)を購入する
REITは、すでに複数不動産で構成されているが、あくまでも単一の投資銘柄だ。
投資信託やETFは、REIT銘柄の組み合わせや、株式・債券・海外REIT等を組み合わせて設計される。
個別銘柄の選択が難しい場合や、「まずは始めてみよう」と考えるのであれば、投資信託やETFは良い選択肢となる。
REIT投資におけるリスクと対処法
REITにはメリットがある一方、さまざまなリスクを伴う。
いずれのリスクも、分散投資や長期投資の実践である程度対処できるが、すべてのリスクを排除することはできない。
不動産特有のリスクに関しては、専門知識が必要になる。
金融機関やファイナンシャルアドバイザーなどの専門家に相談することが望ましい。
市場関連リスク
REITの価格に影響を及ぼす主な市場関連リスクには、以下のものがある。
- 価格変動リスク
- 金利変動リスク
- 流動性リスク
このうち「金利変動リスク」は、REIT(不動産投資信託)の価値が上がったり下がったりするリスクである。
金利が上昇すると、相対的に他の金融商品の魅力が高まるため、REIT価格が下落するおそれがある。
また金利の上昇は、REITの資金調達コストを増加させる。
このため、利益の一部が利息支払いに充てられ、結果として投資家への分配金が減少するリスクも伴う。
不動産固有のリスク
REIT投資には、不動産に関連するリスクもある。
たとえば以下のようなものだ。
- 不動産市場のリスク
- 物理的・自然災害リスク
- 法制度変更のリスク
不動産市場のリスクとは、賃貸・売買市場、金利環境、経済情勢により、賃料収入や物件価値が変動するリスクである。
借主の解約や空室継続、不動産評価額の変動などにも影響を受ける。
また、火災、地震や洪水などの影響も大きいという特徴もある。
物件価値のみならず、地価が大きく下落するおそれもある。
このほか、不動産税制、建物の建築規制等の法制度の変更にも注意が必要だ。
運営や規制関連のリスク
REIT投資は、運営会社や規制環境に関連したリスクも伴う。
主に、以下のようなものだ。
- 信用リスク
- 倒産や上場廃止リスク
- 規制・税制変更のリスク
「信用リスク」とは、財務不安により借入金の利息支払いに支障が出たり、借入金の返済ができなくなるリスクだ。
信用リスクや倒産の可能性が露見すると、市場での取引価格が大きく下落するおそれもある。
また、投資法人としての登録が取り消された場合等は、上場廃止となり、市場で取引できなくなる。
REITの選び方
ここからは、REITの個別銘柄を選ぶ方法について解説する。
実際に投資を行う前には、自身の投資目標や現在の保有資産を確認し、「REITをポートフォリオに組み入れる必要があるか」を再考していただきたい。
そのうえで、以下の「投資対象」「指標」「手数料」を確認し、慎重に選定して欲しい。
なお、各銘柄の詳細情報は、不動産投信情報ポータルの銘柄ページにて確認できる。
投資対象を確認する
REITがどの不動産に投資しているかは、必ず確認すべき項目である。
特化型か複数用途型か、そしてどの分野に特化しているかによって、投資特性が異なり、あなたのポートフォリオへの影響も異なるからだ。
特化型リート
分類 | 投資特性 |
---|---|
オフィス特化型 (8銘柄) | 長期契約が多いため、安定した賃料収入が期待できる 一方で経済の景気変動に左右されやすく、オフィス需要の減少がリスクとなる |
住宅特化型 (7銘柄) | 人口動態や立地が収益に大きく影響する 安定した需要を見込める一方、地域経済の変動や人口減少がリスクとなる |
商業施設特化型 (2銘柄) | 消費動向に敏感で、景気の変動や流行の影響を受けやすい |
ホテル特化型 (5銘柄) | 観光需要や景気・季節要因の影響を受けやすい |
物流施設特化型 (10銘柄) | eコマース市場の拡大により需要が高まっている 技術革新や物流効率化による変化への対応が課題 |
ヘルスケア施設特化型 (1銘柄) | 高齢化社会の進展により需要拡大が見込まれる 政策変更や運営コストの上昇がリスク |
複数用途型リート
複数用途型リートには、複合型と統合型(総合型)がある。
複合型は「オフィスと住居」など2種類の不動産セクターに投資し、統合型は、3種類以上または投資対象を限定せず投資する方法だ。
特化型より複合型が、複合型より統合型が投資不動産は多様となり、リスクは分散される。
分散が進むほど、市場の不確実性に強くなる一方で、期待できるリターンは限定される。
各種指標で絞り込む
各銘柄の指標も確認しておこう。
分配金利回り(1口当たり分配金額 ÷ 投資口価格)
投資の主な目的が収入を得ることであれば、分配金利回りが高いREITを選ぶことが重要だ。
利回りは、【REITが生成する収入を現在の市場価格で割ったもの】で、投資家への収益還元の効率性を示す。
1口当たりNAVとNAV倍率
「NAV(Net Asset Value、純資産価値)」は、不動産の時価に基づく純資産価値をいう。
これを投資口数で割ったものが「1口当たりNAV」となる。
たとえば、NAVは上昇している一方で市場価格がそれに追随していない場合、将来において価格上昇の可能性があるという見方をされる。
NAV倍率は、REITの1口当たりの市場価格を1口当たりのNAVで除した値だ。
これは株式市場でいうPBR(Price to Book Ratio)に相当し、REITがその純資産価値に比べて市場で過大評価、または過小評価されているかを示す。
NAV倍率が1倍を下回っている場合、割安であると判断される。
手数料を確認する
J-REIT取引に関連する主なコストには、「売買手数料」と「運用会社への委託報酬」がある。
後者はREITの運営コストとして内包されており、直接投資家が支払うものではないため、投資家が意識する必要はない。
売買手数料の計算方法は、口座を持つ証券会社によって異なる。
たとえば「定額プラン」などを選択していれば、どの銘柄を何回売買しても一定の手数料負担で済む。
一方、取引ごとに「売買代金の一定の割合」で設定されている場合は、価格が高い銘柄には高い手数料を負担する必要がある。
したがって、短期売買を繰り返す投資家でなければ、個別銘柄の選定においては、手数料は大きな選定要因とならないかもしれない。
一方で、REIT個別銘柄とETFや投資信託を比較検討する場合は、負担すべき手数料は必ず確認すべき項目である。
ETFや投資信託の場合、売買手数料のほかに信託報酬・監査報酬などを負担する必要があり、これがファンドごとに異なるためである。
REITを活用した資産運用の相談はどこにすべき?
REIT投資はポートフォリオに多様性を加え、市場変動への耐性を強めるメリットがある。
株式同様に売買できるため、投資を始めるのはそれほど難しくない。
REIT投資を専門家へ相談する重要性
しかし、「そもそも投資ポートフォリオにREITを含めるべきか」「何割程度組み込むべきか」「どの銘柄が良いか」など、検討すべき点は多岐にわたる。
加えて、不動産市場にかかるリスクもあるため、専門知識がないと適切な判断は難しい。
商業用不動産業界について学び、分析する時間がないなら、専門家に相談するのがベストである。
専門家への相談により、以下のようなメリットが期待できる。
- 投資目的や資金状況に合ったREIT銘柄の選定
- ポートフォリオ全体のリスク分散や最適化の提案
- 市場動向や規制変更等の情報提供
- 投資家に必要な、REITの仕組みや特徴の説明
IFAの役割とメリット
REIT投資の相談先としてはとくに、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)がおすすめだ。
以下のような複数のメリットが得られるからだ。
- 独立した立場で、顧客の利益を最優先に考えた助言を行う
- 幅広い金融商品の知識を持ち、顧客のニーズに合った最適な商品を提案できる
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不動産投資に興味があるなら手軽なREITから始めよう
本記事ではREIT投資について、基礎的事項から実際の投資方法、メリットおよびリスク、銘柄選定の方法に至るまで詳細に解説した。
REIT投資はすべての人に向いている投資対象ではない。
やみくもに資金を投じるのではなく、専門家と話し合い、納得したうえで投資することをおすすめする。
REITを組み込む際は、ぜひ、IFAに相談して欲しい。投資家の状況に合わせて、的確なアドバイスを提供してくれる。
IFAを探すなら、初回相談の「資産運用ナビ」を利用すると良い。
良いアドバイザーを探すところから、REIT投資の最初の一歩を踏み出してはいかがだろうか。