- サラリーマンができる節税方法を知りたい
- 高所得でも控除できる内容について知りたい
- どこへ相談したらいいのかわからない
高所得のサラリーマンは、そうではない人と比べて所得税の納税額が大きい。当然のことだが、これをなんとか節税できないかと、悩んでいる人は多いだろう。
そこで本記事では、高所得サラリーマンの節税スキームについて解説する。すべての節税スキームを利用することは難しいが、一部のスキームを利用するだけでも、大きな節税効果になることがある。
それでは早速、高所得サラリーマンの節税スキームを紹介する。
高所得サラリーマンの節税スキーム10選
配偶者控除
納税者に生計を一とする配偶者がいる場合、以下の条件を満たすことによって配偶者控除が受けられるようになる。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しない)
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
ただし、納税者の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除は受けられないので注意しよう。また、配偶者の所得が48万円を超えた場合は、次の条件を満たすことで、配偶者控除を受けられる。
- 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下
- 配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下(平成30年分から令和元年分までは38万円を超え123万円以下、平成29年分までは38万円を超え76万円未満)
配偶者控除を受けられる場合の控除額は次のとおりだ。
控除をつける納税者本人の合計所得 | 控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
扶養控除
納税者に配偶者以外の扶養親族がいる場合、その人数に応じて扶養控除が受けられる。扶養親族の対象とは、次の要件を満たす人のことだ。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
扶養控除が受けられる場合、以下の控除額が差し引かれる。
控除をつける納税者本人の合計所得 | 控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
生命保険料控除
生命保険料控除とは、生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払っている場合に受けられる控除だ。生命保険料は以下のようにして算出する。
新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約など)に基づく場合の控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約など)に基づく場合の控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
地震保険料控除
地震保険料控除とは、地震保険の保険料や掛け金を支払った場合、一定の金額の所得控除を受けられる制度のことだ。地震保険控除の金額は、次のように計算する。
区分 | 年間の支払保険料の合計 | 控除額 |
(1)地震保険料 | 50,000円以下 | 支払金額の全額 |
50,000円超 | 一律50,000円 | |
(2)旧長期損害保険料 | 10,000円以下 | 支払金額の全額 |
10,000円超20,000円以下 | 支払金額×1/2+5,000円 | |
20,000円超 | 15,000円 | |
(1)・(2)両方がある場合 | - | (1)、(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額 (最高50,000円) |
ふるさと納税
高所得サラリーマンがよく利用する節税スキームが、「ふるさと納税」だ。
ふるさと納税とは寄付金税制の一つであり、自身で選んだ自治体に寄付をするとで、寄付金のうち2,000円を超過した部分について、所得税や住民税が控除(還付)される。
ふるさと納税はワンストップ特例制度と言って、確定申告を行うことなく控除を受けられる制度を設けている。そのため、面倒な確定申告を行わなくても良いということで、多くの高所得サラリーマンに人気の節税スキームだ。
ただし、ワンストップ特例制度は以下の条件を満たす必要がある。
- 年間の寄付先が5自治体以下であること
- 確定申告を行う必要のない給与所得者等であること
- 申込の都度、自治体へ申請書を郵送していること
ふるさと納税は自治体に寄付を行うことで返礼品がもらえるため、単なる寄付に終わらないのが大きなメリットだ。
ただし、ふるさと納税には限度額があり、限度額を超えての寄付は控除対象にならないため注意しよう。
NISA
NISAとは「少額投資非課税制度」のことであり、株式や投資信託などの配当金と譲渡益の税率を、一定の条件に基づいて非課税とする制度だ。
株式や投資信託による配当金や譲渡益には、通常20.315%の税率が課せられるが、NISAならこれが非課税となるため節税効果が大きい。
現行のNISAには一般NISAと積立NISA、さらにジュニアNISAという3つの区分がある。
また、2023年をもってジュニアNISAは廃止となり、2024年以降は新NISAとして制度も一新される。以下に、各NISAの特徴を解説する。
一般NISA・積立NISA
一般NISAは、年間投資枠が120万円、非課税保有期間は5年間、非課税保有限度額は600万円となっている。また、株式や投資信託、ETFやREITなど、幅広い金融商品に投資できるのが大きな特徴だ。
また、積み立てNISAとは一定の条件を満たしていると金融庁が判断した投資信託・ETFのみが投資対象とされている。NISAの年間投資可能額が120万円なのに対し、積み立てNISAは40万円と少額だ。
一方、非課税保有期間は20年と長期になり、非課税保有限度額は800万円まで増える。そのため、節税対策を行いながら長期的な資産運用を行いたい人に向いている。
一般NISAと積立NISAの違い
一般NISA | 積立NISA | |
利用可能年齢 | 満20歳以上 | 満20歳以上 |
最大運用期間 | 20年 | 5年 |
年間非課税枠 | 40万円 | 120万円 |
総額非課税枠 | 800万円 | 600万円 |
ロールオーバー | できない | できる |
口座開設期間 | 2023年12月31日まで | |
投資対象 | スクリーニング基準を満たし、金融庁に届けられた投資信託とETF | 国内外の上場株式、投資信託、ETF、REITなど |
投資方法 | 定期的かつ継続的に積み立てる | 投資方法の制限なし |
運用途中の出金 | 自由 | 自由 |
一般NISAで可能な「ロールオーバー」とは、5年間の非課税期間が終了した金融商品を、翌年のNISA枠を使い、引き続き非課税で保有し続けることを意味する。
この場合、実質的に10年間、一般NISAを通じて金融商品を非課税で保有できることになる。
新NISA
新NISAとは、2024年1月からスタートする、新しい少額投資非課税制度のことだ。現行のNISA(一般NISA/積立NISA)から内容が大きくアップデートされる。
まず、利用可能年齢が成人年齢の引き下げに伴い、満18歳以上に変わった。これにより高校生を除く満18歳以上の人は、親の同意なくNISA口座(非課税口座)を開設可能だ。
現行NISAの2つの区分は、「成長投資枠」と「積立投資枠」という区分に変わる。
どちらも非課税保有期間が無期限化し、非課税投資枠が年間360万円、総額1,800万円へと増額されることになる。また、「成長投資枠」と「積立投資枠」は併用可能だ。
新NISAの制度
一般NISA | 積立NISA | |
利用可能年齢 | 満18歳以上 | 満18歳以上 |
最大運用期間 | 無期限 | |
年間非課税枠 | 360万円 | |
総額非課税枠 | 1,800万円 | |
1,200万円(内数) | ||
ロールオーバー | できない | できる |
口座開設期間 | 無期限 | |
投資対象 | スクリーニング基準を満たし、金融庁に届けられた投資信託とETF | 国内外の上場株式、投資信託、ETF、REITなど |
投資方法 | 定期的かつ継続的に積み立てる | 投資方法の制限なし |
運用途中の出金 | 自由 | 自由 |
新NISAの大きな特徴として、非課税投資枠を再利用できる点が挙げられる。たとえば、現行NISAで株式や投資信託を売却した場合、売却した分に相当する非課税投資枠の再利用ができない。
一方、新NISAでは売却した分に相当する非課税投資枠の再利用が可能となり、より使いやすい制度として生まれ変わる。
iDeCo
iDeCoとは「個人型確定拠出年金」のことであり、NISAや積立NISAと同じく、金融商品の運用時に得た利益が非課税になる制度だ。NISA、積立NISAと混乱しがちなため、それぞれの違いを以下にまとめる。
NISA | 積み立てNISA | iDeCo | |
年間投資枠 | 120万円 | 40万円 | 14万4000円〜81万6000円(職業や加入している年金制度によって異なる) |
非課税保有期間 | 5年 | 20年 | 65歳まで(10年間延長可) |
非課税保有限度額 | 600万円 | 800万円 | 限度額なし |
途中換金 | いつでも可能 | いつでも可能 | できない |
損益通算 | できない | できない | できない |
選択できる金融商品 | 株式、投資信託、ETF、REIT | 金融庁への届出が受理された投資信・ETF | iDeCo用の投資信託、保険商品、定期預金 |
資金の引き出し | いつでも可能 | いつでも可能 | 60歳まで原則できない |
上記のように、NISA、積立NISA、iDeCoには異なる特徴があるため、それぞれのメリット・デメリットを把握した上で、適切な節税スキームを選びたい。
医療費控除
医療費控除とは、年間(1月1日から12月31日)の医療費が一定額を超えた場合に利用できる控除制度だ。
確定申告の際に同時に申請することにより、規定の計算式にもとづいて医療費の金額を所得税から差し引ける。
サラリーマンの場合、会社が所得税の源泉徴収を行なっているため、医療費控除を利用すると還付金が戻ってくるので積極的に利用したい。
医療費控除については、以下の記事で詳しく解説しているため、合わせて参考にしてほしい。
住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住居を購入した場合に、年末時点における住宅ローンの残高の0.7%が入居時から最長13年にわたって控除される制度のことだ。
高所得サラリーマンの場合、会社が源泉徴収を行なっているため、控除ではなく還付として戻ってくるケースが多い。
住宅ローン控除は、以下の条件を満たすことで受けられる。
- 物件を取得してから6ヶ月以内に入居すること
- 登記簿上の床面積が50㎡以上で、その1/2以上が自己の居住用であること
- 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
高収入サラリーマンにとって、「合計所得金額が2,000万円以下」は、控除利用のラインになるため注意しよう。また、控除額は居住する住宅によっても異なる。
住宅ローン控除の控除額(令和4年から令和5年末までに入居した場合)
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 | 最大控除額(年間) |
長期優良住宅低炭素住宅 | 5,000万円 | 0.7% | 13年 | 35万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 31.5万円 | ||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 28万円 | ||
その他の住宅 | 3,000万円 | 21万円 |
特定支出控除
特定支出控除とは、業務にかかる費用を経費として計上でき、一定金額を超えた場合に還付金が戻ってくる可能性のある控除だ。特定支出控除の範囲・条件は次のとおりだ。
通勤にかかる費用 | 交通機関の料金を個人で支払っている場合、または支給されている通勤費用を超える場合に計上できる。 |
引越し費用 | 転勤時、引越しにかかる費用で個人が支払った分を計上できる。 |
単身赴任者の帰宅にかかる費用 | 単身赴任をしている人が配偶者が居住している家に帰る場合に計上できる。 |
研修にかかる費用 | 業務で使用する技術を習得する際の費用を計上できる。 |
資格を得るためにかかる費用 | 業務に必要な資格を得るための費用を計上できる。自動車免許、簿記、英検、弁護士、医師、億人会計士などが該当する。 |
業務に関する図書の購入費用 | 業務関連の書籍や雑誌、新聞を購入するための費用を計上できる。 |
業務に関する衣服の購入費用 | 制服など、業務に使用する衣服を購入するための費用を計上できる。 |
業務に関する交際費用 | 接待費やお歳暮代など、業務上の交際にかかる費用を計上できる。 |
高所得サラリーマンはIFAを活用しよう
IFAとは、「Independent Financial Adviser」と言って、日本語では「独立系ファイナンシャルアドバイザー」と訳される。独立的な立場から顧客の資産運用についてアドバイスを行う、専門家のことだ。
「節税スキームの種類は把握したが、具体的にどうすればいいのかわからない」と悩んでいる人は多いだろう。そうした人は、IFAへの相談を検討してみてほしい。
高所得サラリーマンがIFAを活用するメリット
高所得のサラリーマンの多くは、投資などによる資産運用を行っている。そのため、IFAを利用すると、節税についてアドバイスがもらえるだけでなく、投資戦略や長期的な資産運用についても相談できる。
また、IFAは証券会社や金融機関に属していないため、特定の金融商品に縛られない。広い視野を持って、自由に投資戦略を提案してくれるのは大きなメリットだ。
したがって、具体的な節税スキームを学びたいだけでなく、資産運用についても相談したい人は、IFAを活用してみてはいかがだろうか。
IFAが提供するサービスと活用方法
IFAが提供するサービスは、次のようなものだ。
- 投資目的の整理
- 投資戦略の立案
- 市場情報の提供
- 金融商品の選定
- ポートフォリオの組み立て
- 資産のリバランス
- 相続・贈与の相談
このように、IFAがカバーできる範囲は広く、無数の選択肢の中から自分に合った投資戦略を一緒に考えられるのが特徴だ。
まずは「資産運用ナビ」などでマッチングされたIFAに対して、今後の投資戦略について相談してみてほしい。
現在の投資戦略が客観的に見て正しいものかどうか、セカンドオピニオンを得て、参考にしてみよう。
また、投資初心者の場合は投資目的の整理からサポートしてもらうと、スタート時点から効率的な資産運用が行える。
米国など金融先進国と呼ばれる国々では、IFAを投資パートナーとして迎え入れることは、すでにスタンダードになっているのだ。
まとめ
本記事では、高所得サラリーマンの節税スキームを紹介した。
高所得サラリーマンはいくつかの節税スキームを利用することで、高い節税効果が得られる。しかし、控除によっては適用外になるケースや、併用できないケースなどがある。
節税スキームに関する疑問・不安がある場合は、IFAに相談しよう。
現在、「資産運用ナビ」では無料相談を実施している。節税に詳しいIFAも多いため、無料相談を利用して節税に関する疑問・不安をぜひ解消してほしい。