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富裕層向けの資産運用・管理サービスを提供する「プライベートバンク」と呼ばれる銀行があります。プライベートバンクは、一般的な銀行が担う業務ではなく、「富裕層の資産をいかに増やすか、あるいは守るか」にフォーカスしたサービスです。
当記事ではプライベートバンクのビジネスモデルや一般的な金融機関との違い、利用のメリット・デメリット、利用に必要な資産額などを解説します。
プライベートバンクとは?ビジネスモデルや一般的な金融機関との違い
プライベートバンクとは、数億レベルの資産を持つ富裕層向けに、資産運用・資産管理に関するサービスを提供する銀行です。ここでいう資産とは現金だけでなく、株式や不動産、保険なども含まれます。
もともとはスイス発祥の銀行の形態で、外国へ出稼ぎに出るスイス人傭兵の資産を預かったことが始まりとされています。
プライベートバンクは富裕層向けサービスであることから、顧客には経営者や医者などの高収入の方も少なくありません。
さらに以下ではビジネスモデルや手数料、一般的な金融機関との違いなどもみていきましょう。
プライベートバンクのビジネスモデルや手数料
プライベートバンクは、一般的な銀行のように顧客から預かった資産を貸し出したり運用したりなどの業務は行いません。住宅ローンや教育ローンなどの融資関係で利益を得るのは、原則としてプライベートバンクのビジネスモデルではないのです。
顧客の資産管理や資産運用のアドバイスなどのサービスを提供し、それに応じた手数料を報酬として受け取るのが、プライベートバンクの主なビジネスモデルとなります。
例えば、次の業務にかかる手数料がプライベートバンクの利益です。
- 顧客の預かり資産額に応じた手数料
- 資産運用に関するコンサルティング(ポートフォリオの提案など)で発生する料金
- 資産管理・運用に関する事務手数料
イメージとしては、銀行というより投資助言会社に近いかもしれません。具体的には、次の4種類が存在します。
プライベートバンクの手数料 | 概要 |
---|---|
資産基準手数料 | ・顧客からの預かり資産額に応じて発生する手数料で、ほとんどのプライベートバンクが採用 ・取引回数が増えても一律料金だが、何もしていなくても支払いが発生 |
売買手数料 | ・プライベートバンクが販売する金融商品を売買した際に発生する手数料 ・発生をコントロールしやすいが、プライベートバンクと顧客で利益相反するケースあり |
成功手数料 | ・資産の値上がり値(30万→40万に増えたら10万円が値上がり値)に対して発生する手数料 ・プライベートバンクと顧客で方向性が一致するが、成功を狙いすぎて資産を減らす可能性あり |
固定報酬 | ・預かり資産や運用成果に関わらず定額で発生する手数料 ・取引数や成果に関係なく一律料金だが、成果が出ないと割高に感じる可能性あり |
手数料の金額は、プライベートバンクごとで異なります。資産基準手数料であれば預かり資産に対して1~1.5%、成功手数料であれば値上がり値に対して10%~20%程度が目安です。
プライベートバンクを利用する際は、資産を預ける前にどのような手数料がかかるのかをチェックしておきましょう。
プライベートバンクと一般的な金融機関の違い
プライベートバンクと一般的な金融機関との違いとして、「金融商品」と「担当期間」の2つが挙げられます。それぞれみていきましょう。
富裕層向けとマスリテール向けの金融商品
商品面での違いは、プライベートバンクが「富裕層向けのオーダーメイド商品」、一般的な金融機関は「マスリテール(いわゆる富裕層でない一般層)向けの既存商品」という点です。
マスリテール向けの商品とは、すでに市場で出回っている株式や投資信託、国債などを基に開発した金融商品です。一般的な金融機関では、このマスリテール向けの商品をより多くの方に売買して利益とします。
一方でプライベートバンクは、顧客の資産状況やヒアリング結果などを基に、オーダーメイドの商品を提供します。また、一般的な金融機関ではなかなか取り扱っていない金融商品を提案できるのも特徴です。
提供商品の例は次のとおりです。
プライベートバンクの主な商品 | 概要 |
---|---|
私募投信 | ・50人未満の少人数の投資家のみに販売される、発行数が限定された投資信託 |
優先株 | ・議決権(株主会議で票を入れる権利)がない代わりに優先的に配当を受けられる株式 |
優先出資証券 | ・議決権がない代わりに優先的に残余財産(企業が精算したときに受け取れる財産)を受けられる証券 |
取引一任勘定 | ・顧客の同意の範囲内で、担当者に運用を任せる契約を結ぶこと |
担当者の担当期間
プライベートバンクと一般的な金融機関では、顧客を担当する者の期間に違いがあります。
まず日本の金融機関においては、約3年で担当者の異動・転勤が行われるのが一般的です。顧客との癒着や、担当者の不正行為を防ぐのが目的です
一方でプライベートバンクの担当者は、1人の顧客に対して長期的なパートナーシップを結びます。具体的には次のとおりです。
- 原則として顧客1人ひとりに専属で付く
- 担当者の変更は滅多にない(変更の要望がある場合は除く)
なお、プライベートバンクにて顧客を担当する者をプライベートバンカーと呼びます。プライベートバンカーになるために必要な資格はとくにありませんが、日本アナリスト協会が運営するプライベートバンカー(PB)資格というものも存在します。
プライベートバンクとIFAの違い
プライベートバンクやその他金融機関以外に、資産運用をサポートするサービスとしてIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)が台頭してきました。
IFAとは、特定の証券会社や銀行に所属することなく、独立した立場で資産運用に関する仲介・コンサルティングを実施する者です。証券会社などと業務委託契約を結び、委託先の金融商品に関する仲介や、資産運用プランの提案などを行います。
IFAを利用するメリットは、アドバイザーが金融機関の営業方針に左右されず、客観的な目線で顧客にアドバイスしてくれる点です。
また、プライベートバンクのような富裕層向けのサービスだけでなく、マス層や中間層などをターゲットにした運営をするIFAがあるのも特徴といえます。
海外のプライベートバンクについて
海外が発祥であるプライベートバンクは、日本のプライベートバンク業務と異なる部分もあります。以下では、海外と日本のプライベートバンクのおおまかな違いを解説します。
海外のプライベートバンクの特徴
海外のプライベートバンクの特徴は次のとおりです。
- 業務内容が事業拡大や教育支援など幅広く積極的(増やす)な資産運用が得意である
- 日本とは異なる経済状況や管理下にて資産が管理される
- 日本より歴史が深く、世界の富裕層を基準としたサービスを受けられる
- 海外で販売されている金融商品を運用できる
- 手続きが英語などの外国語で行うので煩雑になりやすい
日本のプライベートバンクの特徴
日本のプライベートバンクの特徴は次のとおりです。
- 日本らしく保守的な(減らさない)資産運用が得意である
- サービスが日本の金融機関の延長で業務内容が限定的な傾向がある
- 日本の税務や法務に順応できる
- 販売商品や金融市場が海外のものよりわかりやすく運用しやすい
プライベートバンクを利用するメリット
プライベートバンクを利用するメリットは次のとおりです。
- 相続対策・事業承継・M&A・その他税金関係など、動かすお金が高額になるケースの相談にも対応している
- 一般的な金融機関では扱わない私募投信や優先出資証券なども、投資先の選択肢に入れられる
- オーダーメイドされたポートフォリオで運用できる
- 同じ担当者と長期的なパートナーシップを結べる
マスリテール層向けのアドバイザーでは対応しづらい領域も、プライベートバンクの金融アドバイザーであれば問題なくサポートができます。富裕層に特化したサービスこそ、プライベートバンクを利用する大きなメリットです。
経営者や資産家、その他高収入の仕事に就いている方であれば、プライベートバンクの利用をおすすめします。
プライベートバンクを利用するデメリット
プライベートバンクを利用するデメリットは次のとおりです。
- 預かり資産に比例して高額な手数料がかかるので、運用成果によっては赤字が続くリスクがある
- 資産額やその他の基準によって利用者が制限されている(富裕層以外の一般の方は利用が難しい)
- 口座を開設するまでに、面談や審査などさまざまな手続きを経る必要がある
開設までのハードルの高さと、資産の目減り幅の大きさが主なデメリットです。
とはいえ開設すれば、富裕層の資産運用に強い専門家のアドバイスや、運用実績に基づいた適切な提案が受けられます。
また、プライベートバンクは原則として長期的な運用を基準としているので、いきなり数千万~数億円レベルの損失が出ることはほとんどないでしょう。
プライベートバンクを提供している主な金融機関一覧
日本でプライベートバンクサービスを提供している金融機関は、主に次のとおりです。
【メガバンク】 | ・三菱UFJ銀行 ・三井住友銀行 ・みずほ銀行 |
---|---|
【信託銀行】 | ・三菱UFJ信託銀行 ・三井住友信託銀行 ・SMBC信託銀行 |
【その他の銀行】 | ・千葉銀行 ・静岡銀行 ・横浜銀行 ・十六銀行 ・琉球銀行 ・りそな銀行 |
【証券会社】 | ・野村證券 ・大和証券 ・みずほ証券 ・SMBC日興証券 ・三菱UFJモルガン・スタンレー証券 (ユーロマネープライベートバンキング総合ランキング2020日本部門1位) |
次に海外のプライベートバンクをご紹介します。
資産を守りたい方は日本、ガンガン資産を増やしたい方は海外、経済状況や世界情勢を踏まえてリスクマネジメントを意識したい方は両方の利用など、資産運用の方向性によって利用するところを選ぶのをおすすめします。
プライベートバンクはいくらから利用できる?
富裕層向けのサービスであるプライベートバンクは、ある程度資産を持っている方でないと口座すら開設できないと言われています。しかし、いくらから利用できるかを具体的に公表するプライベートバンクはほとんどありません。
一般的には、1,000万円や2,000万円程度では利用できないと考えられます。最低でも1億円前後は必要となるでしょう。例えばみずほプライベートウェルスマネジメントだと、必要資産は10億とも30億とも言われています。
逆に日本では、3,000万円から利用できるプライベートバンクも存在します。具体的な利用金額を知りたいときは、プライベートバンキング業務を行う銀行のセミナーを受けたり、問い合わせてみたりなどを行いましょう。
プライベートバンクを開設するには?
実際にプライベートバンクの口座を開設したいときは、まず。担当者への事前相談や自身の資産状況、将来的なライフプランの見直しなどを進めます。
口座を開設するには、最低限の資産額や反社チェックのクリア、将来的なポテンシャル、その他サービスごとの基準などに関する審査を通過しなければなりません。中には他の方からの紹介経由でしか開設できないプライベートバンクも存在します。
審査基準に達して口座開設が問題ない場合でも、相手側から提出されるポートフォリオプランや利回りなどをチェックし、本当に自分の資産を任せられるところなのかを見極めてから利用するかを決めましょう。
数百万~数千万円の資産運用ならIFAへの相談もおすすめ
株式会社野村総合研究所の調査によると、2019年時点での日本の富裕層(資産額1億円以上)は124万世帯、超富裕層は8.7万世帯でした。調査対象の世帯のうち、わずか2.5%程度にしか過ぎません。
一方で、資産3,000万円未満のマス層は4215.7万世帯と全体の約83%とほとんどを占めます。そのため、資産運用を考える多くの方は一般的な銀行や証券会社の利用となるでしょう。
数百万円~数千万円レベルの資産運用や、事業立ち上げ時の資金調達などについては、IFAへ相談するのもおすすめです。営業ノルマに左右されない客観的かつ専門的なサポートを、長期間に亘って受けられます。