- CAPMの計算方法とは
- 株主資本コストとは何か、なぜ重要か
- CAPMを使う際に気を付けるべきポイント
CAPMは、株主が期待できる最低限のリターンを表すためのモデルだ。
投資先のリスクに合わせて期待すべきリターンを算出してくれる。リスクが高ければ期待リターンは高くなる。
大きなリスクを背負って投資しているのだから、当然と言えば当然だろう。
CAPMを投資先の決定に役立てて、着実に資産形成していきたいという人は最後まで読んでみて欲しい。
CAPMで何がわかる?
CAPMは、資本資産評価モデルと呼ばれる理論。株主資本コストを計算するために用いられる。
株主資本コストとは?
株主資本コストは、企業が事業のために調達してきたお金の中で、株主からの出資によって調達した資本に対するコストを表している。
資金調達のコストというと、ピンとこない人もいるかもしれない。
企業が投資から出資を受けるにあたってかかるコストを考えてみよう。
株主は出資する場合、基本的に配当金や投資利回りといったリターンを期待している。
そして、配当金や株主優待を負担するのは企業だ。
そのため、「株主資本に対してかかるコスト」という意味で株主資本コストと呼ばれている。
他の言い方をすると、株主資本コストは株主が期待する最低限の要求収益率だ。
企業が株主資本に対してかけるコスト=株主が企業からもらう収益と考えればわかるだろう。
株主は企業が還元したお金以上を受け取ることはない。
もし、株主が期待している最低限の収益率を企業が還元できなければ、株主はその企業から資金を引きあげる可能性が高くなる。
CAPMとは?
CAPMはキャップエムと呼ばれており、Capital Asset Pricing Modelの略だ。
企業の投資リスクが高くなると、株主資本リスクは高くなる。
つまり、高いリスクに対しては株主が期待するリターンも大きくなるということだ。
CAPMの計算方法
CAPMの計算方法
CAPMはモデルの名前なので算出する数値= CAPMではない。CAPMで算出する数値は株主資本コストだ。株主資本コストの計算方法は以下の通りだ。
式だけ見ても意味がわからないだろうから、それぞれの項目の意味を紹介していく。
項目 | 解説 |
---|---|
リスクフリーレート | 「リスクのない金融商品に投資した場合、どのくらいの利益率を確保できるか」を表している。リスクがない=リスクフリーだ。 最も安全な資産と呼ばれる10年物の日本国債の利回りを使用するのが一般的だ。 |
β | 個別企業のリスクを表している。つまり、リスクの高い企業ほどβは高くなるというわけだ。 そして、βが高くなると計算式の右辺の数値は大きくなるので、株主資本コストも高くなる。 リスクが高いと株主が期待するリターンも大きくなるということを示している。 |
マーケットリスクプレミアム | 市場全体に投資した場合に期待したい最低限のリターンを表している。 算出方法は、市場平均のリターンからリスクフリーレートを引いて求められる。 つまり、10年物日本国債よりもどれだけ高いリターンが期待できるかを示す数値だ。 長期で見た投資利回りは3%~7%が妥当と言われている。 そのため、マーケットリスクプレミアムは5%前後を目安に採用されることが多い。 |
CAPMでの株主資本コストを計算式は表した通りだ。だが、文字だけで理解するのは難しいだろう。
実際に数値を使った計算問題を紹介していく。
CAPMの計算問題
2022年7月の10年物日本国債の利回りは0.2%ほどなので、リスクフリーレートは0.2。βは、1が平均的な値動きをする企業を示す。
価格の変動幅をボラティリティと言うのだが、ボラティリティが高い企業は値動きの激しいリスクの高い企業。
反対に、ボラティリティの低い企業は値動きが安定しているリスクの低い企業ということになる。
ボラティリティが高い企業のβは1より大きくなり、ボラティリティが低い企業のβは1よりも小さくなる。
マーケットリスクプレミアム=5%の企業に投資する場合の株主資本コスト
株主資本コスト=0.2%+1.5×5%=7.7%
マーケットリスクプレミアム=5%の企業に投資する場合の株主資本コスト
株主資本コスト=0.2%+2×5%=10.2%
マーケットリスクプレミアム=5%の企業に投資する場合の株主資本コスト
株主資本コスト=0.2%+0.8×5%=4.2%
マーケットリスクプレミアム=5%の企業に投資する場合の株主資本コスト
株主資本コスト=0.2%+0.5×5%=2.7%
4つの例で計算式と株主資本コストを算出してみた。②のようにボラティリティの高いハイリスク企業に対しては、期待リターンは大きくなる。
一方で、ボラティリティの低いローリスク企業だと、期待リターンは小さい。リスクが大きいから悪い、小さいから良いという話ではない。
投資先が正解かどうかは人それぞれの目的によって違う。
現預金が豊富にあって投資で金融資産を増やしたいという人には、ハイリスクハイリターンの商品が合っている。リスク許容度が高いからだ。
一方で、定年間近だが老後資金に備えて資産運用をしておきたいという人にはハイリスクハイリターンの商品は合わない。最悪の場合、生活が破綻してしまう可能性もある。
リスク許容度が低い人はリスク抑えて投資した方が良い。自分の投資目的や資産状況、リスク許容度に合わせた投資を心掛けよう。
CAPMを使用する場合に気を付けるべきポイント
ここまでCAPMを用いた株主資本コストの計算方法を紹介してきた。求めた数値は投資先を決定する一つの要因にすることもできるが、利用する前に注意が必要だ。
ここでは、CAPMを使用する場合に気を付けるべきポイントを紹介していく。
算出された値に固執しすぎない
算出された数字に固執しすぎるのは良くない。株主資本コストが5%あるからと言って、必ずしも5%のリターンが期待できるわけではないのだ。
もし、この計算式で期待リターンがわかれば投資家はみな勝ててしまう。教科書通り、計算通りにいかないのが株式市場である。
想定外の出来事や暴落など何が起きるか分からない。想定外の出来事にも対応できるよう、必ず生活資金を残した余剰資金で投資をしよう。
数値の設定に注意を払う
リスクフリーレートやマーケットリスクプレミアムの設定をするのは自分だ。
最新のデータを見ながら設定していこう。使う数値が大きく外れていると、出てくる株主資本コストも違うものになる。
利回りは古いデータを持ってきていないか、市場平均はどの市場を対象にするかなど、適切な株主資本コストを算出するために注意を払おう。
疑問点や不明点があれば専門家に相談
CAPM を利用するにあたってわからないことや疑問に思うことが出てきたら、必ず身近な人に相談しよう。
わからないまま進めてしまうと大きな損をしてしまう可能性がある。
もし、身近な人にお金に詳しい人がいない場合は、「資産運用ナビ」を利用してお金の専門家であるIFAに相談するのも一つの選択肢だ。
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