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株式の評価はなぜ必要?非上場株式の評価方法の流れとポイントを解説

非上場株式は所有者が変わった時に税金面を踏まえて評価計算する必要がある。

株式の評価方法は会社規模などによって計算方法が異なるものの、どのような時に計算する必要があるかご存じない方も多いだろう。

本記事では株式の評価計算が必要なタイミングと評価方法の流れを解説する。

最後には評価計算をする上で注意するポイントを紹介するため、これから非上場株式の評価計算が必要な方はぜひ参考にしてほしい。

目次

非上場株式の評価が必要となる場合

非上場株式の評価が必要となる場合 資産運用ナビコラム

非上場株式の評価が必要となるタイミングは大きく分けて3つ挙げられる。

ここではそれぞれのタイミングについて解説する。

相続発生時

相続が発生した際は遺産分割協議と相続税の計算に株式の評価額を計算しなければいけない。

遺産分割協議とは相続人が亡くなった方(被相続人)の財産を公平に分割するための話し合いである。

株式の評価額がわからなければ公平に遺産分割することはできないため、株式の評価計算を行う必要がある。

また、相続税の計算において、被相続人の財産合計額を算出する必要があるため、株式を保有していた場合は評価計算を行う必要がある。

つまり、相続が発生した時点で被相続人が株式を保有していた場合は必ず評価計算を行い、遺産分割と相続税の納税に備える必要がある。

株式売買時

親族間であっても株式の売買が発生した際は税金の課税対象となるため、株式の評価計算を行わなければいけない。

親族間で株式の売買を行う場合、相場価格よりかけ離れた金額で取引しようとする方も多いが、その場合税務署から事実確認が入り課税対象となるケースもある。

例えば、時価評価額5,000万円の株式を1,000万円などで売買した場合、差し引き4,000万円が贈与税の課税対象となり、約1,800万円の納税義務が発生する。

そのため時価とかけ離れた株式評価で売買は出来ず、適切な価格で取引するためにも株式の評価計算を行わなければいけない。

贈与時

株式を贈与する際も株式評価の計算を行う必要がある。

贈与税は基礎控除額110万円未満の贈与であれば非課税となるが、それ以上の価格であれば以下の税率をかけ控除額を差し引いた金額を納税しなければいけない。

具体的な計算方法以下の通りとなる。

贈与税の課税価格=贈与する財産の評価額-基礎控除額(110万円)贈与税=課税価格×税率-控除額

贈与する財産評価額から基礎控除額を差し引いたのち、税率をかけ、控除額を差し引く。税率と控除は課税価格によって下記の通りとなる。

一般贈与財産用の場合の税率と控除額

兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合

基礎控除後の課税価格200万円以下300万円以下400万円以下600万円以下1,000万円以下1,500万円以下3,000万円以下3,000万円超
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円25万円65万円125万円175万円250万円400万円
出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(2023年1月参照)

特例贈与財産用の場合の税率と控除額

祖父から孫への贈与、父から子への贈与する場合

基礎控除後の課税価格200万円以下400万円以下600万円以下1,000万円以下1,500万円以下3,000万円以下4,500万円以下4,500万円超
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円30万円90万円190万円265万円415万円640万円
出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(2023年1月参照)

上記の通り、贈与する相手によっても税率と控除額が異なる。

どちらにせよ、基礎控除額以内の贈与であれば贈与税は課税されることはない。

ただし贈与者が複数人に贈与したとしても、年間の贈与合計額が110万円未満まで非課税と定められている。

つまり、基礎控除額は1年間で贈与する相手が複数人であっても110万円までということである。

株式を贈与する場合、贈与税の課税対象となるため注意が必要である。

ただし贈与税は2023年または2024年に廃止になる可能性があるとされている。

そのため贈与税の改正内容の動向を追ったうえで贈与するようにしてほしい。

評価方法の流れ

評価方法の流れ 資産運用ナビコラム

ここからは株式の評価方法の流れについて解説する。4つのステップに分かれるため、次の項で詳しく解説する。

株主の判定

はじめに株主の判定をするために以下の2項目のどちらに該当するか判断する必要がある。

  • 同族株主
  • 少数株主

同族株主とは30%以上の議決権を一人または同族関係者が保有している状態を指す。

ただし50%以上の保有している場合はその一族のみ該当する。

一方、少数株主は15%以上の同族株主である場合に該当する。

同族株主の場合、次の項で解説する会社規模の判定に移るが、少数株主の場合、配当還元方式で評価額を決定する。

詳しくは「評価方法の決定」で解説する。

会社規模の判定

次に会社規模の判定を行う。会社規模は従業員の数によって以下の通りに定められている。

従業員の数会社規模
70人以上大会社
70人未満取引高基準(売上高)もしくは従業員数を加味した総資産基準によるいずれか上の区分
出典:国税庁「第1表の2 評価上の株主の判定及び会社規模の判定の明細書(続)」(2023年2月参照)

会社員が70人未満の場合は取引高基準または純資産基準の上の区分を用いる。

取引高基準

卸売業小売・サービス業その他会社規模区分
30億円以上20億円以上15億円以上大会社
7億円~30億円5億円~20億円4億円~15億円中会社の大
3.5億円~7億円2.5億円~5億円2億円~4億円中会社の中
2億円~3.5億円0.6億円~2.5億円0.8億円~2億円中会社の小
2億円未満0.6億円未満0.8億円未満小会社
出典:国税庁「第1表の2 評価上の株主の判定及び会社規模の判定の明細書(続)」(2023年2月参照)

純資産基準

従業員数36人~69人21人~35人6人~20人5人以下
総資産価額
卸売業小売・サービス業その他
20億円以上15億円以上15億円以上大会社
4億円~20億円5億円~15億円5億円~15億円中会社の大
2億円~4億円2.5億円~5億円2.5億円~5億円中会社の中
0.7億円~2億円0.4億円~2.5億円0.5億円~2.5億円中会社の小
0.7億円未満0.4億円未満0.5億円未満小会社
出典:国税庁「第1表の2 評価上の株主の判定及び会社規模の判定の明細書(続)」(2023年2月参照)

特定会社等の判定

つぎに株主の会社が「株式等保有特定会社」か「土地保有特定会社」「その他」の3つに分類されるため、どれに該当するか確認する。

分類判定基準
株式等保有特定会社・株式が50%以上会社の純資産を占める場合
土地保有特定会社・総資産額に占める土地等の割合を会社規模別に判定ž  
大会社は70%以上、中会社は90%以上、
小会社は業種と総資産価額の規模により90%以上または70%以上
その他・開業後3年未満の会社、直前期末の3要素(配当・利益・純資産)がゼロの会社、
開業前または休業中の会社、清算中の会社
出典:国税庁「特定の評価会社の株式」(2023年2月参照)

基本的には株式等保有特定会社か土地保有特定会社のどちらかに該当するケースがほとんどである。

それぞれによって評価方法が異なるため、次の項で紹介する。

評価方法の決定

株式等保有特定会社の場合、「併用方式」または「純資産価額方式」の低い方で算出し、土保有特定会社の場合は「純資産価額方式」を用いる。

併用方式とは「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」を会社の規模に応じて併用する方式である。

類似業種比準価額方式とは上場会社の株価をベースに配当金額と利益金額、純資産価額の3つを比較して計算する方法であり、下記の計算式で算出できる。

会社区分評価方式
大会社類似業種比準価額または1株あたりの純資産価額
中会社の大類似業種比準価額×0.9+1株あたりの純資産価額×0.1または1株あたりの純資産価額
中会社の中類似業種比準価額×0.75+1株あたりの純資産価額×0.25または1株あたりの純資産価額
中会社の小類似業種比準価額×0.6+1株あたりの純資産価額×0.4または1株あたりの純資産価額
小会社類似業種比準価額×0.5+1株あたりの純資産価額×0.5または1株あたりの純資産価額
出典:国税庁「類似業種比準価額」(2023年2月参照)

類似業種比準価額は以下の5つのうち低い株価で計算する

  • 相続・贈与月の株価
  • 相続・贈与前月の株価
  • 相続・贈与前々月の株価
  • 課税時期の前年平均株価
  • 相続・贈与月または課税時期の前年平均株価の2年間の平均株価

一方、純資産価額方式とは会社の純資産価額を株式数で割り貸して算出する計算方法である。

会社に負債がある場合、資産から負債を差し引いた価額が純資産価額となる。

資産は相続税評価額をベースに計算する方法である。双方を計算し、低い方が株式の評価額となる。

また少数株主の場合は2年間の平均配当金をベースに計算する配当還元方式を用いて計算する。

具体的な計算方法は以下の通りである。

株式に係る年配当金額/10%×1株あたりの資本金などの額/50円

ただし、1株当たりの資本金などの額が50円未満の場合、2年間の平均配当金が2円50銭未満であれば、年配当金額を2円50銭とし、「1株あたりの資本金などの額÷50円」を1株あたり科学と設定する。

また配当無しの場合も同様である。

非上場株式の評価で気を付けるポイント

非上場株式の評価で気を付けるポイント 資産運用ナビコラム

非上場株式で気を付けるポイントは2つ挙げられる。

負債を忘れないように注意する

純資産方式にて非上場株式の相続税評価額を算出する場合、負債を差し引いて株価の算出を行う。

負債があることで課税対象額となる株価を低くすることができるため、納税額を抑えることにつながる。

評価計算は専門家に委託する

純資産方式であれば安易に計算できるうえ、不確定要素も少なく計算しやすい一方、類似業種比準価額方式の併用となった場合は税理士や会計士などの専門家へ依頼した方が良いだろう。

株式の評価は、細かな計算と専門的な知識が必要となる。間違えた評価方法で相続・贈与・売買を行ってしまうと、後々修正申告を行い追加納税しなければいけないことにもつながりかねない。

正しい評価額を算出する為にも専門家へ委託することが望ましいだろう。

わからないことは専門家へ

わからないことは専門家へ 資産運用ナビコラム

今回は、株式の評価方法について解説してきた。株式の評価は、相続・売買・贈与を行うタイミングで必要となる。

主に税金面で評価しなければいけず、間違えて計算すると修正申告しなければいけないことにつながる。

また、会社規模によって評価方法が異なるだけでなく、複雑な計算方法から自身で算出するより「資産運用ナビ」に相談をしてはいかがだろうか。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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