「60代からNISAを始めても、もう遅いのでは」と迷ったことはありませんか?
退職金が振り込まれた。子どもや同僚から「NISAくらいやっておいたら」と勧められた。そこで調べてみると、「60代はやめたほうがいい」という声も目に入ります。若い人向けの「20年コツコツ積み立てる」という説明も、自分に当てはまるのかはわかりません。損を取り戻す前に、お金を使う時期が来てしまうのではないか。そんな不安も出てきます。
しかし、60代だからという理由で、NISAをやめたほうがいいということはありません。60歳の平均余命は男性で23.63年、女性で28.92年です※1。手元のお金の中には、10年以上先に使うお金もあるはずです。
つまり、始めるかどうかの分かれ目は年齢ではありません。そのお金を使う時期と、値下がりしても売らずに暮らせるかどうかです。数年以内に使うお金しかない場合や、生活費の備えが足りない場合は、見送るのも十分に合理的な判断です。
※1 厚生労働省「令和6年簡易生命表」。平均余命は、その年齢の人があと何年生きるかの平均です。
この記事では、「やめたほうがいい」と感じる理由を1つずつ確かめたうえで、始めてよい人と見送ったほうがよい人の条件を紹介します。iDeCo(個人型確定拠出年金)との使い分けや、口座を作る金融機関の選び方も取り上げます。NISAを始めるかどうかを決めるときの参考にしてください。
- NISAを見送ったほうがよいのはどんな人?
- 年金を受け取り始めたらiDeCoは使える?
- 口座は銀行と証券会社のどちらで作る?
- 始めると決めたら何から手をつける?
※制度・数値は2026年9月時点の情報です。
関連記事:60代の資産運用を始める順番
60代からのNISAはやめたほうがいい?不安の理由ごとの答え
「60代はNISAをやめたほうがいい」と一律に言える理由はありません。ただし、不安の理由によっては、NISAを見送るほうがよい場合もあります。
「やめたほうがいい」と感じる理由には、制度の誤解から来ているものと、本当に確かめておくべきものがあります。まずは、自分の不安がどれに近いかを分けてみましょう。
| 不安の理由 | 実際のところ | 判断に使うこと |
|---|---|---|
| 運用できる期間が短い | 60歳の平均余命は男性23.63年・女性28.92年。10年以上先に使うお金もある | そのお金を使う時期 |
| 非課税で持てるのは5年だけ | 5年は2023年までの一般NISAの話。2024年からのNISAは非課税で持てる期間に期限がない | 今の制度の仕組み |
| 損を取り戻す前に使う時期が来る | 数年以内に使うお金なら、年齢に関係なく起こりうる | 使う時期と手元の現金 |
| 口座の操作や手続きが不安 | 対面の窓口でも口座を作れる。相談しながら運用する方法もある | 口座を作る金融機関 |
運用できる期間が短いと感じる
60歳の平均余命は男性で23.63年、女性で28.92年です。65歳でも男性19.47年、女性24.38年あります。夫婦のどちらかが長生きすることまで考えると、老後資金の中には20年以上先に使うお金も含まれます。
それでも運用できる期間が短く感じるのは、手元のお金を全部まとめて「老後資金」と考えているからです。来年の車の買い替えに使うお金と、80代の暮らしに使うお金とでは、運用できる期間が10年以上違います。手元のお金を使う時期ごとに書き出してみましょう。10年以上使わないお金がいくらあるかがわかれば、NISAに回せる金額の上限も見えてきます。
非課税で持てるのは5年だけと聞いた
「NISAは5年しか運用できない」と聞いて、60代から始めても短すぎると感じた方もいるかもしれません。5年という期間は、2023年まであった一般NISAの非課税期間です。
一方、2024年からのNISAでは、非課税で持てる期間に期限がありません。制度そのものも恒久化されました。70歳で買った投資信託を、80歳になっても非課税のまま持ち続けることができます。
ただし、2023年までのNISAで買った商品は、それぞれの非課税期間が終わると、課税口座(特定口座や一般口座)へ移るか売るかを選ぶことになります。旧NISAの商品を持っている場合は、その扱いを先に確かめておきましょう。
関連記事:旧NISAの非課税期間が終わったらどうする?含み損がある人ほど注意したい税金
損を取り戻す前に使う時期が来るのが怖い
この不安は、制度の誤解ではありません。投資信託や株式は、値下がりした後に値を戻すまで時間がかかることがあります。使う時期が近いお金ほど、その回復を待てません。
ただし、これは60代に限った話ではありません。30代でも、2年後に住宅の頭金に使うお金を投資すれば同じことが起こります。不安の原因は年齢ではなく、近いうちに使うお金を投資に回すことです。
そこで、数年以内に使う予定があるお金は、NISAに回さないようにしましょう。反対に、使う予定がずっと先のお金なら、途中で値下がりしても回復を待つ時間があります。
口座の操作や手続きが不安
ネット証券の画面操作に自信がなく、NISAを始めるのをためらっている場合も、NISA口座は銀行や証券会社の窓口で作れます。三菱UFJ銀行では、店頭で申し込めば原則としてその日のうちにNISA口座が開設されます(2018年以降に同行やほかの金融機関でNISA口座を申し込んだことがある場合は、税務署の審査を待つため、通常2〜3週間ほどかかります)。
口座を作った後の注文や商品選びも、担当者やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)に相談しながら進められます。操作への不安は、NISAそのものをやめる理由にはなりません。
こうして分けてみると、NISAを見送るべきかどうかを左右するのは、「使う時期」の不安だけです。では、自分のお金がNISAに回してよいお金かどうかは、何を見て決めればよいのでしょうか。
NISAを始めてよい人と見送ったほうがよい人
NISAを始めてよいのは、10年以上使わないお金があり、生活費の備えが別にある人です。数年以内に使うお金しかない人は、見送るほうが安心です。
手元のお金を使う時期ごとに分け、10年以上使わない分だけをNISAの候補にしましょう。
金融庁の調査によると、2025年12月末時点で60歳代のNISA口座は417万5,854口座あり、NISA口座全体の14.8%を占めます。一方で、2025年に1度も買付がなかった60歳代の口座は約150万口座あり、集計の対象になった60歳代の口座の約35%にあたります。60歳代の口座の3つに1つ以上で、1年間1度も買付がなかった計算です。NISAを始めるかどうかは、口座を作るより先に、NISAに入れるお金があるかどうかで決めましょう。
NISAを見送ったほうがよい人
次のどれかに当てはまる場合は、NISAを急いで始める必要はありません。先にすることを済ませてから、改めて考えましょう。
| 当てはまる状況 | 見送ったほうがよい理由 | 先にすること |
|---|---|---|
| 数年以内に使う予定のお金しかない | 値下がりした時期に売ることになりかねない | 使う時期と金額を書き出す |
| 生活費や急な出費に使う現金が足りない | 急な出費のたびに、投資した分を売ることになる | 生活費の不足分と医療・住まいの出費に備える現金を確保する |
| 住宅ローンなどの返済が残っている | 返済額が決まっているため、値下がりしても支払いは待ってくれない | 返済予定と手元の現金の関係を確かめる |
| 値下がりすると生活や気持ちが大きく揺らぐ | 値下がりした時点で売ってしまい、損失が確定してしまう | 減っても困らない金額を決める |
国民生活センターも、「『非課税投資枠を使い切らなければ損』という考えは捨てましょう」と呼びかけています。年間360万円の枠があっても、全部を使う必要はありません。
始めてよい人は「使わないお金」がある人
反対に、次の条件がそろっていれば、年齢にかかわらずNISAを始められます。
| 確かめること | 目安 |
|---|---|
| 使う時期 | 10年以上使う予定のないお金がある |
| 手元の現金 | 生活費の不足分と、医療・住まいなどの出費に備える現金が、投資とは別の口座にある |
| 値下がりへの備え | 投資した額が一時的に2〜3割減っても、売らずに暮らせる |
たとえば、退職金と預金を合わせて3,500万円あり、年金で足りない生活費と今後10年の大きな出費を差し引いても1,500万円ほど残るとします。NISAに回すかどうかを考えるのは、この1,500万円です。3,500万円全部を投資するかどうかで悩む必要はありません。
NISAを始めてよいかを診断で確かめる
自分のお金がどちらに当てはまるか迷うときは、次の診断で目安を確かめましょう。質問にタップで答えると、「始める」「金額を絞って始める」「今は見送る」のどれが合うかと、次にやることがわかります。
NISAを始めてよいか診断
NISAに回そうと考えているお金について、質問にタップで答えてください。「始める」「金額を絞って始める」「今は見送る」のどれが合うかの目安と、次にやることがわかります。
NISAを始めてよいタイプ
10年以上使わないお金があり、生活費の備えも別にあります。値下がりしても売らずに待てるなら、年齢にかかわらずNISAを始められます。
次にやること
- 10年以上使わないお金の金額を決め、その範囲でNISAに回す額を決めます。
- まとめて買うか、何年かに分けて買うかを決めます。NISAで買えるのは1年に360万円までです。
- 口座を作る金融機関と、買う投資信託を決めます。
金額を絞って始めたいタイプ
NISAを始めることはできますが、5〜10年のうちに使うかもしれないお金や、減ったときに不安で売ってしまいそうな金額まで入れると、値下がりした時期に売ることになってしまいます。10年以上使わないお金のうち、2〜3割減っても落ち着いていられる金額まで絞って始めましょう。
次にやること
- 手元のお金を、数年以内に使うお金、5〜10年のうちに使うかもしれないお金、10年以上使わないお金に分けます。
- 10年以上使わないお金のうち、減っても暮らしを変えずに済む金額を決めます。
- その金額を、何年かに分けて買う計画にします。
今は見送って現金を先に確保したいタイプ
数年以内に使う予定があるか、生活費や急な出費に使う現金が投資とは別にない状態です。このままNISAで投資すると、値下がりした時期に売って、損失が確定してしまいます。年齢ではなく、お金の予定が理由で見送る判断です。
次にやること
- 使う予定のお金と、生活費や急な出費に備える現金を、先に預金で確保します。
- 住まいの修繕が終わったら、退職金の使い道が決まったら、など改めて考える時期を決めておきます。
まずお金の予定を整理したいタイプ
使う時期や手元の現金、値下がりしたときの動き方に「わからない」がある状態です。この3つが決まらないままでは、NISAに回してよい金額も決められません。年金・預金・退職金・保有中の商品を合わせて見ないと答えが出ないため、1人で計算するより、専門家に一緒に見てもらうほうが早く決まります。
次にやること
- 年金の受取見込み額と毎月の生活費、今後10年の大きな出費を、わかる範囲で書き出します。
- 書き出したメモを持って、IFAに相談し、NISAに回してよい金額を一緒に決めます。
働き方についてのメモ
会社員や公務員として厚生年金に入って働いている間は、iDeCoにも加入できます。ただし、現在の制度では、60歳を過ぎて初めて加入すると、受け取れるのは加入から5年たってからです。途中で使うかもしれないお金はNISAにしましょう。
働き方についてのメモ
国民年金に任意加入していればiDeCoに加入できます。2026年12月からは、条件を満たせば70歳になるまで加入できるようになります。ただし、所得税や住民税を払っていなければ、掛金の所得控除で税金は減りません。
働き方についてのメモ
老齢基礎年金を受け取っている人は、iDeCoに加入できません。運用するならNISAを中心に考えましょう。
NISAに回す金額は、年金・預金・退職金・保有中の商品を合わせて見て初めて決まります。IFA(特定の銀行や証券会社に属さず、独立した立場で資産運用の相談に乗るアドバイザー)なら、始めるか見送るかも含めて、あなたの数字で一緒に決められます。
\ NISAに回す金額をIFAに無料で相談 /
この診断は、ご回答をもとにした目安を示すものです。特定の商品の購入を勧めるものではありません。制度の内容は2026年9月時点のものです。
見送ると決めた場合に考えておきたいこと
見送ると決めたら、そのお金は預金のままでも構いません。ただし、物価が上がると、預金のままでは同じ金額で買える物が少なくなってしまいます。そこで、「いつ、何がそろったら改めて考えるか」を決めておきましょう。住まいの修繕が終わったら、退職金の使い道が決まったら、といった形です。
なお、NISA口座を作っても、買わなければ投資したことにはなりません。口座だけ作っておき、使わないお金が見えた時点で始める方法もあります。
始めてよい条件がそろっていても、NISAの仕組みを知らずに始めると、後で「やめておけばよかった」と感じる場面が出てきます。どんなときに損をしてしまうのでしょうか。
始めた後に後悔しないためのNISAの仕組み
NISAで税金がかからないのは、利益が出たときだけです。損失が出たときは、特定口座などの課税口座より不利な扱いになってしまいます。
元本が保証される制度でもありません。始める前に、損をしたときとお金を使うときに何が起きるかを確かめておきましょう。
つみたて投資枠と成長投資枠は併用できる
2024年からのNISAには、つみたて投資枠と成長投資枠の2つの枠があります。
| 項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 年間に投資できる額 | 120万円 | 240万円 |
| 非課税で持てる上限 | 2つの枠の合計で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) | 2つの枠の合計で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) |
| 非課税で持てる期間 | 期限なし | 期限なし |
| 買える商品 | 長期・積立・分散投資に向く一定の投資信託 | 上場株式・投資信託など(毎月分配型の投資信託などは対象外) |
| 買い方 | 積立のみ | 一度にまとめて買うこともできる |
| 向いている使い方 | 毎月決まった額を少しずつ投資したい | 退職金などまとまったお金を投資したい。個別の株式を持ちたい |
退職金などまとまったお金をNISAに回す場合、つみたて投資枠だけでは年間120万円までしか投資できません。2つの枠を併用すれば、年間360万円まで投資できます。
ただし、毎月分配型の投資信託はNISAでは買えません。分配金を毎月受け取って年金の足しにしたい場合は、NISAで持つ投資信託を定期的に売って受け取るか、毎月分配型を特定口座で持つかを選ぶことになります。
NISAの損失はほかの口座の利益と相殺できない
特定口座や一般口座で出た損失は、同じ年のほかの利益と相殺でき(損益通算)、残った損失は翌年以後3年間繰り越せます。ところが、NISA口座で出た損失は、損益通算も繰越控除もできません。
たとえば、NISA口座の投資信託を売って50万円の損失が出て、同じ年に特定口座の株式で50万円の利益が出たとします。両方が特定口座なら損益は0円になり、税金はかかりません。しかし、NISA口座の損失は相殺できないため、特定口座の50万円の利益に約10万円(20.315%)の税金がかかってしまいます。
このように、値下がりした時点で売ると、NISAでは税金の面でも取り戻す手段がありません。NISAに回すのは、値下がりしても売らずに待てるお金にしましょう。
関連記事:60代の投資信託・株の売り時は?利益確定・損切りと保有継続の判断
売って空いた枠は翌年に戻る
NISAで商品を売ると、その商品を買ったときの金額(簿価)の分だけ、非課税で持てる枠が戻ります。ただし、枠が戻るのは売った年の翌年です。
そのため、「使う時期が来たら売って、余った分はすぐ買い直せばよい」とはいきません。同じ年のうちに買い直すと、その年の年間投資枠を新たに使うことになります。年間に使える枠は360万円までなので、大きな金額を売った場合は、すぐには元の金額まで買い直せません。
ここまでの仕組みはNISAだけの話です。再雇用で働いているなら、iDeCoも使ったほうがよいのでしょうか。
再雇用中ならNISAとiDeCoのどちらを使う?
会社員として働いていて年金をまだ受け取っていないなら、iDeCoも使えます。老齢基礎年金を受け取り始めた後はiDeCoに加入できないため、NISAが中心になります。
iDeCoは掛金の全額が所得から差し引かれ(所得控除)、所得税や住民税が安くなるため、税金の面で有利な制度としてよく紹介されます。ところが、60歳以降は加入できる人が限られます。
60歳以降もiDeCoに加入できる人
現在の制度で60歳以上65歳未満の人がiDeCoに加入できるのは、国民年金の被保険者である場合です。具体的には、厚生年金に入って働く会社員や公務員(国民年金第2号被保険者)と、国民年金に任意加入している人です。
ただし、次の人は加入できません。
| 加入できない人 | 当てはまる例 |
|---|---|
| 老齢基礎年金や特別支給の老齢厚生年金を繰り上げて受け取っている人 | 60歳から老齢基礎年金を繰り上げて受け取り始めた |
| iDeCoの老齢給付金を受け取っている人、受け取ったことがある人(一括での受け取りを含む) | 60歳でiDeCoを一時金で受け取った |
加入できる場合も、受け取れる時期に注意が必要です。現在の制度では、60歳を過ぎて初めてiDeCoに加入した人は、加入から5年たつまで受け取れません。62歳で加入すれば、受け取れるのは67歳からです。数年以内に使うお金は、iDeCoにも回さないようにしましょう。
2026年12月から70歳まで加入できる人が広がる
2026年12月1日から、iDeCoに加入できる年齢が引き上げられます。国民年金の被保険者でなくても、60歳以上70歳未満で、iDeCoの加入者や運用指図者、企業年金からiDeCoに資産を移す人などは加入できるようになります。施行から3年間は、これらに当てはまらない60歳以上70歳未満の人も加入できる経過措置があります。
ただし、どの場合も、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っていないことなどが条件です。あわせて掛金の上限も2026年12月分(2027年1月の引き落とし分)から引き上げられ、企業年金のない会社員は月2.3万円から月6.2万円に、自営業などの人は国民年金基金と合わせて月6.8万円から月7.5万円になります。
年金を受け取り始めたらiDeCoには加入できない
加入できる年齢が70歳まで広がると聞くと、年金生活に入ってからでもiDeCoを始められそうに思えます。ところが、改正後も老齢基礎年金を受け取っている人は加入できません。65歳から年金を受け取り始めた人は、70歳未満でも対象外です。
さらに、加入できたとしても、税金が減るとは限りません。iDeCoの掛金は所得控除になりますが、所得税や住民税を払っていなければ、控除しても税金は減らないからです。年金収入だけで暮らしていて税金がほとんどかからない場合、iDeCoを使う理由は小さくなってしまいます。
働き方ごとに見ると、NISAとiDeCoの使い分けは次のようになります。
| 働き方 | iDeCoに加入できるか | 掛金の所得控除で税金が減るか | 使い分けの目安 |
|---|---|---|---|
| 再雇用などで会社員として働き、年金はまだ受け取っていない(65歳未満) | できる | 給与から所得税・住民税を払っていれば減る | 使う時期がずっと先のお金はiDeCo、途中で使うかもしれないお金はNISA |
| 自営業・国民年金に任意加入している | 任意加入していればできる | 所得税・住民税を払っていれば減る | 同上 |
| 仕事を辞め、年金はまだ受け取っていない | 2026年12月以降、経過措置の期間中などは70歳未満ならできる | ほかに所得がなければ、ほとんど減らない | NISAが中心。iDeCoは税金が減るかを確かめてから |
| 老齢基礎年金を受け取っている(繰り上げを含む) | できない | ― | NISA |
年金生活に入っている人や、税金がほとんどかからない人は、NISAを中心に考えましょう。では、NISA口座はどこで作ればよいのでしょうか。
NISA口座は銀行と証券会社のどちらで作る?
自分で商品を選んで注文できるならネット証券、金額や商品を相談しながら決めたいならIFAを通して証券会社の口座を作るのがおすすめです。
銀行はNISAで投資信託しか買えないため、個別の株式も持ちたい人には向きません。なお、NISA口座は1人1口座しか作れません。金融機関を変えることはできますが、年単位の手続きになります。
銀行では株式やETFを買えない
NISAでは、口座を作った金融機関が扱う商品しか買えません。そして銀行では、上場株式や上場投資信託(ETF)は買えず、投資信託に限られます。三菱UFJ銀行もゆうちょ銀行も、NISAで買えるのは投資信託です。
普段使っている銀行で口座を作れば、入出金の手間はかかりません。ただ、個別の株式を持ちたい場合や、多くの投資信託から選びたい場合は、証券会社で口座を作りましょう。
対面とネットでは手数料と相談できる相手が違う
次に考えたいのが、対面の窓口かネットかです。金融庁が2026年7月に公表したデータでは、投資信託の平均販売手数料率は、大手証券で2.0%、ネット系証券で0.05%でした。主要行等は0.9%、地域銀行は1.5%です(2025年度上期の業態ごとの平均)。
1,000万円分の投資信託を買う場合で単純計算すると、2.0%なら販売手数料は20万円、0.05%なら5,000円です。実際の手数料は商品ごとに異なりますが、同じ金額を投資しても、対面の窓口では手数料の分だけ手元に残るお金が減ってしまいます。
その一方で、ネット証券では、商品選びも注文も自分で行うのが基本です。値下がりしたときに相談できる担当者はいません。手数料だけで選ぶと、「操作は覚えたが、この商品のままでよいのか誰にも聞けない」という状態になってしまいます。
| 口座を作る先 | NISAで買える商品 | 手数料の傾向 | 相談できる相手 |
|---|---|---|---|
| 銀行(対面) | 投資信託のみ | 平均販売手数料率は主要行等0.9%・地域銀行1.5% | 窓口の担当者。提案はその銀行の商品から |
| 証券会社(対面) | 上場株式・ETF・投資信託 | 平均販売手数料率は大手証券2.0% | 担当者。提案はその証券会社の商品から |
| ネット証券 | 上場株式・ETF・投資信託 | 平均販売手数料率はネット系証券0.05% | 基本は自分で判断する |
| IFAを通して作る証券口座 | 提携する証券会社の商品 | IFAを通した取引には所定の手数料がかかる(手数料の体系は業者ごとに異なる) | IFA |
操作や判断が不安ならIFAに相談しながら運用する
手数料を抑えたいけれど、1人で判断するのは不安。そんな場合は、IFAを通して証券会社の口座を作る方法があります。IFAは、証券会社などから委託を受けて、株式や投資信託の取引を仲介する登録業者です。証券会社によっては、IFAを通して作った口座でも、自分でネットから取引できます。マネックス証券では、IFAを通した取引にはIFAの手数料が、自分でネットから取引した分にはネットの手数料がかかります。
一方、銀行や証券会社の対面の窓口を選ぶ場合は、年齢が上がると手続きが増えることも知っておきましょう。日本証券業協会は、高齢の顧客への勧誘について、管理職による事前承認や、勧誘した日の翌日以降に注文を受ける手順などを定めたガイドラインを設けています(75歳以上・80歳以上が目安)。家族が同席して買付に同意すれば、その日のうちに注文を受けられる場合もあるため、窓口で始めるなら家族と一緒に行きましょう。
関連記事:60代の資産運用はどこに相談する?IFAがおすすめな理由と選び方
口座を作る先が決まっても、自分の資産や家計で本当に始めてよいのかは、まだ気になるところです。年齢や資産の状況が違う人のケースで見てみましょう。
資産と使う予定で変わるNISAの始め方
年齢が近くても、使う予定と働き方によって、「始める」「金額を絞って始める」「見送る」の答えが変わります。
次のケースは、編集部が作成した仮の例です。
| ケース | 状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|---|
| ① | 61歳・再雇用中。退職金2,000万円と預金1,500万円 | 始める | 10年以上使わないお金があり、給与収入もある |
| ② | 66歳・年金生活。預金3,500万円 | 金額を絞って始める | 毎月の不足分を差し引いても使わないお金がある。iDeCoは使えない |
| ③ | 68歳・3年後に自宅の修繕。預金1,200万円 | 今は見送る | 修繕費と生活費の備えを除くと、10年以上使わないお金がほとんど残らない |
| ④ | 63歳・特定口座で投資信託1,000万円を保有 | 新しいお金から始める | 保有中の商品の扱いは、売却時の税金と費用を見て別に決める |
ケース①61歳で再雇用されて退職金を受け取った
60歳で定年を迎え、同じ会社で再雇用されているAさん。退職金2,000万円と預金1,500万円があり、給与と合わせて生活費は足りています。
当面の生活費は給与でまかなえます。そこで、今後10年の大きな出費(800万円)と急な出費への備えを合わせた2,000万円を、普通預金や定期預金に残すことにしました。残る1,500万円が、10年以上使わないお金としてNISAの候補になります。年間360万円の枠を使えば、5年ほどで1,500万円を投資できる計算です。
さらに、Aさんは厚生年金に加入して働いているため、iDeCoにも加入できます。ただし、62歳で加入すれば受け取れるのは67歳からです。67歳まで使わないお金に限ってiDeCoを使い、それ以外はNISAにする形が考えられます。
残るのは、退職金をまとめて投資するか、何年かに分けて投資するかです。
関連記事:退職金は一括投資と積立のどっちがいい?分けて買う期間と始める時期の決め方
ケース②66歳で年金生活に入り預金が中心
65歳で仕事を辞め、年金生活に入ったBさん。預金が3,500万円あり、毎月の生活費は年金だけでは5万円ほど足りません。
まず、Bさんは老齢基礎年金を受け取っているため、iDeCoには加入できません。使えるのはNISAです。生活費の不足分は、20年分で1,200万円になります。さらに、医療や住まいの出費に備えて800万円を手元に残すと、使わないお金は1,500万円です。
ただ、Bさんは1,500万円全部ではなく、1,000万円をNISAに回すことにしました。年金生活の中で、投資したお金が2〜3割減った状態を見続けるのは気持ちの負担が大きいと考えたからです。使わないお金の全部を投資しなくても構いません。値下がりしても落ち着いていられる金額まで絞って始めましょう。
ケース③68歳で3年後に自宅の修繕を控えている
Cさんは預金が1,200万円あり、3年後に自宅の修繕で800万円ほどかかる見込みです。
修繕費の800万円は、3年後に必ず使うお金です。NISAで投資して3年後に値下がりしていれば、下がった価格で売るか、修繕を先に延ばすかを選ぶことになってしまいます。残りの400万円も、生活費の不足や医療の出費に備える現金として手元に置いておきたい金額です。
つまり、Cさんの場合は今はNISAを見送るのが合理的です。修繕が終わり、手元の現金の見通しが立った時点で改めて考えれば十分です。年齢が理由で見送るのではなく、お金の予定が理由で見送る判断です。
ケース④63歳で特定口座の投資信託を持っている
Dさんは、特定口座で投資信託を1,000万円分持っています。NISAを始めるなら、今の投資信託をNISAで買い直したほうがよいかも気になります。
ところが、利益が出ている投資信託を特定口座で売ってNISAで買い直すと、売った時点でその利益に20.315%の税金がかかってしまいます。購入時手数料がかかる商品もあります。NISAは、まず預金など新しいお金から始めましょう。今の投資信託を買い直すかどうかは、含み損益と費用を計算してから別に決めれば間に合います。
関連記事:特定口座の投資信託はNISAで買い直すべき?税金と手取りで比べる判断のしかた
口座開設から最初の買付までの手順
始めると決めたら、次の順番で進めます。
| 順番 | すること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 手元のお金を使う時期ごとに分ける | 10年以上使わないお金の額を決める |
| 2 | 口座を作る金融機関を決める | 買いたい商品と、相談できる相手で選ぶ |
| 3 | NISA口座の開設を申し込む | 本人確認書類とマイナンバーがわかる書類が必要。税務署の確認を経て開設される |
| 4 | 使う枠と投資額を決める | つみたて投資枠で積み立てるか、成長投資枠でまとめて買うか |
| 5 | 商品を選んで買う | 費用・投資先・値動きの大きさを確かめる |
| 6 | 見直す時期を決める | 年1回など、確認する時期を先に決めておく |
口座の開設は、書類をそろえれば手続きだけで終わります。手が止まるのは、どのお金を回すか(1)、いくら投資するか(4)、何を買うか(5)です。この3つは、預金や退職金、保有中の商品と合わせて見ないと決められません。
\ 始めるか見送るかをプロと確認 /
NISAに回す金額と商品は資産全体で決める
NISAに回す金額と買う商品は、NISAの中だけで考えず、預金・退職金・保有中の投資信託を含めた資産全体で決めましょう。
年間360万円の枠から逆算して金額を決めると、手元の現金が足りなくなったり、保有中の商品と同じような商品を買い足したりしてしまいます。
手元に残す現金と運用に回す金額
NISAに回す金額は、手元に残す現金を先に決めてから、その残りで考えます。年金で足りない生活費、医療や介護、住まいの修繕、子や孫への援助など、今後の出費を見込んだうえで残す額を決めましょう。
関連記事:60代の資産運用ポートフォリオはどう決める?残す現金と運用に回す額の決め方
毎月の積立額や、将来どう取り崩すかは、次の記事で紹介しています。
関連記事:新NISAは60代からでも遅くない?60歳からの金額・商品・取り崩し方
NISAで買う投資信託の選び方
NISAで買える投資信託は数多くあります。人気の順位だけで選ぶと、自分の使う時期や、すでに持っている商品との組み合わせに合わないことがあります。費用、投資先、値動きの大きさを確かめて、自分で説明できる商品を選びましょう。
関連記事:60代の投資信託の選び方は?オルカンとS&P500の違いと候補の絞り方
迷ったらIFAに相談して決める
使う時期、手元の現金、年金、退職金、保有中の商品。NISAに回してよい金額は、これらを合わせて見て初めて決まります。1人で計算して決めきれないときは、相談しながら決めましょう。
銀行や証券会社の窓口では、その金融機関で扱う商品から提案を受けることになります。一方、IFAなら、提携する証券会社の商品から比べながら、資産全体の配分や始める時期を一緒に考えられます。購入後も、値下がりしたときや取り崩しを始めるときに、同じ相手に相談を続けられます。
IFAへの相談では、NISAを始めるかどうかから話せます。見送るという答えになった場合も、そのお金をどこに置いておくか、いつ改めて考えるかまで決めておけます。
\ NISAに回す金額をプロと決める /
60代のNISAに関するよくある質問
70歳を過ぎてもNISA口座は作れますか?
作れます。NISA口座を作れるのは日本に住む18歳以上の人で、年齢の上限はありません。非課税で持てる期間にも期限がないため、何歳で始めても非課税のまま持ち続けられます。
NISA口座を作ったら必ず投資しなければいけませんか?
投資しなくても問題ありません。2025年には、60歳代のNISA口座の約35%で1度も買付がありませんでした。使わないお金の額が決まってから始めれば十分です。
毎月分配型の投資信託はNISAで買えますか?
買えません。毎月分配型の投資信託は、つみたて投資枠・成長投資枠のどちらでも対象外です。分配金を年金の足しにしたい場合は、特定口座で持つか、NISAで持った投資信託を定期的に売って受け取るかを選びます。
夫婦それぞれでNISA口座を作ったほうがよいですか?
NISA口座は1人1口座で、枠も1人ずつ決まっています。夫婦それぞれが口座を作れば、2人分の枠を使えます。夫婦のどちらのお金を、いつ使う予定なのかを分けたうえで、それぞれの口座で投資する金額を決めましょう。
本記事の制度・数値は2026年9月時点の情報です。
出典
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト NISAを知る」
- 金融庁「NISAに関するよくある質問」
- 金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果」(公表日:2026-07-03)
- 日本証券業協会「NISAのよくある質問」
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト 2023年までのNISA」
- 金融庁「NISAを利用する皆さまへ」
- 国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
- 国税庁「No.1535 NISA制度」
- 国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
- 国民生活センター「老後の資金に備える」(『国民生活』)(公表日:2023-11)
- 厚生労働省「2025年の制度改正」(確定拠出年金)
- 厚生労働省「iDeCoの加入可能年齢の引き上げ」
- 厚生労働省「iDeCoがパワーアップします!」
- iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」
- iDeCo公式サイト「iDeCoの拠出限度額の見直しに伴うiDeCo掛金額変更について」(公表日:2026-08-17)
- 三菱UFJ銀行「iDeCoの加入資格と拠出限度額」
- 三菱UFJ銀行「NISAの始め方は?金融機関の選び方や注意点」
- ゆうちょ銀行「銀行と証券会社で、購入できる商品に違いはありますか」
- 金融庁「顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果(2025事務年度)定量データ集」(公表日:2026-07-29)
- e-Gov法令検索「金融商品取引法」
- マネックス証券「IFAサービス よくあるご質問」
- 日本証券業協会「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」
