- 法人カードの特徴や導入するべき理由が知りたい
- 法人カードの審査に通過するためのポイントが知りたい
- 法人カードを作成するにあたって法人口座の作成が必須なのか知りたい
法人カードは、経費や法人税の支払いなどに利用可能な法人向けのクレジットカードだ。
しかし「法人カードを導入するべき理由がわからない」「従業員に渡して不要な支出が増えたら嫌だ」など、なかなか法人カードの導入に踏み切れない法人の代表者もいるのではないだろうか。
そこで本記事では、法人カードの特徴から導入するべき理由、法人カードの審査に通過するためのポイントまで解説していく。
法人カードに関するよくある質問についても言及しているため、ぜひ最後まで読んで法人カードを導入するきっかけとしてほしい。
本当に必要か?法人カードの基本的な機能と運用
ここでは、法人カードの基本を把握するために、以下2点について解説していく。
- 法人カードの特徴
- 法人カードを導入すべき理由
それぞれ見ていこう。
法人カードの特徴
法人カードの特徴としては、主に以下の4つが挙げられる。
- 法人や個人事業主に対して発行される
- カード名義は個人
- 追加カードの発行も可能
- 原則法人名義の口座を引落口座に設定する
「法人カード」という名前のとおり、申し込みの対象は主に法人だ。
種類によっては、個人事業主も申し込み可能である。クレジットカードとしての機能は、個人用のクレジットカードと大きく変わらない。
また、カード名義は法人ではなく個人名義となる。
そのため、カード名義人以外は利用できない点には注意してほしい。
ただ、法人カードは追加カードの発行が可能だ。追加カードでの利用分は、本カードの利用分とあわせて設定した口座から引き落とされる。
複数の従業員などにも法人カードの利用を求めるのであれば、従業員名義の追加カードを発行しよう。
加えて、引落口座は原則法人名義の口座となる。
個人事業主が法人カードに申し込む場合は、個人口座の設定が可能なケースが多いため、事前にホームページ等で設定できる口座の種類についてチェックしておくことがおすすめだ。
法人カードを導入すべき理由
法人カードを導入すべき理由は、以下の4点だ。
- 経費精算業務の効率が上がる
- 経費削減につながる
- キャッシュフローに余裕が出る
- 福利厚生が充実する
法人カードを導入していない場合、経費支出に対して従業員が立替払いを行うケースも少なくない。
そうなると、従業員から領収書といった証憑書類の提出に加えて、従業員の口座への振り込みなどといった業務が発生する。
ただ、法人カードを利用すれば、証憑書類等の提出は求めるとしても、従業員の口座への振り込みといった業務を削減できる。
従業員数が多く、立替払いが多く発生する企業であれば、会計担当者にとってかなりの業務削減・効率化となるはずだ。
また、法人カードは弥生やfreeeといった外部の会計ソフトと連携できる。
カードの利用明細などをオンライン上で一括管理することが可能となるため、ペーパーレス化にも寄与することだろう。
加えて、法人カードを利用することは経費削減にもつながる。
例えば、毎月複数の取引先から仕入れを行っている場合、それぞれの取引先に対して料金を振り込む必要がある。
その際には、振込手数料の負担も必要となるはずだ。
しかし、全ての取引先に対して法人カードで料金を支払えるのであれば、振込手数料という経費を削減できるのである。
それだけでなく、法人カードで支払うと引落日までに長くて数十日の猶予がある。
仕入れを行ったと同時に現金を手放すことがなくなるため、キャッシュフローに余裕が出るという点も導入すべき理由の一つとして挙げられる。
さらに、法人カードには、そのカードが提携するスポーツジムや宿泊施設を優待価格で利用できるサービスが付帯されていることも多い。
これらのサービスを福利厚生として利用できるのも、法人カード導入に向けたきっかけとなるはずだ。
法人カードを導入すれば、上記のようなメリットを享受することが可能となる。
経費精算業務を効率化したい、経費削減を行いたい、と考えている企業にとっては、法人カードを導入しない手はないだろう。
法人カードの管理と規制
法人カードを導入することによるメリットは大きいが、適切に管理しなければ今後の事業において悪影響を与える可能性もある。
ここでは、以下3点について見ていきたい。
- 法人カードを私的利用した場合の処理
- たまったポイントは個人では使えない
- 法人カードの審査に通過するためのポイント
それぞれ解説していく。
法人カードを私的利用した場合の処理
法人カードを私的利用してしまった場合は「役員貸付金」などとして会計処理をする必要がある。
法人カードを私的利用してしまうと、以下のようなデメリットが発生する点には注意しなければならない。
- 複雑な会計処理が必要
- 脱税を疑われる可能性がある
- 銀行から融資を受ける際に影響が出る
先述したとおり、法人カードを導入すると「経費精算業務の効率化」というメリットがあるが、私的利用することによって本来不要であった複雑な会計処理が必要になる。これは、最大のデメリットだ。
また、私的利用した支出に対して、経費なのかどうか判断できないケースもあるだろう。
実際は経費ではないにもかかわらず、経費として処理してしまうと脱税の疑いがかけられてしまうことも考えられる。
さらに、役員貸付金の有無は決算書に記載しなければならない。
決算書は銀行などから融資を受ける際に提出が求められる重要な書類である。
その決算書に多額の役員貸付金の記載があると、経営状態が悪かったり、管理が行き届いていなかったりといった疑惑を持たれ、融資が通らない可能性もあるのだ。
このように、法人カードを私的利用することによるデメリットは大きい。
私的利用を防ぐためにも、法人カードの利用に関する社内ルールを明確に定めておくことをおすすめする。
たまったポイントは個人では使えない
法人カードで決済することによって、法人カードの種類に応じたポイントがためられる。
ただ、たまったポイントは「法人の資産」としてみなされるため、個人での利用は厳禁だ。
万が一個人でポイントを利用してしまった場合は、業務上横領の罪に問われてしまう可能性も考えられるため、注意しなければならない。
法人カードの審査に通過するためのポイント
個人用のクレジットカードと同様に、法人カードにおいても「この項目をクリアしていれば絶対に審査に通過できる」といったものはない。
ただ、審査に通過するために意識しておくべきポイントは主に3つある。
- 法人代表者個人の信用情報にキズがないか確認する
- 一度に何枚もの法人カードに申し込まない
- 申し込み対象に当てはまっているか確認する
法人カードの審査の際には、法人の代表者個人の信用情報も重視されることが多い。
信用情報とは、自動車ローンやカードローンなどの各種ローンの契約内容やクレジットカードにおけるキャッシングの利用状況、そしてそれぞれに対する毎月の返済状況といった個人の取引情報が細かく記録されたものをいう。
信用情報は、信用情報機関によって管理されており、随時更新される仕組みだ。
例えば、カード利用額の支払い遅延を繰り返していたとしよう。
その場合、事故情報として記録され、信用情報にキズがつくこととなる。
これは個人用のクレジットカードの審査においても同様だが、信用情報にキズがあると、返済能力がないと判断され、審査に通過できないケースもあるのだ。
信用情報は、信用情報機関に問い合わせることで確認できるため、不安な方はあらかじめ確認しておくことをおすすめする。
また、一度に何枚もの法人カードに申し込まないようにするのも一つのポイントだ。
先述した信用情報には、クレジットカードの申込状況に関する情報も記録されることとなる。
審査に通過できるか不安で複数枚の法人カードに申し込んでしまうと、かえって審査に不利に働くこともある点は覚えておいてほしい。
加えて、申し込みを検討している法人カードの申し込み対象に自社が当てはまっているかもあらかじめチェックしておこう。
例えば、赤字決算の企業が、黒字決算であることを申し込み要件としている法人カードに申し込んでしまえば、審査に落ちてしまう。
申し込み対象に関しては、各クレジットカード会社ともにホームページ等に記載しているため、事前にチェックすることが大切だ。
法人口座と法人カードの関連性
法人カードを作成するにあたり、法人口座がなくても問題ないのか気になっている方も多いのではないだろうか。
ここでは、法人口座と法人カードの関連性として、以下3点について解説していく。
- 法人口座がないと法人カードは作れないのか
- 法人口座と個人口座の違い
- 法人口座を作成するメリット
法人口座がないと法人カードは作れないのか
先述したとおり、個人事業主が法人カードを作成する場合は、個人口座であっても問題ないケースが多い。
もちろん、個人事業主であっても屋号+個人名の事業用口座が開設できていればベストだ。
ただ、法人として申し込む場合は、原則として法人名義の口座を設定する必要がある。
そのため、個人事業主を除く法人の代表者が法人カードを作成する際には、申し込み前に法人口座を作成しなければならないのだ。
法人口座と個人口座の違い
法人口座と個人口座における大きな違いは以下の2つだ。
- 口座名義
- 開設にあたって必要となる書類
個人口座は個人名義となるが、法人口座は法人名義となる。
また、法人口座の開設にあたっては、口座開設の手続き者の本人確認書類のみならず、履歴事項全部証明書や印鑑証明書の提出が必須だ。
場合によっては、事業内容の説明や有価証券報告書などの提出が求められるケースもある。
一方で、個人口座の開設手続きは、必要事項の入力と本人確認書類等のアップロードのみで完了する。
オンラインで申し込んだ場合は、最短即日での口座開設が可能だ。
法人口座の開設は個人口座の開設と比較して審査も厳格なものとなるため、時間がかかる点は覚えておこう。
法人口座を作成するメリット
法人口座を作成する最大のメリットとしては、社会的信用が得られることが挙げられる。
先述したとおり、法人口座の開設にあたっては必要となる書類も多く、審査も時間をかけて行われる。
そのため、審査を通過し法人口座を作成できた時点で、社会的な信用度が上がるのだ。
また、社会的信用度が高いと法人カードの作成にあたっても有利に働くことが考えられる。
法人口座を作成してから法人カードに申し込むことがおすすめだ。
法人カードに関するよくある質問
ここでは、法人カードに関するよくある質問をまとめた。法人カードの作成を検討する際の参考にしてほしい。
法人カードはいつから作成可能なのか
法人カードは、法人の創業直後であっても作成可能だ。
ただ、法人カードによっては創業から数年経過していることを要件としているものもある。
そのため、あらかじめ申し込み要件を確認しておくことが重要である。
法人カードは従業員でも利用できるのか
法人カードは、従業員でも利用可能だ。
ただ、法人カードの名義は個人名義となっている。
法人代表者名義の法人カードしか発行していない場合は、従業員は利用できない点には注意しなければならない。
従業員が法人カードを利用するためには、その従業員名義の追加カードを発行しよう。
法人税は法人カードで支払えるのか
法人税は法人カードでの支払いも可能だ。ただ、法人カードで支払う場合は納付税額に応じて決済手数料の負担が必要となる。具体的な決済手数料は以下のとおりだ。
納付税額 | 決済手数料(税込) |
---|---|
1〜10,000円 | 83円 |
10,001円〜20,000円 | 167円 |
20,001円〜30,000円 | 250円 |
30,001円〜40,000円 | 334円 |
40,001円〜50,000円 | 418円 |
以降も同様に10,000円を超えるごとに手数料が加算 |
法人税を金融機関などの窓口にて現金で納付する場合は、手数料は必要ない。
一方で、クレジットカード支払いには、オンライン上でいつでも納付でき、窓口に赴く必要もないという利便性がある。
メリット・デメリットを踏まえた上で、法人税の納付方法を選択しよう。
法人カードは必要かどうかを理解して上手に活用しよう!
本記事では、法人カードの特徴から導入するべき理由、法人カードの審査に通過するためのポイントまで解説した。
法人カードは法人や個人事業主に向けて発行されるクレジットカードであり、追加カードを発行することで従業員なども利用可能となる。
また、法人カードを導入することで、経費精算業務の効率化や経費削減、キャッシュフローに余裕が出るといったメリットもある。
しかし、法人カードを私的利用してしまったり、カード利用によってたまったポイントを勝手に利用したりすることは、税務上の問題が発生するだけでなく、銀行からの融資が受けられなくなる可能性も考えられる。
そのため、法人カードの導入にあたっては、明確な社内ルールの制定が必要となるだろう。
加えて、法人カードの審査では、法人の経営状況のみならず、法人の代表者の信用情報に関しても重視される。
信用情報にキズがある、同時期に何枚もの法人カードに申し込んでいるなどの場合は、審査に通過できないことも考えられるため注意してほしい。
法人カードは、種類が多いだけでなくそれぞれ特徴に違いがある。
個人用のクレジットカードとは異なり、法人カードは複数枚発行するケースは少ない。作成にあたっては、複数の法人カードの特徴を比較しながら慎重に検討しよう。
そして、会社にとって最適な法人カードを見つけてほしい。
下記記事ではおすすめの法人カードについて紹介しているのでぜひ参考にしてほしい。