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株高に左右されない投資方法

日経平均がハブル経済崩壊後の高値を更新した。投資の神様とも呼ばれるウォーレン・バフェットが日本株への更なる投資を表明したこともあり、日本株に既に投資をしていた個人投資家にとっては日本の株式市場に強力な追い風が吹いているように感じているだろう。

一方で現在の株高に対して一抹の不安を抱えている個人投資家もいる。

今回は日本株が堅調な背景と投資家が抱える不安要素を明確にしながら、今後の投資戦略について書いていく。

目次

節目となる3万円を突破

日経平均が終値ベースで3万円の節目を突破し、バブル後の高値を更新した。前述のバフェットの話はあくまで追い風の1つの要素に過ぎず、より大きかったのは東京証券取引所とアクティビスト(モノ言う株主)の存在だ。

東京証券取引所は1月下旬に継続的にPBR(株価純資産倍率)が1倍を割っている企業に対して対応策を議論することを求め、3月末には企業価値向上に向けた計画を策定・開示し、年1回以上見直すことを要請した。

これを受けて、アクティビストも企業へのプレッシャーを強めた。一部の企業では既に東証からの要請と同様の株主提案をアクティビストから受けたり、純利益を全て配当に回すような要求も受けている。

既に自発的に自社株買いなどの株主還元の動きを見せている企業もあり、割安に放置されていた日本企業の株価修正に期待する外国人が多いのだろう。

また、不安材料とされていた日銀の金融政策の修正についても、しばらくは植田新総裁が黒田路線を踏襲するとの安心感の追い風になっていると考える。

米国における3つの不安

これだけ好材料が並んでいて、かつ節目の3万円を突破したにもかかわらず、一抹の不安を抱えている個人投資家がいるのは何故か。

それは米国における3つの不安があるからだろう。

1つ目は債務上限問題。筆者にとってこの問題は毎年の風物詩のように、一種のプロレスだと認識しているが、今回は本当に米国がデフォルトしてしまうと懸念している方が意外と多い。

2つ目は米国の金融政策の不透明感と相次ぐ銀行の破綻だ。FRBはインフレ抑制のためにこの1年間で5%近く金利を引き上げてきた。そのため、ピーク時に比べればインフレ率は鈍化傾向にあるが、それでも通常時よりは高い水準にある。

しかし、これ以上の利上げは実体経済を想像以上に減速させてしまうかもしれない。なによりも、3月にシリコンバレー銀行が破綻したことを代表するように、銀行の相次ぐ破綻という副作用ももたらした。

市場は既に年内の利上げはなくなったと織り込んでいるが、今後出てくるデータ次第ではまだ利上げの余地があるとFRBはタカ派の姿勢を崩してはいない。

3つ目はコロナ禍において生じた強制貯蓄が年末頃に尽きてしまい、インフレが家計に与えるダメージが増加するという懸念だ。

株価と実体経済の乖離

 また、株価がどれだけ上昇しても、自分が実感している経済環境はそれほどよくないため、株価が実体経済から乖離してバブル状態にあると感じるのも不安の原因として挙げられている。しかし、これは誤った認識であることはしっかりと指摘しておきたい。

 一般的に多くの日本人が「株価」という言葉を使うとき、無意識のうちに「日経平均」を指すことが多い。実際に報道番組で日本の株価動向として毎日報じられるのは日経平均だ。日経平均は3,900近くある上場企業のうち、上澄みの225社の株価から算出されている数字だ。

 一方で実体経済として見ているのは街中の人出や、近所の商店街の繁盛ぶりだろう。まさに身近な景況感を判断材料にしているのだ。それでは、上場企業の上澄みと街中の商店街を比較することは正しいだろうか。

 上澄みの225社は経営資金が足りなくなれば、株式市場を通じての資金調達もできるし、銀行からの融資や社債の発行など多くの手段を持っている。

それに対して、街中の八百屋さんや小料理屋さんはそのような手段はほとんどなく、一部の金融機関から融資を断られれば資金繰りに行き詰ってしまう。

このように状況が全く違う2つの事例を同様に比較して不安に思うことはおかしなことだと理解できるだろう。

やることは変わらない

 久しぶりの3万円突破に浮かれてしまったり、不安になってしまう心境は分かる。しかし、3万円突破は通過点でしかないかもしれないし、不安が現実のものになってしまい、株価はこのあと一転して下落してしまうかもしれない。

無責任なことを言うようだが、いつ株価がいくらになるかなど、誰にも予測などできない。そうであれば、感情を殺して機械的に淡々と「つみたて投資」を行うことが最適解なのではないだろうか。

 当然、個別銘柄に投資をしている方は今後のシナリオをいくつか準備して、それぞれのシナリオに応じて投資戦略を用意すべきだが、投資にそれほどリソースを割けないけれど、資産運用はしたいというライト層にとっては、やはり過度に先行きを気にするのではなく、淡々と積み立てればいいのだ。

執筆者

森永 康平のアバター 森永 康平 株式会社マネネCEO / 経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。2018年6月に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを設立。
現在は経済アナリストとして執筆や講演をしながら、国内外複数のベンチャー企業の経営にも参画。

著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など多数。

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