- ETFの運用を始めたい
- ETFの運用を成功させたい
- ETFの選び方が知りたい
ETFは低コストで手軽に始められる投資手段として、近年注目を集めている。
株式指標に連動するETFは、その透明性とアクセスの容易さから初心者でも扱いやすい投資商品と言える。
本記事では、ETF投資の初歩から選び方、成功のための戦略までをわかりやすく解説する。
適切なETFを選び、長期的な視点での運用を通じて、安定した資産形成を目指して欲しい。
資産運用を始める前にETFの基本を知ろう
まずは、ETFの基本項目について整理していこう。
ETFの仕組みや種類・投資信託との違い
ETF(Exchange Traded Fund、上場投資信託)は、株のように証券取引所で売買できる投資商品である。
ETFの仕組み
ETFは、投資信託の一種だが、一般の投資信託とは異なる方法で作られて取引される商品だ。
まず「管理会社」が、「ETFを作るので、買ってください!」と「募集」をかける。
この呼びかけに応える者(機関投資家や、指定参加者と呼ばれる大手証券会社)は株式等の現物や金銭を拠出して、その対価としてETFを受け取る。
指定参加者とは異なり、個人投資家などの一般の投資家は管理会社からの呼びかけに参加することはできない。
代わりに指定参加者等が売却したETF(取引所に上場される)を、取引所を通じて購入・売却する。
ETFの種類
ETFには、おもに以下のような切り口で分類できる
- 運用戦略(パッシブ、アクティブ、ブルベア、投資ファクター等)
- 投資対象(株、債券、商品、REIT等)
- 地理的分類(国内ETF、海外ETF等)
- 業種やテーマ(セクター、テーマ性、ESG等)
東証に上場しているETFのほとんどが「パッシブ型(いわゆる指数連動型)」だが、最近では、「アクティブ運用」によるETFも登場している。
2024年5月現在、東証ETF市場には、11銘柄のアクティブ型が上場している。
投資信託との違い
ETFと投資信託との最大の違いは、上場しているか否かという点にある。
ETFは株式に準ずる扱いのため、リアルタイムでその時点の価格での売買が可能だが、投資信託は基準価格での取引しかできない。
現物株式 | ETF | 一般の投資信託 | |
---|---|---|---|
上場 | 上場 | 上場 | 非上場 |
販売 | 証券会社 | 証券会社 | 販売会社(証券会社や銀行など) |
取引時間・価格 | 取引所の取引時間内なら、 リアルタイムで売買可能 | 取引所の取引時間内なら、 リアルタイムで売買可能 | 販売会社が定めた時間内に、 1日1回決められる基準価格で 執行される |
注文 | 成行・指値注文が可能 | 成行・指値注文が可能 | ブラインド方式 (基準価格がわからない段階で注文する) |
利益分配 | 配当金 | 分配金 | 分配金 |
信用取引 | できる | できる | できない |
手数料等 | 売買手数料 | 売買手数料・信託報酬など | 売買手数料・信託報酬、 信託財産留保額などさまざま |
ETF投資のメリット・デメリット
ETF投資には、さまざまなメリットもある一方、デメリットもある。
以下の整理表で確認して欲しい。
ETF投資のメリット | ETF投資のデメリット |
---|---|
小さな資本でも広範囲にわたる資産分散が可能 一般的に管理費用が低く設定されており、投資のコスト効率が高い 少額から投資を始められる 流動性が高く、資金化が容易投資対象が豊富で、自分の投資目的やスタイルに合ったETFを選べる ETFは保有銘柄や運用状況などの情報開示が徹底されており、透明性が高い | 市場リスク、為替リスク、流動性リスクに加え、管理会社が破綻のリスク(信用リスク)がある インデックス連動型のETFでは、ETFの値動きが指数通りにならない、「トラッキングエラー」のリスクがある 株式に比べると、ETFの配当利回りは低い傾向にある 管理費用等が高い商品を選ぶと、投資効率悪化の要因となる 株式のように売買できるため、売買タイミングを計るのが難しい 一般の投資信託のように「自動買い付け」で積立できないことがある 分配金が自動的に再投資できず、再投資の際にコストを負担する必要がある |
ETFの買い方
ETFは、証券会社を通じて購入できる。
ここでは、SBI証券のサービスを使って、購入方法までを確認していく。
口座を開設して入金する
ETFの購入には、証券会社での口座開設が必要だ。
ほとんどの証券会社では、口座開設はWeb上で完結する。
SBI証券では、提供情報や本人確認書類に不足がなければ1〜3営業日程度で開設が可能だ。
総合口座開設と同時に「NISA口座」も申し込んでおこう。
以下の2つの選択肢がある。
- 海外ETF(海外市場に上場するETF)を購入する。この場合「外国株式取引口座」が必要
- 東証に上場しているETF(たとえばS&P500連動など)を購入する。この場合、国内株式取引に使う口座で売買できる
国内ETFを購入する
SBI証券のWebにアクセスし、メニューから「国内株式 > ETF・ETN」を選択すれば、「ETF・ETN取扱銘柄一覧」に遷移する。
一覧から名称をクリックするか、検索窓に名称か証券コードを入力して、銘柄ページにアクセスしよう。
SBI証券Webの銘柄ページ
Webの銘柄のページからなら、以下のステップで発注できる。
- 取引の種類を選択(「現物買」「現物売」「信用買」「信用売)
- 注文内容を入力(「株数」「注文方法および価格」「注文期間」「預かり区分」)
- 取引パスワード入力して発注
ETFを選ぶポイント
ここからは、ETFの選定ポイントを、3つに絞って解説していく。
以下の順番で取り組めば、投資目的に合った銘柄選定ができるだろう。
連動を目指すインデックスで絞り込む
まずは、連動を目指すインデックスについて理解し、ポートフォリオに組み入れするETF候補を絞り込んでいく。
以下は、代表的な指標の特徴と、連動するETFに投資する場合のメリットを整理したものだ。参考にして欲しい。
指標について一通り理解できたら、「どのインデックスへの連動ETFが、投資目標達成につながるか?」を考えて選択しよう。
すでに株式比率の高いポートフォリオを有しているなら、債券やREITを含むETFが、目標に合致するかもしれない。
これから投資を始めようという若手なら、まずはTOPIXや日経平均から始めてみるのも良いだろう。
「これまで子どもの学資金を考慮して保守的な投資をしてきたが、今後は余裕資金を活用してリターンを追求したい中堅投資家」なら、ポートフォリオにS&P 500やNASDAQ-100を組み込んで高いリターンを狙いにいくという選択も良い。
信託報酬・利回り・流動性・乖離率を確認する
インデックスを選択したら、次は指標の確認だ。
ETFの選択でみるべき指標は、信託報酬、分配金利回り、流動性(純資産総額)、乖離率の4つである。
説明 | ポイント | |
---|---|---|
信託報酬 | ETFの運用管理費用 (年率で表示される) | 低い信託報酬は、長期的に投資家の手元に残るリターンを増やす 長期的な投資では、わずかな差が大きな差となって表れるため、できるだけ信託報酬低い商品を選ぶ |
分配金利回り | ETFが保有する資産から生じる利益(たとえば配当)を 投資家に分配した場合の年間利回りを示す | 分配金は投資家にとっての収益の一部 できるだけ利回りの高いものを選ぶ |
純資産総額 | そのETFが保有する資産の市場価値の合計 | 大きな純資産総額は高い流動性を示し、市場での取引が活発であることを意味する 一般的に大きな純資産総額のETFを選ぶことが推奨される |
乖離率 | ETFの市場価格と、ETFが保有する資産の評価額 (純資産価値、NAV)との差を表す | 乖離率が小さいほど、ETFの市場価格はその基準価額に近いことを意味し、公正な価格で取引されていると考えられる |
総合的に判断する
次は、確認した指標を総合的に判断し、最終的に一つに絞り込んでいく段階だ。
ここでは、「TOPIX連動ETF」を例にとり、「東証マネ部」のデータベースを使用して意思決定をしていく。
- 東証マネ部 – ETF・ETN検索で「ETF全銘柄」を選択
- 「条件を変更する」タブをクリック→TOPIXのみチェックを残して再検索(9銘柄)
- 口座のある証券会社で販売されていないものを除外
- 連動する指数について「配当込み」か「配当除く」のどちらかに決定(配当込みなら4銘柄、配当除くなら5銘柄に絞り込める)
- 信託報酬の安い順に並べ替え
- 分配金利回り、流動性と乖離率も勘案して選択
配当込みで絞り込み、信託報酬の安い順に並べ替えた
信託報酬(税込) | 分配金利回り | 純資産総額 | 乖離率 | |
---|---|---|---|---|
iシェアーズ・コア TOPIX ETF(1475) | 0.0495% | 1.77% | 18,979.2億円 | 0.02% |
iFreeETF TOPIX(年4回決算型)(2625) | 0.066% | 1.90% | 692.7億円 | 0.01% |
iFreeETF TOPIX(年1回決算型)(1305) | 0.066% | 1.82% | 106,475億円 | -0.05% |
NZAM 上場投信 TOPIX(2524) | 0.0825% | 1.76% | 3,247.1億円 | -0.32% |
分配金利回りからみると、1.9%のiFreeETF TOPIX(2625)は魅力が高い。
しかし、純資産が692.7億円と安定性において不安がある。
長期的な保有を考えるなら、iシェアーズ・コア TOPIX ETF(1475)は良い選択だ。
信託報酬の安さからの長期的なコスト削減効果と、純資産額の大きさから、流動性と運用の安定性が期待できる。
以上はあくまでも一つの考え方である。
ETFを選択する際は、利回りだけでなく、それぞれの指標などから特性をじっくり検討し、納得したうえで行って欲しい。
ETFの運用を成功させる戦略
ここでは、ETFを用いた運用戦略を成功させるための3つの重要なアプローチを解説する。
長期投資の実践
ETF投資に限らず、投資においては長期的な視点を持つことが重要だ。
長期投資には、以下のようなメリットがある。
- 時間分散効果により、投資リスクを抑えられる
- 複利効果により、長期的な資産形成が可能になる
- 売買コストや税金を抑制できる
投資期間が長くなるほど、さまざまな市場イベントに遭遇することになるが、短期的な値動きに動揺せず、長期的な視点を持ち続けることが肝要だ。
積立投資と分配金の再投資
「積立投資」と「分配金の再投資」を使って、時間を見方につけた資産形成を行うことも、非常に重要なポイントである。
積立投資とは、毎月一定額を投資信託などに投資していく方法で、以下のようなメリットがある。
- ドルコスト平均法により、投資タイミングリスクを軽減できる
- 少額から無理なく継続的な投資習慣を身につけられる
- 時間分散効果により、投資リスクを抑えられる
現在のところ、証券会社のETFの積立投資サービスは多くない。
よって、ETFを積立するなら、新NISA口座の活用がおすすめだ。
「つみたて投資枠(年間120万円まで)」と「成長投資枠(年間240万円まで)」のどちらでも、ETFの取扱いがある。
分配金の再投資は、複利効果を最大限に享受し資産を拡大させる有効な方法である。
ただし、ETF投資においては以下のデメリットもあるため、納得のうえ行って欲しい。
- ETFには、分配金を自動で再投資する仕組みがないため、再投資する場合は自身で買い付けを行うのが一般的
- 再投資の場合でも、手数料や税金を負担しなければならない
- NISA口座を使って再投資をする場合は、年間投資枠を利用する(=投資できる額が減る)
税制優遇制度「新NISA」の有効活用
ETF投資から得られた譲渡益と分配金には、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税金が賦課される。
しかし、新NISA口座で運用すれば、配当金や分配金に税金はかからない。
非課税メリットにより、投資リターンを最大化できる。
NISA口座の活用は、ETFへの投資においても真っ先に検討すべきである。
ただし、米国株や米国ETFに投資をする場合は、米国での10%の税金は支払う必要がある。
この点は必ず覚えておこう。
ETFを活用した資産運用の相談先はどこが良い?
ETF投資においては、銘柄選択も重要だが、自身の投資目的に合致させることが最も大切だ。
まず、ポートフォリオにETFの組み込みが必要かを判断し、そのうえで「どの銘柄を、どの程度組み込むべきか」を判断しよう。
ETF投資を専門家へ相談する重要性
ETF投資においても、専門家に相談することは非常に有効だ。
株式売買のような柔軟性があるのはメリットだが、この柔軟性は売買タイミングを図る必要も伴う。
自己判断だけでETF投資を行うと、十分な分散投資ができていなかったり、不要なコストを負担することになる。
専門家に相談すれば、こうしたリスクを軽減できる。
IFAの役割とメリット
ETF投資の相談先としてとくにおすすめなのが、独立系ファイナンシャルアドバイザーの「IFA」だ。
IFAは特定の金融機関に所属せず、顧客の利益を最優先に考えて中立的なアドバイスを提供してくれる。
投資商品の選定だけでなく、将来のキャッシュフローや資産形成のシミュレーションを通じて、ETF投資を長期的な資産形成プランに組み込む支援もできる。
IFA検索サービス「資産運用ナビ」の活用法と利用推奨
IFAを探す際におすすめなのが、IFA検索サービス「資産運用ナビ」だ。
全国のIFAを地域や専門分野から検索できるほか、IFAの経歴や顧客からの評価なども確認できる。
比較検討がしやすいうえ、複数の候補者と面談できるので、自身に合ったIFAを選びやすい。
ETFの特徴を活かして資産運用の目標金額を達成しよう
本記事では、ETFの選び方を中心に、基礎知識から資産運用を成功させる秘訣までを網羅的に解説した。
ETFへの投資を活用した資産運用に関して疑問や不安があれば、IFAへの相談をおすすめする。
IFAの専門的なアドバイスを受けることで、自身の資産状況に最適なETFポートフォリオの構築が可能になるはずだ。
資産運用は長期戦だ。だからこそ、信頼できるパートナーを見つけることが何より重要なのである。
IFA検索サービス「資産運用ナビ」を活用し、長く付き合えるIFAを見つけていただきたい。