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【4593】株式会社ヘリオス代表執行役社長CEO 鍵本忠尚氏「細胞技術で生きるを増やす」

※本コラムは2023年10月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ヘリオスは、再生医療分野において新たな治療法を開発し、承認販売までを自社で行う体制を構築することで製薬企業を目指しています。

創業の経緯や事業内容、および中長期の成長戦略について、代表執行役社長CEOの鍵本忠尚氏にお伺いしました。

目次

株式会社ヘリオスを一言で言うと

非常に大きな可能性を持つ細胞治療、再生医療のテクノロジーを最大限活用することで、「『生きる』を増やす。爆発的に。」をミッションに掲げる会社です。

創業の経緯

私は2002年に九州大学医学部を卒業後、翌年より眼科医として勤務していました。

2005年には大学発バイオベンチャーで発見した薬を、海外で承認を取り実用化することができました。

日本の技術を世界に届ける点では一定の成果を出すことができ、これから何をするかと考えた際に、一つの製品を出すところから、もっと大きな産業を作っていきたいと考えました。

そこで、日本の技術を世界にプラットフォームとして展開をすることを夢に見て、2011年に当社を創業しました。

沿革 

2006年に京都大学の山中伸弥教授らは世界で初めてiPS細胞の作製に成功し、2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

私は、iPS細胞の技術に大きな可能性を感じ、これを一大産業にすることを目指してヘリオスを創業しました。

さらに、日本から業界水準の薬を出すためには、しっかりと開発費を調達する必要があると考えました。

この考えのもと、当社は2015年に東証マザーズへの上場を果たしました。

マネジメントスタイル

当社にはボードメンバーを始め、執行役、部長レベルまで非常に良い方々が集まってくれました。

それは、細胞の新しい領域を攻めていき、世界にそれを示していくという志に共感し集まってくれたのだと考えています。

執行役の能力が高いので、社長である私が細かいところまで入らなくとも運営ができています。

その上で、日々の経営においては企業として取り組むことが社会に意味を与えるよう、我々のミッションをぶれることなく追い続けるということを意識しています

事業概要

我々のビジネスは典型的なバイオベンチャーです。

しかし、特徴的なのは、薬の承認が近いレイターステージのパイプラインを抱えており、製薬企業になる前段階の状態にあるということです。

また、現在市場で成功を収めているバイオベンチャーの多くはライセンスモデルをとっています。

ライセンスモデルでは製薬企業に開発を依頼するため、早期に黒字化ができますが、利益幅は大きくなりません。

例えばアメリカでは、ライセンスモデルではなく開発までを一貫して行うバイオベンチャーが多いため、製薬会社を超えて名の知れたバイオベンチャーが誕生しているのです。

我々も創業時から自社で製品を出すことを大事にしてきました。

そのため、自らパイプラインを開発し、製薬企業になることを目指し、細胞医薬品・再生医療等製品の研究・開発・製造に取り組んでいます。

株式会社ヘリオス 2023年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

ヘリオスの強み

当社の強み2つあります。

まずは製品の良さです。例えばARDS(急性呼吸窮迫症候群)という重症肺炎は、死亡率が4割〜5割と高く、多くの方が亡くなる病気です。

その方々に対して、当社が治験を行った細胞を点滴で一回注射するだけで、死亡率を39%改善できたという臨床試験での結果が出ています。

また、著名投資家のウォーレン・バフェットさんが株式投資の真髄として表現した「スノーボール」の戦略を実践し事業を展開していることも強みです。

これは、長期的に成長をする株を買い、保有し続ければ、最初は小さな手のひらに入るようなスノーボールが徐々に大きな雪だるまのボールになる、という例え話です。

我々のビジネスに置き換えると、「細胞」という領域で事業を展開していますが、人間の体のほとんどは細胞で構成されており、この細胞を自由に扱うことができれば、様々な病気を治すことができます。

そのため、細胞領域で臨床研究を行い、経験を積み製品を出していく。この一連の流れを加速させ、様々な世界初の商品を出していくことに注力しています。

中長期の成長イメージとそのための施策

現在保有するパイプラインのうち、先行する炎症領域の利益をがん免疫療法や細胞置換の分野へ再投資する、ハイブリッド戦略を実行します。

これにより、持続的な成長を果たしていきます。

各パイプラインの現状と今後のロードマップ

株式会社ヘリオス 提供

炎症領域

ARDSに関しては臨床試験(第Ⅱ相試験)で非常に良い結果が出ました。

規制当局からもう一試験を追加で行うように言われましたが、治験のデザインはすでに確定しており、現在追加試験実施に向け準備を進めており、確度の高いプロジェクトと言えます。

承認の道筋も規制当局と連携が取れていますので、製品化までいけると考えています。

株式会社ヘリオス 提供

脳梗塞急性期に関しては、先行して米欧で治験を継続しており(ライセンス元である米国アサシス社による治験)日本でもアメリカでのデータをもとに第Ⅲ相試験を行いました。

が、平均年齢がアメリカより10歳以上高かったことなどもあり、統計学的有意性を示せるものではありませんでした。

同時に進行していた米欧での治験における中間解析の結果を受けて、今後の申請に向けた方針などを再検討する予定です。

がん免疫療法のロードマップ

がん細胞は若い時には活発な免疫細胞によってきちんと処理されますが、年を重ね、免疫細胞が弱っていくことで、がんの進行が止められなくなります。

当社は人間の体内でがん細胞に対して重要な役割を担っているNK(ナチュラルキラー)細胞をiPS細胞から開発しています。

遺伝子改変を重ねて免疫機能を極限まで高めたeNK®細胞を体外で作成し、投与することで、年齢を重ねてもがん細胞を綺麗に片づけることができるようになります。

このような細胞を大量に開発し、プラットフォームとして根本的にがんを治療していくことが我々の戦略です。

株式会社ヘリオス 2023年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

eNK®細胞に関しましては、2025年度を目途に治験開始を予定しており、足元では動物実験を行い効果が確認されています。

人への投与に向け、各国の規制当局と連携を取りながら準備を進めています。

株式会社ヘリオス 2023年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

細胞置換領域のロードマップ

遺伝子編集技術を用いた免疫拒絶のリスクの少ない次世代iPS細胞、ユニバーサルドナーセル(UDC)を用いた新たな治療薬の研究や細胞置換を必要とする疾患に対する治療法の研究を進めています。

海外企業とのライセンス契約の締結をはじめ、国内外の企業・研究機関にUDCやiPS細胞を提供し様々な疾患への適応可能性について評価を進めている段階です。

特に加齢黄斑変性を対象疾患とするiPS細胞(RPE細胞)は、現在住友ファーマ様と共同開発をしており、2025年の販売開始を目標に治験を進めています。

株式会社ヘリオス 提供

カーブアウトについて

株価の低迷はバイオテック業界全体が抱える課題でもありますが、この問題解決のため、当社ではカーブアウトという選択をしました。

現在の当社の株価は、バイオ企業における評価の厳しさもあり2年前から約5分の1程度になっています。

この環境で資金調達を続けると、株価の希薄化が激しくなります。

一方、開発リスクの低下から、相応のリターンが望めればプライベート投資家からは出資をしていただけると考えています。

これは、外部資金で開発を完了させることのできる、非常に効率の良いファインナスの仕組みとなっています。

株式会社ヘリオス 2023年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

現状、ARDSやeNK®細胞など各パイプラインで順調に資金調達が進行しています。

それぞれが成功を収め、当社が製薬企業になる姿が見えれば、株価も過去の基準である5倍、もしくはそれ以上になりうると考えています。

バイオベンチャーは、リスク資金が十分に供給される市場環境下では高い評価を受ける一方、現状のような金利環境では苦戦を強いられるという特徴があります。

このような環境に対応するのがまさにカーブアウトの仕組みであります。

市況は常に変動するものであり、我々が上場したのも、その当時の株式市場が良好であったという要因もあります。

今後市況が改善し、イノベーションが大きく評価される時代が訪れた際には、「どの企業が本物のイノベーションを生み出したのか」が問われると考えています。

その時に我々はパイプラインの結果を出し、また経営陣としても最も効率的な資金調達を行ったという実績を作り上げていきます。

投資家の皆様に注目していただきたいポイント

注目していただきたいポイントは2つあります。

1つ目は、経営における柔軟性です。経営陣として、効率化には並々ならぬ努力を払っています。

市場環境の悪化を受け、資金調達の方法を変更する我々のようなバイオベンチャーは少ないです。

そこまで行える理由は、何よりも患者さんに対し良い治療を提供する、というコミットメントの強さがあるからです。そして、経営陣もこの思いのもと、できることは全て行う覚悟でいます。

2つ目は技術の高さです。

国内の他のバイオベンチャーを見ても、これだけ市場規模の大きな製品で、最終フェーズである第II、第Ⅲ相試験に入っている会社は多くありません。

つまり、企業としてはリスクが低下し、アップサイドが大きい状態に入っています。

このように、外部資金を活用した柔軟な経営と、治験のステージを含めた優位性に、改めて注目していただきたいです。

株式会社ヘリオス 提供

投資家の皆様へメッセージ

当社は、がん、脳梗塞急性期、重症肺炎などに対応可能な医薬品を出すことができる段階にまで来ています。

時間がかかるものではありますが、最後までやり遂げる覚悟があります。

薬の承認を取り、世界中の人の病気を治せる瞬間を株主の皆様と迎えたいと思っております。

そういったところまでご一緒していただきたいと思っておりますので、ぜひご支援のほどよろしくお願いいたします。

株式会社ヘリオス

本社所在地:東京都千代田区有楽町1丁目1番2号 日比谷三井タワー12階 ワークスタイリング内

設立:2011年2月24日

資本金:1億19百万円(2023年4月末現在)

上場市場:東証グロース(2015年6月16日上場)

証券コード:4593

※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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