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【4058】トヨクモ株式会社代表取締役社長 山本裕次氏「シンプルで誰もが使える機能を安価に提供する」

※本コラムは2022年10月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。

クラウドサービスのkintoneで有名なサイボウズ株式会社(以下サイボウズ)の子会社としてスタートした、トヨクモ株式会社。クラウドサービスを提供する企業が増えるなかで、どこに差別化を求めていくのか。代表取締役社長の山本裕次氏に話を伺いました。

目次

トヨクモ株式会社を一言で言うと

クラウドサービスのユニクロ、あるいはニトリですね。つまりシンプルで使いやすいものを量産していくのが、私たちのビジネスです。安否確認サービスで知られている会社かもしれませんが、安否確認サービスのシェアトップを狙っているわけではありません。まずは、皆が仕事をするうえで「あったらいいな」と思うようなサービス、機能をどんどん開発し、クラウドを通じて提供していきたいと考えています。

クラウドサービスを導入する際に、「とりあえずトヨクモで始めればいいんじゃないの」と言われるような存在になりたいですね。そして、もっと複雑な機能を使いたいとおっしゃるのであれば、トヨクモを卒業して別なクラウドサービスに移行されてもやむをえないと思っています。

私たちは決して、ありとあらゆるお客様にご利用いただきたいとは考えていません。あくまでも第一歩目のクラウドサービスメーカーになりたいと思います。だからユニクロでありニトリなのです。

創業の経緯

創業は2010年です。私はもともとサイボウズの社員で、新規事業や海外販売を担当していました。新規事業では新しいプロダクトを開発して、海外販売では当時のサイボウズのメイン製品であるグループウェアを海外展開させるという仕事です。

ただ、グループウェアはもちろん米国など海外でも開発されていて、それを使っている企業もたくさんあったのですが、いざ日本製のグループウェアを売り込もうとしても、サイボウズのスケジューラーが日本独特のもので、海外ではなかなか馴染まないという問題がありました。

日本の場合、スケジュールをメインとして情報管理をするサービスが主流ですが、それを海外に持っていくと、「そんなマイクロマネジメントをやっているから、お前たちは生産性が上がらないんだよ」と言って笑われてしまうのです。海外では、タスクや結果で管理するのが一般的でした。

そういう事情があって、なかなか日本のグループウェアをそのまま海外に展開するのは簡単ではないと判断し、サイボウズはkintoneの開発に着手することになります。

それと同時に新規部門では、今はもう無くなってしまったのですが、クラウドサービスの「サイボウズライブ」という無料のグループウェアも展開していました。

当時は販売、開発、管理の職能性の組織であり何かを新しく開発しようとしても、規模も大きくなってきており、時間がかかるという問題が浮上してきました。ちょっとした改良を加えるにしても、「将来的に全体をこういう方向に持っていきたいから、ここを改良すると不都合が生じるのではないか」というような声が聞こえてくるようになってきたのです。

でも、当時のサイボウズはまだまだ成長途上の段階ですから、そんなことを言っていたら世界での競争に勝てなくなると思い、「一度、私を自由にさせて下さい」と言って、100%子会社であるサイボウズスタートアップス株式会社という会社を立ち上げました。

ここではいろいろなクラウドサービスを作りました。エンジニア1人とアルバイトを雇い、サイボウズの社内で活動するのではなく、あえて少し離れたマンションの1室から事業をスタートさせました。

当社にとって大きな転機になったのは、2011年3月に起った東日本大震災です。これによって企業のクラウドサービスに対する認識が大きく変わったと感じました。

それまでは、企業情報を社内で管理するのが一番安心・安全と思われていて、クラウドサービスは見向きもされなかったのですが、震災の津波による影響でPCなどのハードウェアが流されてしまい、データが消失してしまうという事態が生じたのです。それによって、会社の中に情報を置いておくことが必ずしも安全ではないことに気付いた人たちがいて、クラウド上にデータを置くことを本気で考える会社が増えました。

それで、もともとはグローバル展開を前提にして立ち上げた新会社ではあったのですが、これからは日本でクラウドサービスが一気に広まると思ったので、国内向けのクラウドサービスに集中することを意思決定しました。

事業内容について

企業向けクラウドサービス事業です。サービスは3つあり、「安否確認サービス2」と「kintone連携サービス」、「トヨクモスケジューラー」です。

【4058】トヨクモ株式会社代表取締役社長 山本裕次氏「シンプルで誰もが使える機能を安価に提供する」わたしのIFAコラム
トヨクモ株式会社 2022年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

安否確認サービス2は日本国内で事業展開している企業向けに開発したサービスです。国内で災害が生じた時、自動で安否確認の通知が携帯電話やスマートフォン、パソコンに通知され、被害状況の正確な把握、社員やその家族の安否確認ができ、またサプライヤーの会社が自社のSCMにおける連絡手段としても使うことができます。

企業向けの安否確認サービスはもともと大手警備会社などが提供していたのですが、東日本大震災の時、自社サーバーを使っていたので、アクセスが集中してダウンするサービスがありました。そこで当社はクラウドサービスを使った安否確認サービスを提供するようにしたのです。クラウドなので拡張性は高いわりにはコストも安く、特に中小企業は弊社を選ぶケースが多く、最近では大手企業の導入も増えています。

実際、当社の顧客でもそれまで使っていた他社の安否確認サービスからの乗り換えが結構増えてきました。何よりも大事なのは、災害に直面した時でも、きちっとサービスを活用できるようにするため、日頃から訓練しておくことです。これについては毎年、防災の日に、契約ユーザーと一緒に、一斉にサービスを動かして、うまく情報が伝達されるかどうか、そしてサービスを提供している私たちにどれだけの負荷がかかり、確実に稼働するかをチェックしています。

kintone連携サービスは、サイボウズが提供しているkintoneと連携することで、kintoneをより便利に利用するためのクラウドサービスです。これによって帳票作成やWebフォーム、データ集計など、用途別に6つのサービスを提供しています。これも中小企業がメインのお客様でしたが、最近は地方自治体の方や大企業にも多く使っていただいています。kintoneを使っていないと、私たちのサービスを使うことはできないので、事実上、kintoneが私たちのマーケットをつくっていると考えることもできます。

そしてトヨクモスケジューラーでは、社内の各種調整ツールだったスケジューラーの機能を、社外との調整にも使えるようにしたものです。

【4058】トヨクモ株式会社代表取締役社長 山本裕次氏「シンプルで誰もが使える機能を安価に提供する」わたしのIFAコラム
トヨクモ株式会社 2022年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

そしてトヨクモスケジューラーでは、社内の各種調整ツールだったスケジューラーの機能を、社外との調整にも使えるようにしたものです。

中長期の成長イメージとそのための施策

今、世の中ではクラウドサービスがたくさん出てきています。そのなかには、たとえば「経費精算」といったような、言葉ですぐにイメージできるようなサービスも増えているので、私たちはそのようなマーケットの中からトヨクモが得意な領域でシンプルな機能に絞り、低価格でサービスを提供していきます。

日本企業が提供するサービスは、時間の経過と共にどんどん機能拡張をしていきます。どうしても内容が複雑化し、使いにくくなり、しかも高単価になります。これはどの製品、サービスも同じで、市場が出来上がって成熟化すると、どうしてもその方向に進もうとします。

だからこそ、私たちはシンプルで、分かりやすい機能を、低価格で展開していきます。奇をてらわず、同じビジネスモデルをしっかり続けていけば、これから先の成長も期待できると考えています。

【4058】トヨクモ株式会社代表取締役社長 山本裕次氏「シンプルで誰もが使える機能を安価に提供する」わたしのIFAコラム
トヨクモ株式会社 2022年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

私たちのビジネスモデルは、会社自体はもちろん成長しているのですが、キャッシュも比例して増加しますので、まだ上場したばかりの会社ではありますが、配当性向20%を目安として配当を実施しています。

長期的に私たちの株式を保有し続けていただくためには、配当をしっかり出した方が、投資家の方たちも持ちやすいのではないかと考えておりますので、毎年増配し続けられるように努力してまいります。

トヨクモ株式会社(Toyokumo, Inc.)

本社所在地:東京都品川区上大崎3丁目1-1 JR東急目黒ビル 14階

設立:2010年8月

資本金:380,025,000円(2021年6月末)

上場市場:東証グロース(2020年9月24日上場)

証券コード:4058

※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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