※本コラムは2022年9月22日に実施したIRインタビューをもとにしております。
「DX」という言葉が世間を賑わせています。でも、それがさまざまな分野でパラダイムシフトを起すことまでは、想像が至っていないのではないでしょうか。株式会社Kaizen Platformは、まさにDXのど真ん中でビジネスを展開しています。今後のマーケットの魅力について、代表取締役の須藤憲司氏に伺いました。
株式会社Kaizen Platformを一言で言うと
攻めのDXのパートナーです。メインの事業領域は、お客様のセールスマーケティングのDX支援です。集客して、サイトにお連れして、CRMをするわけですが、それぞれ動画ソリューション、UXソリューション、DXソリューションを用いて伴走します。お客様が改善しなければならないと考えている部分について、一緒にサポートさせていただくためのプラットフォームと、BPOサービスを提供させてもらっています。
多くの企業がDXで生産性を向上させ、業績アップにつなげようと考えていますが、現実的には人材が不足しているとか、旧式のシステムがネックになったりして、結果的になかなかデジタル化が進まない。そこで私たちは、お客様がDXによるKPI改善を体験することが必要だと考え、専門スキルを持った人材が顧客の改善をサポートして実行していくためのサービスを提供するようにしました。
創業の経緯
2003年から10年間、リクルートで働きました。マーケティング部門、新規事業開発部門、アドオプティマイゼーション推進室の立ち上げに従事したのですが、この10年間は、リクルートという会社が、紙媒体を中心にしたメディアから、デジタルメディアに移行していくプロセスでもありました。ちなみに入社時のインターネット売上は全体の25%程度でしかありませんでした。
そして2013年にリクルートを辞めて独立したのですが、最初から今のビジネスモデルを考えていて起業したわけではありません。リクルート時代に何度か米国のシリコンバレーに行く機会があって、そこで世界のダイナミックな流れを目の当たりにしてきたということもあったのだと思いますが、とにかく米国で起業しようと考えました。
Kaizen Platformのビジネスモデルを思いついたのは、自分が10年勤めていたリクルートがDX化していくプロセスを見ていたからです。リクルートは何とかDX化を実現できましたが、これを他の普通の会社にできるのだろうか、という疑問を持つようになったのです。どう考えても、これは相当難しいだろうと。
しかし、そうは言ってもDX化を進めない限り、これからの日本企業は生産性が向上せず、大変なことになってしまう恐れがあります。
そうならないうちに、企業のDX化を加速させたい。そういう想いで起業しました。また、Kaizen Platformという会社名にしたのは、デジタル化の本質的なメリットが理解されていないと感じたからです。
デジタルのメリットは日々のデータを集め、蓄積し、蓄積されたデータを解析することによって、それを業務改善に活用できることなのですが、なぜか多くの日本企業は、システムのようなものを組むと、そこで終わってしまうケースが目立ったのです。
でも、それでは本当の意味でデジタルを使いこなしたことになりません。そこで、お客様が本当の意味でデジタルを活用し、業務改善を通じて事業の成長につなげていけることを実感してもらえたらと思い、Kaizen Platformという会社名にしました。また、「Kaizen」という言葉は日本語ですが、米国をはじめとして海外でそのまま通じる数少ない日本語だということも、社名に冠した理由のひとつです。
起業した当初から、実は数億円の売上が立ちました。そういう意味では、滑り出しも上々だったわけですが、起業して真っ先に考えたことは、自分自身がリクルート時代にDX化を進めるに際して、一番困ったことをビジネスにする、ということでした。
リクルート時代、インターネット広告やマーケティングの仕事に関わっていたのですが、ここでの広告の役割は、サイトまで人を連れて行った時点で終わりでした。600~700社の取引先があって、各社のサイトを見るのですが、正直な感想を言えば、「このサイトを見に来ても、製品やサービスの購入にはつながらないだろうな」と思うことが多かったのです。だから、まずはサイトを改善するサービスを提供することにしました。
事業内容について
具体的に提供しているサービスは、動画広告を改善したい、あるいはチラシをDX化したいというニーズに対応するための「動画ソリューション」、口座開設を増やしたい、解約を減らしたいというニーズに対応するために、サービスを分かりやすく、使いやすくすることでKPIを改善する「UXソリューション」、アポを増やしたい、サポートをDX化したいというニーズに対応し、DXの戦略策定からCRM運用までトータルでサポートする「DXソリューション」が柱になっています。
以上のソリューションをSaaS型のプラットフォームに乗せて提供しているのですが、お客様である企業から見たメリットとしては、最新のUIやUXの開発、制作環境の提供を受けられることや、豊富なDX人材のチーム構築を変動費によって実現できること、データを活用して生産性向上や品質管理ができることなどが挙げられます。
私たち、2017年に日本法人を立ち上げ、2020年に上場したわけですが、会社が成長軌道に乗ったと思った分岐点は2つあります。
ひとつは動画ビジネスを立ち上げた2016年です。その当時、UXのサイトの改善をしますというビジネスのLTVが、20カ月であることが分かりました。どの企業のサイトも、だいたい3年に1度の頻度でリニューアルをするため、平均で20カ月くらいのプロジェクトになります。そのなかで新規獲得したお客様と、解約されるお客様がいるので、2016年から2018年までの3年間は、UXソリューションの事業が停滞しました。
その間、新規事業で動画ソリューションを立ち上げたのですが、これも2年くらい停滞したのですが、2019年に紙の卸値が20%上がるという現象が起こり、DMを用いて集客などをしていたお客様が、コスト増で苦しい状況に追い込まれました。その時、デジタルも増やさなければという動きが広がり、動画広告が増えていったのです。
その結果、動画広告を制作したお客様のなかから、UXも改善したいというニーズが出てきて、再びUXソリューションも成長軌道に乗せることが出来ました。
もうひとつのきっかけは新型コロナウイルスの感染拡大です。2020年前後ですね。パンデミックの影響でマーケティング費用が抑制されたため、動画ソリューションの売上が大きく落ち込むのかなと思ったのですが、ここでまた新しい需要が生まれました。それは、会社説明資料や営業資料を動画にしたいという注文です。リモートワークが当たり前になるなかで、営業活動のDX化が注目されるようになったのです。そこでDXを新規事業として打ち出して、さらに成長することができました。
中長期の成長イメージとそのための施策
これから10年先を考えた時、やはりこのセグメントでのトップシェアを取りたいと考えているので、できれば25%のシェアを確保できるようにするためのポジショニングを考えています。この領域は非常に分散されたマーケットなので、25%くらいのシェアを握れれば、リーディングカンパニーになれます。
その実現可能性は高いと考えています。
第一にデータです。動画やUXもそうですが、たとえば動画をつくるだけなら誰にでも出来ます。ただ、うちはお客様の売上データを持っているので、それをベースにしながらどういうクリエイティブが良いのかを考えることが出来ます。データを取りながらPDCAを回せるのが、私たちの競争優位であると認識しています。
第二はスケーラビリティとコストです。うちの売上を四半期ベースで見ると、かなりデコボコしています。お客様が期末の予算消化で発注を急に増やすこともあれば、逆に発注が減少することもあるからですが、このような売上推移で、正社員を雇用して固定費がかさむと、需要を取り切れなくなります。だからプラットフォーム化してコストを変動費にし、需要に合わせた人繰りができるようにしているのです。
第三は、これから伸びていくエマージングな攻めのDXの顧客基盤を持っていることです。これからお客様は攻めのDXを推し進めてくるので、そこの顧客基盤をしっかり持つことで、お客様と共に私たちも成長していくというストーリーを考えています。
投資家の皆様へメッセージ
これからはデジタルでお客様の利益をつくり出していく時代になります。DXについて表層的にしか理解できない方も多いと思うのですが、今、凄まじいばかりのパラダイムシフトが起こっています。さまざまなところで紙の書面が無くなりますし、免許更新もわざわざ免許センターまで出向かずにできるようになるでしょう。
圧倒的なポテンシャルがあるマーケットなので、そこの市場成長性とユニークなポジショニングに注目していただければと思っています。
本社所在地:東京都港区白金1-27-6 白金高輪ステーションビル10階
設立:2017年4月3日
資本金:1,734百万円 (2021/12時点)
上場市場:東証グロース(2020年12月上場)
証券コード:4170