※本コラムは2023年12月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社イルグルムはデータとテクノロジーを活用しマーケティング業界に変革をもたらす会社です。
代表取締役CEOの岩田進氏へ、事業戦略の変遷や今後の成長方針を教えていただきました。
株式会社イルグルムを一言で言うと
未知に道を作る会社です。
沿革
創業経緯
学生時代の2001年6月に有限会社ロックオンとして当社を設立しました。
創業以前には飲食店や旅行関連のビジネスをしており、その経験と反省を生かしながら、当初はホームページ制作などの受託開発業務を中心に行なっていました。
事業拡大と上場
2003年にはWEB制作会社からツールベンダーとして事業拡大をしました。
それから、より大きな仕事・世の中にインパクトを与えることができるような仕事にしたいと考えて自社でのプロダクト開発に力を入れました。
2004年に広告効果測定システムの「アドエビス」、2006年にはオリジナルでECサイトを構築できるオープンソースの「EC-CUBE」をリリースしました。
2007年にはアドエビスが広告効果測定ツール市場で国内シェアNo.1を獲得し、2010年にはEC-CUBEがEC構築オープンソースとして国内シェアNo.1を獲得しました。
その後、事業を安定的に拡大して、2014年にはマザーズ(現在の東証グロース)に上場いたしました。
2019年8月には、当社商号を「株式会社イルグルム」としました。まだこの世に存在しない未来像を示すためにあえて既存の言葉に由来を持たない「意味のない文字列」を語源にしました。
どこにもない社名のもと、それぞれの企業が独自の価値を提供し、発展する社会を目指しています。
現在は分社化やM&Aを経て、複数の子会社をもつ企業へと成長しています。
事業の概要と特徴
概要
当社のビジョンはデータとテクノロジーを駆使してマーケティングを支援し、売り手と買い手の幸せを創造することです。
今の当社の主力事業は、広告効果測定のアドエビスと、日本発のEC構築オープンソースであるEC-CUBEです。
アドエビスはSaaSモデルで月額利用料をいただいており、EC-CUBEはフリーミアムモデルを採用しています。
組織を運営していく上ではあえて両サービスに連動性を出しすぎないようにしています。
マーケティングに関わるシステムとEC構築のシステムを一つの大きなシステムとして提供した場合、システム上の変更などへの対応が遅れるといった障害が起こる可能性があるので、顧客ニーズに柔軟に対応することを優先しています。
そこで、アドエビスとEC-CUBEはそれぞれをモジュールとして提供させていただき、適宜選択していただく現在のビジネスモデルが適切であると考えています。
事業における優位性
先駆者としてのアドバンテージ
創業当時、インターネット黎明期であった2000年代初め頃から、当社はいち早く、マーケティング分野においてインターネット広告のトラッキングに着目し市場を開拓してきました。
またEコマース分野においても、日本初のECオープンソースを開発しました。
両分野においていち早く参入できたことは、現在の事業においても大きなアドバンテージになっていると認識しています。
マーケティングを支えるアドエビス
2004年にリリースした広告効果測定プラットフォーム「アドエビス」は発売から19年が経つ、ロングセラーのサービスです。
インターネット広告の効果測定という市場が存在しない時から市場を作り上げ、データとして可視化できるようにしました。
時代とともにマーケティング業界も変化していますが、この変化にいち早く気づき、速やかに対応できるという点も当社の強みと言えます。
この強みを生かした成長戦略については、後ほど詳しくお話させていただきます。
ECサイトの独自性を後押しするEC-CUBE
2004年にリリースした日本発のECオープンプラットフォーム「EC-CUBE」は、現時点で推定可動店舗数35,000超、ダウンロード数180万を突破しました。SaaS型カートシステムでは満足できないというお客様のニーズに対して、カスタマイズ性の高い独自のECサイトを構築できるEC-CUBEを提供しています。
2022年5月からはEC構築・運用領域に参入し、オープンソースの提供のみならず、構築や運用までを一気通貫で対応することができる為、多くのお客様に選択されています。
中長期の成長イメージとそのための施策
新マーケティングSaaSの提供
まだ存在していないマーケティングプラットフォームを提供しようと考えています。
SFA(Sales Force Automation)ツールのマーケティング版と考えていただければわかりやすいと思います。
SFAツールは各営業担当の能力に依存していた業務プロセスを、データベースを活用することで組織の能力に変換し、営業基盤を高めるソリューションを提供しています。
現状、当社が事業を展開しているマーケティング業界にはまだ属人的な部分が多く残されており、そこが課題だと認識しています。
例えば、月間の売上・獲得リード・PV(ページビュー)数に対して目標設定がされ様々な施策を行うとしましょう。
しかし、どのような施策が良かったか/良くなかったのかという検証が十分に行われず、検証を行ったとしてもそのデータが点在しているケースが多いため、これらのノウハウが組織のナレッジとして蓄積されていきません。
そして、しばらくすると同じような企画のもとにダウングレードされた施策が実行されてしまうというように、非効率的なサイクルを繰り返しているのが現状のマーケティング業界です。
それに対して、我々が提供しようとしているのが新SaaSです。
過去に得た成果や失敗をデータベースに蓄積し、人材が入れ変わっても組織として継続的に成果を上げ続けられるようなシステムを開発しています。
まだ既存のお客様を対象としてβ版の提供を行なっている状況ですが、リリース後は、本サービスをより有効にご活用いただける人的支援の提供も考えています。
顧客基盤の拡大
先に申し上げました通り、マーケティングDX事業では新SaaSの提供に注力します。
その為に、アドエビスを中心に新規顧客の獲得に注力しています。
その一環としてお客様の事業規模に合わせて低価格でもご提供できるように月額5万円で始められる「Growth Step Program」をリリースしました。
今までアプローチできなかったような層のお客様を獲得できた点は非常に大きいと思います。
また、コンバージョンAPIツール「CAPiCO」の提供も開始しました。
昨今のCookie計測制限に伴う広告媒体の欠損を補うツールとして、アドエビスと併用して広告代理店チャネルにおける利用が増加しています。
ターゲット顧客とアカウント数の拡大により、後々正式にリリースされるSaaSの顧客基盤の強化を見込めると考えています。
新Eコマースサービスの展開と事業再編
大企業向けにソフトウェアを大幅アップデートした「EC-CUBE Enterprise」を2024年中にリリースする予定です。
これまで、大企業に対してはEC-CUBEをベースにソフトウェアそのものもカスタマイズしてきました。
それを低価格でご提供できるようにと考え、大企業向けにある程度の大規模開発にも対応できるような標準的な型を作ったものが本サービスです。
このEC構築モデルを起点にアプリケーションや構築ベンダー、運用、集客、物流に至るまで当社が一気通貫でご提供していこうと考えています。
そして2024年1月からは子会社の株式会社イーシーキューブが株式会社EC-CUBE Innovationsを吸収合併して、この垂直統合モデルを更に推し進めていく予定です。
注目していただきたいポイント
改めてにはなりますが、当社のビジョンは「データとテクノロジーによって、世界中の企業によるマーケティング活動を支援し、売り手と買い手の幸せをつくる企業になる」ことです。
SaaS領域におけるプロダクト開発では、多岐にわたる技術力やケイパビリティが必要です。
プロダクトの企画から始まり、プロダクトやインフラの設計、構築プログラミングやテスト。
更にはマーケティング活動やインサイドセールス、パートナーセールス、UI、UXなど膨大なサプライチェーンを経て一つのプロダクトができあがっています。
ただ、この技術力はプロダクトが多少変わったとしても共有できる部分や活用できる部分が一定程度あります。
当社はこれまで、20年近くSaaSを提供してきました。
そのため、今後新たなサービスを開発する上で、20年間で培ってきた組織基盤を生かすことができます。
確固たる組織基盤を元に、新たなサービスを開発していくための環境が整っている、という点にはぜひご注目いただきたいと思います。
投資家の皆様へメッセージ
安定したビジネス基盤と、有望なマーケティングおよびEコマース領域での追い風を生かし、新たな市場を開拓していきます。
しっかりと勝ち筋が見えている方向に目標を定めておりますので期待していただければと思います。
本社所在地:
【大阪本社】〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田2-2-22 ハービスENTオフィスタワー8F
【東京本社】〒100-0006 東京都千代田区有楽町2-2-1 X-PRESS有楽町12F
設立:2001年6月4日
資本金:31,806万円(2023年 9月30日現在)
上場市場:東証グロース市場(2014年9月17日上場)
証券コード:3690