※本コラムは2024年2月5日に実施したIRインタビューをもとにしております。
プロパティデータバンク株式会社は「知識の集約により顧客の業務に革命を顧客の資産に価値向上を」をビジョンに掲げ、顧客の保有する不動産・施設の運用管理の支援を目的として、不動産・施設管理のための不動産クラウドサービス 「@property」を提供しています。
代表取締役社長の武野貞久氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
プロパティデータバンク株式会社を一言で言うと
マルチテナントな「パブリッククラウド」を提供する不動産DXプラットフォーマーです。
プロパティデータバンクの沿革
創業経緯
当社は、2000年10月に清水建設の社内ベンチャー制度から生まれた第一号企業です。
創業者であり現会長の板谷は、私と同じくエンジニアリング部門出身です。
創業前に経営企画室で新しい事業開発の勉強をし、親会社の出資比率に制限を設けたベンチャー制度を作りました。
実は過去より建築系の社内ベンチャーは、親会社の意向によって一部門としての役割しか果たさずにスケールできない点が課題です。
しかし当社の創業にあたり、ヒューレットパッカードやオリックスのベンチャーキャピタルなど、名だたる企業が株主として参加しました。
彼らは取引を目的とした機関投資家ではなく、当社のビジネスモデルの成長と将来性を信じて支援してくれました。
このようにして創業した当社は、他の社内ベンチャーとは異なる形で清水建設だけではなく多くの企業からの支援を受けて成長してきました。
「パブリッククラウド」の提供
当社は創業当時から「パブリッククラウド」を提供し続けています。
設立当初の2000年はインターネットが普及し始め、アメリカではREIT(不動産投資信託)が注目され始め、不動産業界にも新たな管理手法が必要だと感じていました。
それまでの紙ベースや勘に頼った管理から脱却し、会計や経営の観点からシステマティックに不動産を管理する必要性を強く意識していました。
そしてREIT事業から「@property」のサービスを提供し始め、その後一般事業者向けにサービスを拡充していきました。
現在はREIT市場の成長速度がそれほど速くないため、より大きな市場である一般事業、特に商業不動産向けのサービスに重点を置いています。
プロパティデータバンクの事業の概要と特徴
概要
当社は、パブリッククラウドを提供し利用料や業務委託料を受け取りながらサービスを提供するSaaSモデルです。
現在、当社の売上はREIT事業が2割から3割を占め、残りが一般事業となっています。
不動産業界は一般的にBtoCのイメージが強いですが、我々はBtoBに特化してサービスを提供しています。
事業における優位性
「@property」の優位性
当社の提供する「@property」はユーザーの不動産データを預かり、創業以来一貫したパブリッククラウド型サービスを提供しています。
創業当時はSalesforceが日本に進出してきた頃で、「クラウド型」という考え方が無かった時代から同様のアプローチを継続してきました。
そして、ユーザーのニーズに対応するために機能の更新を定期的に行い、最新の機能と万全のセキュリティ体制を実現しています。
不動産や資産管理のあらゆる業務を網羅しているため、機能は非常に多岐にわたっています。
「@property」はすべてのデータがクラウド上でつながっているため、どこからでもデータを取り寄せできるような仕組みになっています。
そして「@property」を導入することでユーザーがワンシステムで業務を行える環境を実現しています。
解約率の低さ
「@property」の非常に解約率は低く、継続してストック収入を得るビジネスモデルを確立しています。
これは、不動産業界のDX化が遅れていること、またクラウド技術の普及が進んでいないため、一度導入されるとその価値を認識しやすい環境にあるからです。
しかし、それだけが理由ではありません。
我々はERPシステムのように、業務範囲を広げて導入を行っており、その結果、ユーザーが当社のサービスを深く組み込んで使用するようになっています。
また、「@property」は時間が経つにつれて、さらに機能が追加され、ユーザー自身も不動産の可視化など、メリットを享受しています。
そのため、解約するのは年間で数社あるかないかという状況です。
コンサルティング営業
特にここ数年、当社は導入コンサルティングに力を入れており、BPRのコンサルティングを通じて、ユーザーの不動産業務を根本から見直し、改善しています。
単にシステムの導入支援を行うだけでなく、お客様と共に業務プロセスそのものを深く分析し、最適な解決策を模索する点にあります。
このアプローチにより、ユーザーが自ら要件を定義し、それに合わせてシステムをカスタマイズする従来の方法とは一線を画しています。
また、不動産業界に特化した深い知見と技術力を持ち、業界内で見られる様々な課題に対して、独自の解決策を提供できる点も、他社との大きな違いです。
そして当社は「@property」の優位性にもあるように、不動産営業のプロセスから財務会計まで、ビジネスの全段階を一貫してサポートするシステムを構築しています。
これにより、ユーザーは業務の各ステップをシームレスに管理し、より効率的な運営が可能です。
さらに、業務プロセスの可視化だけでなく、データの収集・分析にも強みを持っており、新たなビジネス創出にも役立っています。
プロパティデータバンクの中長期の成長イメージとそのための施策
「@property」の機能拡充
企業等が保有する不動産資産の「取得・管理運営・売却」までの一生涯をあらわす「不動産WHOLE LIFE」に重点を置いており、それを「@property」でカバーしていきます。
不動産は所有者が変わっても生き続けるため、その様々なフェーズでデータを蓄積して適切な評価や資産管理をサポートしていきます。
不動産業界のDX化推進
2022年に、紙ベースのデータをデジタル化する会社をM&Aし、不動産関連文書のデジタル化サービスを拡大しています。
不動産業界においてはまだ紙の契約書や図面が多く、これらをデジタル化し、管理しやすくすることで、業務の効率化を実現しています。
これまで紙ベース管理していた場合は、データの蓄積が行われていないのでデジタル化することによってデータ分析に繋げ、新しい発見や価値創造に繋がると考えています。
業界全体がDX化に遅れをとっている中、着実に事業を進めていきたいと考えています。
新領域への展開
既存事業だけではなく新領域への展開も行っていきます。
例えば直近では、商業向けの店舗開発支援クラウド「@commerce」をリリースしました。
このサービスでは出店情報を一元的に集約し、AIを用いて各物件での売上予測を行うことが可能です。
また、「@property」の得意とする機能を活かし、店舗運営に関わる財務管理や契約業務をワンストップで提供しています。
この機能により、ユーザーはより戦略的な店舗開発を行うことができます。
既に大手事業者にも導入を検討されており、中小規模のユーザーにも展開していくことで拡販を狙っています。
注目していただきたいポイント
当社は、安定的に成長を続ける企業です。
そのため急激な成長を見せるわけではありませんが、事業が急に消滅するリスクも低いと自負しています。
我々はパブリッククラウドサービスを提供する民間企業でありながら、公共性の高いサービスを日本の不動産業界に提供しています。
そして当社が提供するシステムは、その独自性から見ても、世界的にも類を見ないものです。
そのため、将来的にはアジア全域、特にシンガポールなどへの進出も視野に入れています。
安定的な当社の成長に注目していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
当社の「パブリッククラウド」を提供している点は、他社にはできない大きな強みです。
不動産業界における持続可能な成長と革新を目指し、新たな市場への進出も計画しておりますので、長期的な視点でのご支援とご理解をお願いいたします。
本社所在地:東京都港区浜松町一丁目 30 番5号浜松町スクエア(受付6F)
設立:2000年10月2日
資本金:332,715,000円(2024年2月アクセス時点)
上場市場:東証グロース市場( 2018年6月27日上場)
証券コード:4389