※本コラムは2023年2月14日に実施したIRインタビューをもとにしております。
不動産に関するノウハウを活かし、人とサービスの質の向上を常に意識した保育所を運営する株式会社さくらさくプラス。
代表取締役社長の西尾義隆氏に、保護者の皆様に支持され続けるための施策と、今後の展望について教えていただきました。
株式会社さくらさくプラスを一言で言うと
未来の日本を支える、保育・子育て支援の領域において”人”にフォーカスした事業を展開する会社です。
創業の経緯
もともとは不動産業界に勤めていたサラリーマンでした。バブル崩壊後に業界全体が厳しい状態になり、そのタイミングで独立をいたしました。しかし、不動産事業はハイリスク・ハイリターンな領域であるので、安定した事業をやっていきたいと思っていました。
この当時、女性は出産を経ると保育所に子供を預けられず会社に復帰できないことが多くありました。これは女性たちにとっても、また会社にとっても機会の損失となりますし、今後はさらにこのようなケースが増えるだろうと考えていました。
これを解決するためには、まずは保育所の数を増やすことが必要なのではと考え、不動産業界の経験もありましたので当領域で事業を立ち上げることに決めました。
当社の転換点は大きく2つございます。
1つ目は、当社が持つ不動産に関するノウハウを大きく活用し、2011年に初となる認証保育所を月島で開園したことです。月島はニーズの高いエリアであったため、東京都から補助を受けられる認証保育所を開園できたのです。
まだ保育に関するノウハウは十分ではなかったかもしれませんが、不動産業界での我々の経験を最大化できたという意味でターニングポイントとなりました。
2つ目は、大阪での認可保育所の開園です。
認可保育所とは補助金を100%受けることのできる施設です。全国的には2000年に株式会社が認可保育所事業への参入することが認められていたのち、大阪府でこの適用がスタートしたタイミングで当社も参入することができました。
このように経験値がノウハウとして徐々に積みあがり、実績となり、またエリアを東京にも広げ事業を拡大してきました。
上場を意識したタイミングは、2015年、16年あたりになります。周りで保育事業者が上場し始めたことも要因としてありますが、一番はパブリックな企業になることで、当社に興味・関心を持っていただきたいと思い、上場を目指しました。
また、昨今の国力低下の話の流れからも、保育業界に少しでも興味を持っていただき、共感していただける方がいらっしゃれば、当社へのご支援を通じて日本の保育業界の成長に貢献したいという想いもありました。
事業内容について
全般としては、子ども・子育て支援事業になります。文字通り、子ども、そして子育てを支援する会社であります。
その中でも、中核は認可保育所です。創業当初から、当社はこの領域で成長を続けてきました。
東京中心のマーケットを対象にすることで、核家族化や共働き世帯からの高いニーズを安定的に確保することができ、事業を持続的に拡大させていけると考えています。
さらに、開園地域を限定することで、人事異動がしやすくなったり、地域と社会のつながりの中で認知を上げやすいというメリットがあります。
これに付随して、不動産と保育所運営の豊富なノウハウを生かした保育所を軸とし不動産開発事業や、子育て世帯を支援すべく子育て支援住宅の企画・開発も行っております。
さらには、保育関連業務の適正化および保護者支援という観点から、ICT事業にも取り組んでいます。
保育業界の労働時間が長大化している中で、ワークライフバランスを保つべく、保育所における事務作業のうち、機械化できるところは機械化するということを目的としています。
ですが、保育業界というのはITリテラシーが高くはない業界であるため、それをどのように導入するかという点に注意して進めております。特に、保育士の方々は年齢層が幅広く、各々の感覚は大きく異なっているため、世代間のギャップに丁寧に対応することが重要であると考えています。
我々としては、闇雲に機械化・効率化を進めるのではなく、その取り組みが本当にするべきことであるのかを常に意識し、その上で必要な推進については一つ一つ説明しながら進めていくことに努めています。
また、今年の2月には、『株式会社保育のデザイン研究所』の完全子会社化を発表し(株式取得は2023年4月を予定)、保育研修事業に取り組むこととなりました。学びの機会を増やすことで保育の質をさらに向上させ、ひいては保育業界全体での質の向上を図ることを目的としております。
そのほか、子連れでも安心して楽しめるカフェや進学塾の運営も行っております。
中長期の成長イメージとそのための施策
認可保育所の運営に関しては引き続き基盤事業として育てていく部分となります。
業界動向としては保育所の開所のピークはすでに超えていますが、保育所の利用率は10年前と比較して上昇しています。このような状況下において求められることは、選ばれる保育所づくりです。
この先、人気の保育所にはどんどん人が集まり、そうでないところは募集が減っていくという二極化が進行すると見込んでおります。そのため、高クオリティのサービスを提供するべく、いくつかの戦略を取っています。
まずは、本部と園との関わりを密接にすることです。
保育所で働く職員の人間関係が、その園だけで完結してしまわないよう、それぞれの園を風通しの良い環境にしています。そうでないと、その園独自のルールや感覚で運営をしてしまう傾向も少なくありません。
開かれた園づくりを意識し、管理というほど堅苦しいものではありませんが、足元では本部と園で密接なコミュニケーションをとることを心がけております。
実際、この取り組みにはコストがかかってしまいますが、それは選ばれる存在となるために必要なコストであると認識しており、投資を惜しむことはありません。加えて、従業員へのアンケートも実施し、良質な保育所の運営の妨げとなるような問題をすぐに発見・解決できるような体制を整えております。
このように我々は、入園していただいた子どもたちはもちろん、園で働く従業員も大切にしています。会社組織としては、昨今話題となっている不適切保育防止も含めた、リスク管理の一種と思っています。
さらに、保育所周辺事業として、子育て支援住宅の開発や保育園みらいファンドの取り組みも進めてまいります。
こちらは業界内でも不動産開発に強みを持つ当社独自の戦略であると自負しており、また保育所事業よりも利益率の高い事業となっております。
保育所の運営には一定の制約があり、かつ労働集約型で人員が必要なビジネスモデルです。そのため、どうしても一人あたりの生産単価が高く、利益率が高くないのが現実です。
基盤事業の保育所運営による安定性のある事業と、不動産事業をはじめとする高い利益率を見込める事業の二軸を中心としたハイブリッド経営でさらなる成長を目指します。
進学塾運営についてですが、少子化の一方で、子供一人当たりにかける教育費が増加するなど、少子化とは相関しない成長が見込まれる領域かと予想されています。
ここで当社は、偏差値以外の能力に着目しています。近年、進学校を中心に、入学試験や中高教育において求められる能力が多様化しています。そのような能力を伸ばす進学塾を運営することで、子ども・子育て支援事業をさらに拡充させてまいります。
投資家の皆様へメッセージ
保育所運営を通じて育ってきた会社ではありますが、それだけに留まらず、またそれをどのように利活用するかを考えているのが当社です。
子ども・子育て支援というのは、中長期的な視点で見たとき、社会、そして国にとっても必要なものであります。子どもを安心して育てられるような社会環境をつくる義務があると考えていますし、我々はこれに多方面から真剣に取り組んでいます。
投資家の皆様には、将来の日本への投資を含めて我々の取り組みを応援していただきたいと思っております。
本社所在地:東京都千代田区有楽町1丁目2番2号 東宝日比谷ビル
設立:2017年8月
資本金:574,565,430円(2022年7月末時点)
上場市場:東証グロース(2020年10月28日上場)
証券コード:7097