※本コラムは2022年9月7日に実施したIRインタビューをもとにしております。
社会的ニーズが高いと言われている訪問看護ではあるが、廃業や離職率が高く、マネジメントが難しいと言われる業界。会社として働きやすい環境を作るために、業務効率化、IT化など自らの経験をもとに進め、社会的信用を得るために上場を決意したRecovery International 株式会社。代表取締役社長の大河原峻さんに、話を伺いました。
Recovery International 株式会社のビジネスの概要
Recovery International 株式会社を一言で表すと
24時間365日のサービスを提供しながら、現在、上場企業では唯一訪問看護単独で事業を行なっている会社です。
他社の上場企業でも訪問看護事業は行なっております。ただ他社では、居宅介護事業所などの他サー ビスと複合的に行なっています。当社はそう言った意味で他社と違い、訪問看護単独での唯一の上場 企業となります。
創業の経緯
大学を卒業して地方公務員になり、病院で看護師として働いていました。静岡の田舎で公務員になったので家族、親戚はすごく喜んでいました。
外科病棟の配属を希望していましたが、手術室担当として配属されました。配属後も外科病棟への憧れ から手術室以外の勉強ばかりしていました。異動したいと何度訴えても実現することはなく、そんな日々 を過ごしていたら、手術室にいる上司からは評価されなくなっていきました。
看護師の世界は変化よりも安定を好むことが多いと感じていました。当時私が勤めていた病院は、院内 に明確なヒエラルキーがあり、年功序列の傾向が強い印象を持ちました。向上心が人一倍強かった私 は、積み重ねてきた努力に対して期待していたような結果にならないことも多く、努力しても報われな い、当時はそう感じてしまいました。
なかなか努力が実ることのない日々にもどかしさを感じた私は、その理由が公務員であるからいけない と思い、一時は市立病院で働いたこともありますが、やはり頑張っても評価されない風潮は変わりませ んでした。
そこで、当時の日本の制度は自分に合わないと思い、オーストラリアに留学しました。しかし現地の病院 はすごくドライな環境で、自分が求めている形とは全く異なるものでした。
私は看護師としての職のあり方を探すために海外を放浪しました。
その際訪れたフィリピンやベトナムでたまたま今の訪問看護に出会いました。フィリピンなどでは高齢者の介護や看護は自宅で面倒を見ているのが当たり前でした。
その当時日本では在宅介護や訪問看護は今よりもっと普及しておらず、ニーズはあるのに不足している状況でした。この状況を打破し、訪問看護を日本で普及させたら、頑張った分が社会に評価されるのではと思い、日本で起業したのがRecovery International 株式会社の始まりです。
ただ、訪問看護は社会的認知度や地位も今より低く、会社としての信用も薄いものでした。そこで病院より信用があることは何だろうと考え、たどり着いたのが従業員やその家族のために上場することでした。
事業内容
具体的な業務内容は
訪問看護と言って、介護とは異なり何かしらのご病気をお持ちでリスクを抱えていらっしゃる 方々に看護師からのサポートを提供しています。みなさまが仕事を終えたら家に帰りたいと思うのと同じ ように、高齢者の方も約51%と多くの方がご自宅で最後を迎えたい、と思っているものの、残念ながら 日本は約13.9%(半分は施設の最後も在宅死という認識)しか自宅で過ごせていないのが現状です。
そのような方々のため、具体的には自宅で点滴を行ったり、人工呼吸器の完備やお薬の管理、入浴のサポートまで、全て医師からもらう指示書をもとに治療を行なっていきます。
業界としては新規参入が多い一方、5人未満の事業所が乱立しており、なかなか規模として大きくならないことが問題にもなっています。
業界が抱える問題としては、認知度が低いこと、FAXなど紙でのやり取りなどIT化されていないこと、看護師の人材が不足していることです。実際、日本に看護師は約150万人いますが、訪問看護師として働いているのは約9〜10万人のみです。
Recovery International 株式会社が拡大し続けられる理由
成長しない事業所が多い中、なぜ当社が拡大し続けられるかというと、看護師たちに営業のノウハウであったり、IT化の推進、未経験者の積極採用など若い方の活躍の幅も増やしているからです。効率化を図るために各地域の商圏を守りながら地域貢献をし、看護師の育成期間を設けながらも全員が独り立ちできるように育てていきます。
また事務も本社で一元化し、全てクラウド化することにより、コストも削減しています。
当社のコスト構造としましても、基本的には人件費がほとんどを占めていますが、営業利益率が高い部分が当社のモデルにはなっています。
コロナ禍においても影響を受けず、業績が伸び続けている理由は、保険単価は国で決められているので、利用者数や従業員数、拠点数を増やしていけるかという単純なビジネスモデルになっているからです。
従業員一人あたりの平均件数が増えていけばそれだけ利益率も上がっていきます。介護施設と異なるところは、家賃や光熱費などの固定費が少なく、利益率が同業と比べると出やすいのが訪問看護であります。
しかし、稼働率を上げすぎてしまうと離職率が上がってしまうので、業界平均からしたら高い方だと思いますが、12〜13%程度の収益構造が当社は一番良いと思っています。拠点数は年間4〜7拠点を目安に出店しており、今期もしっかり4拠点増やしました。来期も7拠点の準備が進んでいる状況であります。
中長期の成長イメージとそのための施策
Recovery International 株式会社の成長余力の認識とは
現在当社は前期で8.1億円くらい売上を上げており、市場としては5824億円くらいの売上高があります。
そして、2040年にこの市場は急拡大すると言われていますが、理由は、2025年に段階世代の方が後期高齢者という75歳以上を迎えるからです。その後、その子供世代が後期高齢を迎えるのが2040年と言われていますので、市場としてこれから伸びていくのが訪問看護業界であります。後期高齢社会と言われてから、利用者数は増えていますが、特にコロナ禍に於いて、家での療養というのが注目されてきております。
その市場に追いついていくためにやっていくことは、まず市場における優位性を高めていくことです。そこから先については、関連市場が多いので、M&Aをし、より会社として事業を加速させていくことです。明確に言うと、訪問看護事業所は日本に約1万5000拠点ありますが、その1割は取っていきたいと思っています。
当社の成長を指標で見ていただくポイントは事業所数と看護師の方の採用人数などを見ていただくとわかりやすいと思います。
コンサルティング事業やFC事業の構想について
訪問看護の廃業率が8%くらいなので、そこをサポートできるように小規模の事業所をどのくらい人を増やしていけるかなど、訪問看護のコンサルティングを少しずつ始めています。
そして、M&A戦略を少しずつ進めていきながら、当社のオウンドメディアも現在20万PVほどあるので、今後は看護師さんの人材紹介などもできれば利益率も少しずつ上げていきたいと思っています。
フランチャイズ化に関しては悩みながら進めておりますが、今は本業の訪問看護を伸ばしていくことが最優先であると思っています。ですので、中期経営計画にもフランチャイズなどの利益構造は入れておりません。
投資家の皆様へメッセージ
訪問看護自体の社会的ニーズは高く、これから伸びて行く業界であると思っています。
ただ 業界や事業的にも急激に業績が上がるものではないので長期的に見ていただけたらと思います。
今後、新規事業を行なっていきながら、投資家の意見も重要だと考えているので皆様の声を取り入れ、 会社や社会の発展に繋げていきたいです。 また近年は、早期に介護退職する方や老老介護の家庭も増えており、こういった社会問題を解決する のも訪問看護だと思っております。弊社も投資家の方々と一緒に成長していきたいと考えております。
Recovery International 株式会社(Recovery International Co.,Ltd.)
本社所在地:東京都新宿区西新宿 6-16-12 第一丸善ビル6F
設立:2013年11月
資本金:198,532千円 (2022年2月3日時点)
上場市場:東証グロース(2022年2月3日上場)
証券コード:9214