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【7694】株式会社いつも代表取締役社長 坂本守氏「“ECで売る力”のさらなる強化とビジネスモデルの拡張」

※本コラムは2023年3月14日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社いつもは「ECで売る力」をコアコンピタンスに、EC事業代行やブランドメーカーなどにも事業を拡張させてきました。

代表取締役社長の坂本守氏に、これまでの事業変遷の背景や、形成されてきた強み、さらに今後の戦略を教えていただきました。

目次

株式会社いつもを一言で言うと

「日本の未来をECでつくる」をミッションとし、EC事業を総合支援する会社です。

設立時の思いはノウハウがなくEC事業に挑戦できなかった中小企業の実情を変えたいというものでしたが、現在は中小企業から大手企業まで、幅広い層へのサポートを提供しています。

また、EC事業支援とともに自社もメーカーとして事業を行っている点も大きな特徴であり、この二つを兼ね備えていることが差別化につながっております。 

創業の経緯

2007年に現取締役副社長の望月氏と共に、中小企業の成長を支援する会社を作りたいと思い、EC事業の総合支援に特化した会社を設立しました。前職で共に経営コンサルティングに従事していた我々は、ECというデジタルの進化は、場所や時間の制約を受けずに新しいビジネスを作り出す、中小企業の発展に貢献できる仕組みであると考えたのです。

ただ、一口にECと言っても、事業として成立させるためには商品の良し悪し以外にも裏側に多くの機能が必要となります。事実、中小企業の経営者の多くがこの課題に直面し、ニーズがあってもチャレンジできていないという課題がありました。

そのような方々が必要とする多角的な機能を提供することで、彼らを支援する会社を作ることができると思い、企業向けにEC支援を提供するというアプローチに至りました。

当社の一番のターニングポイントは、2016年に自社で直接消費者に向けて販売するEC事業代行へとビジネスモデルを拡張したことです。これにより、会社の売り上げも急増しました。

それまでお客様の裏方で売上拡大のノウハウをお伝えしてきた身として、当社自体が直接消費者に販売し、その確からしさを体現することが重要だと考えたのです。

当事業開始までの約10年間、数多くの企業のEC事業をサポートしてきたことで、我々のコアコンピタンスである「EC で売る力」が身についたこともこの転換期においては重要な出来事でした。

また、上場するに至った理由はいくつかあります。まず、2017年頃には社員数が100名を超え、より多くのニーズにお応えするためにECに精通した人材を確保し、育成することが必要だと考えたためです。グローバルな事業展開を進める上でも、上場することが重要だと判断し、2020年に上場いたしました。

事業内容について

企業向けのECマーケティングサービスと消費者向けのECマーケットプレイスサービスの二つを主軸に運営しています。

株式会社いつも 2023年3月期 第3四半期決算説明会資料 2023年2月14日 より引用

ECマーケティングサービスは当社の祖業で、コンサルティングやサイト運営、カスタマーサービスから配送まで、ECに必要な機能を全て備えています。

また、自社サイトの他にも、楽天・Amazon等各種プラットフォームでの運営など、お客様によりそのサポート体制は多岐に渡りますが、「売る力」をコアコンピタンスに総合的なサービスメニューを取り揃えていることが我々の強みであります。

ECマーケットプレイスサービスでは、EC事業代行の「ハンロー」とブランドバリューアップの2種類のサービスを運営しております。「ハンロー」は大手メーカーの商品を仕入れた上で、ECサイトを当社自身で運営させていただき、消費者向けに直接販売するモデルとなっています。

一方、ブランドバリューアップは自社で製品開発・製造・販売までを行うものです。こちらは上場後に開始したもので、M&Aで取得したブランドに当社が培ったノウハウを提供し、バリューアップを図っております。

また収益の体系といたしましては、ECマーケティングサービスが月額固定という形で、1年契約で安定的な収益に貢献しています。マーケットプレイスサービスはto C向けのサービスですのでサイト上で売れた金額(GMV)=当社の売上高となり、ここから仕入れ・物流コスト等を引いた差額が粗利として計上されます。

会社としての生産性を向上させていくという観点では、組織の中で社員が育っていく過程で収益の生み出し方も変えられるビジネスモデルが一社で備わっているという点も非常に重要だと認識しています。

繰り返しになりますが、当社のコアコンピタンスは「ECで売る力」であり、事業の変遷も核となる部分に積み上げを重ねてきた結果であるとご理解をいただければと思います。

株式会社いつも 2023年3月期 第3四半期決算説明会資料 2023年2月14日 より引用

この強みを形にする仕組みを、当社では「いつも.マーケティングチェーン」と表現しています。先に申し上げたEC事業全体のサポートサービスやクロス(複数)チャネル支援、そして自社に蓄積された支援実績をもとにしたトータルサポートの仕組みです。

これにより、各フェーズを別々に担当するパートナーがいる場合に比べ、お客様の求めるEC事業戦略を安価に、かつ素早く実現できるというメリットに還元されています。

クロスチャネル運営については、特に大手企業ではプラットフォームごとに異なる担当者がおり、戦略が部分最適になってしまう傾向があります。また、そのマーケティング手法も異なるなど運営には難しさがあります。

その中で、創業以来この領域に取り組み続け、ノウハウを確立していることは大きな差別化ポイントです。

株式会社いつも 2023年3月期 第3四半期決算説明会資料 2023年2月14日 より引用

加えて、支援実績のデータを「マーケティング・アセットライブラリー(MAL)」として蓄積しております。

成功・失敗事例の双方のデータをもとに単価や販売チャネルを最適化する事業計画を立てることができるのです。また、必要なコストについても自社が蓄積してきたデータを基に算出することができます。

企業向けのECマーケティングサービスと、消費者向けに直接販売するEC事業代行は、一見すると相反するように見えるかもしれません。ですが、我々の中でこの二つは互いに好循環を生み出すものであります。自社販売の成功事例をお客様に伝えていくことも重要ですし、逆にお客様と作りあげたものを自社で実践し、ブラッシュアップした上でお客様還元していくという発想で事業を行っているのです。

株式会社いつも 2023年3月期 第3四半期決算説明会資料 2023年2月14日 より引用

中長期の成長イメージとそのための施策

コア事業でありますECサービス事業を高い成長率で拡大させつつ、ブランドバリューアップを成長事業、さらにソーシャル・ライブコマース領域を新規事業と位置付け、5年以内に売上高510億円の達成を目指してまいります。

株式会社いつも 中期経営計画 2022年6月29日 より引用

ECサービス事業においては、ストック売上を構成する要素である平均単価の向上を施策の一つとしております。クロスチャネル展開・ブランド増強・サービス拡充により、クライアント企業の成長に合わせて段階的な拡大を提案し、ストック型で売上を積み上げていくサービスだと考えています。

安定的でありながら足元でも毎年、当事業の売上は約20%の成長を実現しておりますので、引き続き安定した成長をしていきたいと思います。

株式会社いつも 中期経営計画 2022年6月29日 より引用

一方、事業拡大に向けた人員増加に伴い一時的に利益率は低下しておりますが、「MAL」を活用し仕組み化された教育プログラムによって、未経験者でも早期に育成が可能である点にもご注目いただきたいと思います。

バリューアップ事業についてですが、現在はM&Aの取得条件を一部見直すともに、取得済みブランドでの拡大に注力してまいります。成長ドライバーとしてはM&Aを変わらず重要視しておりますが、取得後のバリューアップがどれだけできるかをお示しすることが最大のポイントだと認識しているためです。

また、昨年11ブランドを取得したことで、どのような会社がよりシナジーを生むのかをしっかりと精査することができました。今後は、より規模感のある、サプライチェーンもしっかりと構築されているような会社をM&Aし、バリューアップさせることによりさらなる成長を目指しています。

株式会社いつも 2023年3月期 第3四半期決算説明会資料 2023年2月14日 より引用

さらに、新しい購入体験であるソーシャルコマース※とライブコマース※は新規事業として取り組んで参ります。Eコマースで培ったケイパビリティとクライアント企業との関係性に優位性があると考えています。

  • ソーシャルコマース:ソーシャルメディア(SNS)とEコマース(EC)を掛け合わせて商品の販促を行う販売チャネルのこと。
  • ライブコマース:ライブ配信とEコマース(EC)を掛け合わせて商品の販促を行う販売チャネルのこと。
株式会社いつも 2023年3月期 第3四半期決算説明会資料 2023年2月14日 より引用

例えばライブコマースに関していうと、ライバー自身で魅力的な商品を揃えることはなかなか難しいものです。

そこで当社は企業とライバーのマッチングサービスをリリースしました。実際の反響も良く、このように魅力的な商品を提供する「場」を整えることが、我々の提供できるノウハウであります。

また、企業側も当領域は非常に重視しておりますので、拡大においては当社がすでにお取引のあるお客様との関係性を活かしたアプローチを想定しております。さらに当社は様々なプラットフォームのオペレーションを経験しておりますので、お客様が出店や運営をストレスなく行うことができるようなシステムの開発にも強みを持っております。

この領域は、海外企業の動向等からも市場の拡大が見込まれておりますが、まだまだ新しいマーケットです。このような段階から、我々がこれまでに培ってきた強みを活かし、市場自体の成長にも寄与しつつ新しい購入体験を創造していきたいと考えています。

投資家の皆様へメッセージ

既存事業では着実に収益を稼ぎつつ、その成長を土台にライブコマースなどの新規事業に積極的な投資を行っていきますので、これからの成長に期待していただけますと幸いです。  

株式会社いつも

本社所在地:東京都千代田区有楽町1-12-1 新有楽町ビル 7階

設立:2007年2月14日

資本金:7億4092万円(2023年3月アクセス時)

上場市場:東証グロース(2020年12月21日上場)

証券コード:7694

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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