中・高級有料老人ホームを近畿圏、首都圏に多数展開している、株式会社チャーム・ケア・コーポレーション。2005年6月期以来、17年間にわたって成長し続けています。今後の中長期戦略について、代表取締役会長兼社長の下村隆彦氏に話を伺いました。
株式会社チャーム・ケア・コーポレーションのビジネスの概要
株式会社チャーム・ケア・コーポレーションを一言で言うと
「豊かで実りある高齢社会」づくりに貢献します、ということをミッションにして、近畿圏および首都圏において有料老人ホームを展開している会社です。ただ、介護事業だけに特化していこうとは思っていません。
富士フイルムは、もともと写真のフイルム製造で大手でしたが、デジタルカメラへの移行によって写真フイルムへのニーズが無くなる過程で、その技術領域を活かしてヘルスケアや高機能材料へと事業転換をはかり、成功を収めています。
一方、私たちはこれから事業の複合化を推し進めていきます。介護事業が事業の柱であることには変わりありませんが、第二、第三の柱もつくり、たとえばこの事業が低迷したとしても、他の事業がそれを支えるという事業ポートフォリオ戦略を、打ち出してまいります。
たとえば今から3年前、誰が新型コロナウイルスの感染拡大を予想できたでしょうか。まさか、世界中の主要都市がロックダウンして経済活動が止まるなんて想像もできませんでしたし、ウクライナ紛争もまさに青天の霹靂でした。そのくらい時代の先行きが不透明感を増し、読みにくくなってきています。
だからこそ、私たちは介護事業だけでなく、不動産事業やAI対話事業も展開し、何があったとしても、チャーム・ケア・コーポレーションの事業継続性を担保できるような、強い事業基盤を構築していきたいと考えています。
創業の経緯
私の本業は建設業でした。30歳の時、祖父から事業を引き継ぎました。最初は大分苦労したのですが、雑工事を中心に請け負うようになりました。雑工事というのは、修繕、改修、リノベーションなど新築工事以外の工事のことで、売上は大きくないものの、利益率が高いというメリットがあります。
この雑工事に特化するなかで、時代はバブル経済を迎え、多くの建設業者が事業規模を拡大していきましたが、あっという間にバブルは崩壊し、倒産する業者も少なくありませんでした。
私が経営していた会社は雑工事に特化していたこともあり、バブル崩壊の影響をほぼ受けることなく、その時点ですでに20億円程度の利益剰余金がありました。売上40億円で20億円の利益剰余金ですから、財務内容は極めて良好でした。その時、銀行が私募債の発行を勧めてきたので、起債で資金調達をし、30億円で不動産投資をしました。100億円くらいの値打ちがある物件でしたが、バブル崩壊で地価が暴落していたので、15%くらいの利回りで買うことが出来ました。その後、不動産の賃貸収入だけで年間4億5000万円くらいの収入になったと記憶しています。
悠々自適で、このままでも良かったのですが、還暦を迎えた時、自分のそれまでの人生を振り返って、何かが足りないような気がしました。社会貢献が出来て、自分がもうひと踏ん張りできる仕事は何かと探していた時、世話役をしていた異業種の会で知り合ったのが、介護コンサルタントの方でした。介護保険法の制定によって、民間でも介護の事業が出来るという話を聞き、これなら超高齢社会に貢献できると考え、介護事業に乗り出すことにしたのです。
事業内容
介護事業は全部で25種類あるのですが、私たちは住居系の介護付有料老人ホームに経営資源を集中しています。
住居系といっても、介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅などに分かれるのですが、私たちは介護付有料老人ホームに集中しているのが特徴です。
なぜ介護付有料老人ホームに集中しているのかというと、売上と利益を確保しやすいビジネスモデルになるからです。
介護保険が始まった当初は、誰でも申請すれば介護付有料老人ホームを開設できました。ところが、あまりにも急激に開設数が増えたものだから、公募に切り替わりました。
行政側が一番恐れるのは、野放図に申請をおろした結果、経営力も運営力もないような業者が介護保険目的でどんどん参入し、挙句の果てに倒産してしまうことです。そのリスクを抑えるため、行政としては公募にして事業計画の提出から書類審査、ヒアリングまで厳密に行うようになりました。
そうなると、私たちのような上場企業は優位なポジションに立てます。そもそも経営力が無かったら、上場など出来ませんから。つまり私たちにとってはかなり優位性が保てる経営環境になっているのです。
もうひとつ、私たちは今、近畿圏だけでなく首都圏にも進出していますが、首都圏の高級住宅地はこの特定枠が余っているのです。新宿、渋谷、品川、目黒などが代表的ですが、いずれも人口が多く、結果的に要介護の方も大勢住んでいらっしゃいます。
でも、施設が少ない。なぜなら施設を建てるための土地が少ないこともあるのですが、土地があったとしても、地価が非常に高いという問題があります。
当然、地価が高いようなところは、中小の事業者が施設を建てたとしても収益化できませんから参入してきません。
私たちが首都圏に進出できたのは、ヒューリックや三菱地所などの大手のデベロッパーが、良い土地を見つけてきてくれて、私どもに声をかけてくれたのが大きかったと思います。それが奏功して、首都圏で高級有料老人ホームを運営していることが、私たちのブランド力、ひいては信用力の向上にもつながっています。
中長期の成長イメージとそのための施策
第1号の施設を開設したのが2005年でした。2021年6月の売上が229億8400万円ですから、この17年間で、売上が約230億円しか積み上がりませんでした。
でも、ここからは成長期に入るものと考えています。
2022年6月期は当初300億円の売上を見込んでいたものの、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、売上目標に対して約9億円未達の290億7100万円に止まりました。
それでも、2023年6月期の予想売上は404億6000万円。そして2024年6月期は500円を目標にしています。これは介護事業に関わらず、その周辺事業も取り込む形での事業展開を考えているからです。
2017年6月期から2021年6月期までを見ると、大体1年間で売上が30億円ずつ積み増されているのですが、2024年6月期の目標である500億円を達成しようと思ったら、恐らく介護事業だけでは無理です。年間30億円の伸びですから、2021年6月期から見て3年後だと、介護事業だけでは90億円しか積み上げられません。それだと2024年6月期の売上は320億円が関の山です。
それを私たちは500億円まで増やすためのチャレンジするのですから、介護事業以外にも事業の柱をつくる必要があります。そのひとつが、まず不動産事業です。
私自身が元々、建設業界出身ですから、不動産の情報もたくさん入ってきます。ですから、私たちで土地を見つけて、そこに介護施設などの建物を建て、それを自社で運営するのではなく、他社のオペレーターに委託して運営してもらう。もし、他社のオペレーターが見つからなかったら、自分のところで運営すれば良いと考えています。しかも、当社や当社クラスのオペレーターが運営するとなれば、その施設を高く買い取ってくれるところが、必ず現れます。
それに加えて、不動産事業は介護施設に限っていませんから、他の不動産も投資しています。すでに保育園やワンルームマンションなどに投資し、その一部を売却して収益を上げています。
それともうひとつ、AI対話事業も準備を始めました。2021年11月にウェルヴィル株式会社と資本提携しました。同社のAI対話エンジンである「LIFE TALK ENGINE」を用いたアプリや製品を開発し、同時に会話ロボットやアバターに導入して商品化して、それを販売する会社を、当社が51%以上出資して設立します。したがって、もし商品化が実現すれば、私たちにとって売上利益が上がるという算段です。
こうした新しい事業の柱をつくることによって、500億円の売上達成を目指したいと思います。
投資家の皆様へメッセージ
『経営はチャレンジ』です。上場会社は業績予想を出していますが、業績予想を達成できないと、その会社の予算作成能力や目標達成能力、あるいは管理能力まで問われます。したがって、多くの会社に見られますが、仮に100まで行けるとしても、95くらいに抑えて業績予想を出しています。
しかし、チャレンジしなかったら会社の成長はありません。チャレンジ精神を忘れた時点で、その会社は停滞するし、停滞はイコール衰退でもあります。
投資家や証券会社のアナリストは、往々にして業績予想未達だと「ダメ」という烙印を押そうとします。だから、経営者は安全策を取ろうとするのですが、私は「それでは会社は成長しない」と考えています。投資家の皆さまには、前期からどれだけ伸びているのかという視点で評価していただけたらと考えています。
本社所在地:大阪市北区中之島3丁目6番32号 ダイビル本館19階
設立:1984年8月22日
資本金:2,759,250千円 (2022年9月15日アクセス時)
上場市場:東証プライム(2012年4月上場)
証券コード:6062