※本コラムは2023年3月14日に実施したIRインタビューをもとにしております。
拡大し続ける中小企業M&Aマーケットにおいて、着実な成長を実現している株式会社オンデック。
代表取締役の久保氏に、連続した成長の要因と、今後の成長戦略について教えていただきました。
株式会社オンデックを一言で言うと
拡大する中小企業M&Aマーケットにおいて、トップクオリティ企業を目指す会社です。
創業の経緯
当初、ソーシャルワークを事業として起業したいと考えておりました。ですが、その当時ソーシャルワーク活動はボランティアでやるべきだという風潮があり、ビジネスとして行うことは難しいのが現実でした。
どうにかして当領域で成功する道を模索していましたが、術は見つからず、別領域で起業して成功したのちにボランティアとしてその活動をすればよいと考え、方針転換をしました。
このような経緯があり、改めて、創業パートナーであり現代表取締役副社長の舩戸氏と共に事業選択に取り組み始めました。
その際基準としたのは、ブルーオーシャンであること、社会的意義があること、全業種と関われるビジネスモデルがあること等です。そしてこれらに最もマッチする業種としてM&A領域での起業をするに至りました。
現在に至るまで、ターニングポイントとなったのは、2018年に上場の意思決定したタイミングです。
創業以来、年商1億〜2億円は維持できており、社員の生活を賄うという観点では十分に成り立っているような経営状態にありました。また、お客様に満足していただけるサービスを提供できていれば我々としても満足であるという部分もありました。
しかし、起業当時のビジョンを実現するためにはこのままの戦略では不十分であると考え、2017年から上場を視野に入れた拡大路線をとることといたしました。
一定のペースでの成長を目指して従業員数を増やすとともに、パブリックな企業としての体制整備を始め、2020年には上場を果たしました。
事業内容について
クオリティに重点をおいた中小企業向けのM&Aアドバイザリーサービスになります。「事業継承型のM&A」、「イグジット型のM&A」、「MBO支援」、これら3つを軸に事業展開しております。
1つ目の「事業継承型のM&A」とは、後継者不在の会社の経営を他の企業の継承によって引き継いでもらうことを目的としています。当社に寄せられる相談の約70%がこの事業となっています。
2つ目の「イグジット型のM&A」とは、創業者が株式等を売却し、投資を回収することを指します。
当社は、M&Aによる事業売却をイグジットと定義し、資金回収のみならず、成長が鈍化している企業の起爆剤となりうるサービスを提供しています。こちらは当社が最も得意としている領域のひとつとなります。
3つ目の「MBO支援」とは、経営陣が企業の株式や事業を買い取ることを指し、当社では主に中小企業のMBOを支援しております。
また、アドバイザリーサービスには大きく2種類の形式があります。
売却側と買収側の間に立って取り持つような形で関与する仲介形式、およびいずれか一方のエージェントとして関与するフィナンシャルアドバイザー形式でして、当社ではどちらのービスにも取り組んでおります。
M&Aのアドバイザリー業務には膨大な量の知識とノウハウ、経験が求められます。そのため、人材の育成、研修に関しては特に力を入れています。
M&Aの専門スキルという点に関しては計200時間に及ぶ座学でのOff-JT※により、レクチャーを行っています。
- Off-JT(Off-The-Job Training):職場や通常の業務から離れ、特別に時間や場所を取って行う教育・学習のこと。
そして経験を積むという点においては、OJT※でカバーしております。
- OJT(On the Job Training):日常の仕事を通じて必要な知識・技術・技能・態度などを身に付けられるよう、意図的・計画的に指導すること。
OJTには2種類あり、まず1つ目は見習いのような形で、先輩に見てもらいながら業務を行うというものになります。入社後数か月間はこの体制で当社の業務の進め方を覚えてもらいます。
その後、複数人体制で行っているディールに参加し、実際の現場での経験を積んでいただくという2つ目のOJTを受けるフェーズに移行します。
他社は1つのディールに対して担当が1人というケースが多いですが、当社では買収側に1人、売却側に1人、全体を監修するサポートメンバーが1人という3人体制でディールにあたっています。
そのため、ディールのクオリティを維持したまま、新人に実践的な経験を積ませることが可能になっています。
中長期の成長イメージとそのための施策
当社は事業KPIとして、「平均報酬単価」、「成約件数」、「コンサルタント数」の3つを採用しております。各事業KPIの増加により売上高の拡大と企業価値の向上を図り、CAGRで20〜30%水準の売上成長を目指して参ります。
当社の最大の強みはコンサルティングのクオリティです。
クオリティには大きく2つの観点があり、まず1つはクイックレスポンスや作業の丁寧さといったサービスとしてのクオリティ、そしてもう1つはM&Aという専門領域におけるプロフェッショナルとしての知識や提案力といったスキル面でのクオリティになります。
当社ではクオリティをベースにした好循環成長モデルと呼んでいるものがあります。
クオリティを追求することで、提携先や元顧客からの評価が高まり、口コミ的に新しい顧客や提携先を紹介していただくことで、受託件数が増加し、結果的に成約件数の増加につながります。
その利益をコンサルタントの増加と育成に投入することで、優秀なコンサルタントが定着して、さらなるクオリティの向上を目指すというものです。
このモデルは急激に顧客を増やすことはできないものの、中小企業M&Aという魅力的なマーケットで、中長期にわたって安定的に成長をしていくことが可能と考えています。
東京オフィスの陣容強化と対応エリア拡大による成長にも注力してまいります。
当社は数少ない大阪に本社を構えるM&A支援企業であり、2005年の創業以来、近畿圏を中心に展開しております。
ですが、中小企業M&Aにおいて、最大のマーケットはやはり関東圏です。特に首都圏エリアに成長の余地があると考えております。実際、東京オフィスの体制を強化したことが功を奏し、2021年11月期以降は大阪本社の売上を上回っています。
今後も継続して東京オフィスの陣容を強化し、シェア拡大をしてまいります。加えて、地方ではM&Aの担い手、特にアドバイザーは不足している傾向にあり、後継者問題を抱えていらっしゃる企業も多いというのが実情です。
地方に対してアプローチをしていくために、地域金融機関との連携を強化している段階にあります。将来的には地方のシェアも拡大していきたいと思っております。
さらに、潜在顧客の獲得戦略として、当社独自のM&Aプラットフォーム構築を計画しております。
まずは、AIやビッグデータを活用して最適な企業ペアを抽出するマッチングシステムを構築し、そのプラットフォームに格納する企業の多様なM&A及び資金調達ニーズを収集・蓄積することを進めています。
当社はクオリティを第一に取り組んでおり、その分生産性を犠牲にしている部分もあります。生産性を向上させれば利益率も向上することは承知しておりますが、クオリティを下げてまで生産性を向上させるつもりはありません。
そこでデジタルの力を活用し、クライアントのニーズを的確に掴む、マッチングを効率的に行うという切り口から生産性を向上させることを目指しています。
当社が事業領域としているマーケットは非常に活況であり、我々をはるかに上回る成長スピードで拡大していますが、いずれは転換点を迎えると考えています。
企業の後継者不足の上昇が鈍化していくことが想定されますし、実際足元のデータでもこのような傾向は確認できます。
また、知識や経験が乏しい新規参入事業者が急増したことによるトラブルの増加等が要因となり、事業環境が変わる可能性があることも理由として挙げられます。
どのマーケットにおいても高成長の先で成熟期を迎えるものですが、M&A業界における成熟期を生き抜くことができるのは、やはり高いクオリティのソリューションを提供できる会社であると思います。
多少の生産性を捨てたとしても、クオリティにとことんこだわり、本質的な付加価値を提供していくことで当社は成熟期においても必要とされる存在となりたいです。
投資家の皆様へメッセージ
繰り返しになりますが、当社は魅力的なマーケットのなかで、サービスクオリティ、コンサルティングクオリティを最重要視し、そこでトップを目指すというスタンスで日々取り組んでいます。
今はまだ規模としては小さいものの、このマーケットのなかで中長期的に着実な成長を続けている会社であることを知っていただきたいです。
当社に興味を持っていただけた投資家の方がいらっしゃいましたら、応援していただけますと幸いです。
本社所在地:大阪府大阪市中央区備後町3-4-1 備後町山口玄ビル3F
設立:2007年12月
資本金:3億7,272万円(2021年1月31日現在)
上場市場:東証グロース(2020年12月29日上場)
証券コード:7360