※本コラムは2023年3月29日に実施したIRインタビューをもとにしております。
個人向けに再生可能エネルギー事業を展開している株式会社フィット。
代表取締役の鈴江崇文氏に、目指す再生可能エネルギー業界の姿や、今後の成長戦略について教えていただきました。
株式会社フィットを一言で表すと
個人の暮らしの中で、サステナブル社会の実現につながる商品を企画・提案している会社です。
創業の経緯
創業前、私はバックパッカーとして世界20か国以上を旅していました。その際、日本と欧米の間で、住宅に対する考え方や常識が異なっていることに気づきました。
日本では新築の家を購入すると基本的にその価値が下がってしまいますが、欧米では数十年単位で家を保有し、時間の経過とともに価値が上がることが多々あります。
このギャップに衝撃を受け、家をもっているのに価値が下がってしまうこの日本の常識を変えようという思いで2009年に創業に至りました。
一方で、日本の住宅産業には限界を感じることがありました。本店を置いた徳島を含む地方都市では人口減少が顕著であり、新しい住居を建て続けることは非合理的と考え始めるようにもなりました。
社会的・経済的インパクトのある事業を志して起業したという経緯もあり、単に住宅を建てるのではなく、将来性のある分野と掛け合わせ、新しい価値をもった住宅の建設が必須であると思っていました。
その中でドイツのとある田舎町を視察した際、日本と同じような環境にあるのにも関わらず、美しく元気であり続けている姿に感銘を受けました。その町は再生可能エネルギーの利活用が住民の生活に根ざしていて、それがビジネスモデルとして確立されていました。
そこで、これを日本に持ち帰ってメインの事業をすれば良いのではないかと考えたのが2012年でした。
創業以来のターニングポイントとしては、マネジメントスタイルを大きく変化させたところになります。
徳島で最初のマザーズ上場企業として事業に取り組んでいましたが、私自身周りがあまり見えておらず、自分一人でなんとかしようという想いが強すぎた時期がありました。それでもある程度の成長を実現して上場まで至ることはできていましたが、やはり限界がありました。
その点を反省して内部統制について再考し、社員に権限を委譲することで社員全員に成長を促すよう意識して取り組むようになりました。先頭に立つ私の役目は事業へ率先垂範に取り組むことであります。
その上で、各部門のメンバーに対して具体的な役割を与え、それを全うさせます。各々に役割を担ってもらうことで成長を促し、会社の成長につなげるよう心がけております。
事業内容について
「サステナブルな社会の実現」を目指し、「クリーンエネルギー事業」、「スマートホーム事業」、「ストック事業」の3つの事業を展開しております。
1つ目の「クリーンエネルギー事業」ですが、これはコンパクトソーラー発電所の設計、設置、管理を一貫して行い、個人投資家に提供するものとなっております。
ソーラーパネルの設置場所は多岐にわたっており、遊休地や農地、オフィスの屋根といったところにも設置しています。
2つ目の「スマートホーム事業」では、ソーラー発電システムを搭載したコンパクトハウスの販売を行っています。一般にオーダーメイドの住宅建設に対応する建設業界においては工程が複雑化し、コストがかさみがちです。
当社はそこに着目し、太陽光発電システム装備の規格型コンパクト住宅を標準化しました。これによって低価格・高品質の両立を実現しています。
また、その住宅を賃貸として提供する戸建て賃貸サービスも展開しております。
3つ目の「ストック事業」は、クリーンエネルギー事業で販売したソーラー発電所の保守・管理、収益不動産の管理受託によるフィービジネスとなります。
メンテナンスを通じてソーラー発電の設備の性能を向上させ、資産価値を上げることも目指しています。
こちらはクリーンエネルギー事業、スマートホーム事業で獲得した顧客基盤を生かした事業展開になっております。
エネルギー関連の設備はある種の不動産であるため、販売してから管理を行うまでが当社の役目であると考えております。
ここには時間と手間をかけることが求められますが、先述した通り設備の規格化を行っておりますため、安定的・継続的にローコストで行うことができ、工程のマニュアル化によって迅速な作業を可能にしています。
この領域で長年事業を続け、コツコツと積み上げてきていることは当社の強みであります。そしてこの過程で培ってきたノウハウこそが競争優位性であり、高い参入障壁となっています。
これら3つの事業すべてにおいて、個人のお客様をがメインターゲットであり、実績においても大部分が個人のお客様となっております。
従来、エネルギー分野、特に再生可能エネルギーについては大企業や国がメインの存在でありました。ですが、我々としては個人投資家の皆様にもエネルギーへの投資に参画していただきたく、“再生可能エネルギーの民主化”を目指しています。
個人としてできることは大きくないですが、その一滴一滴のしずくが集まって大きな川、すなわち大きな力となることができると考え、そのための事業展開を進めています。
中長期の成長イメージとそのための施策
「個人参加型、持続可能エネルギー社会の実現」のため、引き続きソーラー発電による再生可能エネルギー事業を軸に取り組んでまいります。そして2030年をメドに、ストック事業で2割、フロー事業で8割の収益構造にすることを目指しています。
具体的な施策として、クリーンエネルギーマーケットプレイスの「脱炭素デキルくん」の拡充に努めてまいります。
こちらは個人投資家向けのクリーンエネルギーに関する情報を集約したサービスとなっております。現在は価値創造の基盤として会員ネットワークの拡大に注力しています。
ここで築いた顧客基盤に対して、脱炭素とそれに関するクリーンエネルギー商品、情報・サービスを知っていただき、その次に売買や投資へと進んでいただけるようなプラットフォームを構築します。
売買や投資を希望されるお客様には個人顧客向けに規格化された商品を提供し、購入後の保守管理までを一貫してサポートいたします。
加えて、企業向け発電所の事業もスタートしております。
繰り返しになりますが、当社は個人をメインターゲットにした事業展開をしており、小規模な契約をコツコツと積み上げてまいりました。
ここに企業・法人向けの発電所を開発・提供を組み合わせることで、非常に大きな業績へのインパクトを与えることができると考えています。
個人投資家の皆様の再生可能エネルギー投資をスタンダードなものにするという想いに変わりはありませんが、スケールメリットを得るためにも企業に向けた事業展開も進めてまいります。
これまでパーパスに基づいた事業展開を着実に進めてまいりましたが、それに対する投資家や市場との対話が不足していたと思っております。
よりパブリックな会社となるべく、投資家向けのページや情報発信を拡充するなど、IRを強化している最中にあります。さらにはメディアによる取材を積極的に受け、市場との対話を重ねていければと思います。
再生可能エネルギー業界は将来性があり、現在注目を浴びています。そして当社のビジネスモデルには独自性があり、かなり面白いと感じる点があるのではないかと考えています。
その点も広く認知していただけるよう努めてまいります。
投資家の皆様へメッセージ
当社は人と地球と暮らしに役立つ事業を創業から継続して取り組んでいます。投資家の皆様からの株式を通じた当社へのご支援は資産形成だけでなく、社会応援の一助となるでしょう。
我々のパーパスに共感していただき、サステナブルな社会の実現に貢献したいと思っていただけた方には、当社の取り組みを応援していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都渋谷区渋谷2-11-5 CROSS OFFICE 渋谷 Medio8E
設立:2009年4月1日
資本金:979百万円(2022年4月30日現在)
上場市場:東証グロース(2016年3月11日上場)
証券コード:1436