※本コラムは2022年9月12日に実施したIRインタビューをもとにしております。
ECをはじめとした電子決済をする機会が増えるなか、オンライン取引におけるクレジットカード不正や情報漏えいの原因にもなる不正アクセスなど、さまざまな不正が増えているという現実があります。そういった不正被害から事業者を守るサービスとして不正検知サービスで大きなシェアを握っているのが、かっこ株式会社です。代表取締役社長CEOの岩井裕之氏に今後の展望について伺いました。
かっこ株式会社のビジネスの概要
かっこ株式会社を一言で言うと
事業内容をひとことで申し上げると「SaaS型アルゴリズム提供事業」になります。
具体的には、不正検知で培われたノウハウやAI・統計学・数理最適化などの技術をもとに、セキュリティ、ペイメント、マーケティング、データサイエンスの分野でサービスを提供しています。
といっても、何のアルゴリズムを提供しているんだという話になると思うのですが、私どもはデータサイエンスに強みがあるので、それを活かして、お客様の「これをしたいのだけれども、なかなか出来ない」という困りごとを解決し、それによってお客様のチャレンジを支援することが、事業の根幹です。
私たちのサービスは、BtoCではなくBtoBですので、一般消費者の目にはほとんど触れられることがありません。ですから、かっこ株式会社という会社名を聞いただけでは、恐らくどういう会社なのかというイメージが、なかなか想像できないと思います。
当社の主力サービスである不正検知サービスは、皆さんがクレジットカードを使って商品を購入したり、あるいは会員サービスの提供を受けたりする際に、不正な決済や取引などがないか事前に検知するサービスです。
ここ数年、新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークの時間や、ECで買い物をする機会が増えていると思います。それらは利便性の裏に不正という名のリスクが潜んでいます。それを、リスクが発生する前に発見するのが、私たちの仕事です。ECやさまざまなウェブサービスのインフラの健全性を、裏から支えているというイメージです。
創業の経緯
大学を卒業する時に、起業するか就職するかで迷ったのですが、社会の仕組みや、世の中にどういったビジネスがあるのかを知る必要があると思ったので、まずは就職しました。いつか独立して上場と思ってはいたのですが、どういう会社をつくって上場したいのか当時は今ひとつ明確にイメージできず、結局、最初に就職した会社に10年間、その後、EC向けに決済サービスを提供している会社に5年勤めました。
その頃、ビジネススクールに通っていたのですが、同級生と会話している中で「そろそろ転職しようかな」と呟いたら、「次は起業するのかと思っていたよ」と言われ、そういえば、大学卒業時、自分は起業するつもりでいたんだと思い出しました。
でも、それなら、なぜ15年間も起業しなかったのか。それを考えているうちに、ちょっとした考え違いをしていたことに気付きました。それに気づく前は、働いているうちにチャンスは巡って来るのではないか、と受け身で待っていました。でもそんなことはなくて、自ら動いていかないとチャンスは来ないということなんだと。日付を決めることが大事なんだと。そこで、起業する日にちを決めて動き出しました。ただ、私は自分のために何かをするよりも、人に何かをすることに対してパワーが出る性格なので、人を集めて起業しようと考え、その時働いていた職場の部下に声をかけて、起業しました。
最初は、教育ビジネスにしようと考えて事業計画書を作成したところ、東京都が支援しているインキュベーションオフィスに入居できました。でも、実際に事業計画書を作成していろいろ考えてみると、教育ビジネスはマネタイズするのがとても困難であることに気付き、方向転換をすることにしました。
会社を立ち上げるにあたって、前職のお客様のところへ挨拶回りをした時、「時間があるなら手伝ってよ」と言われて、前職の流れで決済関係の不正対策コンサルティングをいくつか引き受けていました。そういう経緯もあり、まずは不正対策のコンサルティングビジネスからスタートしました。
事業内容について
今、私たちがお客様に提供している主力商品が、第一に不正検知サービスです。
そのなかには、ECサイトにおけるクレジットカードの不正利用や悪質転売などの不正注文を事前に検知する「O-PLUX」、そして金融機関ならびに会員サイトにおける不正アクセスや不正送金を事前に検知する「O-MOTION」の2つがあります。
第二が決済コンサルティングサービスで、EC事業者が決済メニューを導入するにあたって、消費者の満足度と利益の最大化を両立するにはどうすれば良いのかという点を軸にしてシステム開発や運用支援などのコンサルティングを提供しています。
第三がデータサイエンスサービスで、さまざまな購買データを分析することによって、具体的な販売成果に結びつけたり、会員サイトの退会者などが増えるリスクが発生する前にその予備軍を発見して対処するための判断材料を提供しています。
私どもの経営ビジョンは、「未来のゲームチェンジャーの『まずやってみよう』をカタチに」というものです。ここに込められた想いは、チャレンジする人が少しでも増えれば、日本経済は復活するという願いです。だから、チャレンジしたいと思っている人たちが、できない理由や言い訳にすることを、テクノロジーの力を使って実現可能にし、誰もがチャレンジできる世の中づくりに寄与したいと思います。
中長期の成長イメージとそのための施策
現在、EC事業者は、不正を浴びているところ、不正を全く浴びていないところ、浴びてはいるけれども被害額が小さいところ、という3つに分かれます。実際には、不正が多発し、不正対策をしなければいけないという会社は、まだまだ少ないのが現状です。
ただ、私たちとしては、被害額が少なくて不正対策が急務ではないという会社も、いずれは不正被害が多くなる可能性はあるので、不正から守るべきだと考えていて、そういうところにも不正検知サービスを広めていきたいと考えています。
正直、費用対効果という観点で考えると、不正があまり発生していない会社、あるいは不正金額が小さい会社だと、私どもの不正検知サービスを導入するコストが割高になります。O-PLUXの利用金額もそうですし、実際に導入するとなると、開発内容にもよりますが、システム開発を伴うケースもあり、数十万~1000万円近く開発費がかかることもあります。
そこで、私どもが取り組んでいることは、システム開発不要で、月額4000円から不正対策ができる「不正チェッカー」の提供や、EC受注システムやショッピングカートなどのシステムと私どもの不正検知サービスをシステム連携させることで、導入時のシステム開発の工数やコストを抑えて不正対策ができるよう、アライアンスの拡充を進めています。
こうして私どものサービスを利用する際のEC事業者における導入障壁をできる限り下げていくことによって、より広範な人たちに私どものサービスをご利用いただけるようにしています。
私どもが提供しているサービスの競合は、海外製品をOEMとして日本に持ち込んで提供しているところが多くあるのですが、私どもは日本の会社であり、O-PLUXはあくまでも日本向けのサービスとして立ち上げているので、住所や名前など日本固有の要素を解析できる技術を実装しています。そのことで、審査精度が高くなりアドバンテージがありました。加えて、OEM供給の場合、海外から仕入れて販売するので、どうしても割高になります。この点で私どもは、あくまでも自社開発製品を自分で販売するので価格面で優位性がありました。
その優位性で導入が進み、シェアが取れるようになると、不正検知をご利用いただいてるお客様から日々の膨大な審査データを最も浴びることになり、そのデータの学習効果によってO-PLUXの精度が一段と向上し、他社との差別化要因にもなってきました。
投資家の皆様へメッセージ
結構、有名なIT企業は広告費に費用をかけ、とにかくブランド力を高めてマーケットを取り、あとから回収するという手法を用いている事があります。しかし、私どもは、解約率が非常に低く、これまでずっと堅実にお客様を増やしてきたことで、ストックとなる売上も着実に伸びたことで、単月で黒字化になり、かつキャッシュフローも健全化することができてきました。そういう意味では、安心して投資できる会社であると認識しています。
現状、出来高は少ないのですが、これから会社の認知度が上がっていく段階で、徐々に出来高も増やしていきたいと考えています。
今、私どもがやろうとしていることは、非常に地味な領域であるのは事実です。ただ、それが基盤となったことで、その上に強みと経験を活かして新しいビジネスを立ち上げていくことを考えております。
だからこそ、少しでも多くのチャレンジを日本で起こすために、不正検知においては、より手軽に不正対策ができるような環境づくりに取り組み、より多くの人々が課題解決やチャレンジができるよう、自分たちも挑戦し続けていきたいと思います。
まだまだニッチな領域ではありますが、将来の成長性が高い領域でもあります。そこに熱意をもってぶつかっていきたいと思います。
本社所在地:東京都港区元赤坂1-5-31 新井ビル4F
設立:2011年1月28日
資本金:365,308,435円(2022年9月アクセス時)
上場市場:東証グロース(2020年12月17日上場)
証券コード:4166