※本コラムは2023年4月11日に実施したIRインタビューをもとにしております。
グループ企業として着実な成長を重ねている株式会社MCJ。
代表取締役社長兼COOの安井元康氏に、会社の独自性や今後の成長戦略についてお伺いしました。
株式会社MCJを一言で表すと
“黒子”に徹した成長メーカーです。
代表就任の経緯
私がMCJに入社したのは2001年になります。2004年の東証マザーズ上場を経験し、2006年に一度退職しました。その後は海外へMBA留学へ行き、修了したのち日本の戦略コンサルティング会社に勤めました。
この会社に戻ってきたのは2016年になります。そこから取締役に就任し、翌年には現職に就任しました。新卒で入社した当時のMCJはまさにベンチャー企業でした。そこには、経営の最前線に飛び込むことで知識や経験、そして何より経営者目線というものを少しでも早く身につけたいという思いがありました。
ただ、大企業とは異なりベンチャー企業には教育システムが確立されておりません。上場という一つの大きな区切りがついたところで一度会社を離れ、留学などで得た知識も元にさらなる磨きをかけていこうと考えたのです。
私が取締役に就任して以降、ターニングポイントとなったのはグループ企業としての方向性を決定したタイミングになります。それがまさに私が当社に戻ってきた2016年のことなのですが、株式会社マウスコンピューターを中心として、すでに20社ほどのグループ企業を抱えるまでに成長していました。
そして、個々の会社がそれなりの実力を持っていることとは対照的に、グループ全体としての戦略を立てなければ売上が伸び悩むという状態に陥っていました。現状を打破するため、グループとしてのビジョンを明確化し、またそれを発信することに努めました。
グループ一同で共通のビジョンをもって事業に取り組んだことが功を奏し、6年で売上を2倍、営業利益を3倍、時価総額では5倍にまで成長させることができました。
ここは第二の創業と表現しても過言ではないほどの重要な転換点となりました。
事業内容について
大きく分けて、国内向けパソコン関連事業、海外向けパソコン関連事業、総合エンタメ事業の3つの事業を展開しております。
1つ目の国内向けパソコン関連事業においては、自社ブランドを保有しパソコン本体の製造と販売を行っています。また、パソコンの原材料や周辺機器の卸販売も行っています。
2つ目の海外向けパソコン関連事業は、ヨーロッパ向けのモニター販売と、シンガポールを中心とした東南アジア地域で展開しているスマートフォンやパソコン、テレビ等のデジタル機器の修理ビジネスになります。
3つ目の総合エンタメ事業ではインターネットカフェの運営等をしております。
他社との差別化ポイントとなるものは2つあります。1つ目は、ゲーミングPCやクリエイターPC領域の製品を扱っていることです。
これらのパソコンは特定の用途で用いられ、一般的なものと比べて高いスペックが要求されます。例えばゲーミングPCは海外では多数のメーカーが製造していますが、実は日系メーカーとなると製造・販売を行っている企業は非常に少なく、ここは製品面で大きな差別化を発揮できるところになります。
もう一つは、一般的なパソコンにおけるバランスの良さになります。良心的な価格設定、高いクオリティ、充実したアフターサポート、この三拍子が揃っています。
当社では他の日系企業と比べても10%〜20%ほど安価に製品を提供しております。この点で価格競争力は有しているといえます。
次に高クオリティという点ですが、我々は自社で国内のバリューチェーンを有しているため、メイドインジャパンの品質の良さを担保できます。
最後のアフターサポートについてですが、我々はここが最も重要な要素であると考えております。他社に依頼すると、修理のために製品を一旦海外に送るケースが大半でありますが、申し上げた通り当社は国内で自社のバリューチェーンをもっているため、国内工場での迅速な対応を可能にしています。窓口であるコールセンターも24時間365日稼働しておりますし、修理についても依頼を受けてから96時間以内での修理の完了をコミットしています。
ここまでの高水準でアフターサポートを展開しているメーカーは他にはありません。パソコンがコモディティ化している今日は、もはや価格競争力やブランド力といった単一の力に頼ってモノを売る時代ではなくなりました。我々は価格競争力、クオリティ、アフターサポートの3つの総合力をもって勝負しています。
中長期の成長イメージとそのための施策
ハードウェアとサービスの両輪による成長を目指します。
当社の一貫したバリューチェーンを活用し、取り扱うハードウェアの種類を増やし、収益機会を探ります。
パソコンと合わせてストレージやワークステーションなどの購入を検討される方はやはり一定数いらっしゃいます。そのため、周辺機器の充実という施策は需要とマッチしています。
このようにハードウェアの拡充を行うことで、企業や個人からのニーズに対応しつつ当社が注力しているアフターサポートも合わせて、パソコン周りをワンストップで提供できる会社となることができると考えています。
さらに、当社は素材技術を持つ会社とこれを利用するユーザーを繋ぐプラットフォーマー的存在であるため、そのプラットフォーム上に載せる商材が増えれば、トップラインの成長と収益性の維持を両立することができます。
これらを一気通貫のバリューチェーンで行っている会社、また今後実現できる会社は他にはなく、ハードウェア産業におけるユニークな存在となることを目指しています。また、新規参入においてはバリューチェーンの構築という部分が大きな参入障壁となり、独自性を発揮できると認識しております。
現在のハードウェア業界を見ると、競争相手はパソコンメーカーやハードウェアメーカーだけではなくなっています。数年前からプラットフォーマーやコンテンツの提供者がハードウェアマーケットに進出してきています。
それを踏まえて今後のデジタル世界を考えたときに、コンテンツやプラットフォームとハードウェアの境目は曖昧になっていき、競合となる相手は増え続けるでしょう。当社としてはこれらの企業にも目を向け、市場の動向や消費者の需要の変化を汲み取った商品展開をしてまいります。
さらには、ハードウェアメーカーとしてソフトやコンテンツ領域にも進出することを将来的には想定しています。
また、正直に申し上げますと、大半の方々にはパソコン産業は成長産業ではないと捉えられていると思います。実際にパソコン産業としては伸びているとは言えませんが、その領域で事業展開をしている当社が成長を継続しているということを投資家の皆様には認知していただきたいです。
過去5年間、毎年過去最高の売上を更新し続けています。市場全体で見たときに、規模自体を大きくすることが決して利益に繋がるとは言い切れません。しかし、全体の産業が伸びなかったとしても、確実に伸びる分野、ブルーオーシャンがあることは確かです。
今後5年、10年で衰退していく産業ではなく、デジタル化の波もあってしばらくは重要産業に位置し続けます。その中で、当社はスピード感をもって上手く立ち回ることのできる会社であると思っております。
投資家の皆様へメッセージ
地味と捉えられてしまいがちなパソコン産業ですが、非常に巨大な産業であることも確かです。その産業において、我々のような他社との差別化ポイントを持つユニークな企業は着実な成長を遂げることができると考えております。
また、日本は製造業において海外に負けてしまうイメージが定着しています。その中で当社は日本に根ざした製造業者として、まだまだ成長を続けてきたいと思っておりますので、投資家の皆様には長い目線で応援していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都千代田区大手町二丁目3番2号 大手町プレイスイーストタワー6階
設立:1998年8月3日
資本金:3,868,102,900円(2023年4月アクセス時)
上場市場:東証スタンダード(2004年6月1日上場)
証券コード:6670