※本コラムは2023年5月17日に実施したIRインタビューをもとにしております。
雇用拡大のためのクラウドサービスを提供し、リカーリング売上が全体の95%を占めるポーターズ株式会社。
代表取締役社長の西森康二氏に、サービスのストロングポイントや今後の成長戦略について教えていただきました。
ポーターズ株式会社を一言で言うと
雇用創出産業のための雇用拡大支援のクラウドサービスを提供している会社です。
創業の経緯
私たちは2001年に創業しました。日本の人材紹介業界は厳しい法規制により、新規参入が難しい状況にありましたが、2000年頃に規制が大幅に緩和され、その結果、それまで1,000以下しかなかった事業所がわずか1年間で約1,000の新規事業者がこの業界に参入しました。
この規制緩和により、経験豊富なビジネスマンや卓越したマネジメントスキルを持つ人々が業界に流入し、市場が活性化されることを期待しました。
そして、これらのプロフェッショナルが人材紹介業界で成功を収めることで、人材紹介が社会全体により大きな貢献を果たす可能性が広がりました。
これにより、より多くの企業が人材サービスを通じて人材を確保することになり、私たちの展開する人材紹介・派遣会社向けクラウドサービスが成果を上げると、経済全体の活性化に貢献できると考えました。これが私たちの創業の原点でした。
人材紹介というビジネスは、基本的には企業の採用ニーズと求職者の情報をつなぎ合わせるものであり、それ自体が新たな求人や求職ニーズを生み出すわけではありません。企業の採用ニーズと求職者のニーズを市場から収集し、それらを効果的にマッチングさせることが任務でした。
しかしながら、規制緩和が進んだ時期には、大手を含む人材紹介会社の中には自社の情報システムを構築し、それを適切に運用できる企業がほとんど存在しませんでした。そこで私たちは、情報管理システムの開発を通じて、業界に革新的な貢献をしながら、同時に自社の成長も追求することを決定しました。
事業内容について
雇用を創出する企業・ビジネスパーソンに対して、雇用拡大のためのクラウドサービスをID月額利用料にて提供しています。そのため、主な顧客はHR業界の企業様となっています。
製品ラインナップは、人材派遣会社向けマッチング統合管理システム「PORTERS Staffing」、人材紹介会社向けのマッチング統合管理システム「PORTERS Agent」、AIによるダイレクトスカウティングサービス「PORTERS-Assist」の3つになります。
当社製品の特徴は3つあります。まずは、人材業界に特化したシステムであるという点です。
情報システムには特殊なスキルが必須であり、多くの非情報系企業はそれを持ち合わせていないため、欲しいシステムをシステム会社に発注することになります。
ですが、ある調査では納品された半分以上のシステムが稼働していない状態にあると示されました。その原因は、システム会社が発注元企業の業態やニーズを把握していないというところにあります。
システム自体は優れているかもしれませんが、それが本当に欲しかったものとは違っているため、端的に言えば“使えない”システムとなってしまったということが多々あります。これは発注する企業にとっては大きなリスクであります。
対して、我々は人材紹介業を熟知したシステム会社であるため、人材紹介で必要とされる機能や使用要件が揃った、実用的なシステムを提供できます。さらに、それをインターネット上にアップすることで、お客様は利用開始前にテストすることができ、これら2つの当社の差別化ポイントはお客様のリスクを最小化することを可能にします。
次に、お客様ごとに柔軟なカスタマイズができるという点です。基本的に導入したシステムをそのままの形で利用し続けることはありません。お客様のビジネスが変わったり成長すれば、それに応じて必要な機能や要件は変更・追加されます。
この時に、また一からシステムを構築するのではなく、お客様の手で簡単にカスタマイズができるようにしています。高いカスタマイズ性を維持するためには、お客様のニーズを先回りのようなかたちで想定し、それに応じたものをお客様自身で作れるようにシステムへ落とし込むという工程を繰り返す必要があります。
この工程は短期間でできるようになるものではなく、当社のようにノウハウを蓄積している企業にしかできないことです。
加えて、システム自体のカスタマイズのみならず、料金についてもカスタマイズが可能となっています。当社はユーザー数に応じてフィーを頂いているため、お客様の事業規模と収益状況に応じてコストをコントロールできる料金体系となっています。
当社製品のカスタマイズ性という点に関しては中小企業と大企業のお客様に共通して非常に高い評価をいただいており、リカーリング売上が全体構成比の95%以上を占めているというデータにも表れています。
最後に、製販一体の直販体制が整っているという点です。合わせてフィールドセールス、インサイドセールス、マーケティング、納品後のコンサルティングも内製化しています。
これによって、お客様からのフィードバックや新たに見つけたビジネスの機会などの情報を企業全体で共有しやすくなっています。各部門にスペシャリストを配置し、これらの情報を活用して製品のアップデートを繰り返しています。
中長期の成長イメージとそのための施策
ID数とARPUをそれぞれ伸ばしてリカーリング売上を拡大させます。
当社はこれまで、企業と人の間の雇用創出産業に展開するためのシステム基盤とビジネス基盤の構築に取り組んできました。今後はその基盤をアレンジしながら多方面に展開することを計画しています。
日本国内のまだリーチできていない雇用創出産業にもアプローチしてまいりますが、今後は東南アジアへの進出に注力してまいります。日本の人材派遣市場は世界で2番目の大きさであり魅力的なマーケットといえます。
ですが、世界に目を向けると、世界の労働人口の54%をアジアが供給していたり、人口が1000万近い都市が東南アジアに多数存在していたりと、企業と人材の間での雇用創出ニーズ、人材の流動化ニーズが非常に高い地域であることがわかります。
具体的にはタイとベトナムにおいて、各国のマーケット固有のニーズをシステムにプラスオンで反映させ、ビジネスモデルを文化に合わせてアップデートして、ID数増加・新規顧客の開拓に取り組んでまいります。
こちらの事業では各国のGDP成長とともに、収益への貢献も大きくなると推定しています。さらに、この海外事業で得たものを国内事業にも積極的に関連付けて、シナジーの創出ができる状態にしていきたいと思っております。
APRUを伸ばすための取り組みとして、有料オプションの継続的な追加に取り組んでまいります。
年2回ペースでの追加を目標とし、オンボーディング及びカスタマーサクセスを強化して製品のアップデート情報を通知することで、ARPUの増加を目指します。
また、AIを用いたソリューション「PORTERS-Assist」を積極的に展開し、クロスセルでもAPRU向上を目指します。こちらは人材紹介の情報管理とはまた別の、求職者を獲得するダイレクトリクルーティングサービスとなっています。
当社が構築してきた製品の構造が生み出しているリカーリング売上比率の高さは、我々が意図して積み上げてきたものであり、強みであると思っています。
顧客ニーズに汎用的に対応できる仕組みを持った製品の基盤がリカーリング売上の高さにも寄与していますし、今後の成長戦略を推進する重要な役割を担っています。投資家の皆様にはここを認知していただきたいです。
投資家の皆様へメッセージ
我々は雇用創出産業の支援を通じて、世界で最も雇用を支援する会社になりたいと考えています。
そのためには色々な方々、特に投資家の皆様のお力添えが必要でありますし、それによって多方面にビジネスチャンスを拡大することができると思っています。我々を支援することを通じて、一緒に世界の雇用拡大の支援に関わっていただけますと幸いです。
本社所在地:東京都港区赤坂8-5-34 TODA BUILDING 青山3階
設立:2001年8月29日
資本金:4,698万円(2022年12月末時点)
上場市場:東証グロース (2022年9月29日上場)
証券コード:5126