※本コラムは2023年5月17日に実施したIRインタビューをもとにしております。
ブランディングテクノロジー株式会社は、業界特化のノウハウを形成し中小・地方企業のデジタルシフトを担っています。
代表取締役社長の木村裕紀氏へ、ブランドを軸とする事業の強みや今後の成長ストーリーを伺いました。
ブランディングテクノロジー株式会社を一言で言うと
中小企業のブランディングを推進する唯一の上場会社です。
代表就任の経緯
当社は2001年の8月に設立されました。創業者(武吉氏)は前職の同僚で、私は2005年の5月に出資とともに当社に参画しました。
当初の役職はCOOで、新規事業の立ち上げや組織作りを担当していました。
2009年の4月には、私がブランド事業やデジタルマーケティング事業など、現在の事業の基盤作りに取り組んだこと等から共同代表となりました。
その後、2014年の3月に資本整理を行い、私が全株を取得し経営を引き継ぐ形となりました。
当社が大きく成長したタイミングは、2005年から2007年の間で、その期間に売上は3億円から21億円に拡大しました。
成長の要因としては、自社を”中小企業向けのWebコンサルタント”としてブランディングし、その意識を社内外に発信したことが挙げられます。
その後、リーマンショックをきっかけに、業績が一時的に下降し、2010年頃には赤字が約1億円に達したこともありました。この経験から、単にスポットで売上を伸ばすのではなく、長期的にビジネスを継続させていくためのストック型ビジネスモデルへと転換する必要性を強く感じました。
この転換を図るためには、約2年の時間が必要でしたが、我々の事業にとって重要なステップとなりました。現在、当社売上の約85%がこのストック型売上で構成されています。
また、2019年の上場は我々にとって大きなメリットをもたらしました。その一つが、当社のブランディングと信用力の向上です。
特にB to Bのビジネスでは、上場による信用力の向上が非常に重要ですし、私自身が著した「ブランドファースト」の出版などもその一環として効果を発揮しました。
以上の経験を通じ、我々のビジネスにとって重要なのは、自社の差別化に繋がるブランディングと、長期的な成長を可能にするストック型のビジネスモデルであることを再認識しました。
これらの取り組みが当社の今日までの成長へとつながっています。
事業内容について
当社のミッションは、ブランドを軸に中小・地方企業様のデジタルシフトを担うことです。
日本の企業の99%は中小企業ですが、大手広告代理店は大企業を中心にサービスを提供しています。そのため、我々はそうした大手の代理店が手掛けない中小・地方企業をターゲットに、ブランディングやデジタルマーケティングの支援等を行っています。
当社はブランドファースト、つまりお客様一社一社のブランドを確立し、それを内外に発信することを大切にしています。
特にアウターブランディングと言われる社外への発信では、企業の個性や差別化ポイントを強調し、MQLやSQLと呼ばれるマーケティングリードやセールスリードの獲得へと繋げていきます。
中小企業の場合、1社につき事業は1~2つであることが多いため、自社の個性を明確にすることで事業の差別化も進み、採用力強化や組織力向上にも寄与します。
また、インナーブランディングにおいても社内向け発信を強化することで、人事評価や教育の仕組みを構築する力が高まると考えています。
具体的な業務としては、ホームページ制作、動画制作、デジタル広告、コンテンツマーケティング、SEO、YouTube運営など多岐にわたります。
これらすべての取り組みはブランドを確立し、差別化するための手段であり、「ブランドファースト」の理念に繋がっています。このようなサービスを通じ、我々は中小・地方企業のパートナーとして、長期的な成長を目指す企業づくりをサポートしています。
事業運営においては、ブランド事業、デジタルマーケティング事業、オフショア関連事業の3つの事業セグメントで6つの事業ユニットを運営しており、「デジタル版・中小企業経営コンサルティング会社」となることを意識しています。
現在、我々は3,000社以上の顧客を持っており、各企業のデータから業界別ノウハウ・戦略データを蓄積しています。そしてこの専門性は、事業成長に再現性を持たせるための”課題解決サイクル”の起点となっています。
ここ20年間、一貫して変わらないと感じる課題は、中小企業におけるマーケティングやデジタル人材の不足です。
当社が持つ業界ごとのノウハウを各顧客企業に提供することで、顧客企業の成長を支援することができますし、得られた成果がさらなるノウハウの体系化と自社蓄積につながります。
この一連の流れが循環することで、我々のサービスはその価値を増大させていくのです。
この成果を形にするため、ホワイトペーパーや事例集などの作成と積極的な発信も行なっています。
1つのホワイトペーパーからは数百件のマーケティングリードが得られ、これが新たな見込み顧客の獲得につながります。お取引先それぞれとの経験が我々の競争力を高めています。
このように我々は、業界に特化した形でノウハウを蓄積し、それに共感してくれるお客様をマーケティングで引き寄せ、高い価値を提供するという循環を生み出しています。
ただし、中小企業であっても当社が顧客として選ぶ基準は、黒字で成長意欲があり、成長投資予算があることです。
それは、我々が提供するサービスが、ブランド力とデジタルマーケティング力を強化し、結果としてビジネスの成長を推進するものだからであり、そうした企業を更なる成功に導くためのものであると考えています。
中長期の成長イメージとそのための施策
先日の決算発表でも触れましたが、新たな顧客セグメントとして自治体を加え、またマーケティングイネーブルメント※のサービス領域も拡大させました。
- マーケティングイネーブルメント:組織立ち上げ・CMO育成支援
その背景には、デジタル化の一層の進行と旺盛な需要があります。
繰り返しになりますが、当社では中小企業の中でも成長力と成長投資予算を持つ黒字企業への支援を重視しています。その中でも自治体は大きな存在で、特に移住促進やふるさと納税といった分野で豊富な財源を持っています。
こうした自治体のニーズに応えるために、新しいノウハウを開発し、それを順次展開しているところです。有田町や淡路市など、既にいくつかの成功事例を積み上げています。
全国には、納税額を増やすという共通の課題を持った、これらと類似の自治体が数多く存在します。そのため、こうした自治体を開拓し、彼らのニーズに応えていくことで、当社の業績成長にも繋げてまいります。
また、自治体に対して発掘したインサイトをホワイトペーパーなどの形で公開することで、予算を持ち、我々のサービスを求める他の自治体にも適用できるよう、取り組みを進めていきます。
また、”ブランドファースト×ウェルビーイング”の経営テーマを掲げ、社員一人一人が自身の専門性を上げて市場価値を磨くとともに、心身のバランスを保った状態で仕事に集中できる環境の構築を目指します。
また、社内の知識を集約しベストプラクティスを共有することで、人材の早期戦力化と成果の最大化を推進していきます。
これらの実現のため、リサーチ業務や戦略情報の要点抽出にAIを使用し、フロント人材がより創造性の高い業務に集中できるような環境を作り上げています。
このように当社では、非コア業務の自動化や省人化に向けた投資を積極的に進めていきます。
これら全ては、フロント人材が顧客企業の成長支援に集中できる環境を提供するための取り組みです。専門性の高いノウハウがベストプラクティスとして積み重なり、それを会社のアセットとすることで、プロフェッショナルな領域に集中できる体制を整えていきます。
セグメントや事業ユニットが多岐にわたる中で、一つ一つのビジネスを会社全体の成長へ紐づける大切なポイントは、グループの理念やミッションを軸とすることです。
共存共栄の理念やブランドを軸に中小地方企業様のデジタルシフトを担うというミッション、今期の経営テーマである”ブランドファースト×ウェルビーイング”等、グループ全体で重要視する方針や価値観を浸透させることが重要だと考えています。
一方、それぞれの事業領域ではターゲットとなる顧客層や専門性が異なります。そのため、それぞれの事業領域に最適な人材採用を行い、戦略を立て、実行していくことも重要です。
これをベースに、成長意欲が高く豊富な予算を持つ企業に対して価値を提供することで、足元では事業を跨いだ共同プロジェクトが増えてきています。
例えば、2月に資本業務提携も発表した品川グループさんとはデジタルマーケティングとメディア制作の領域で支援をしています。
目指すのは、各ユニットが競争力を磨き、成果を出すことで、結果としてシナジーが生まれることです。そしてこれが既存顧客へのアップセルや新規顧客獲得にもつながり、中長期的な成長を実現していくと考えています。
投資家の皆様へメッセージ
現在、資本業務提携や自己株償却などを通じて、業績と株価を上げるための取り組みを進めています。
市場全体でもデジタルシフトが進む中で、上場2年目にコロナの影響で一度落ち込んだ業績もV字回復を果たしており、これらの取り組みを次なる成長へつながる起点とさせていく方針です。
また、各事業ユニットでは新たなサービスの開発に取り組んでいます。これらの取り組みが成功すれば、非連続的な成長をさらに加速させることができると考えています。
今後の成長ストーリーに期待していただき、ぜひ応援していただけるとありがたいです。
本社所在地:東京都渋谷区南平台町15-13帝都渋谷ビル4F・5F
設立:2001年8月
資本金:52,119,500円 (2023年5月アクセス時)
上場市場:東証グロース (2019年6月21日上場)
証券コード:7067