※本コラムは2023年6月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社Mマートは食材・食品を中心にB to B業界のマーケットプレイスを運営し、その会員数は20万社を誇ります。
代表取締役社長の村橋孝嶺氏へ、創業から現在に至るまでの歩み、および同社の成長戦略を伺いました。
株式会社Mマートを一言で言うと
成長企業を目指し、日々企業価値の向上に向けた努力を続けている会社です。
創業の経緯
創業の背景には、私自身の飲食店での経験とその中で感じた課題があります。
当時、飲食業界は競争激化が進み、差別化のためには新たなメニュー開発が必須でした。
しかし、従来の卸業のあり方では商品の内容や価格が把握しにくいため、新たなメニューの考案が難しいという現状がありました。
この問題を解決するために、ネットを使って自ら卸業を始めることを考え、2000年に当社を設立しました。
インターネットの最大の価値は「情報の対称化」にあると私は考えています。
そのため、ビジネスモデルの構築にあたっても全ての情報を開示することが重要だと考えていました。この理念をもとに、商品の詳細情報から連絡先まで全てを公開しました。
当初業界からは批判もありましたが、インターネットの本質を捉えたこの戦略が、結果として我々の現在のポジショニングにつながっているのです。
当社のターニングポイントはいくつかあります。
まず、技術力の内製化です。
初期の頃は外部のソフトウェア会社に依存していましたが、委託先が倒産したことがあり、その際に内製化の必要性を強く認識しました。これは今でも当社の競争力の源泉となっています。
ただ、当時マーケットプレイス上に商品写真や価格は掲載していたものの、買い物かごのシステムはなく、お客様には電話やFAXで注文してもらっていました。
小さなお店に全国からたくさんの注文が集中するという事態もおこりましたが、その事実こそ、我々のビジネスに需要があることを確信させてくれました。
その後は、買い手を増やすためのマーケティングに注力しました。
新聞や雑誌にニュースリリースを行うことで、会社の認知度を上げ、買い手を増やしていきました。
現在では、売り手と買い手をつなぐプラットフォームとして、20万社に利用されるまでに成長しました。
事業内容について
B to B業界でeマーケットプレイスの運営を行っています。
中でも業務用食材・食品の電子商取引サイトの「Mマート」が主力となっています。
また、業務用食器や厨房機器、備品用品等の総合取引サイト「Bnet」をはじめ、アウトレット市場やフリーマーケットなど、多様に領域展開しながら特徴的なサイトを複数運営しています。
売り手・買い手ともに国内の大手企業にも多数ご利用いただいており、2023年1月に登録会員数は20万社を突破しました。
この成長の背景にはいくつかの要因がありますが、まずは早期にビジネスを開始したということが挙げられます。
もし我々が10年遅れて事業を開始していたら、状況は非常に厳しくなっていたでしょう。
飲食業界の競争が激化し、差別化が難しくなってきたという外部環境の変化をいち早く捉え、インターネットの黎明期で、競争相手もほとんどいない時期に取り組みはじめたことが一つのポイントです。
また、当社には現在でも買い手が毎月約1000社自動的に集まってくるというサイクルが確立されています。
”売り手と買い手、両面のプラットフォームを構築する”ことを重要視し、そのために様々な要素を考慮してきました。
買い手の利用料を無料にしたり、当社サイトを介した取引を強制しないことなど、現在の当社のマーケットプレイスの特徴は、すべてこのサイクルを確立するために行ってきたことです。
特に、直接取引を推奨している点は、より多くの売り手が集まる仕組みを成り立たせている要因です。
これにより、売り手が増えれば買い手も増え、買い手が増えればまた売り手も増えるという自己増殖のサイクルが作り出されています。
驚くべきことに、我々は一切買い手を集めるための営業活動をしていません。
しかし、ユーザーは増え続けており、これこそ我々のプラットフォームが求められている証拠といえます。
繰り返しになりますが、やはりシステム内製化も成長の要因であり強みであります。
当社の事業領域、すなわち流通業界は現在非常に厳しい状況に直面しています。
日本経済が落ち込む中、特に流通業界はイノベーションが遅れており、東南アジアとの競争でさえも厳しくなっています。
そのような中、我々はインターネットを使うことによって新たなビジネスモデルを構築し、流通業界の変革を進めてきました。
また、eマーケットプレイスでは、製品自体が自らプロモーションをする、セルフセールを行う必要があります。
これは、セールスパーソンを通じた伝統的なマーケティング手法がインターネットの世界では通用しないためです。
これがインターネット時代のマーケティングの変革であり、我々はこのために毎日のようにサービスを作り変えています。
外部に依存していてはコストや時間がかかりますし、業務用食材・食品のマーケットプレイスという性質上、システムを止めるわけにもいきません。
さらに、毎月会員数が増えればサイト自体もそのスケールに合わせて変化させていく必要があります。
変化にすぐに対応できるシステムは我々のビジネスをスムーズに運営する上で必要不可欠なのです。
中長期の成長イメージとそのための施策
当社の成長戦略は、データドリブン経営を軸に据えています。
我々が手に入れているデータは、20万社以上の買い手様を中心とした取引先から生まれるものであり、このように大量のデータを取得できるからこそ成り立つ戦略なのです。
具体的には、出店社の支援・コンサル活動やマーケティング活動の強化に取り組んでいきます。
2023年3月には「三方会」という組織を立ち上げ、売り手の皆様と一緒に、どのようにビジネスをより良くするか、またそのためにどのような取り組みが必要かなどを共有し、実行に移しています。
データを使った販促活動を行うためには、生の材料として存在しているデータを売上拡大にいかに活用するのか、という理解を深める必要があります。
これからは人手不足の時代が到来します。事実、中国では法人数の伸びと、従業員数の伸びに乖離が生まれてきており、データドリブンで企業活動が行えるかが鍵となっていくことは明らかです。
お客様の持続的な成長をサポートするという観点でも、我々の役割はお客様と共に思考し、それを我々のビジネスに生かし、行動することだと認識しています。
マーケティング戦略においては、引き続き売り手と買い手の双方を獲得することを目指しています。
市場規模は20兆〜30兆円と想定され非常に膨大ですが、その中で我々はeマーケットプレイスを運営しています。
一方、リアルな取引においてはその取引形態が多種多様にわたっており、その全てをインターネットで吸収できるか否かは当社が成長を加速するために乗り越えるべき課題となるでしょう。
また、リアルな取引であれば大量の商品を購入する場合には、割引が適用されることが一般的です。
インターネットの弱点である「ワンプライス」問題をどう解決するかもまた、重要なポイントとなります。
これらをどのように克服し、そしてスケールしていくかという点にはご注目いただきたいと思います。
データドリブン経営に加えて取り組んでいくのが新市場の育成です。日本初の業務用フリーマーケットサイト「ラプター」を中心に、市場の使い分けを支援し、効率的な取引マッチングを促進してまいります。
従前は売上高で企業規模を測定していましたが、近年、投資家の皆様はより企業の利益に注目していると認識しています。
現在、国内上場企業のPER(株価収益率)は15倍を目安に評価され、優良企業では20倍、成長企業では30倍以上などの基準が存在します。
そしてスケールのスピードをいかに早め、そして企業価値をどのように高めていくのか、という視点を重視し、投資家の皆様に成長企業と評価を受けるPERが30倍以上を目指し、戦略を実行してまいります。
投資家の皆様へメッセージ
投資家の皆様成長企業と認めていただけるよう、引き続き努めてまいりますので、支援のほどよろしくお願いいたします。
本社所在地:東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー26階
設立:2000年2月25日
資本金:318,619千円(2023年7月アクセス時)
上場市場:東証グロース(2018年2月23日上場)
証券コード:4380