※本コラムは2023年6月28日に実施したIRインタビューをもとにしております。
変化対応力の獲得が求められる昨今のビジネス環境において、企業のビジネスプロセスとアーキテクチャ(構造)を可視化することで成長を支援する株式会社エル・ティー・エス。
代表取締役社長の樺島弘明氏に創業の経緯や事業の強み、および今後の戦略を教えていただきました。
株式会社エル・ティー・エスを一言で言うと
お客様の「真の成長」にこだわり、ビジネスアジリティを支援・実施する会社です。
創業の経緯
2000年頃のベンチャーブームの頃、株式会社IQ3にてBtoCの教育ポータルサイト事業とBtoBのコンサルティング事業を手掛けていました。
しかし、事業がうまくいかず、不動産開発に事業を方向転換することになりました。
その際、元から進めていた当時の事業である、プロジェクトをやりきるため、その会社からスピンアウトする形で2002年に創業したのが当社の始まりです。その後、同年の12月に現職に就任いたしました。
当時は借金返済と出資を受けた株の買取、そして事業の立て直しなど多くの課題がありました。
ですが、1年半後に借入を返済し終えたあたりから、会社の存続には新たな目標が必要であると感じるようになりました。
それ以降、「30年か50年かけてもブランド力のあるプロフェッショナルサービス会社を作りたい」、また「お客様の成長を支援できる本物のサービスを提供したい」という二つのビジョンを持ち歩んできました。
ターニングポイント
当社のターニングポイントは2008年からの新卒採用を始めたことにあります。
それまではメンバーの多くが外資系コンサル会社出身者で構成されていたため、各々が前職の企業文化を持ち込み業務に取り組んでいました。
しかし、新卒を迎え入れてからはエル・ティー・エスとしての顧客との向き合い方、サービスの提供の仕方などを定め人材を育てていくことになりました。
このように、エル・ティー・エスらしさは何なのかを、顧客関係、サービス作り、人材育成、組織強化、それぞれのカテゴリーで定めたという面で、転換点であったと言えます。
事業概要と特徴
当社は、1社1社の企業変革やDXを支援するプロフェッショナルサービス事業と、IT業界をスマートにする仕組みを提供するプラットフォーム事業の2つの事業を手掛けています。
そしてこの2つ事業を補完関係を持ちながら展開しているという特徴があります。
プロフェッショナルサービス事業について
プロフェッショナルサービス事業は当社の主力事業であり、売上の90%を占めています。当サービスの優位性は、日本で一番ビジネスプロセスマネジメントの技術があることです。
今、企業や組織が置かれている外部環境として、「素早い変化対応力」の獲得が求められているというポイントがあります。
環境変化のスピードは早く、かつ複雑です。そのため、ただ一つのプロジェクトを成功させるだけではなく、自らの事業を素早く変化に適応させる能力が求められています。
このような能力を持つ会社は意思決定だけでなく、実行も同様に早いです。
しかし、ビジネスプロセスやビジネスアーキテクチャ(事業構造)を可視化して管理していないと、意思決定と実行を素早く行うことはできません。
つまり、現在のビジネス環境では、ビジネスプロセスを可視化して管理する技術が求められているのです。
この技術を日本で一番持っているのが当社であり、そのため、他社とは違った期待と評価をお客様からいただいています。
プラットフォーム事業について
プラットフォーム事業では、IT業界を構成するでは3つのプレイヤー、すなわちITを活用する事業会社、ITサービスを提供するテック系のコンサル会社、およびフリーランスのコンサルタント・エンジニアをスマートに繋げていくサービスを展開しています。
具体的には、5000社のIT企業会員同士が協力してプロジェクトを進められるマッチングサービス「アサインナビ」、近年増加するフリーコンサルタント7000人の会員をIT企業等に紹介する「コンサルタントジョブ」そして「グロースカンパニークラブ」と呼んでいるIT企業同士のコミュニティや事例共有のためのメディア運営等を行っています。
IT業界は勝者総取りの世界ではありません。それぞれ特徴あるプレイヤーが協力・連携しながら、お客様にサービス提供するという特徴があります。
当事業では、そのような業界をさらに良くするための仕組みと場を展開したいと思っています。
人材戦略について
基本的に会社事業を伸ばそうと思ったら、人材、顧客、そしてサービスの3つを磨くというのがポイントになります。
そのため、当社は高いパフォーマンスを生む人材の確保・育成にも注力しており、これが我々の強みでもあります。
まず、採用のレベルは必ず守ります。また、実は当社は外資系コンサル会社などに社内研修の外販をしており、高い人材育成能力があります。
その研修内容はコアスキルを学ぶベーシックな部分と専門領域の双方が含まれておりますが、特に専門領域の育成には当社の事業の特性が活かされていせます。
ビジネスプロセスマネジメントは社員共通の知識基盤ですが、ITコンサルもあれば戦略コンサルもありますし、データ解析チームや組織改革チームがいたり、経営管理専門メンバーからCRMに強いメンバーまで、その実態は非常に多様です。
そのため、ベーシックな能力の獲得後は、本人の意思を確認しながら専門領域ごとにプロジェクト経験を積んでいき、掛け算で成長してもらいます。
また、ナレッジの流通・還元も行っています。具体的には、個別プロジェクト案件や業界のビジネスアーキテクチャを題材としたといったナレッジ系の勉強会を定期的に行います。
そうすることで多くの専門領域や現場から生まれたナレッジが他の領域でも使えるようになり、社員の育成スピードも上がるのです。そして勿論、顧客提供価値も向上していきます。
中長期の成長イメージとそのための施策
当社事業を取り巻く外部環境についてですが、まず正確にはDXと言って示される市場は存在しません。ただ、これらを構成するコンサルティングやIT、およびその人材育成とアウトソーシングが軒並み伸びているという状況であります。
企業のリスキリングブームが物語るように、景気に関係なくIT投資への企業のコミットメントは強く、社内にIT人材を抱えることやそのような人材の育成、および外部のリソースやノウハウを積極的に活用するというニーズは非常に高まっています。
その分供給側のプレーヤーも増え競争は激しいですが、成長市場であることに間違いはありません。
そのような中、当社は既存の顧客群、いわゆる先進企業の新しい取り組みにいち早くチャレンジし成果を出すことで、これを引き合いに新規顧客獲得を進めていきます。
そして新規ではアジア圏を中心した海外展開、および自治体や中堅中小企業などIT非武装の領域へのアプローチを意識しています。
ただ、これらを網羅的にカバーするというよりも、強みである先進企業群との関係性を維持しつつ、今後はそこから生まれる新しい引き合いに応える形で既存顧客をミルフィーユのように重ねていくイメージを持っています。
そのため、海外企業およびIT非武装の組織に対するサービス提供はバランスに気をつけながら取り組んでまいります。
海外展開について
海外展開は顧客基盤だけでなくサービスの強化にもつながる戦略です。当社はこれをYOKOGAWAグループおよびFPTグループとの資本業務提携により取り組んでまいります。
FPTとの提携では、すでに我々が日本で行っているサービスを、FPTがアジアやアメリカに持つ有力な顧客基盤を通じて提供していきます。
さらに、今後この顧客基盤にサービス体制が拡充できれば、自社単体での展開も行っていきます。
YOKOGAWAグループとはOT分野で提携しています。顧客の7割以上が海外であり、その顧客の生産設備の自動化などがこれから始まるので、それをOT×ITで支援していく予定です。
このような連携が可能なIT企業は他になく、当社が独占力の強い形で展開していくことになります。
コンサルティングやITの市場というのは経済規模に比例するという特徴があります。
日本のみに目を向けて日本の経済状況に左右される企業と、当社のように日本だけではなくアジアやアメリカ向けの準備をしている企業の差は、近い将来に収益ポートフォリオに現れると考えています。
日本企業の海外プロジェクトの支援実績を通じて、当戦略の進捗をご確認いただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
現在発表している中期計画では2024年の営業利益20億円達成を目標としております。
ですが、IT企業の本当の実力は営業利益20億円を超え、その先に30億円、50億円と積み上げていけるかどうかで測られると考えています。
そして、このための顧客基盤の充実、および組織構築をここ数年間で確実に進捗させることができました。
投資家の皆様には、当社が今後持続的な成長を遂げるフェーズへと進化していくことをご認識いただければと思います。
本社所在地:東京都港区元赤坂1丁目3-13 赤坂センタービルディング 14階
設立:2002年3月
資本金:728,090,900円(2022年12月31日時点)
上場市場:東証プライム(2017年12月14日上場)
証券コード:6560