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【7318】セレンディップ・ホールディングス株式会社代表取締役社長兼CEO 竹内在氏「製造業におけるハイグロース企業を目指す」

※本コラムは2023年6月29日に実施したIRインタビューをもとにしております。

モノづくり企業の成長を支えるセレンディップ・ホールディングス株式会社は、研究開発及び新規事業の創出を軸としたオーガニックグロースとM&Aの掛け合わせで成長を実現してきました。

代表取締役社長兼CEOの竹内在氏へ、同社の沿革や事業の強み、そして中長期の成長方針を伺いました。

目次

セレンディップ・ホールディングス株式会社を一言で言うと

事業承継のトータルソリューションカンパニーです。

会社の沿革

当社の始まりは、2006年に設立されたセレンディップ・コンサルティング(現・セレンディップ・ホールディングス)に遡ります。

最初の7〜8年間はベンチャー投資・支援に力を注いでいました。しかし、約10年前にベンチャー企業以上に中小企業に経営課題があるという認識が生まれ、、中堅・中小製造業の成長支援に事業の転換を図りました。

具体的には、自らリスクを取って、中堅・中小製造業の経営に関与し、投資とプロ経営者のチーム派遣を通じて支援を行ってきました。

従前のベンチャー支援は小規模であり、売上も1億円に満たないビジネスでした。

しかし、2014年以降の天竜精機株式会社の買収を機に、中堅・中小製造業への投資を通じて一気に事業規模が拡大し、2年前の2021年6月に東証マザーズに上場しました。

私が当社に参画したのは2013年でして、まさにこの構造変革のタイミングでした。

元々は出資者として当社の創業時から関わりはありましたが、IT企業から中小企業経営へ転身し、2023年6月より現職に就任しております。

ターニングポイント

最初に投資をしたのはベーカリーチェーンでした。

当時はまだ製造業には特化しておらず、私と共同経営者の高村氏の2人で個人的に投資を行いました。ですが、この買収が中小企業の課題を感じるきっかけとなりました。

その会社は年間売上が数十億円で、多額の赤字を抱えていました。従業員の頑張りとは裏腹に経営者の力不足が原因となり、結果的に会社は傾いてしまったのです。

当時、売上が100億円未満の中堅中小企業で、高齢化したオーナーが経営に携る家族経営の会社が、成長の限界に直面するといった状況が多発していました。

そのような状況でベンチャー支援を行っていた我々が経営に参画することになったのですが、結果として1年のうちに黒字化と次の担い手への売却を実現しました。

この過程で我々は中小企業のリアリティを実感しました。それは、従業員の努力に反して経営体制が不十分で財務状態が悪い、また銀行や取引先などの外部のステークホルダーは株主ではなくあくまで傍観者であるといったことです。

一方、経営者を変革すれば黒字化できる可能性が大いにあることも実感しましたし、同じような境遇の企業は国内にまだまだ多くあると考えました。

これが事業会社の経営と投資を組み合わせて展開する、今のビジネスモデルを構築するきっかけとなりました。

セレンディップ・ホールディングス株式会社 2023年6月30日 事業計画及び成長可能性に関する事項の開示 より引用

その後佐藤工業の買収を行い自動車産業に参入しました。

製造業セクターを狙った理由は、日本のモノづくりがまだ世界で競争力を持つ産業だと考えたからです。

また、自動車産業はサプライチェーンが強固であり、上流から下流までの連携が密接に結ばれています。このセクターの安定性もまた、投資という観点では魅力的でありました。

これらの理由により当社は現在のように製造業を主軸に事業を展開することを定めました。

事業概要と特徴

当社事業は、大きく3つの業態から成り立っています。

まずは製造業系のモノづくり事業です。子会社として天竜精機、佐藤工業、三井屋工業、アペックスの4社があり、自動車部品の製造や産業機器・開発段階における試作製作に従事しています。

売上は全体の約90%を占め、金額ベースでは約140億円にのぼります。

2つ目はプロフェッショナル・ソリューション事業でして、コンサルティングや経営者・開発エンジニアの人材派遣が中心です。

3つ目としてインベストメント事業も展開しており、セレンディップ・フィナンシャルサービス社でのM&Aアドバイザリー業務やSBIグループと設立したファンド運営を中心に行っています。

セレンディップ・ホールディングス株式会社 2023年6月30日 事業計画及び成長可能性に関する事項の開示 より引用

モノづくり事業承継プラットフォームについて

当社は独自の「モノづくり事業承継プラットフォーム」を通じて、事業承継のトータルソリューションを提供しています。

まず、日本国内は高齢化が進んでおり、企業経営者の平均年齢は60歳を超えています。その多くが後継者不足に悩んでおり、特に地方企業で深刻な問題です。

また、M&Aがまだ日本では一般的な手法ではないという課題もあります。

私自身は外資系企業で働いた経験があり、そこでは1ヶ月に1件以上のペースで買収が行われていました。

しかし、日本企業にはM&Aが成長戦略であるという考えが一般的ではなく、買収される側も不安や混乱を抱えることがあります。

我々はM&Aを成長戦略の一環として普及・推進させることを目指し、この「モノづくり事業承継プラットフォーム」をスタートしました。

この確立には、M&Aのエキスパートや買収後の経営者を担うメンバーおよびマネジメントの仕組み、そしてモノづくりの現場の変革を担う存在など多様な要素が必要です。

我々はこれらをシェアードサービスで提供し、そしてプロセスそのものを標準化させることに取り組んでいます。

日本の製造業は地方創生や少子高齢化対策にも関わる重要なビジネスです。その向上が日本の成長と経済発展にも繋がると考え、大きな志のもと行っています。

セレンディップ・ホールディングス株式会社 2023年6月30日 事業計画及び成長可能性に関する事項の開示 より引用

コンサルティングサービスについて

元々コンサルティングサービスは行っておらず、買収した会社のための内部サービスとして提供していただけでした。

モノづくり事業の拡大とともに徐々に蓄積されてきた投資や再生のノウハウを外部に提供し始めたというのが当事業の始まりです。

一般的なコンサルティング会社と大きく異なる点は、当社が事業経営のできる人材を揃えているということです。

我々のコンサルティングサービスは、経営実態を理解した上で提供されるものです。このノウハウを形にし、中堅・中小製造業の現場のニーズに応えてきました。

その一つの成果が、「HiConnex(ハイコネックス)」という中堅・中小製造業向けのDX支援のクラウドサービスです。

このサービスは製造現場の可視化を実現するものであり、中堅・中小製造業でも利用しやすい価格設定や使いやすいユーザーインターフェースが特徴です。

多言語対応や高齢者にも使いやすいインターフェースを提供することで、製造現場の多様なユーザーに対応しています。

一方、内部にはビジネスインテリジェンスの機能も備えており、製造現場の要素を具体的に可視化することができます。

経営者や工場長、班長、作業者など、異なる立場の人々が作業の進捗、生産性、原価など自社の実態を簡単に把握できるツールとして活用できます。

このように、当社のコンサルティングサービスの強みは、実際の現場を熟知していることにあります。

コンサルティング会社でもなく、IT企業でもないため、中堅・中小製造業の事業会社で視点からサービスやデジタルツールを開発することができ、地に足のついたサービスで企業の発展をサポートしています。

中長期の成長イメージとそのための施策

当社の成長戦略は大きく二つの要素に基づいています。それは、モノづくり事業を中心とした既存事業におけるオーガニックな成長とM&Aという非連続かつ大きな成長ドライバーであります。

セレンディップ・ホールディングス株式会社 2023年6月30日 事業計画及び成長可能性に関する事項の開示 より引用

前者のオーガニックグロースに関して、特に当社においてはR&D(研究開発)を通じてこれを実現してきました。

引き続き、事業を立ち上げ・成長・収益化の3段階に分けてリソースの最適配分を行うことで、モノづくり企業4社の企業価値向上や、プロフェッショナル・ソリューション事業におけるクロスセル戦略を実行してまいります。

セレンディップ・ホールディングス株式会社 2023年6月30日 事業計画及び成長可能性に関する事項の開示 より引用

一方M&Aに関してですが、「国際競争力が高く、サプライチェーンが強固な分野」および「事業承継プラットフォームを強化する企業」を重点投資領域として設定しています。

具体的な投資ポートフォリオの観点で説明いたしますと、まずポートフォリオの7割は安定的な成長を期待する領域で構成いたします。

既存の自動車業界以外にも医療機器や建設・工作機械など日本が世界で競争力を持ち続けることができると考えている輸出産業の分野に注力していきます。

このように、我々は基本的には安定的な投資方針を重要視しています。

以前は短期黒字化・売却という形を採用していたこともありました。

ですが、先に申し上げた佐藤工業の買収を皮切りに、事業会社の経営と投資を組み合わせて展開するビジネスモデルへの変換を図り持続的な成長を大切にしてきたことが関係しています。

一方で新技術やスマート工場といった成長性の高い企業にも投資も行い、投資比率は2割を目安にしています。

既存事業の中では天竜精機がこのカテゴリーに該当し、高成長・収益性を期待する領域となっています。

また、モノづくり事業承継プラットフォームを強化する業態としてIT企業やコンサルティング企業、人材派遣企業などにも投資を行い、日本の国力再生に繋げていきます。

セレンディップ・ホールディングス株式会社 2023年6月30日 事業計画及び成長可能性に関する事項の開示 より引用

投資家の皆様へメッセージ

ハイグロース銘柄と聞くとIT企業をイメージされがちですが、当社は製造業でハイグロースを実現できる唯一の企業であると自負しています。

オーガニックグロースの実現と、断続的に行ってきたM&Aによる成長が我々の強みですので、製造業にご興味のある方々には、ぜひ当社に注目していただきたいと思います。

また、当社はモノづくり事業承継プラットフォームを通じて地方創生や高齢経営者に対するビジネスに取り組み課題解決を目指しています。

このように実体経済に直接的に貢献するソリューションビジネスを提供する企業は決して多くありません。当社独自のポジショニングから見える投資価値にも合わせてご注目いただきたいと考えています。

セレンディップ・ホールディングス株式会社

本社所在地:愛知県名古屋市中区錦1-5-11  名古屋伊藤忠ビル3F

設立:2006年8月

資本金:11億1403万400 円(2023年3月末時点)

上場市場:東証グロース(2021年6月24日上場)

証券コード:7318

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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