※本コラムは2023年7月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。
JALCOホールディングス株式会社は、およそ10年前からアミューズメント業界を中心とした不動産・貸金業に注力し、成長を持続してきました。
代表取締役社長の田辺順一氏へ、事業の優位性や中長期の成長ビジョンを伺いました。
JALCOホールディングス株式会社を一言で言うと
金融民主化を目指すヘッジファンドです。
沿革と代表就任の経緯
当社の歴史は、もともとは電子部品の会社としてスタートしました。
株式会社ジャルコとして上場しており、テレビなどの電子機器に接続するコードの端子を提供していました。
会社設立は1956年ですが、その後1985年頃にはVHS最大手のビクター社の国内主要取引先として順調に成長していました。
私は2009年から当社と関わることとなりました。
経歴としては、野村證券に15年弱勤めた後、1社別の証券会社を経て、2007年から森トラストの子会社であるMTラボ株式会社というファンドに移りました。
その際、同社がコネクタ関連の会社のバイアウトを検討していた流れでジャルコ社に出会い、結果的には個人で出資をすることになりました。
そしてこのタイミングで取締役に就任しています。当初は出資金の早期回収を想定していましたが、その後電子部品業態からの撤退、採算状況の立て直しを3年ほどかけて行う過程で、2011年10月に現職に就任しました。
ターニングポイント
ターニングポイントとしては、業態を現在の不動産業および貸金業に転換したこと、そして2013年9月に保有不動産1号案件としてマルハン(川崎桜本)を取得したことが挙げられます。
当初、我々は電子部品事業の立て直しを検討していました。
しかし、製造業において企画・開発から利益回収までのリードタイムは平均でも3年程度ととても長いです。
また、その間の変数も多いため、このビジモデルを継続することは難しいと考え、株式会社ジャルコの電子部品事業は外部に完全譲渡しました。
事業変革を模索する中で、あらゆる業態の根幹にあり、既存の事業者が安定的に成長を続けている業態として注目したのが、不動産と貸金の領域でした。
そして、私自身が詳しかったこと、市場としても完全にブルーオーシャンの状態であるという必要・十分条件のどちらも揃ったアミューズメント業界を業種として選びました。
そして、2011年に親会社JALCOホールディングスが株式移転により上場し、株式会社ジャルコは上場廃止となりました。
一方、当時の株式会社ジャルコには繰越欠損金がありました。これを利用し、JALCOホールディングスは第三者割当で新株予約権を発行し、利益を積み上げながら貸金業と不動産事業を本格化させていくことができました。
その後、2013年には保有不動産第1号案件としてマルハン(川崎桜本)を取得し、不動産事業に本格的に乗り出しました。
そこから10年経ち、現在(2023年9月末)の不動産保有総額は453億円にまで成長しています。
事業の概要と特徴
当社は現在、不動産事業・貸金事業・M&A事業、およびソーシャルレンディング事業を展開しています。
対象業種はアミューズメント業界を中心に、その他にも製造業や商業施設等もふくまれます。
対象業種を広げたことで、不動産取得の際に重要となる各金融機関との関係がより強固になり、2023年9月末時点で保有物件は37件、物件総額453億円にまで成長してきました。
一方、収益性という観点ではパチンコホールが7.6%に対し、製造業が5.5%、商業施設等も6.4%程度であります。
そこで足元では、これまで取得してきた製造業などの物件の売却を進めています。
ここで利益を得ながら、全体のポートフォリオとしてはアミューズメント業界の割合を高め、安定的に高収益を生み出す体制へと進化させていく方針です。
事業の優位性について
当社のビジネスモデルは、不動産取引や金融サービスをワンストップで提供することができるという点に強みがあります。
例えば、パチンコホールを売買する際、そこには土地・建物やパチンコ台の売買、従業員の採用など様々な工程があり、この過程でお客様は不動産会社、金融機関などとそれぞれ別々にやり取りをしなければなりません。
しかし我々はこの全ての工程をサービスとして取り揃えています。一貫してサポートすることもできますし、部分的でも可能です。
また、銀行が融資をする場合、全資産のうち土地と建物のみについて価格を評価し、ここの範囲内で融資金額が決定します。
一方、当社は全体の資産価値を正確に評価し、最適な条件で融資金額を決定できますし、貸金とM&Aを組み合わせることもできます。
我々はお客様と同じポジションを取ることができる存在であると考えています。お客様と我々が唯一違うのは、パチンコホールを実際に運営しているかどうかという点です。
このように、一般的な不動産取引や融資のような個々の会社との取引ではない、複合的なサービス展開により、お客様の信頼を得ることができています。
また、私たちがお客様のビジネスを肯定的に評価する姿勢も、信頼獲得における大きな強みとなっていると考えています。
事業環境について
アミューズメント業界は長い歴史を持ち、ピーク時には30兆円という売上を記録していましたが、現在は15兆円程度で推移しています。
店舗数もピーク時の約5分の1にまで減っていますが、業界全体のマーケット規模は依然として大きく、パチンコホールの台数に関してはこれらと比較して減少幅が抑えられている状況です。
また、パチンコ業界は30年ごとに規制が変動するサイクルがあるため、市場環境は常に変動しています。
現在、売上以上に店舗数の減少スピードが速いことを考えると、合理的かつ効率的に事業を展開し、安定した利益を生み出す事業者が生き残り、業界内の競争環境は彼らにとって有利なものになってきています。
これはつまり、他業種に比べて当業界の不動産事業の収益性が良いことの裏付けでもあります。
また、業界トップ企業のマルハンは、そのシェアが8%と比較的小さいながらもおよそ1兆円の売上を記録しており、このことからアミューズメント業界のマーケット規模の優位性が証明されています。
中長期の成長イメージとそのための施策
成長の基本方針
今後の成長戦略として、アミューズメント関連事業に経営資源を集中させ、不動産の保有額を1,000億円、貸金残高を100億円まで積み上げていく計画です。
我々のビジネスモデルは長期契約が基本で、契約内容も大幅に変わるものではないので、現状の社員数でも十分に対応できています。
人数を大幅に増やすのではなく、効率的かつ持続可能なビジネスをこれからも実現していきます。
当社の不動産契約については、一般的な定期借家や定期借地契約ではなく、長期賃貸不動産契約の形態をとっています。これには、アミューズメント業界の特性が関連しています。
あるパチンコホールを開業する場合、初期段階の先行投資を経て1年半ほどで損益分岐点が明らかになります。ここが確定すれば、収益が過度に落ち込むことはありません。
また、パチンコホールの場所自体に価値があることも特徴的です。
例えばメーカーは、その大半の売上は工場で生まれているため、本社がある場所に全ての価値が紐づいているわけではありません。
一方のパチンコホールは、まさにその場所で収益が生まれており、不動産に優越的地位があると言えます。
これはお客様(事業者)にとっても同様で、そのため家賃は税金やパチンコ台の料金に次ぐ、支払い順位も高いものなのです。
これらの要素から、我々はアミューズメント業界で不動産業・貸金業を行うことの合理性を強く認識しており、今後も強固なビジネスモデルを継続させることが可能であると考えています。
想定されるリスクと対応策
しかし、成長戦略の中でリスクも認識しております。それは、我々よりも規模の大きい競合他社が同様の事業展開を行うことです。
仮に当社と同程度の財務内容での製造業者が参入してきた場合、資金調達のコストには開きが生まれると考えています。
その差は1️%程度で、当社の調達コストも年を追うごとに下がっていくことを想定しておりますが、これが直接不動産事業の収益率に還元されるため、この点には注意を払っています。
パチンコホールは全国に7,000店舗あり、現在我々には年間10-20件程度の案件相談が寄せられています。
しかし、一定の収益性が確保されており、不動産売買や貸金などの当社が取り扱うサービスの需要がある事業者は概ね1,000店舗と推定されています。
業界全体の需要を仮に風呂桶と例えるならば、受け皿である当社はまだおちょこ程度だと認識しています。
つまり、供給側のサービスが圧倒的に少ない状況であり、この状況が続けば当社の成長が進むことは確実です。
また、彼らの収益規模は、わかりやすく言えば時価総額の比較的小さい上場企業に匹敵するものです。
引き続き効率的な経営を行いながらも、現在のおちょこサイズから、コップ、洗面器、お風呂、プール、池、湖を経てやがて海へと大きく成長していくことを目指していきます。
この成長を遂げるためには、より多くのアミューズメント施設の取得や提供に注力し、成果を上げることが重要です。
金融民主化へむけて
冒頭で申し上げた通り、我々は、金融民主化を実現するヘッジファンドであると考えています。
この観点で、足元の主力事業をどのような思いで取り組んでいるかと言いますと、例えばパチンコという業種に対しての偏見や思い込みによって、多くのビジネスチャンスを逸失しているとすれば、それは預金者を含めたすべての投資家に対する投融資の機会を奪うことになると思います。
当社が考える「金融民主化」とは、「左手に客観性を、右手に感受性を」宿しながら、フェアに投融資のチャンスの機会を提供することであります。
投資する方、投資される方の双方にとって機会均等であるべき、というのが当社の理念です。
また、ヘッジファンドは基本的に「理論的な裁定取引」とレバレッジを駆使し、比較的短期に運用成果を出す存在と認識しています。
当社はこれらを基底に、長期的な視点から事業取引と資本取引を最も合理的かつ効率的に行うことで、最終的な運用成果=EBITDA/自己資本、の最大化を実現してまいります。
投資家の皆様へメッセージ
インカムゲインとキャピタルゲインを同時に期待できる珍しい上場会社と思います。
NISA枠にはうってつけであり、なおかつ当社から発信する月毎の動画をはじめとするコンテンツは
当社の紹介というよりは、投融資全般、人生に関する本質をつまびらかにしている自負があります。
皆様の命の次に大事なお金という資産を長期で殖やす堅めのヘッジファンドを標榜しております。
4半期ごとの定量的定性的成長を確認しながらドルコスト平均法で購入ください。
本社所在地:東京都中央区日本橋2丁目16番11号 日本橋セントラルスクエア8階
設立:2011年10月3日
資本金:6,449,681,746円(2023年3月31日現在)
上場市場:東証スタンダード (2011年10月3日 上場)
証券コード:6625