※本コラムは2023年8月3日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社BlueMemeは、ローコード技術とアジャイル手法を活用したDX事業を展開しています。
代表取締役社長の松岡真功氏に創業の経緯や中長期の成長戦略について教えていただきました。
株式会社BlueMemeを一言で言うと
ローコード技術とアジャイル手法でシステム開発の内製化を支援している会社です。
沿革と事業の成り立ち
当社は2006年に設立され、その後2009年に私が会社を買い取る形で事業を開始しました。
当初は、お客様の業務を理解した上で最適なシステムを提供するというコンサルティング事業を行っていました。
業務分析・提案というシステム開発の中ではいわゆる上流工程を担っていたわけですが、お客様からはシステム全体を構築するリクエストを多くいただいておりました。
しかし、当時の会社規模ではシステムを作る体力がなかったため、少人数で効率的にシステムを構築する方法を模索しました。
この過程で、我々はソフトウェアの自動生成技術、今で言うところの「ローコード」や「ノーコード」の考え方に通じるプラットフォームを開発しました。
これが現在の主力ビジネスへとつながる事業展開となりました。
ターニングポイント
2010年から11年にかけて、先述したシステム開発のプロセスを効率化する新たなビジネスをスタートさせたことがひとつのターニングポイントになったと考えています。
この時点で、自社開発リソースの制約も考慮し、同じアプローチを採る企業が他に存在するか、協業の可能性を含め探求し始めました。
約100社に及ぶ調査を経て、2012年にポルトガルのOutSystems社との契約に至りました。
その後、2013年には日本総代理店契約を果たし、同社のプラットフォームをベースにしたビジネスモデルを確立しました。
この総代理店契約を獲得した点も大きなターニングポイントであったと考えています。
また、2017年に開発専門の子会社を設立したこともターニングポイントのひとつであったと感じています。
それまで培ってきたローコード開発の技術を用い、システム開発までを担う人材を拡充したことで、我々の開発力が大きく強化されることとなったのです。
当初はOutSystems社のシステムを販売し、このライセンス料をサブスクリプションモデルで受け取る形での事業拡大を計画していました。
しかし、この計画にはシステム導入側でシステムを利用し、ローコード開発ができる人材を育成する必要がありました。
この課題を解決するために2014年にトレーニングサービスの提供を開始しましたが、根本の課題として顧客企業側のトレーニングを受ける人材の不足がありました。
そのため、顧客企業側からは、人材育成よりもシステム自体を開発する依頼が来るようになりました。
このような背景のもと、設立したのが株式会社OpenModelsです。
これにより多くのノウハウやアジャイル開発の手法が蓄積され、2018年にはローコードやノーコードを駆使し、当社自ら短期間かつ少人数で効果的なシステムを構築する方法を提供する事業を展開しました。
事業概要
当社は、企業が自らシステムをつくる”内製化”を支援しています。
具体的には、ローコード技術とアジャイル手法を活用したDX事業を展開し、ビジネスアーキテクチャのコンサルティングから大規模なアジャイル開発プロジェクトまで、多岐にわたる領域で活動しています。
また、ローコードを中心としたシステムの受託開発やエンジニアの育成、ソフトウェア製品の販売とサポートも行っています。
国内のシステム開発の現場では、大手のシステム会社による下請け体制が続く中で、当社はローコード技術とアジャイル手法を駆使したDX事業を展開しています。
従来の下請け構造では、お客様に大きな負担がかかっている場合が多くあります。我々はこの課題に対して、ローコードという技術を使い、シンプルで効率的なシステム開発を提供しています。
将来的には、お客様が自らシステムを内製化できるよう支援し、新しい産業構造を築いていくことを目指しています。
優位性
当社が提供するサービスの最大の特徴は少人数・短期開発の体制です。例えば、従来のSIerのビジネスモデルでは100名の人材が必要な業務を、当社であればわずか20名の規模で可能にします。
そして、ローコードとアジャイル手法により、我々はユニークなポジションを確立しています。
仮に既存のプレーヤーが当社と同じポジションに入ろうとする場合、既存のビジネスモデルで中核をなす人材を大幅にカットする必要が生じます。
つまり、事業モデルの根本的転換が求められます。
これを上場企業などの一定規模以上の会社が行うにはかなりのコストや代償を伴うため、参入障壁は非常に高いと考えています。
これが我々の既存プレーヤーに対する優位性になっています。
さらに、新規参入者に対する優位性としては、自社開発したお客様の事業内容を短期間に分析・理解する方法論があげられます。
SIerの最大の価値は、顧客企業内にはいないシステム開発人材を抱え、そして彼らが業界のノウハウを有していることにあります。
しかし、足元でDXの流れが広まる中で、各企業は業界のトッププレーヤーの模倣だけでは対処しきれない事態が発生しています。
また、これによりこれまで知識と人材を効率的に共有してきたSIerにおいても、人材不足が問題視されています。
この結果、Slerの新規参入が増えてきていますが、彼らには業界ノウハウが不足しているという課題があり、これが顧客企業の導入意欲に影響を及ぼしています。
しかし、当社には自社開発した独自の方法論を通じて、顧客の事業内容を短期間で分析し理解する手法があります。
そのため、あらゆる業界の企業が我々のお客様となる可能性が広がり、柔軟なサポートを提供していくことができています。
人材育成について
当社は、人材育成に特に注力しており、ITやビジネス未経験者からでも成長できる仕組みを構築することに力を入れています。
即戦力の獲得や中途採用も重要ですが、私たちの焦点は、業界やITに疎い人々が入社しても、時間をかけてでも理解できるような組織をつくり上げることです。
私は、今後の日本国内における人口減少に伴い消費も縮小し、経済の規模が縮小すれば、人材が余る可能性があると考えています。このため、人口が余る時代に向けて、ゼロから育成できる体制を整えることが重要だと考えています。
業務やITの知識がなくても、当社での経験を通じてスキルを高め、自身のキャリアを形成できるような仕組みを構築しています。また、知識を教える側もスキルを向上させることができ、双方にとって良い影響を与えることができる状況を作り出しています。
一般的にソフトウェア開発には多くの時間がかかります。プロジェクトを複数こなし、システムを完成させなければ、理解を深めることが難しい分野であると思います。
しかし、当社のローコードやノーコードでは、短期間でスキルを磨くことが可能です。通常2年から3年かかるソフトウェア開発も、3ヶ月から1年で経験を積むことができます。
これにより、社員の短期間育成が可能となり、短期間でかつ少人数で高い価値を提供できる強みを持っています。このアプローチは、お客様にとっても魅力的な価値を提供すると同時に、社員の成長を促進するための重要な戦略です。
これが当社の一貫した姿勢であり、今後も人材育成を重要な柱として、積極的に取り組んでいく方針です。
中長期の成長イメージとそのための施策
当社の成長戦略は、以下の3つの柱で構成されています。
- 既存事業の持続的な成長
- パートナーシップによる事業の拡張
- 新たな事業領域への進出
既存事業の持続的な成長
まずは、当社の既存事業を継続的に拡大させてまいります。
具体的には、システム開発から顧客企業の事業戦略に貢献するコンサルティング領域への拡大を進めています。
現在、ローコード・ノーコード開発の需要は非常に高く、当社としてもこれまでローコード開発の拡大に重点を置いてきました。
また、設計・製造という難易度が高い工程のノウハウを先に取得することで、上流の企画や要件定義、下流のテスト工程にも活用していくことができると考えています。
一方、少人数・短期開発が可能なこのビジネスモデルにおいても、いずれは人材不足が成長のボトルネックになってしまいます。
そのため、今後2026年にかけてはデジタルレイバーの導入を進めていきます。これにより、人材確保のスピードに比例しない形で売上をのばしていくことを目指します。
さらに2027年以降は、上流のコンサルティングまで領域を拡張します。
この過程で鍵となるのがシステム全体の要件を細分化し、機動的なシステム開発を実現するビジネスアーキテクトの存在です。
昨今、企業を取り巻く事業環境は非常に速いスピード感で変化しており、この柔軟性が有利に働くと考えています。
これらの取り組みを通じ、20%の成長率を目標としてまいります。
パートナーシップによる事業の拡張
2022年4月に発表した三井情報との資本業務提携がその一例ですが、昨今このような大企業におけるローコード・ノーコード開発の需要は一段と高まっております。
当戦略にはこうした需要を捉え成長に繋げる狙いがあります。時間軸としては2-3年での実現を見込んでおり、既存事業の拡大に上乗せする更なる成長を目指していきます。
新たな事業領域への進出
そして、新たな事業領域への進出も進めてまいります。足元ではオーダーメイド医療の研究に力を入れています。
具体的には、ゲノム解析を通じて、個人ごとの医療を実現するための基盤づくりを行っています。
ゲノムの解析には膨大な時間とコンピュータリソースが必要になります。
今後は医療も情報産業になってくると考えているため、この初期段階としての基礎研究を行っているとご認識いただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
我々は、写真の現像やプリントアウトが自分自身でできるようになったように、システム開発も自分自身でできる時代が来ると考えています。
多くのものがセルフサービス化され、ソフトウェアにおける自動化の流れは止まることはないと考えています。
当社では、IT業界を長期視点で見た際に、その止まることのない流れにいち早く乗り、自動化やローコード領域にフォーカスした事業を展開しています。
IT業界の将来を予測し、長期的な視点で成長していくことが可能である当社を応援していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都千代田区神田錦町3-20 錦町トラッドスクエア10F
設立:2006年12月20日
資本金:970,809,163円(2023年6月30日現在)
上場市場:東証グロース市場(2021年6月29日上場)
証券コード:4069