※本コラムは2023年8月2日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社イントランスは、ホテル運営事業や不動産事業を中心に行っており、観光・インバウンドビジネスを通じて、日本の観光ビジネスの発展に貢献しています。
事業の強みや今後の成長戦略について、代表取締役社長の何同璽氏へ伺いました。
株式会社イントランスを一言で言うと
インバウンドビジネスの中核を担い、地方創生を目指す会社です。
代表就任の経緯
私は2004年にETモバイルジャパン株式会社を設立しました。
同社では、十数社の大手事業会社や投資会社の出資を受け、中国人の中国国内旅行時のホテル・航空券の予約と中華圏の観光客を日本に送客するOTA業務(オンライントラベルエージェント)を展開していました。
その後、個人旅行やオーダーメード型団体を中心に中華圏富裕層向けの訪日旅行会社として成長し、業界の中で主要なプレーヤーとしての地位を確立しました。
一方、ETモバイルは観光客の受け入れにとどまらず、旅行先滞在中の日本でのビジネス展開も強化しました。
特に宿泊事業を重視し、その一環として2018年にイントランスを買収しました。
翌年の2019年に当社取締役に就任し、イントランスの経営に参画してまいりました。
そしてこの度、ホテル投資ファンド事業やインバウンド送客事業を通じた事業拡大戦略の実行に伴い、中華圏を中心に幅広く海外人脈を持つ私が代表を務め、さらなる成長を目指すこととなりました。
事業概要
当社では、ホテル運営事業、不動産事業、ハーブガーデン事業、その他中華圏ネットワークを活かした事業を行っています。
ホテル運営事業ではホテル運営の他に、外資誘致やホテル運営アドバイザリーとして活動しています。
不動産事業では、不動産仲介やプロパティマネジメント事業中心として、ホテル運営事業と連携して活動しています。
また、ホテル投資ファンドを通じてホテルへの投資を行い、ホテル運営による収益とホテルの価値を向上させた上で売却するという取り組みを進めています。
さらに、中華圏から観光客を当社運営のホテルへインバウンド送客し、滞在期間中のサービスまでを提供することを目指しています。
このようにホテル運営におけるノウハウと不動産事業における実績を組み合わせ、観光・インバウンド関連事業における重要なポジションを目指し、事業を推進しています。
また、この事業戦略においては、経済が拡大し、今後増え続けると予想される中華圏観光客を重要なターゲットとすることが最適であると考えおり、中華圏ネットワークに強みのあるイントランスは、こうした事業戦略に基づき、事業の拡大を目指しています。
ターニングポイント
やはりコロナウイルスによる影響は我々にとって非常に辛い状況でしたが、一つの転機となりました。
当時、当社は元々持っていた不動産を売却し、ホテル運営会社へのモデルチェンジをしている最中でした。
しかし、外部環境の変化によりホテル業界は停滞し、ホテル運営事業は十分な仕事ができない状況でした。
そのため、ここ2、3年はマーケットの需要が戻る時に備えて事業の基盤固めを進めてきました。
具体的には、2022年5月に中華圏に強みを持つ国際的ホテルブランドであるバンヤンツリー・グループと資本業務提携を行い、合弁会社としてジャパンホテルオペレーションズ株式会社を設立しました。
本提携は、今後、観光・インバウンド関連事業において拡大を目指す当社としては非常に意味のあることだと認識しており、これまでに数件のホテル開業を果たし、着実にトラックレコードを積み重ね、少しづつ結果が出始めてきました。
そして、現在はこのようなコロナ渦での基盤固めの活動をベースとし、事業の再拡大を目指している段階であります。
事業の強みと差別化戦略
先ほど申し上げた通り、当社は送客した中華圏観光客への滞在中のサービスを提供しています。
このように送客と接客を繋げることで運営能力が向上します。一般的には接客の側面が注目されやすいホテル業界ですが、当業界では送客も非常に重要です。
そのため、このように送客と接客の両面を結びつけることによって、日本のホテル業界において差別化を図っています。
こうしたことから、中華圏からの送客や滞在中のサービスを含めた対応、さらに不動産ファンドの投資といったバリューチェーンの両端を担うことができるのは、当社以外にないと思っています。
また、日本のホテル業界は成長市場であり、さらに市場規模も大きいためビジネスの場として世界から注目されています。
実際に、最近ではタイなど東南アジア系のホテルが日本に進出してきています。
しかし、日本の市場は特殊な環境ですので、日本と関わりのある会社でないとビジネスを行うのは難しいです。
例えば、外資系ホテルは、マネジメントコントラクト(ホテル運営受託)のように事業リスクを取らないモデルを活用しますが、日本ではホテル資産のリース方式がメインに求められますし、日本現地の金融の与信を持っている会社でないとホテル資産のリース契約ができません。
そのため、外資系ホテルの日本進出は、彼らにとって大きなバリューにつながりにくいのです。
つまり、現在、グローバルのホテルチェーンが国際的に展開しているようなモデルを日本で展開することは難しいです。
それに対して、当社はバンヤンツリーと業務提携を行い一心同体で事業を行っていきます。これにより、迅速な機動性、高い経営能力を確保することができます。
このように当社は独自のビジネスモデルを確立することで差別化を図っています。
また、当社が地方のリゾートホテル・温泉旅館を中心にポートフォリオを構築提起します。
バンヤンツリーの客層は世界のラグジュアリー層なので、外国人観光客の富裕層を日本の地方へ送り、地方創生の一翼を担うことができればと考えています。
中長期のイメージとそのための施策
日本はインバウンドビジネスにおいて世界でも有数の成長市場です。
この成長を捉えるためにはブランド力と安定したオペレーション能力が必要となり、これらを確保することで当社の市場価値を上げていきます。
バンヤンツリーとの資本業務提携によりブランディング戦略は完了しました。
ホテル業界が停滞していたコロナ渦でしっかりと複数件、開業することができました。
これからは、既存ホテル施設のブランドチェンジを中心に、バンヤンツリーグループのブランドを日本全国で展開していく予定です。
しかし、投資家の方からはホテル運営会社として事業拡大のスピードが上がらないと心配されると感じています。
日本で良い案件を取得するには、ホテル資産の不動産を取得するか、リース契約をするといった先行投資が必要です。そのため、投資能力が非常に重要となっています。
そこで、当社は不動産ファンドビジネスに注目しました。
つまり、中華圏からの資金を活用し、当社でオフバランスによる投資能力を保有して不動産を取得し、当社グループのホテル運営会社に運営させます。
また、中華圏の投資家にも当社が創成するファンドに投資していただいたり、直接、ホテル不動産を所有していただくようなスキームを構築してゆきます。
このようなホテルへの投資は専門性が高く、トラックレコードを作りながらファンドビジネスを大きくしていかなければなりません。
3か月あるいは半年のデータを蓄積し、大きくしながらバンヤンツリーのブランドを移管していく流れになりますが、今のところ順調に計画が進んでいます。
また、今後はホテル事業と不動産事業をそれぞれの相乗効果によって拡大していきます。
具体的には、ファンドによりホテルを買収し、そのホテルを当社が運営します。
このように運営するホテルの数の増加により、ホテル運営の売上は拡大します。
さらに、ホテル不動産の売買仲介や施設管理を受託することで不動産事業の拡大も見込め、当社グループ全体の成長につながります。
このように、ファンド事業を進めることは、不動産事業とホテル運営事業の相乗効果が期待できます。
これに加えて、中華圏からのインバウンド送客事業を推進することで、ホテル運営の売上を後押しすることになります。
今後は、このようなホテル投資ファンドとインバウンド送客事業を進めることで、ホテル運営事業と不動産事業の売上は拡大し、当社の目指す事業モデルによって、業績も右肩上がりになることを想定しています。
投資家の皆様へメッセージ
当社のビジネスモデルは少し特殊・難解であり、また変化の最中であるため、事業についてわかりにくいと感じる方も多いと思います。
しかし、当社は成熟市場において世界でも成功例が多いビジネスモデルを採用し、差別化をもって事業拡大を図っています。
そのため、まずはこれを機に当社の戦略や優位性をご理解いただき、ご支援していただければ幸いです。
本社所在地:東京都渋谷区道玄坂一丁目16番5号 大下ビル9階
設立:1998年5月1日
資本金:1,133,205千円(2023年8月アクセス時)
上場市場:東証グロース市場(2006年12月15日上場)
証券コード:3237