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【4588】オンコリスバイオファーマ株式会社代表取締役社長 浦田泰生氏「がん治療に新たな選択肢を与え、製薬企業への変革を目指す」

※本コラムは2023年8月18日に実施したIRインタビューをもとにしております。

オンコリスバイオファーマ株式会社はウイルス学に立脚した創薬技術 “ウイルス創薬”を事業コンセプトとするバイオベンチャーです。

代表取締役社長の浦田泰生氏へ、創業の経緯や製薬企業への変革を目指す中長期のビジョンを伺いました。

目次

オンコリスバイオファーマ株式会社を一言で言うと

がん患者さんに新しい治療の選択肢を与える会社です。

創業の経緯

私は長い間医薬品の世界に身を投じてきた人間です。

実家は薬局でして、大学で薬学を学び、その後は小野薬品やJT(日本たばこ産業)の医薬事業部で研究開発のトップとして経験を積みました。

そしてこの過程で、がん治療の分野に挑戦したいという思いを強く持っていました。

当時、がんは今以上に治療法が無い難病で、患者さんはがんではなく副作用との闘いを強いられていました。

そこで、なんとか新しい治療薬を開発し、治療の選択肢を広げたいと考えたのです。

JTでは、アメリカのベンチャー企業2社への投資を含む3つのがんプロジェクトを立ち上げました。

しかし、2000年以降会社の方針等でプロジェクトを続けることは難しくなりました。

ただ、ちょうどその頃私の親戚ががんで孤独に苦しむ現実を目の当たりにしたり、がん治療に真剣に取り組みながらも患者さんを救うことのできない無力感を感じていた医師との出会いがあったりと、やはり日本のがん治療を改善し、より快適で効果的な治療環境を提供したいという思いは抱き続けていました。

そして、同じような思いを抱える岡山大学の藤原俊義教授との出会いも重なり、ついに2004年に当社を設立しました。

当時、我々はウイルスを使ってがんを治療するというウイルス療法を、新たな治療のアプローチ法として考えていました。

岡山大学は、まさにこのウイルス療法を広めるために大学発ベンチャーを立ち上げようとしていたのです。

その際、私にお声がけをいただき創業にいたりました。

以来、日本のがん治療に新たな選択肢をもたらすという私の思いが会社のビジョンとなり、がん治療の分野での挑戦を続けています。

オンコリスバイオファーマ株式会社 2023年3月27日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

ターニングポイント

ターニングポイントはリーマンショックの余波が広がる2008年から2009年にかけて訪れました。

この時期、当社はIPOに向けて最終段階の資金調達を進めていました。

バイオベンチャーのビジネスモデルは、非常に長い時間をかけて研究開発の先行投資を行い、医薬品として完成させることで大きな売り上げにつながるというものです。

2009年にかけて資金がショートし続ける中、リーマンショックの影響で新たな資金調達も難しくなり、経営上非常に困難な状況に直面しました。

この危機的な状況の中、がん治療薬の開発をいったん中断し、抗エイズ薬の開発に焦点を当てる決断を下しました。

我々の事業の根幹にはウイルスというキーワードで創薬に取り組むという考えがあります。

一見するとがんとエイズは全く脈絡のないように思えるかもしれませんが、抗エイズ薬のようにウイルス増殖を抑制して重症ウイルス感染症を治療することと、ウイルス増殖を利用してがん細胞を破壊するという2つのアプローチを総称して、ウイルス創薬と呼んでおり、我々の方針は一貫しています。

そして、この抗エイズ薬の初期の臨床試験で成功を収め、大手製薬企業とのライセンス契約にも成功したことで、2013年の上場を果たすことができ、上場で調達した資金で再びがん治療薬の開発に舵を切ることができました。

事業概要と特徴

当社は、食道がんの新しい治療薬であるテロメライシンの開発に取り組んでいます。

このテロメライシンは、がん細胞のみを破壊することができるように遺伝子改変されたウイルス製剤で、1瓶に2兆個ものウイルスが含まれています。

治療には内視鏡を使用し、カテーテルでがんへテロメライシンを直接投与します。

放射線治療と並行して2週間ごとに内視鏡を口から挿入する必要はありますが、患者さんに外科手術や化学療法の副作用のような痛みはほとんどない治療です。

また、テロメライシンは扁桃腺炎の原因になる5型アデノウイルスを遺伝子改変しています。

注射をした直後に一時的な発熱がある程度で、それ以外にほとんど副作用はありません。

正常な細胞では増殖せず、日本の多くの人々が一度は扁桃腺炎にかかっており、アデノウイルスに対する抗体を持っているという観点からも、テロメライシンの安全性に大きな懸念は持っていません。

一方、遺伝子を改変したウイルスや生き物の取り扱いは法的な規制があるため、新しい治療法を普及させるために、流通面を整備するなどの課題は存在します。

オンコリスバイオファーマ株式会社 2023年3月27日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

テロメライシンのマーケットについて

食道がんは、年間に新たに発症する患者さんは約2万5000人ほどであり、高齢社会において増加傾向にあります。

その中で、特に高齢者や手術が難しい患者さんなど、放射線治療の選択肢しか与えられていない方々にとって、テロメライシンが重要な治療法になると考えています。

現在、放射線治療しか選択肢の無い患者さんは1000~2000人ほどですが、今申し上げたような薬の特徴から、将来的にはテロメライシンによる治療を選ぶ患者さんが増えることが期待されます。

薬価は国によって決定されるため具体的な価格は不明ですが、放射線への併用治療で薬としてのポジションを確立し、適応の拡大も視野に入れた場合、当社の売り上げは数百億円に達する可能性があります。

我々は国内の製薬会社との提携を検討しており、ますます多くの患者さんにテロメライシン治療を提供し、食道がん治療の選択肢を広げることを目指しています。

オンコリスバイオファーマ株式会社 2023年3月27日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

テロメライシンの優位性について

現在、ステージ4の食道がん、つまりがんが広がって他の場所にも転移した状態の治療法としては、主に免疫療法が用いられています。

これは3週ごとに点滴を受ける治療で、その効果が現れるまでには数ヶ月から半年かかることがあります。

ただし、この治療法は転移した小さながんには有効ですが、大元の食道がんに対する効果は必ずしも有効とは言えず、繰り返しになりますが食道がんに対する有効な薬は存在しません。

ここで重要なポイントは、食道がん治療において、テロメライシンは競合他社による類似の治療法がない点です。

この分野はまさにオンコリスバイオファーマの独壇場と言えます。

そして、食道がんはアジア諸国を中心に多く見られ、特に日本や中国などで需要が高まっています。

このため、テロメライシンはアジア市場で成功する可能性が非常に高いと言えます。

将来的には数百億円以上の売り上げが見込まれることも考えられます。

オンコリスバイオファーマ株式会社 2023年3月27日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

まずは、主に放射線治療しか選択肢のない患者さんに新しい治療法を提供することを目指しています。これが確立されることで徐々に患者層が拡大し、さらに国際的な普及も期待されます。

実際に国立がんセンター病院で行われた臨床試験では、ステージ4の食道がん患者さんにテロメライシンを投与し、投与箇所のがんが綺麗に消失したケースが報告されています。

この治療法は患者さんの健康状態を改善し、食事を取れるようになり、免疫療法の負担を軽減させました。

これからのがん治療は、テロメライシンのような革新的なアプローチによって、患者さんの生活の質を向上させる方向に進んでいると私たちは確信しています。

中長期の成長イメージとそのための施策

当社の成長戦略は、他の創薬ベンチャーとは一線を画しています。

これまでの創薬ベンチャーのビジネスモデルは、初期の臨床試験での成果を重要視し、その後の薬の開発や販売は他社へライセンス契約により依存するというものでした。

しかし、ギリアド社やバイオジェン社などアメリカの創薬ベンチャーの成功例を見て、当社も創業来取り組んできたテロメライシンの開発、そして販売までを全て自社で取り組みたいと考えています。

オンコリスバイオファーマ株式会社 2023年3月27日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

このライセンス形態から製薬型への転換は決して容易なことではありません。

現時点で当社には販売部隊がありませんし、ウイルスの製造も海外で行っています。

しかし、製薬企業となるためには原料価格の変動や昨今の国際情勢の悪化などは大きな障壁となる可能性があります。

そのため、自社製造・販売に移行し、物流の問題にも対応することで、創薬ベンチャーから製薬企業へと変貌するパイオニア的存在になりたいと考えています。

もちろん、このような長期ビジョンを達成するためには継続的に事業を成長・拡大させていくことが欠かせません。

例えば、薬の価格や承認については国が決定するものですので、国内販売パートナーとの提携を進めることでスピード感を持って事業を展開させることを目的としています。

現在、テロメライシンは食道がんの治療薬として確立させることを目標としていますが、将来的には他のがんの治療にも焦点を当てていきたいと考えています。

具体的には、胃がんや舌がん、顎がん、肛門がんなど、食べ物の入口から出口までで発生するがんへの治療法の開発を進め、患者さんの生活の質を向上させることを目指しています。

そしてこの取り組みは将来的にがん医療へ大きな変革をもたらす可能性があると考えています。

オンコリスバイオファーマ株式会社 2023年3月27日 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

投資家の皆様へメッセージ

当社は食道がんの治療薬開発に挑戦し、世界に先駆けて新薬を許可に持っていく使命に情熱を燃やしています。

食道がんの初期治療薬はまだ存在しないのが現状ですが、我々の努力によって、それが変わる日も近いでしょう。

投資家の皆様には、この大きな展望に共感していただきたいと思います。

そして、食道がんの治療選択肢を拡充し、舌がん、顎がん、肛門がんなど他のがん治療にもテロメライシンを活用できるようにすることで、企業価値を最大化し、成長を加速させる計画です。

ご支援をいただければ幸いです。

オンコリスバイオファーマ株式会社

本社所在地:東京都港区虎ノ門4-1-28 虎ノ門タワーズオフィス

設立:2004年3月18日

資本金:30億円(2022年5月31日現在)

上場市場:東証グロース(2013年12月6日上場)

証券コード:4588

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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