※本コラムは2023年9月14日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ヴィスは「オフィスデザイン」から、「ワークデザイン」を行う会社として、はたらく「場所」中心から、はたらく「ひと」中心へと変化したワークプレイスの提供を行っています。
同社の沿革や今後の成長戦略について、代表取締役社長の金谷智浩氏に伺いました。
株式会社ヴィスを一言で言うと
「はたらく人々を幸せに。」する利他集団です。
沿革とターニングポイント
株式会社ヴィスは1998年4月に創業しました。当初、ディスプレイやマネキンなどを取り扱っていたオーナーが独立して設立した企業でした。
2004年にはデザイナーズオフィス事業がスタートしますが、私もこのタイミングで当社に参画しています。
以降、オフィスデザイン事業を中心に事業拡大を図ったことは一つのターニングポイントと言えます。
その後、2008年の名古屋オフィス開設直後にリーマンショックが来ました。
各企業が投資抑制の姿勢を見せ撤退や縮小を余儀なくされ、オフィス縮小の案件が続く一方で、広さ以外の面ではたらく環境を整えることで社員のエンゲージメントを高めたいという企業様のニーズもありました。
そこで、「社内の心地よい環境づくり」を目指した企業全体のブランディングも意識することで、当社は持続的な成長を実現してきました。
当社は2020年3月に上場しましたが、この年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で厳しい局面を迎えました。
ただ、足元ではオフィス回帰のトレンドの中で、新しい働き方に合わせたオフィス環境を整備するニーズが生まれてきています。
事業の概要と特徴
最適化されたワークデザインを行い、顧客の企業価値向上を図るため、ブランディング、データソリューション、プレイスソリューションの3つの切り口で展開しています。
ブランディング事業は、オフィスデザインの全てをプロデュースさせていただくもので、当社の主力事業です。
顧客の移転や支店開設などのタイミングで、プログラミングを行い、レイアウト・デザインから施工、お引越しに至るまでをワンストップでマネジメントしています。
データソリューション事業では、2022年4月、子会社となる(株)ワークデザインテクノロジーズを設立し、「ワークデザインプラットフォーム」という、ワークプレイスの現状を可視化できるプラットフォームを開発しました。
これにより集めたデータをどのようにブランディング事業に活用出来るのか、という観点でブランディング事業とのシナジーを担った事業展開を目指しています。
他にも「ココエル」という、メンタル・フィジカル・エンゲージメントの3点を定量化する、組織改善サーベイの提供も行っています。
プレイスソリューション事業は、「The Place」というフレキシブルオフィスの運営などを行っています。
「ワークデザイン」を展開する独自性
当社はワークデザインという独自のサービス領域で事業を展開しています。
オフィスデザインはフロー型のビジネスモデルですが、企業成長と共に移転や支社開設などを通じてリピートを確保し、業績を積み上げてきました。
その後、CI・VI提案、人的資本サーベイなど企業コンサル・ブランディング会社のサービス領域にも拡張しました。
我々は「はたらく人々を幸せに。」というパーパスを掲げており、そのためにオフィスデザインだけでなくメンタルやフィジカル、エンゲージメントの課題を解決する必要性があると感じたのです。
そしてこれを実現するのが、ワークデザインプラットフォームです。
企業における社員の勤務状況や働く環境に関する調査結果などを可視化し、そのデータを基に多様なアクション提案が可能です。
これは総務領域でオフィスデザインを展開するような他社にはできない戦略であり、まずはプラットフォームを活用して具体的な課題を明確にしていきながら、差別化を図っていきます。
営業体制と顧客基盤の強化
成長企業や大手企業を中心に拡大してきた顧客基盤も当社の強みです。
繰り返しになりますが、オフィスデザインはフロー型モデルですので、従前は営業部隊の頑張りが事業拡大を支えていました。
しかし、2019年を境にマーケティング理論を活用した営業DXを推進し、生産性向上を図ってきました。
無駄な営業活動を減らし、より効率的に顧客を獲得できる体制を整えたことで、顧客基盤のさらなる増加にも繋がりました。
また、営業体制を変えた半年後に新型コロナウイルスの感染が拡大し、2021年3月期の上半期こそ昨対比で業績を落としましたが、下半期以降は回復軌道にのせることができました。
「The Place」を展開するメリット
パブリックな空間にフレキシブルな働く場所を提供する「The Place」は、我々にとって最高級のショールームになっていると思います。
例えば、新規のお客様との商談にも「The Place」を活用しています。
その中で、「The Place」に決めていただかない場合でも、運営やデザインを評価していただいた結果、オフィスのリノベーションの依頼に繋がるなど、ブランディング事業におけるお客様との接点もかなり広がったと感じています。
また、当社がオーナーとして運営業務に挑戦することで、提案の幅やプランの内容が拡充され、ブランディング事業の質が高まるという効果もあります。
新しい営業のアクセス手段として、ビルオーナー様の立場からお客様へアプローチすることができるのです。
このように、自社ブランドのアピール、ブランディング事業の質の向上、新しい営業アクセス手段の獲得の3点が、「The Place」を展開していくメリットだと考えています。
中長期の成長イメージとそのための施策
既存事業の拡大と人的資本経営の推進により長期的な成長を実現し、2030年度の売上高250億円達成を目指します。
各事業戦略は以下の通りです。
ブランディング事業の強化
ブランディング事業は、付加価値の向上・顧客層の拡充・リードの獲得の掛け合わせで成長を図ります。
当事業の売上は年間の案件創出量と受注率を掛け合わせたもので、現在の受注率はおよそ50%程度です。
成長のためには、この受注率の向上が必要であると考えています。
一方、オフィスデザインの定着化とオフィスデザイン業界のプレイヤー増加によって競争環境は激化しています。
このような環境の中、当社は他社と競争をして勝つというより、プラットフォームを軸に優位性を高めることで、「戦わずして勝つ」という戦略を実行していきます。
また、プラットフォームにより、従来の営業では獲得できなかった大手企業やレガシー系の企業からの引き合いも増加しています。
このような、規模の大きい案件に取り組むことで、案件の単価を上げることも重要であると考えています。
データソリューション事業の拡大
当事業はSaasSモデルですので、フロー型のブランディング事業で売上を伸ばしながら、安定的にストック収益を積み上げ収益構造の変化を目指していきます。
現段階では確定的な数値でお伝えするのが難しいのですが、今期から来期にかけてマネタイズできれば、年成長率の向上も見込めると考えています。
長期ビジョンとして掲げる売上高250億円には、データソリューション事業の成長はほとんど考慮していません。
投資家の皆様には、当事業の成長を業績拡大の伸びしろとしてご期待いただきたいと思います。
プレイスソリューション事業の拡大
既にコワーキングスペースを展開する事業者が多くいる中で、当社はあくまでも、「TSUMUGI」というコンセプトを軸とした我々のブランドを大事にしたいと考えています。
「The Place」を成長企業が集まる場所としてブランド化していくことで、エリアを絞りながら年に1店舗程度を出店していく方針です。
注目していただきたいポイント
まずは、継続的に利益を積み上げることのできるブランディング事業による収益が大半を占めていることをご理解いただきたいです。
また、株式市場では建設業に分類されていますが、メインの業務は「デザイン」です。
デザインの力で社会課題を解決する領域は、まだまだ拡大余地のある市場と認識しています。
加えて、当社社員の平均年齢は32歳と若いです。
若い集団ながらもこれだけの規模の売上を作れていますし、このメンバーが成長をしていくことを、人的資本の観点から見た我々の将来性としてご期待いただきたいです。
投資家の皆様へメッセージ
はたらく人々にとって、これまでの会社は「行かなくてはならない場所」として存在していました。
今後は「行きたい場所」に変えていく必要があると我々は考えています。
会社やオフィス空間が楽しい場所であれば行きたいと思いますし、働くことそのものがポジティブなものになります。
そうすれば、一人一人の幸福度も上昇し、エネルギッシュな未来に繋がると信じています。
少子高齢化による生産年齢人口減少という現在の日本の社会課題に対して、ワークデザインを通じてはたらく人々のエンゲージメントを高めることで、社会に貢献をしていきたいです。
本社所在地:大阪市北区梅田3-4-5 毎日インテシオ8F
設立:1998年4月13日
資本金:524百万円(2023年3月末現在)
上場市場:東証スタンダード(2020年3月25日上場)
証券コード:5071