※本コラムは2023年10月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ファインズは動画を起点としたマーケティングDXの実現を目指し、事業を展開しています。
中小企業にデータ活用を広める同社の沿革や今後の成長戦略について、代表取締役社長の三輪幸将氏へ伺いました。
株式会社ファインズを一言で言うと
中小企業のDXを実現させるため、泥臭い作業も厭わず真摯にお客様と向き合い、価値を提供することに重きを置く会社です。
沿革
当社の歴史は2009年に遡ります。
当初はモバイルコンテンツの制作を主な目的に、株式会社フリーセル(現ブランディングテクノロジー株式会社)の完全子会社として設立されました。
ガラケー向けのコンテンツ制作から始まり、翌年にはSEOやMEO(Google地図連動型サービス)などに事業を展開していきました。
その後、2013年には予約システム「TSUNAGU」「いつあき」を、そして2015年からは現在の主力事業である動画事業をスタートさせました。
さらに、2021年にはVideoクラウドと呼ばれる配信プラットフォームの事業を開始し、現在に至ります。
私は2008年にブランディングテクノロジー株式会社に中途入社し、その後ファインズの立ち上げメンバーとして出向しました。
2018年に代表取締役、翌年の2019年にLBOを経て現職に就任しております。
上場の経緯
当社は昨年(2022年)の9月に東証グロース市場への株式上場を果たしました。
2019年に上場を視野に入れた本格的な準備を始めたことは、一つの転換点となりました。
LBO後、事業の拡大のためには今後は市場からの資金調達が不可欠だと認識しました。
また、2015年から開始した動画事業が同時期になると着実に成果を上げていたこと、そして内部管理体制が整備されたことが、上場を支える要因となりました。
事業概要
当社は、「動画を起点としたマーケティングDXを実現」することを掲げて事業を行なっています。
2015年に動画事業をスタートし、初期は動画制作が主目的でしたが、お客様からいただいたフィードバックが現在の事業展開へと繋がっています。
それは、制作した動画の効果や反響を具体的に知りたい、という声です。
これにお応えする形で、2019年にはインタラクティブ動画を導入しました。
これにより、オウンドメディアに動画を掲載し、閲覧数やユーザー動向などの詳細なマーケティングデータを取得することが可能になりました。
そして、この発展を受け、2021年には動画分析プラットフォーム「Videoクラウド」をローンチしました。
その他、データを活用したDXコンサルティングサービスも提供しています。
中小企業をターゲットとする優位性
当社は中小企業・個人事業主を対象にビジネスを展開しています。
中小企業向けの動画制作市場は、動画制作への需要がまだ顕在化しておらず、巨大な潜在ニーズを抱えるブルーオーシャンと言えます。
エンタープライズやミディアムAの領域はお客様のニーズが顕在化しており、大手広告代理店の介入やインハウスで動画制作ができるプラットフォームなど競合が多く、ターゲットが少ない傾向にございます。
一方で中小企業・個人事業主領域はターゲットが多いものの、ニーズが潜在的であるがゆえにアプローチ方法も限られ、当社のような直販体制を構築しなければならないことから参入障壁も高く、巨大な潜在的ニーズを抱えるブルーオーシャンだと考えております。
我々が創業来行ってきた中小企業に対するダイレクトマーケティングが強みとなりました。
そしてこの優位性は現在も変わりません。
さらに、足元ではSalesforceなどを活用して営業活動を可視化する取り組みを実施し、営業力にさらなる磨きをかけています。
また、160名以上の他社にはない規模でアプローチができる点も、我々の大きな強みとなっています。
一気通貫のサービス提供
また、動画の制作からデータ分析とこれを活用したDX支援まで、一気通貫での支援体制も当社の特徴です。
動画制作単体で見ると参入障壁は低いですが、我々はプラットフォームでのべ50以上のデータが取得可能で、かつそれを基にカスタマーサクセスがお客様に具体的な改善提案を行っています。
このように、他社ができない成果・結果にコミットし、お客様と寄り添いながら反響が出るまでサポートできる点に当社の強みはあります。
さらに、DXサポートとして提供できるソリューションが多岐にわたっていることも、他社が真似できないポジショニングを確立する要因となっています。
中長期の成長イメージとそのための施策
当社は、「すべての中小企業のDXをサポートする」ことをミッションとしています。
そして、進行期(2024年3月期)からをミッション実現に向けた3カ年と位置づけ、成長戦略に基づく事業強化・拡大に挑戦してまいります。
2024年3月期の成長戦略
当社が直面している課題に対処するため、2024年期においては3つの成長戦略を展開し、営業力の強化を図ります。
1つ目の施策は、「イネーブルメントの強化」です。
急激な人員の増加に伴い、マネージャー人材が不足し、教育の質が低下していました。
これを解決するため、セールスイネーブルメントを強化し、マネージャーや現場メンバーに向けてナレッジ共有やトレーニングを行う体制を整備しています。
これにより、教育のむらをなくし、安定的な成長を見込んでいます。
2つ目の施策は、「Salesforceの再構築」です。
従前、部門ごとに情報が分断されていたところから、再構築によって全体の情報共有が可能な体制を構築しました。
営業からサポートまで一気通貫での効率的なアプローチが実現し、すでに失注案件の再商談化、および既存のお客様へのクロスセル・アップセル率が飛躍的に伸びています。
さらに長期的な目線ではLTV(顧客生涯価値)の最大化を目標にしていますので、この点においても中長期的な成長ドライバーの一つになると認識しています。
最後の施策は「クラウドワーカーと連携したインサイドセールスチームの構築」です。
分業化が進む中、クラウドワーカーとの連携を通じて、柔軟で効率的な営業体制を構築していきます。
主婦の方々を中心に、在宅でのテレマーケティング業務をアウトソーシングし、商談の機会を増やしています。
このように、当社自身が働き方改革を推進し、ゆくゆくは中小企業にも同様のモデルを浸透させることで、社会全体に貢献するとともに、持続的な成長の一翼を担っていくと考えています。
特に、クロスセル・アップセル案件売上高については足元で30%前後まで引き上がっており、上場前(12%)と比較しても、安定性という観点で経営面にも変化が現れています。
また、このクロスセル・アップセル売上高が増えることで、同時に進めている新規顧客の獲得も、未来の既存の売上のための種まきと捉えることができると思います。
長期の成長戦略と注目ポイント
2025年6月期には成長戦略を更に進化させています。その焦点は「ソリューションの拡大」にあります。
この戦略の中核を成すのは、Videoクラウドのアップデートと新サービスのローンチ、他社との業務提携といった要素です。
特に、新サービスのローンチを通じて、データを一元管理して会社の状態を可視化するプラットフォームを提供することで、中小企業の課題解決を図っていきます。
この成長戦略において、最初に直面する課題は、各中小企業のマーケティングデータ活用に対する意識の変革です。
中小企業経営者がデータの価値を理解し、活用する方法を模索する姿勢になるよう、データ活用を伴走型でご支援することが必要となります。
また、当社カスタマーサクセス部隊が、「お客様のデータをいかにビジネスに活用するか」を考え抜き、本質的な経営のサポートをすることも重要な鍵となります。
Videoクラウドのデータや各種広告出稿状況などのマーケティングデータに関しては、すでにプラットフォームで一元管理することが可能です。
しかし、我々のサービスの価値を高めるためには、人事・労務、顧客・取引、そして経理・財務といった企業にとって必要不可欠なデータの管理を実現させることが重要です。
このアプローチが確立できれば、他社にはない優位性となり、我々の経営理念である「誰からも必要とされる会社」にもなれると考えています。
投資家の皆様へメッセージ
当社は、現在の中期経営計画の達成を通じて世の中を豊かにすることが可能であると思っております。
また、「誰からも必要とされる会社になる」という経営理念の達成に向け、着実に歩みを進めてまいります。
今後もベンチャースピリットを胸に、中小企業のDX課題解決に貢献する事業を展開していく当社を、ぜひ温かく応援していただけますと嬉しく思います。
本社所在地:東京都渋谷区渋谷2-12-15 日本薬学会長井記念館 6F
設立:2009年5月8日
資本金:223,555千円(2023年10月アクセス時点)
上場市場:東証グロース(2022年9月28日上場)
証券コード:5125