※本コラムは2023年11月7日に実施したIRインタビューをもとにしております。
「LOCONDO.jp」をはじめとするECモール、B to Bプラットフォーム、そしてブランドの3つの事業柱で独自のエコシステムを構築するジェイドグループ株式会社。
代表取締役社長の田中裕輔氏へ、事業の強みや今後の成長方針について伺いました。
ジェイドグループ株式会社を一言で言うと
ECモール事業・プラットフォーム事業・ブランド事業の3つのエコシステムから成り立つ会社です。
沿革とターニングポイント
当社の創業は2010年ですが、2017年の上場に至るまでには様々な紆余曲折を経験してきました。
初めての転機は創業2年目の2012年です。
現在我々の主力事業はECモール・プラットフォーム・ブランドの3つですが、このうちのプラットフォームサービスを開始したタイミングになります。
サマンサタバサさんからのご依頼を受け、公式EC運営サービス「BOEM」をスタートさせました。
以降、プラットフォームサービスの多角的展開と取引先様との連携を強化し、ECモールへの出店者を増やしていきました。
また、2015年には倉庫の運営を完全に内製化するという大きなターニングポイントを迎えました。
WMS(ウェアハウスマネジメントシステム)を導入し、倉庫とシステムを100%内制で運営し始めました。
この取り組みは業界内でも非常に稀でしたので、高い評価を得ることができ、競争力を高める源泉となりました。
さらに昨年(2022年)には、Reebok JAPANのM&Aを実行しました。
これにより、ブランドの店舗運営・EC・卸までを全て一手に担い、プラットフォームサービスを活用した効率的な運用体制を整えることができました。
上場の経緯
当社は元々ドイツのベンチャーキャピタルが立ち上げ、のちに私が引き継いだ会社ですので、マイルストーンとしてIPOもしくはM&Aという選択肢は常に検討してきました。
その中で、2015年にシステムと倉庫運営の両方を内製化し、同時に単月での黒字化を実現できました。
私としても当社事業の成長余地を考え、元よりIPOの路線を志向していましたが、この内製化が大きな利益の源泉となったことで、本格的に上場を目指す土台が整ったと言えるでしょう。
事業内容
当社は、「LOCONDO.jp」をはじめとするECモール事業、自社独自のITと物流を活かしたプラットフォーム事業、およびブランド事業の3つを柱に事業を展開しています。
3事業のエコシステムとその効果
EC・プラットフォーム・ブランドの3つが相互補完的なエコシステムを形成していることが当社事業の大きな特徴です。
事業間の連携によって、より効率的で成長力のあるビジネスモデルが構築されています。
ECモール事業とプラットフォーム事業
ECモールを運営する上でITと物流は不可欠な要素です。
我々はプラットフォームサービスを単独で提供するのではなく、ECの物流とITインフラを共有することでB to B事業として展開しています。
当初はここで得た利益を成長の源泉とすることができていましたし、他のB to Bサービスと比較しても優れたコストパフォーマンスには、今も変わらず高い評価をいただいています。
これがECモールからプラットフォームへの補完性です。
一方、プラットフォームサービスとして、当社では公式EC運営サービス「BOEM」や物流受託サービス「e-3PL」などを展開しています。
2012年にサマンサタバサさんからご依頼いただいた際には、同社のECサイト運営も行うことで、我々が在庫を預かり、LOCONDOで販売することも可能となりました。
ECモールにおいて、品揃えの多様性は売上に直結する部分ですので、まさにこれがプラットフォームサービスがECモールに与える補完的役割となっています。
プラットフォーム事業とブランド事業
ITと物流を100%内製化したプラットフォームからブランドへの補完性としては、ブランドが自社ECサイトを運営する上での利便性の向上が挙げられます。
また、当社のプラットフォームサービスは、EC運営や物流受託以外にも、店舗のPOSシステムや基幹システム「LoCORE」など、ITに関わるものを全て網羅しています。
これにより、品質・スピード・コストパフォオーマンスの全てで他社を圧倒することができています。
一方、B to Bサービスの普及においては、「どのブランドがサービスを利用しているのか」という一種の口コミのようなものが重要になります。
この点、当社のサービスがReebokで活用されていることは他のブランドからの信頼獲得に繋がっており、これがブランドからプラットフォームへ向けた補完性と言えるでしょう。
ブランド事業とECモール事業
そしてECモールからブランドへの補完性ですが、Reebokの在庫は公式ECだけでなくLOCONDOでも販売していますので、これが直接的に売上を促進しています。
そして、LOCONDOでは特にReebokの露出を多めにすることで、ブランディング強化に寄与しています。
LOCONDOの事業モデルと差別化ポイント
LOCONDOは新規購入者からリピーターへの転換、アクティブユーザー基盤の拡大、品揃えの強化を通じて、新規流入が増加するという好循環によって、売上が持続的に成長する事業モデルとなっています。
また、返品・交換無料、そして追加費用なしでの当日お届けサービスによって他のECモールとの差別化を追求しています。
特に返品・交換無料サービスは定着率を高める一因となっています。
我々は創業当初、靴を中心としたオンライン通販サイトを運営するZappos社を参考に事業を進めてきました。
この過程では、単にシェアを獲得するだけではなく、顧客満足度に重点を置き事業に取り組んできました。
これにより、他のECモールと比較してもリピーターや定着率が高まり、積み上げモデルが着実に機能していると言えます。
中長期の成長イメージとそのための施策
2022年10月1日、ジェイドグループと伊藤忠商事の合弁会社であるリーボック日本事業を立ち上げました。
ECモール、プラットフォーム、ブランド事業の3つの柱と掛け合わせ、さらなる成長に挑戦していきます。
我々の長期ビジョンは、2030年度までにGMV1,000億円、営業利益100億円を達成することです。
この目標に向け、限界利益率16%(160億円)、30年度の固定費60億円の水準を維持しながら取扱高を最大化させていきます。
また、そのためのマイルストーンとして、まずは2024年度のGMV400億円の達成を目指してまいります。
既存事業の有機的成長と積極投資
3つの事業モデル、すなわちECモール、プラットフォーム、ブランドのエコシステムが、相互に補完し合う関係が成長戦略の要点です。
昨年から今年にかけては、ReebokのM&Aを実行したことでブランド事業が成長を主導する役割を果たしてきました。
ですが、当社としては中長期的にどれか1つの事業が強くなり続けることを目指しているわけではありません。
需要の変動に応じて3つの事業間で成長の牽引役が入れ替わりながら、連携して事業の拡大を支えていくことが、我々の描く既存事業の成長イメージです。
また、このようなオーガニックグロースに加え、Reebokに続くさらなるM&Aによるエコシステムの強化にも取り組んでまいります。
プラットフォームについては、買収した倉庫やITシステムを組み込むことは難しい部分があります。
そのため、ECモールとブランドに焦点を当てたM&Aを通じ、成長を牽引していく方針です。
国内ファッション市場のEC化率は、現在の約21%から2030年度には35%まで拡大すると見込まれています。
また、その時点での市場規模はおよそ3.5兆円と予測されていますが、物流施設の補強に関しては既に投資を行っており、需要の増加にも柔軟に対応できる状態です。
そのため、固定費の急激な増加がなく、売上の伸びが利益にダイレクトに寄与することが期待されます。
注目していただきたいポイント
3つのビジネスモデルの相互補完性は、我々の優位性であり、成長戦略の鍵だと言えます。
また、物流とITの双方を完全に内製化している点は、業界内でも非常に珍しい特徴であると認識しています。
さらに、倉庫運営の優位性は今後M&Aを実行する上でPMIの強さにも繋がると考えています。
投資家の皆様には、事業のエコシステムと物流・ITの内製化という2点に、改めてご注目いただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
当社は、ECモール、プラットフォーム、ブランド事業の3つの事業のエコシステムからなる会社です。
継続的なオーガニックグロースを実現しつつ、直近ではM&Aでも大きくエコシステムを強化している我々に、今後とも大いに期待していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都渋谷区元代々木町30-13 7階
設立:2010年10月22日
資本金:50,000千円(2023年2月末現在)
上場市場:東証グロース市場(2017年3月7日上場)
証券コード:3558