※本コラムは2023年11月21日に実施したIRインタビューをもとにしております。
飲食業界で「いきなり!ステーキ」を初めとする革新的な業態の開発を続けてきた株式会社ペッパーフードサービス。
代表取締役社長CEOの一瀬健作氏に、事業の概要や成長戦略についてお伺いしました。
株式会社ペッパーフードサービス を一言で言うと
「革新的な業態開発」を行ってきた会社です。
沿革とターニングポイント
1970年に私の父である創業者の一瀬邦夫が、町の洋食屋さんとして「キッチンくに」を創業しました。そこから、個人事業という形で「キッチンくに」は2店舗を展開しました。
その後1994年の「ペッパーランチ」※の業態開発とともに事業を転換し、フランチャイズとして1号店をオープンしました。
- ペッパーランチ業態は2020年8月に事業譲渡
2006年にはマザーズ市場への上場を果たし、そこからは調達した資金を元に店舗展開を進めていきました。
順調に拡大していた最中、2009年に食中毒が発生してしまい、業績不振に陥ったこともありました。
これを乗り越え、2013年には現在の主力業態であります「いきなり!ステーキ」の1号店をスタートさせました。
そこから今年でちょうど10周年になります。
略歴
1999年の入社後、当初は「ペッパーランチ」の現場で店長業務に従事していました。
そこからスーパーバイザーや営業本部長を経て、2006年から店舗開発部に異動しました。
その後、2010年にシステム本部長、2011年には管理本部での財務・経理担当を経て、2019年に代表取締役副社長になりました。
そして2022年8月10日に前社長の辞任を受け、現職に就任しました。
マネジメントスタイル
当社は飲食店として現場第一の姿勢を常に意識しています。
特に店舗の現状を把握することに関しては、私が代表に就任してまず初めに取り掛かったことの一つです。
また、昨今問題になっている人手不足解消のための採用や、社員が辞めない環境作りなどの人材の面に重きをおいて、日々マネジメントしています。
事業内容
概要
主な事業は「いきなり!ステーキ」の店舗運営で、2023年11月末現在の国内店舗数はフランチャイズを合わせて186店舗となっています。
プロのコックが店舗で調理した高級なステーキを、低価格で提供するというスタイルが我々のコンセプトです。
ただ、10年前と比べ現在では牛肉の価格や人件費、水道光熱費などあらゆる費用が高騰しています。
それでも高品質かつプロのコックが調理するというところには、変わらずこだわりを持ち続けています。
以前はアメリカ産やオーストラリア産のリブロースステーキやヒレステーキ、サーロインステーキなどの食材を中心に扱っていましたが、最近では肩ロースステーキ、イチボステーキなど新たなメニューも展開しています。
これら新商品のキャンペーンを打ち出したり、また産地を見直しながらグランドメニュー化を進め、低価格で美味しい商品を提供することに注力しています。
出店戦略の見直しと海外展開
当社は、日常的にステーキを安価で食べられるという事業コンセプトにより、一定のお客様層に集中的にご来店いただくことで収益性を担保していました。
しかし、コロナ以前の2019年上期終了時点で、過度な店舗数の増加により、自社競合が発生する事態になっていました。
そこで同年下期から出店戦略を一度ストップさせ、既存店重視の経営に変更することを決めました。
その後2020年にコロナウイルスが蔓延し、ペッパーランチ事業の売却など会社として非常に厳しい局面もありましたが、前年から手は打っていたことで早期に立て直しを図ることができました。
また、市場からの資金調達も順調に進んだことで、2021年以降はセグメント統合を通した効率化を実行することができました。
2023年現在、事業店舗の黒字化が一定の水準まで進む一方、全社的な収益の改善には時間を要しています。
そのような中、昨年末より本格的に開始した海外事業が成長を牽引する存在となります。
昨年12月にフィリピンの1号店オープンを皮切りに、今年8月には2号店、そして12月には3号店をオープンする予定です。
直近では、既存エリアでの新規出店だけでなく、新たなエリア(国)からのお問い合わせも増えてきています。
ビジネスモデルの再構築
収益性の改善に向けては、ビジネスモデルの再構築も実行してきました。
代表的なオーダーカットステーキ(リブロース、ヒレなど)の仕入れ値は以前に比べて倍以上になりました。
また、本来は商品数を絞りお客様のオーダーを集中させることで、一定の粗利高を維持するモデルを構築していました。
ただ、来店数の減少と価格の高騰したオーダーカットステーキへの需要低迷により、価格を維持しながら利益を確保することが難しい状況になりました。
そこで取り組んだのが、新メニュー開発による利益率の改善です。
まずは定番メニューの肩ロースを使用した「ワイルドステーキ」を前面に押し出しました。
主原料が牛肉であることは変わりませんが、その中のメニュー構成比を変えることで、原価率の安定化に繋げることができました。
中長期の成長イメージとそのための施策
既存事業
「いきなり!ステーキ」は引き続き収益性の改善に取り組んでいきます。
コロナ禍においては、繁華街など家賃の高い場所からいくつかの店舗を撤退しました。
これからの出店戦略としては、繁華街への再出店のほか、新たに都市部への出店も実行していきます。
なお、家賃や収益性、スタッフの募集のしやすさなどについては慎重に判断していきます。
また、少子化による人材不足への対策として、店舗のDX化も推進していきます。
海外展開
現在、出店エリアの中心は台湾とフィリピンです。
まずはこの2つの地域で新規出店を進め、今後はインドネシア、マレーシア、タイ、シンガポールなど、すでにお問い合わせをいただいているアジア圏の他地域へと拡大していきます。
また、アジアの中でも非常に大きな市場であるシンガポールへの出店にも力を入れていきたいです。
FC(フランチャイズ)・エリア契約を中心に、その国の経済・人口の規模に応じた出店戦略を実行します。
契約ベースで来期までに20店舗、そして2026年時点では100店舗まで伸ばす方針です。
プロモーション施策
コロナ関連の制約が外れてきた中で、「いきなり!ステーキ」が復活して元気になってきているという姿をプロモーション活動を通じてお見せすることが重要だと考えています。
また、店舗に来られていないお客様へ、もう一度足を運んでいただくきっかけを作る必要もあります。
すでにX(旧Twitter)やインスタグラム等での発信は行っていますが、さらにメディア露出を増やしていかなければいけません。
7月の大型キャンペーンで、芸人さんをアンバサダーに起用しYouTubeの広告や地方テレビのCM広告などを行いました。
地方では、純粋なテレビ媒体や折込チラシなどの地場の宣伝物や広告物の効果が高い傾向にあります。
メディア露出を増やすことで「いきなり!ステーキ」を思い出すきっかけを作り、地方店の再生も行っていきます。
成長のために乗り越えるべき障壁
今後は食の需要の変化に対応することが求められていくと考えています。
コロナの影響により自宅で夕食を食べる方が増え、外食をしない環境が固定化されてきました。
そのため、「いきなり!ステーキ」のテイクアウトやデリバリーの領域が一定の伸びを示している一方、夜のディナー帯で本来であれば売上高として高い割合を占めていた時間帯の需要がなかなか戻っていません。
このような外部環境に伴う食のトレンドの変化は今後も起こると考えられるため、これに対応した新しい業態開発が必要になります。
他にも、今まで原材料は牛肉一辺倒でしたが、リスク分散の観点では豚肉や鶏肉などの商品も必要になってくると考えています。
そのため、長年の経験を活かし、飲食業界内での新業態の開発も進めていきたいと思います。
注目していただきたいポイント
まだまだ海外への展開力を秘めている点に注目していただきたいです。
需要は堅調なものの、当社側の本社スタッフの人数に限りがあるため対応できていないのが現状です。
そのため、社内体制や営業力を強化することで、問い合わせベースの出店に限らず、さらに多くのFCオーナーの加盟促進に繋げていくことができると考えています。
また、我々には「ペッパーランチ」や「いきなり!ステーキ」で培った海外出店のノウハウもあります。
このように、「待ち」の視点から「攻め」の視点へと変革することにより、我々にはまだ拡大余地が残されていることを、ぜひご理解いただけたらと思います。
投資家の皆様へメッセージ
当社は創業して長くなりますが、その間に様々な苦難がありました。現在でも、コロナだけでなく物価の上昇による消費の鈍化、深刻な人材不足などの課題があります。
そのような中、今後の飲食業界に求められることは、従来と違う革新性であると考えています。
すでに我々としても新たな事業柱の確立や既存店の見直しなどを進めていますし、特にアジア市場では「いきなり!ステーキ」が大きく飛躍するチャンスがあります。
皆様の信頼と支援が私たちの最大の原動力ですので、今後の当社の成長にご期待いただけますと幸いです。
本社所在地:東京都墨田区太平四丁目1番3号オリナスタワー17F
設立:1970年2月
資本金:23百万円 (2022年12月末現在)
上場市場:東証スタンダード市場(2006年9月21日上場)
証券コード:3053