※本コラムは2023年12月6日に実施したIRインタビューをもとにしております。
ベイシス株式会社はICTエンジニアリングで培ったノウハウと自社開発SaaSを組み合わせたインフラテックでICTインフラ整備を進め、最先端技術を身近なものにしていく会社です。
代表取締役社長の吉村公孝氏へ、事業戦略の変遷や今後の成長方針を教えていただきました。
ベイシス株式会社を一言で言うと
最先端を当たり前にするICTインフラをつくり、支えることのできる唯一無二の会社です。
沿革
創業経緯
私が起業を考え始めたのは学生時代でした。
しかし、これといったアイデアが無かったので、ヒントを探すためにもまずは通信エンジニアリングの会社に就職しました。
在職中にモバイル事業に出会い、携帯電話やパソコン、インターネットが21世紀を変えていくだろうと確信しました。
そして入社1年半後の1996年、より専門的な技術を身につける為にフリーランスに転向し、創業資金が貯まった2000年に当社を設立しました。
創業当時は、3次・4次下請けとして携帯電話基地局を設置するモバイルインフラ事業をしていました。
事業のターニングポイント
事業の全国拡大
私の地元である広島で順調に事業基礎を固めていった我々は、事業拡大を図るため、新事業を始めるか、もしくは既存事業を全国展開するかの選択に迫られました。
2005年に東京に支店を出したところ、4年間の広島での売上を1年で達成できました。
そのため、全国展開での事業拡大が可能であると確信し、これに踏み切りました。
以降、2006年〜2008年にかけて札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡と次々に支店を展開していきました。
下請けから直接取引へ
2010年頃からモバイル事業のアナログで非効率な多重下請構造に疑念を抱き始め、発注元と直接取引をしたいと考えるようになりました。
ICT業界にとってマイナスとなっている多重下請け(中抜き)構造を変えようと思い、通信キャリア会社に直接掛け合うことに決めました。
大手企業を含めた既に取引のあった多くの企業を競合に回すことにはなりましたが、2011年頃から通信キャリア会社との取引を拡大し、10億円だった売上を40億円まで伸ばすことに成功しました。
上場への道
直接取引が軌道に乗り始め、単価も上がり売上規模も増えてきたので2014年に上場に挑戦しました。
実は、2008年のリーマンショックの時にも挑戦を考えていたので、これが2度目の挑戦でした。
しかし新規事業や子会社化した事業が悉く失敗してしまい、2度目の上場への挑戦も諦めざるを得ませんでした。
その後、2016年から2018年にかけて事業廃止や子会社吸収を繰り返し、立て直しを行いました。
そして2021年、今後の業界や当社の成長性を評価していただき、3度目の正直で上場することができました。
事業の概要と特徴
概要
当社の主力事業はモバイルエンジニアリング事業とIoTエンジニアリング事業です。
モバイルエンジニアリング事業では、各キャリアの通信基地局関連工事やキャリア通信ネットワークの保守・運用支援を行っています。
IoTエンジニアリング事業では各種センサーやカメラ、スマートメーター等のIoT機器設置から保守・運用支援を行っています。
事業における優位性
全国ネットワークの強み
当社は全国に支店を持っていますが、それだけではありません。
現在、ベイシスパートナーズという仕組みで日本各地の施工や保守、点検作業などを行ってくれる全国400社以上の企業とパートナー契約を結んでいます。
パートナー企業には、当社開発のプロジェクト管理ツールのBLASを提供して、効率的に業務を行って貰えるようにサポートしています。
プロジェクト管理ツール「BLAS」による業務効率化
本ツールは、10年ほど前に当社がWi-Fiスポットの設置案件を大量受注した際、設置業者の管理をクラウドで完結させる目的で作られました。
大手企業では、多重下請け構造でアナログな管理体制を取りながら業務を行っている為、コストがかかりすぎてしまいます。
しかし、当社は本ツールを用いた効率化に成功し、2年間で数十万個のWi-Fiスポットを設置することができました。
実際にこのノウハウを用いて、東京電力さんからスマートメーターの設置案件を受注して、全国各地に効率良く設置を完了させました。
IoT業界の現状と優位性
当社の効率的な業務サイクルと技術力を信頼していただき、多くのIoT機器メーカーから設置業務の受注をいただいています。
大前提として、メーカーは機器製造に関しては専門性を有していますが、現場に機器を設置する業務は専門外であることが多いです。
当社はそういったメーカーのニーズに非常にマッチしたビジネスモデルを有しています。
まず、IoT機器は単価が安く1個数万円程度の為、大量に取り付けなければ採算に見合いません。
しかし、全国各地での業者の手配や調整、工程管理まで行うのは非常に難しく外部に委託するほかないのです。
ただ、大手の業者に頼めば費用が高額になる、もしくは工事単価が安いためにそもそも引き受けてくれない、ということも少なくありません。
しかし、当社は先ほどお話しした通り昔からWi-Fiルーター設置や運用の業務に従事しており、その技術はIoT機器の設置から運用にまで応用できます。
また、不必要な中間業者や非効率な業務を省き且つ、BLASやAIなどのテクノロジーを活用して業務を自動化・効率化しているので、低コストかつ高利益率のビジネスとなっています。
更に、全国各地に支店とパートナー企業とのチャネルがありますので業界内での立ち位置は非常に良好だと考えています。
中長期の成長イメージとそのための施策
安定のICTインフラ業界と急成長のIoT業界
ICTインフラ業界は、5G拡大を受けて電波環境の整備や、保守・運用の需要が引き続き堅調に推移していくと考えています。
また、6Gが導入されると言われている2030年には同業界の市場は1.5兆円規模になると予測しています。
一方、IoT市場は年々増加傾向で、2030年には2.1兆円規模になると予測しています。
IoT業界は安定的なICTインフラを土台として、スマート農業やスマートメーターを先駆けに様々な分野に拡大していくと考えられます。
例えばスマート農業であれば、ある土壌のデータを利用して、自動で肥料を撒いたり、水分量を調節したりします。
そのためには、土壌のデータを採るためのセンサーが必要でそれを設置する為の業者が必要です。
また、IoT機器も寿命があり適宜交換やメンテナンスが必要です。
そのセンサーを設置し運用していく業者として、当社は競合他社に対する比較優位性を持ち合わせていると考えて頂ければと思います。
このように、当社が事業を展開する2つの業界の展望は、いずれも良好だと考えています。
インフラ設置から運用までをSaaSに
これから当社はICTインフラ全般のエンジニアリングカンパニーへと変貌を遂げていきます。
スマート社会を支えるインフラ構築を安定して支える為には、業界構造を変えていく必要があります。
そこで、まずはこれまで中間業者が担っていたアナログで非効率な業務を当社の持つテクノロジーで効率化させようと考えています。
例えば、2023年9月に一般提供を開始している施工管理SaaS「BLAS(ブラス)」は、IoT機器設置に関わる業務の管理をシステム上で完結できるサービスです。
これにより、情報の登録・管理・確認などの細かい作業を効率化するとともに、それらの情報をシステム上で一元管理できるようになりました。
このSaaSを皮切りに、新たなサービスを拡充しながら案件の受注から運用までをカバーできるようなプラットフォームを構築していく予定です。
注目していただきたいポイント
改めて、IoTエンジニアリングマーケットの成長が見込まれることと当社の事業がマーケットの成長と共にあることに注目いただきたいです。
例えば、普段使っているスマートフォンの電波が届かなくなったらどうなるでしょうか。
世の中が”当たり前”に便利なのは、当社がそのインフラを支えているからだと思っています。
これからも世の中を便利にする技術は次々に生み出され、新しい製品もどんどん開発されていきます。
そして、その便利さを”当たり前”にしていく為にはIoT製品メーカーからのニーズに応えるだけの基盤を持つ当社が必要なのです。
これまでキャリア通信の環境整備等で培ってきたICTエンジニアリングに関するノウハウや全国各地のパートナー企業との確かな協力関係、そして各作業工程を効率化できるだけの技術力が我々の強みです。
ぜひ、成長性の高いマーケットと当社の安定した事業基盤に注目していただきたいです。
投資家の皆様へメッセージ
投資家の皆様には、これからのICT社会、スマート社会を支えていく当社の存在意義や魅力をご理解いただきたいと思っています。
今後の当社の成長に期待してご支援のほどよろしくお願いします。
本社所在地:〒105-0011 東京都港区芝公園2丁目4-1 芝パークビルB館13階
設立:2000年7月19日
資本金:334,897,000円(2023年12月アクセス時点)
上場市場:東証グロース市場 (2021年6月24日上場)
証券コード:4068