※本コラムは2023年12月20日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社トランザクション・メディア・ネットワークスは電子決済ゲートウェイを提供し、生活者にとってよりよい消費環境の創出に向けて活動している会社です。
代表取締役社長の大高敦氏へ、事業戦略の変遷や今後の成長方針を教えていただきました。
株式会社トランザクション・メディア・ネットワークスを一言で言うと
新しい生活を生み出す、電子決済インフラの情報プロセシングカンパニーです。
沿革
創業経緯
私は1992年に三菱商事に入社しました。
その後、1997年ごろには国内新技術の海外展開を担当し、東南アジアを始め各国の主に交通事業者向けの電子決済サービスの導入を推進していました。。
また、2000年代初頭になると、日本国内ではSuicaやEdyをはじめとする電子マネーが拡大していました。
しかし、日本国内における電子決済端末の導入費用は高額で、全国での普及には程遠いと感じていました。
この課題をビジネスチャンスと捉えた私は、もともとSonyで電子マネーの技術開発をしていた技術者とともに事業を始めようと一念発起しました。
そこで、三菱商事とトヨタファイナンシャルサービスの共同出資の下、2008年に当社を設立しました。
国内初のクラウド型汎用電子マネーサービスの商用化
まず、当社が行ったのはクラウド型電子マネー決済システムの開発です。
これは従来の複雑なネットワークを束ね、情報の流れを整流化するもので、かつ高額な決済端末の価格を大幅に低減します。
しかし、システム開発には多額の設備投資を要し、資金回収までに長い年月がかかります。
最初の出資者である三菱商事とトヨタファイナンシャルサービスの資金力で、このインフラ整備への初期投資をまかないました。
クラウド型の決済システムにより効率的な決済処理と導入コストの削減を実現したことで、コンビニやスーパーマーケット等の流通業者向けに事業を展開していきました。
2016年頃から当社の事業は伸長していき、度重なる大企業による増資を経て2023年に上場しました。
事業拡大を目指した上場
2023年4月4日に東証グロース市場へ上場しました。
やはり、大手流通業者への事業拡大には信用力が必要です。
また、電子決済ゲートウェイ事業者から情報プロセシング事業者へと変貌を遂げるためにも多くの事業投資が必要になります。
後ほど成長戦略でもお話しますが、今後は更なる事業拡大のために、安定供給に向けた設備投資、新規事業への投資、および技術開発の投資をしていく予定です。
事業の概要と特徴
概要
当社は決済ゲートウェイとしてクラウド型電子決済サービスを提供しています。
主にコンビニ、スーパーマーケット、ドラッグストア、ファーストフードチェーンなどの流通事業者とクレジットカードや電子マネー、QR・バーコードといった決済ブランド事業者の間を繋ぐ役割を果たしています。
事業における優位性
戦略に基づく柔軟な営業と多様な決済ブランド
当社は創業当初から情報プロセシング事業を目指し、事業を推進してきました。
そのため、決済サービス事業を第一フェーズとして捉え、収益性よりも当社と接続する端末を増やして面を拡大していくことに注力してきました。
成長市場である決済業界は競合が多いと思われがちですが、我々は他社と協業をして事業を行っています。当社のゲートウェイに接続するにあたり、当社端末の利用を前提とした営業は行っていません。自社でも決済端末の開発・販売を行っていますが、当社のサービスは多くの他社製の決済端末にも接続することができます。
さらに、当社は計45の決済サービスの提供が可能で、その中から顧客はニーズに合わせてカスタマイズすることができます。
電子マネーへの早期参入のアドバンテージ
当社は業界でいち早くクラウド型電子マネーサービスの商用化を実現したことが、先行者メリットとして、現在の優位性の1つになってると考えています。
まず、全国各地で利用されているSuicaなどの交通系ICを中心に、電子マネーの各ブランドに対応してきました。
そして、電子マネーのサービスを揃えた後、クレジットやQR・バーコードへとサービスを拡充していきキャッシュレス決済サービスのワンストップの取引ができる状態を確立しました。
現在、流通事業者を中心に顧客を増やし続けることができたのは、このように多くのサービスをクラウド型で提供できているからだと考えています。
参入障壁の高さ
電子マネーの決済ゲートウェイは参入障壁が高く、実際にこれまで参入してきた企業は数社のみで、過去数年に渡って新規参入業者はいないと認識しています。
そこには、システム構築の難易度の高さやセキュリティ面での運用方法が大きく関わっています。
まず、当社のようにクラウドサービスを提供する上では、多くの端末とオンラインでつながり、リアルタイムで多数の決済処理を行えるシステムを整備することが非常に重要です。
特に電子マネーにおいては正確かつ迅速な処理が求められ、こうしたシステムの構築は難易度が高く、設備投資や技術投資には多額の資金が必要となります。
また、セキュリティ面では、社会的に信頼のある企業に依頼したいという定性的なハードルもあります。
システムの運用をする上で、クラウドを介して膨大な決済データを伝達することになるので、社会的責任も大きく、社会的に信用度が低い新規業者の参入は簡単には認められません。
既に当社はこれらの障壁をクリアしているので、電子決済ゲートウェイとして安定した地位を保つことができていると考えています。
安定ストック×従量課金による成長加速モデル
また、当社の事業はフロー収入とストック収入を安定的に得られるビジネスモデルで成り立っています。
以下が決済端末の導入の際に発生するフロー収入と導入後のストック収入のイメージです。
このように、導入段階ではシステムカスタマイズによる開発売上や端末自体の販売によるフロー収入を得られます。
そして決済端末の導入後は月額固定のセンター利用料、従量課金式のQR・バーコード精算手数料により安定したストック収入を得ています。
先にも申しましたが、ビジネスモデルとしては決済端末において自社製・他社製のいかんにこだわっていない為、フロー収入に偏らないストック収入の確保が可能となっています。
この安定したストック収入の獲得が当社のビジネスの基盤になっています。
中長期の成長イメージとそのための施策
電子決済ゲートウェイ事業の更なる拡大
今後は、当社の基盤事業である電子決済ゲートウェイ事業を決済端末台数の面的拡大と、決済量の拡大を行い、伸ばしていきます。
流通事業者は5年から7年に1回、決済端末を入れ替えています。
過去より流通事業者に対する圧倒的シェアを持つ当社が、顧客の置き換え需要をキャッチアップしながらシェアを拡大していこうと考えています。
また既に当社を介して電子決済端末を導入している顧客に対して、現在実装可能な45のサービスを、それぞれのニーズに合わせて積極的に拡大する予定です。
情報プロセシング企業への変貌と新サービス開発
また、電子決済ゲートウェイ事業に加えて情報プロセシング事業を展開していきます。
先ほども申し上げました通り、我々は設立当初から流通業者に対する情報展開のビジネス、つまりマーケティングの支援等をしたいと考えてきました。
しかし、情報ビジネスを展開するにあたっては、いかにコストをかけずにデータを取得するか、という点が高いハードルとなります。
そこで、当社はクラウドPOS等の情報プロセシング事業で蓄積したデータを分析・可視化して、マーケティングに活かすための新サービスを展開していきます。
直近では新潟交通との実証実験に関するリリースを出させていただきましたが、新サービスの中でも特にユニークなのがこのモビリティ分野です。
鉄道やバスを使う人は何かしらの目的に応じて使っていて、移動の先の多くは消費の場に繋がります。
そして、消費の場には我々の決済端末が置かれています。
そこで、乗車した人のIDと消費場所の決済情報を照合させ、購買行動把握から分析したマーケティング施策の展開等も考えています。
これ以外にも様々な新サービスを展開していきますので期待していてください。
注目していただきたいポイント
当社は電子決済を軸としてサービスを展開していますが、主眼は生活者の消費環境の質の向上にあります。
上場から着々と進めていた情報プロセシング事業は、足許で期初予算の2倍を超えるペースで進捗しています。
今後はその新サービスを多くの会社に向けてどんどんスケールしていくことが重要になってきます。
しっかりと具体的な数字で進捗を提示していく方針ですので、注目していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
これからも生活者にとってより良い消費環境の創出を目指して事業を拡大していきたいと考えています。
そのためにも、他のフィンテック企業とは異なるユニークな銘柄として応援していただけたらと思います。
何卒ご支援のほどよろしくお願いします。
本社所在地:〒103-0027 東京都中央区日本橋二丁目11番2号太陽生命日本橋ビル18階
設立:2008年3月3日
資本金:6,140,764,6000円(2023年9月末時点)
上場市場:東証グロース市場 (2023年4月4日上場)
証券コード:5258