- サラリーマンの平均退職金と計算方法が知りたい
- 退職金受取り時の税金対策を理解したい
- 退職後の適切な資金管理法や活用策がわからない
サラリーマンにとって、退職金は長年の勤務の対価として受け取る重要な資産と言える。
しかし、その受け取り方や税金の取り扱い、さらにはその後の資金管理についてまで、十分に理解できているという方は少ないだろう。
そこでこの記事では、サラリーマンが退職金を受け取る際に押さえておきたい重要なポイント、税金計算の方法、そして受け取った退職金の効果的な管理法と活用策を詳細に解説する。
退職金についての疑問を解消し、より良い将来の計画を立てるために役立ててほしい。
サラリーマンの平均退職金とその計算方法
今までの努力が1つの形となって得られるのが「退職金」である。
では、サラリーマンが得られる退職金額はいくらになるのだろうか。
退職金の平均額から退職金にかかる税金について解説していくので、今後のために参考にしてほしい。
退職金の平均額推移とその影響要因
ここでは、退職金の平均額の変化を以下の表で紹介する。
具体的に、どのように退職金額が変化しているのか確認していこう。
【金額の変化】定年退職:大学卒
調査年 | 金額 |
---|---|
1998年 | 2,868万円 |
2003年 | 2,499万円 |
2008年 | 2,280万円 |
2013年 | 1,941万円 |
2018年 | 1,788万円 |
【金額の変化】定年退職:高校卒
調査年 | 金額 |
---|---|
1998年 | 1,900万円 |
2003年 | 2,161万円 |
2008年 | 1,970万円 |
2013年 | 1,673万円 |
2018年 | 1,396万円 |
以上のように、得られる金額は年々減少している。
大学卒の定年退職の場合は、[1997年:2,871万円]と[2018年:1,778万円]を比べると差額は約1,000万円になり、高卒の場合でも約500万円減少していることが分かるだろう。
では、なぜ得られる金額が減っているのだろうか。理由を学んでいこう。
- バブル崩壊以降、大きな金額を用意できなくなったから
- 年功序列制から成果主義に切り替わったから
このような理由から、退職金額が減少傾向にあるのだ。
また、退職金制度を導入している会社が[1997年:88.9%]から[2018年:80.5%]に減っていることから、退職金制度の導入自体を止めた会社も少なくない。
以上のことから、退職金の金額はさらに減っていくと予測される。現時点で40代の人が退職するタイミングでは、一部では退職金が1,000万以下になると考えられているため、よりよい方法で退職金を活用することが重要になるのだ。
- 参照:きんゆう女子。「20年で退職金が1,000万円減!さてどうする!?」
- 参照: PRESIDENT Online「40代会社員は「退職金1000万円未満」を覚悟せよ 20年後には現在の半分になる恐れ | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)」
退職金計算の基本原則
給料・賞与・株式投資の配当金などの「利益」を得た際には、「税金」が発生する。
まとまった金額を得られる退職金だからこそ、どれくらいの金額を納税しなければならないのか気になるところだろう。
ここでは、退職金に対して発生する「税金」について解説していく。
「所得税」には10種類あり、退職金は「退職所得(一時金形式で受け取り)」に該当する。
以下の式を活用すると「退職所得」を求められるので、実際の金額や予定金額で試してみよう。
式から分かるように、控除額が大きいこと、得た金額から控除額を引いた後に「1/2」できることが退職所得の最大の魅力だと言える。
控除額の求め方は、下記「退職所得税の求め方」を参考にしてほしい。
退職年数による退職金の変動
一般的に退職金を受け取れる可能性は、3年以上働いたタイミングが多い傾向にある。
以下の表では勤務した年数別の退職金受給割合を紹介しているので確認してほしい。
勤務した年数 | 自己都合 | 会社都合 |
---|---|---|
1年未満 | 3.2% | 8.5% |
1年以上2年未満 | 15.0% | 21.8% |
2年以上3年未満 | 9.7% | 8.7% |
3年以上4年未満 | 56.2% | 42.2% |
では、「どれくらい勤務することでいくら得られるのか」について、以下の表で目安の金額を記載する。
退職理由で得られる金額が違うため、「会社都合」「自己都合」「定年退職・早期優遇退職」で紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
会社都合
勤務年数 | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
3年 | 52万円 | 27万円 |
5年 | 89万円 | 49万円 |
10年 | 214万円 | 122万円 |
15年 | 404万円 | 215万円 |
20年 | 665万円 | 328万円 |
25年 | 1,005万円 | 466万円 |
30年 | 1,368万円 | 605万円 |
35年 | 1,669万円 | 758万円 |
42年 | 1,925万円 | 849万円 |
自己都合
勤務年数 | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
3年 | 31万円 | 19万円 |
5年 | 52万円 | 36万円 |
10年 | 138万円 | 91万円 |
15年 | 289万円 | 171万円 |
20年 | 557万円 | 273万円 |
25年 | 863万円 | 397万円 |
30年 | 1,197万円 | 533万円 |
35年 | 1,546万円 | 673万円 |
42年 | 1,679万円 | 742万円 |
定年退職・早期優遇退職
退職理由 | 大学・大学院卒 | 高校卒※事務・管理・技術職 | 高校卒※現業職 |
---|---|---|---|
定年退職 | 1,983万円 | 1,618万円 | 1,159万円 |
早期優遇退職 | 2,326万円 | 2,094万円 | 1,459万円 |
以上の結果からも、勤務した年数が得られる金額に影響されることが分かるだろう。他にも、今までの功績・役職などが判断基準になるケースもあり、金額の計算ポイントは会社オリジナルルールによって違う。
退職後受取り時に押さえるべきポイント
退職金を受け取る際に「押さえるべきポイント」があるので、今後のためにぜひ役立ててほしい。
受け取り形式は「自分にベストな方法」を選ぶ
退職金は、一般的に「一時金形式」と「年金形式」から選べるケースが多く、自分にベストな方法を選ばなければならない。
なぜなら、受け取り形式が違うだけで対象になる所得が異なるためである。
対象所得
形式 | 対象所得 |
---|---|
一時金形式 | 退職所得 |
年金形式 | 雑所得 |
退職所得の求め方は上記「退職金計算の基本原則」でも紹介しているが、具体的にどのような差があるのかを確認していこう。
対象 | 求め方 |
---|---|
一時金形式(退職所得) | (退職金額‐退職所得控除)×1/2 |
年金形式(雑所得) | 受給金額-公的年金にかかる雑所得の金額※公的年金等 |
一時金形式を選ぶと1/2ができるため、大きな金額を差し引ける(控除)。そのため、現金として手元に残りやすい。
だが、個人年金保険やiDeco(確定拠出年金)などで将来の資金を準備している場合、年金受給額(収入)が大きくなる。
そのため、どちらの方法を選ぶのかについては、しっかりと考えなければならない。
個人の状況などによってベストな方法は異なるので、さまざまなポイントを考慮し、慎重に選ぶといいだろう。
還付金を受け取れる可能性
退職金を受け取る際に押さえるポイントの2つ目は、ケースによっては還付金を受け取れる可能性があるということだ。
通常は、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出するため、納めるべき税金を差し引いた金額を受け取れる。
そのため、確定申告などの作業は不要だ。
だが、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しない場合、退職所得控除を受けられないため、通常よりも多い金額が源泉徴収される。
そのため、確定申告を行うことで還付金を受け取れるケースがあるのだ。
自身の状況によって必要な人は確定申告を行うのをおすすめする。
短期間の勤務で退職金を受け取る際の注意事項
5年以内の短期間勤務で退職金を受け取る場合、通常の「退職所得控除」が適用されないので注意しなければならない。では、どのように変わるのか確認していこう。
退職所得控除の求め方 | 40万円×勤務した年数 |
---|---|
役員として勤務 (特定役員退職手当等) | 退職金-退職所得控除 |
従業員として勤務 (短期退職手当等) | 【金額が300万円以下】(退職金-退職所得控除)×1/2 【金額が300万円超え】150万円+{退職金-(300万円+退職所得控除)} |
このように「役職か従業員か」「金額が300万円以下かどうか」によって違うため、条件に注意して求める必要がある。
退職金受取り時の税金対策
「退職金に対してどれくらいの税金が発生するのか」は、さまざまな人が気になってしまうポイントだろう。
ここでは、退職所得・退職所得控除・税金の求め方を具体的に解説していくので、ぜひ参考にしてほしい。
退職所得税の求め方
退職所得税の求め方は上記「退職金計算の基本原則」で紹介した通り、以下の式を利用すると求められる。
退職所得控除額の求め方
勤務した年数が19年以下 | 40万円×勤務した年数 |
---|---|
勤務した年数が20年以上 | 800万円+70万円×(勤務した年数-20年) |
参考例を使って、実際に求めると退職所得は以下のようになる。
①勤務年数15年/金額2,000万円 | 40万円×15年=600万円(2,000万円-600万円)×1/2=700万円 |
---|---|
②勤務年数35年/金額3,000万円 | 800万円+70万円(35年-20年)=1,850万円(3,000万円-1,850万円)×1/2=575万円 |
適用される税率と控除
所得税を求める際に、重要になるのは「税率」と「控除額」だ。
この金額は課税対象額によって違うため、以下の表を参考にしてほしい。
税率と控除額
課税対象額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 97万5,000円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
ここで手取り額を求めたい人に注意してほしいポイントがある。
それは、所得税以外にも発生する税金があるということだ。
所得税のほかに「復興税」と「住民税」が発生し、各所得の説明と税率は以下の通りである。
復興税(復興特別所得税) | 2037年まで、東日本大震災の復興財源として納める税金 【求め方】所得税額×2.1% |
---|---|
住民税 | 都道府県と市町村に納める税金 【求め方】退職所得×10% |
手取り額を求める際は、「所得税・復興税・住民税」を合計した金額を退職金から引くようにしよう。
税金対策の重要性と具体的な方法
退職金を受け取る際に、「節税効果のある方法」を積極的に使うことで所得税と住民税の負担を軽くできる。
そのため、結果的に支払うべき税金が減るのだ。
では、どのような方法を使えば税金対策ができるのかを解説していく。
- 社会保険控除
- 生命保険料控除
- 地震保険控除
- 医療費控除
- ふるさと納税
- 不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得と損益通算 など
このような方法を使えば、税金対策になるので活用するといいだろう。
だが、確定申告などの申請が必要になるケースが多いので注意しよう。
退職後の資金管理と活用策
今までの頑張りが形になった退職金を受け取る際に、心配になるのは「管理方法」と「活用策」だろう。
ここでは、効果的な活用法や活用すべき理由などを紹介していくので、今後の参考にして理想の生活に近づけてほしい。
退職金の効果的な活用法
退職金を効果的に活用するためには、以下の方法が最適だと言える。
家族構成や貯蓄金額などによってベストな方法は異なるため、状況に合わせて選んでいこう。
個人向け国債 | 金利0.05%が最低保証されているため、確実に資産を増やせる金利が変動する10年型・金利が固定されている3年型・5年型があるため、運用目的に合わせやすい |
---|---|
投資信託 | 最低限の投資知識があればチャレンジしやすい投資方法運用をプロが投資家の代わりに行うため、時間がない人でも継続しやすい方法だと言える |
不動産投資 | アパートやマンションなどを購入し、家賃収入を得る方法不動産価格が上がれば売却することもできる |
株式投資 | 株式投資では、以下の方法で利益を得られる配当金を株主優待株式の購入時と売却時の差額の利益 |
定期預金 | 預入期間に応じて利息を受け取れる方法投資などに抵抗がある人でもチャレンジしやすい傾向にある退職金向けの定期預金であれば、金利が高く設定されている商品もある |
貯蓄型保険 | 終身保険や養老保険など貯蓄性の高い保険に加入し、解約返戻金や満期保険金を受け取る方法定期保険同様、投資に抵抗がある人でもチャレンジしやすい傾向にある |
今までの資産運用経験や、各方法と向き合わなければならないリスクやデメリットなどから判断していくのをおすすめする。
退職金を活用した資産運用の意義とその効果
資産運用と聞くと、「難しそうだな…」とハードルを感じてしまう人も少なくはないだろう。
だが、まとまった金額を得られる退職金だからこそ、有効活用することで将来の生活が豊かなものに近づける。
具体的に「どのような理由から資産運用すべきか」について解説していくので、資産運用を行うか悩んでいる人はぜひ役立ててほしい。
インフレリスクに備えるため
インフレリスクとは、インフレ(インフレーション)が原因で保有している現金の価値が下がってしまうことを指す。
「現金の価値が下がる」という状態をイメージしにくい人もいるだろう。
では、以下の参考例からイメージしてみてほしい。
子どもの頃に100円で購入できた文房具が、現在では150円出さないと購入できない
基本的にはインフレしていくため、現在の現金価値が3,000万円あったとしても将来は3,000万円以下の現金価値になる可能性があるので、リスクに備える方がいいと言える。
目的を達成しやすいため
例えば、「老後の生活費に充てたい」「リフォームをしたい」「子どもに〇〇〇万円用意したい」など、さまざまな目標があるだろう。
この目標は資産運用を活用することで、現金だけで叶えるよりも効率的に叶えやすくなる。
長生きに備えるため
長生きをすることは、嬉しい反面「リスク」があると言える。
例えば、生活費・医療費などが長生きすればするほど多くの費用が発生するからだ。
将来、安定した生活を楽しめる環境を自分にプレゼントするためにも、今から資産運用を活用することがポイントだ。
IFAを退職金運用に活用するメリット
「資産運用が重要なのはわかったけど、リスクが怖い…」と感じてしまい、資産運用を行うことに躊躇してしまう人も多いだろう。
そのような人に、試してほしい方法は「IFAに相談する」ということだ。
IFAとは資産運用の専門家のことを指し、資産運用の深い知識があるからこそ、経済状況や家族構成などさまざまなポイントから相談者にベストな方法の提案が可能だ。
通常、自分自身の考え方や性格に合うIFAを探すには時間と労力がかかりやすい。
だが、「資産運用ナビ」を利用すれば、スピーディーに理想的なアドバイザーと出会えるため、興味のある人は気軽に試してほしい。
まとめ
サラリーマンの退職金平均額は年々減っており、勤務年数や企業規模によって得られる金額は違う。
退職金の受け取り方法には一時金形式と年金形式の2種類あり、最適な方法は個人の状況により分かれる。
また、退職金は退職所得に該当し、他の所得よりも差し引ける金額(控除)は大きい傾向にある。
このように、退職金の受け取り方法や受け取り時にかかる税金の仕組みを理解して対策をとるといいだろう。
そして、インフレリスクや平均寿命の延伸などから、退職金を賢く活用することの重要性は高まっている。
具体的な活用例は、投資信託・国債・定期預金などさまざまな方法があるので、セカンドライフを充実させるためにも活用していくことをおすすめする。
退職金を活用した効率的な資産運用は、将来安定した生活を得られる。
そのため、資産運用の方法選びに不安がある人は、IFA検索サービス「資産運用ナビ」を活用して自分に合ったアドバイザーを探すといいだろう。