※本コラムは2023年12月22日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社JRCはニッチトップ・リカーリングなコンベヤ部品事業と急成長市場のロボットSI事業の両輪であらゆる業種の組立・搬送工程の課題を解決する会社です。
代表取締役社長の浜口稔氏へ、事業戦略の変遷や今後の成長方針を教えていただきました。
株式会社JRCを一言で言うと
ニッチトップ・リカーリングなコンベヤ部品事業と急成長市場のロボットSI事業を併せ持つ会社です。
沿革
創業経緯
1961年に個人商店である浜口商店として大阪市天王寺区で開業し、コンベヤ製品の製造・販売を始めました。
その後1965年に浜口鉄工株式会社として法人化しました。
コンベヤ部品事業の確立と新事業展開
1989年にコンベヤ製品の製造・販売のノウハウを活かして日本初のローラ自動組立ラインを導入しました。
この製造ラインの自動化により高品質・低価格でコンベヤ部品を提供できるようになったことが、当社の売上拡大に大きく貢献しました。
2000年代には日本のトップシェアを獲得し、2010年には国内コンベヤ関連製品のシェアが40%以上になりました。
ですが、単なる部品メーカーのままではビジネスの幅が狭まってしまうと考え、2017年からコンベヤ部品事業においてソリューションビジネスを展開しました。
そして、2018年にはコンベヤ部品工場工場の自動化ノウハウを用いて、新規事業のロボットSI事業を始めています。
上場の経緯
当社は2023年8月に東京証券取引所グロース市場に新規上場しました。
企業の永続的な発展には人的資本や成長事業への投資が必要だと考えて、2019年頃から上場の準備を進めてきました。
そこで、プライベートエクイティファンドであるインテグラル(株)とパートナーシップを結び、助言、助力を得て遂に上場を果たしたという経緯でございます。
事業の概要と特徴
概要
コンベヤ部品事業とロボットSI事業を柱としています。
まず、コンベヤ部品事業では屋外用ベルトコンベヤ部品の製造からメンテナンスまでワンストップで行っています。
製鉄業界や発電所・電力設備業界、セメント業界、土木業界など全国各地の様々な業界に対して事業を展開しています。
また、ものづくり企業の人手不足という社会課題に対して、2018年からALFIS(アルフィス)というブランドを立ち上げ、新規事業としてのロボットSI事業を展開し、中小企業を中心に工場等におけるレイアウト設計やロボットの選定・導入後のフォローまで行っています。
それぞれの事業の詳細については以下の「事業における優位性」でお話しします。
事業における優位性
ニッチトップ企業としての優位性
当社はコンベヤ部品の国内シェアで52%を誇り、エンドユーザーも13,000社とコンベヤ部品業界ではトップ企業です。
我々が製造・販売しているコンベヤ部品の多くは屋外の厳しい環境で使用されているため、交換頻度が高いという特徴があります。
この高い交換頻度に対して、日本全国への供給を可能にする製造工場・物流センター・営業所を、コンベヤ部品業界で唯一有していることが一つ目の優位性です。
場合によっては海外から製品を輸入することで、あらゆる面での迅速な対応を可能にしています。
実際に、2022年度の全部品受注のうちコンベヤ部品の更新・リプレイス率は86%であり、コンベヤ部品事業は継続的に収益を期待できるビジネスモデルだと考えています。
豊富な経験に基づくソリューションビジネス
コンベヤ部品事業では、2017年からソリューションビジネスを展開しています。
以前は代理店を通して、当社が製造した部品を販売することに留まっていましたが、エンドユーザーの現場に足を運ぶ営業に切り替えました。
エンドユーザーである工場の現場担当者は、生産ラインにおいてコンベヤを含め様々な課題を抱えています。
そこで当社では、コンベヤの本質や現場で起きる問題を熟知して適切なソリューションを提供するために、営業担当者が自ら直接現場に足を運んで現場点検や対策をしています。
これまで、当社は幅広い業界に対してコンベヤ製品を提供し、また課題解決も担ってきました。
そのため、エンドユーザーの抱える複合的な課題に総合的に対応することができます。
ニッチトップ企業として長年培ってきたノウハウ、そしてエンドユーザーとの深い関係性が二つ目の優位性です。
早期参入したロボットSI事業と急成長の市場環境
当社が主戦場とするコンベヤ部品事業は安定的に成長していく一方で、2018年から参入したロボットSI事業は今後、急成長していく業界だと考えています。
人口減少が進む日本では人手不足が深刻な社会課題であり、これまで自動車業界・電気電子業界などの少品種大量生産の領域を中心に大量のロボットが導入されてきました。
今後は、従来人手が作業してきた多品種少量生産の領域でもロボットの使用が広がっていくと考えています。
しかし、単にロボットを購入しただけではパフォーマンスを上げることはできず業務効率化には繋がりません。
そこで、レイアウトの設計や、ロボットに対応したシステム構築から導入に至るまでを当社がトータルサポートすることで、導入したロボットの真価を発揮させます。
我々はロボットのシステムインテグレーターとして、ロボットシステムをカスタマイズし、誰でも扱いやすいようにしています。
例えば、業務知識の浅いパートやアルバイトでも使いこなせるように組立ロボットを簡素化するとしましょう。
専門的な人材を登用せずとも組立ロボットを扱うことができるので、生産性を向上させるとともに人件費の削減にも繋がります。
当社は早期からこのロボットSI事業に注力してきました。
コンベヤ部品事業におけるソリューションビジネスのノウハウを元に、顧客課題を適切に把握し解決する能力が三つ目の優位性であります。
中長期の成長イメージとそのための施策
ソリューションビジネスの拡大
コンベヤ部品事業におけるソリューションビジネスを拡大していきます。
2017年以降、当社はエンドユーザーの現場に足を運び、課題を発見し解決していくというソリューション営業を行ってきました。
また、近年では、代理店向けに当社の培ってきたノウハウを共有するセミナーの開催やノウハウを組み込んだ営業アプリの開発などの取り組みを通じ、代理店(JRCソリューションパートナー)との連携強化を図っています。
今後は、これまで当社が直接アプローチできていなかったエンドユーザーに対して、代理店を通じてさらにソリューションビジネスを拡販していく予定です。
このように、当社は単なる部品メーカーとして拡大していくのではなく、ソリューション販売比率を上げ、安定的な収益を継続的に確保できるビジネスモデルに変化していきたいと考えています。
海外市場への拡大
ASEAN・北米でコンベヤ部品事業を展開していきます。
鉱物資源が多く産出される国、または採掘事業が盛んな国をターゲットとしています。
なぜなら、屋外用ベルトコンベヤは採掘の際に必須な装置で、工場から港まで資源を運ぶような長距離のベルトコンベヤを導入していく可能性が高いと認識しているからです。
特にインドネシアでは現地のコンベヤ部品メーカーが台頭していない為、参入余地が大きいのではないかと考えております。
今後、インドネシアでのコンベヤ部品の現地生産化と周辺諸国への販売網の形成を目指します。
また、米国ではASGCO社との強固なパートナーシップを基に現地での事業拡大を図っていきます。
ロボットSI事業へ注力
先ほども申しましたが、ロボットSI事業は市場の急成長による需要拡大が見込まれます。
当社は早い段階から本事業に参入してきましたので、先駆者としてのアドバンテージを持っていると考えています。
WEB等を活用した積極的なマーケティングで、より多くの人に知っていただけるように認知度向上に努めていきます。
また、この急成長市場の特性として、従前の市場以上にスイッチングコストが高いと考えており、このアドバンテージを保持するためにも、システム開発にも注力していきます。
まずは認知度の向上と積極的な事業投資で参入障壁を高くしていき、安定的に新規顧客を獲得していきたいと考えています。
注目していただきたいポイント
これまで何度も申し上げておりますが、当社が展開するビジネスはコンベヤ部品事業だけではありません。
今後は急成長市場に位置するロボットSI事業にも注力していく方針で、積極的なM&Aや人材の補強も含め、しっかりと成長投資を行っていきます。
また、現時点では海外への展開についてはコンベヤ部品事業のみですが、今後の当社の成長によってはロボットSI事業についても検討していきます。
ニッチトップリカーリングで安定しているコンベヤ部品事業と、今後の成長が見込まれるロボットSI事業の両輪で成長する、当社の稀有なビジネスモデルに注目していただきたいです。
投資家の皆様へメッセージ
投資家の皆様におかれましては、当社が属する業界はなかなか成長していかないのではないか、と思っている方が多いと思います。
しかし、今後当社はさらなる事業拡大のためにM&Aを含めてしっかりと成長市場への投資を行っていく予定でございます。
そして、我々は短期的ではなく中長期的に、安定しながら成長していく図を思い描いています。
投資家の皆様には中長期的な目線で見守っていただければと思います。
本社所在地:〒550-0011 大阪市西区阿波座2-1-1 CAMCO西本町ビル 6F
設立:1991年3月
資本金:105,573,000円(2023年8月9日現在)
上場市場:東証グロース市場(2023年8月9日上場)
証券コード:6224