- 債券型ETFの基本的な特徴が知りたい
- 債券型ETFへの投資方法を理解したい
- 債券型ETFのメリット・デメリットを把握したい
本記事ではこのような疑問を解決していく。
債券型ETFとは、債券で構成された上場投資信託のことだ。
債券型投資信託とは違い、取引所が開いている時はいつでも取引できるという特徴を持つ。
手数料も債券型投資信託よりも安く設定されているのだ。
良いことが多く見えるだろうが、もちろんデメリットや気を付けるべきポイントもある。
債券型ETFをうまく利用して資産形成を進めていきたいという人はぜひ最後まで読んでみて欲しい。
債券型ETFとは
債券型ETFは、株式取引のような手軽さと透明性を備えた、債券投資をより身近にする金融商品だ。
ここでは、債券型ETFの基本的な仕組みや特徴を紹介しよう。
債券型ETFの定義と基本概念
債券型ETFは、債券で構成されたETFのことを指す。
ETFとは上場投資信託のこと。証券取引所に上場しているので、取引所が開いているタイミングであればいつでも売買できる。
また、複数の銘柄が組み込まれているので、1つの商品で分散投資が可能だ。つまり、株と投資信託の良い部分を詰め合わせたのがETFだ。
債券型ETFを保有していると、利息による分配金を受け取れる。
通常の債券と違う点は、満期がないことだ。
債券は、満期日まで保有すれば額面金額を受け取れるという特徴を持つが、債券ETFにはない。
代表的な債券型ETFの種類とそれぞれの特性
日本取引所グループの銘柄一覧(ETF)によると、2024年6月時点で上場している債券型ETFは、53銘柄(アクティブ運用型3本を含む)である。
これらは、投資対象(国や企業、地域など)や時間軸、リスクヘッジの有無によって分類できる。
以下では、投資対象によって大きく分類し、それぞれの特性を整理した。
分類 | 説明 | 特性 |
---|---|---|
政府債券型ETF | 政府発行の債券(国債や地方債)を対象とするETF 例: iシェアーズ・コア 日本国債 ETF | 信用リスクが低く、安定的な利子収入が期待できる |
企業債券型ETF | 企業が発行する社債を対象とするETF 例: iシェアーズ 米ドル建て投資適格社債 ETF(為替ヘッジあり) | 国債よりも利回りが高い傾向にあるが、発行企業の信用リスクを負うことになる 投資適格社債ETFは、BBB以上の企業の社債に投資 収益は比較的安定ハイイールド債ETFは、信用格付けが低い企業の社債に投資 高い利回りが期待できる一方、リスクも大きい |
地域による分類 | 国内型や海外型、新興国、アジアなどを対象とする 例: NEXT FUNDS 新興国債券・J.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(為替ヘッジなし) | 先進国債券型ETFは、アメリカなどの先進国債券に投資 利回りと安定性が高い 新興国債券型ETFは、高い経済成長が見込まれる 新興国債券に投資 信用リスクと為替リスクに注意が必要 |
テーマ型ETF | インフレ連動、環境やガバメントなどの特定テーマに基づき発行された債券を対象とする 例: iシェアーズ 気候リスク調整世界国債 ETF(除く日本・為替ヘッジあり) | 為替ヘッジあり、なしによっても分類できる 環境や持続可能なプロジェクトに資金を提供するための債券投資は、世界的に関心が高まっている分野である |
債券型ETFが一般のETFと異なる点
一般にETFというと、もっとも取引量が多く知名度も高い「株式ETF」を指すことが多い。
株式ETFと同様、債券ETFも証券取引所に上場されているため、柔軟に売買できる点は共通している。
しかし、以下のような点で特性が異なる。
収益の源
株式ETFの主な収益源は、株価の値上がりによるキャピタルゲイン(売却益)と、株式の配当金だ。
一方、債券型ETFの主な収益源は、組み入れた債券の利息収入である。
リスクとリターンのバランス
一般的に、債券は株式よりもリスクが低い投資対象とされる。
これは、債券が定期的な利払いを約束し、満期日に元本が返済されるという特性を持つからだ。
そのため債券型ETFは、株式ETFよりもリスクが低い傾向にあるが、同時にリターンも限定的である。
金利変動から受ける影響の度合い
債券型ETFは、金利変動の影響を大きく受ける。たとえば金利上昇すると、債券ETFの価格は下落する傾向にある。
これは、新発債の利回りが上昇するために、既発債の魅力が相対的に低下するからだ。
株式ETFも金利変動の影響を受けるが、その影響は債券ETFほど直接的なものではない。
債券型ETFの特徴
ここでは、債券型ETFの特徴を整理していく。債券型ETFを自身のポートフォリオに組み入れる際は、これらの特徴が自分の投資目標に合致するかどうか、慎重に確認していただきたい。
いつでも購入できる
債券型ETFのメリットの1つ目は、いつでも購入できるということだ。
債券は希望したときにいつでも購入できるわけではない。
だが、ETFは市場を通して行う取引なので、取引所が開いている時間は希望したときに購入・売却ができる。
売買タイミングを縛られないのは、債券型ETFの大きな強みと言えるだろう。
分散投資が簡単になる
債券型ETFは指数を投資対象にしている。指数は一つの銘柄で構成されているわけではなく、複数銘柄で構成されているのだ。
そのため、債券型ETFを一つ購入するだけで自動的に投資先は分散されている。
リスクを抑えるために分散投資は必須だ。銘柄の組み合わせを考えずとも、分散投資が可能になるのは債券型ETFの大きなメリットである。
コストが安い
債券型ETFは手数料などのコストが債券型投資信託よりも安い商品が多い。
そのため、長期投資に向いている。投資するなら手数料はできるだけ安い方が良い。
楽に分散投資できて、手数料が安い債券ETFは非常に良い金融商品だろう。
手堅くない商品も紛れている
基本的に守りの資産と呼ばれる債券だが、中にはリスクの高い商品も紛れている。商品概要や値動き、運用報告書などを見て、値動きにどれくらいの変動があるか確認しておこう。
リスク許容度が高ければハイリスクハイリターンの商品を選んでも良いが、リスク許容度が低い人は注意が必要だ。
債券だから大丈夫と判断して、リスクの高い商品を保有しないように気をつけよう。
株式ほどのリターンは得られない
債券型ETFは債券で構成されているので、株式ほどのリターンは見込めない。
リスクを抑えている分、どうしてもリターンは低くなってしまう。ただ、守りの資産という観点から見れば非常に優秀と言える。
子育て中の子供がいたり、定年が近づいていたりするなどリスク許容度が高くない人には向いている金融商品と言えるだろう。
一方で、若い・独身・実家暮らしなどリスク許容度が高く、投資にある程度のリターンを求めたいという人には向いていない。
金利の上昇に弱い
債券は、金利変動の影響を受けやすい。金利が上昇すると、債券価格は下落する傾向があるのだ。
たとえば、固定金利1.5%の10年債を100万円分保有したと仮定しよう。
もし金利が2.0%に上昇したら、新規発行債券の金利は2.0%あたりに設定されるため魅力が増し、金利1.5%の既発債の価格は下落する。
このように、金利上昇期には債券型ETFの価値も下落するため、投資前に金利変動リスクを理解しておくことが重要である。
海外債券は為替リスクがある
海外の債券に投資する債券型ETFには、為替リスクがつきものだ。
たとえば、1ドル150円の時に、150万円分の米国債券を購入したとする。
その後1ドルが200円になれば、保有する米国債の円換算価値は200万円だが、1ドル=100円まで円高が進めば100万円となる。
海外の債券型ETFを検討する際は、為替リスクを十分に理解し、為替ヘッジ付きのETFを検討するなどして自身のリスク許容度に合わせて投資判断を行うことが重要だ。
債券型ETFのおすすめの投資法
ここでは、債券型ETFを組み込んだ投資方法について考えていく。
ポートフォリオに債券を入れる目的を明確にする
まずは、自身の投資ポートフォリオの資産配分を確認して欲しい。
まだポートフォリオを持たない方は構築し、すでにお持ちの方はリバランス(理想の配分に戻す作業)や再構築が必要ではないかを確認する。
このとき、投資ポートフォリオに債券を組み入れる目的を、明らかにしていただきたい。
目的を考えるにあたっては、ブラックロック社が解説記事の中で触れている、債券がポートフォリオで果たす3つの役割(「分散」「資産保全」「収入源」)を使ってみると良い。
分散、資産保全、収入源という役割を目的として書き換えると、以下のようになる。
- 株式ポートフォリオに分散を加える
- 債券価格は株式との相関が小さいため、債券型ETFを加えることで、よりバランスの取れたポートフォリオ実現できる
- ポートフォリオに安定性を加える
- 債券型ETFは相対的にボラティリティが(価格変動性)が低いため、組み入れることでポートフォリオの安定化を図れる
- 定期的な収入源とする
- 債券型ETFは、銀行の預金口座などと比較して、高い利回りが得られる可能性がある
これらがあなたの投資目的と合致したなら、あるいは自分なりに合理的な理由が見つかったら、次の銘柄選定のステップに進もう。
目的に合った債券型ETF銘柄を選択する
以下に、前項で挙げた目的を使って、債券型ETFの選定ポイントを挙げていく。
具体的な銘柄を例示したが、参考にしていただきたいのはあくまでも考え方だ。
目的: 株式ポートフォリオに分散を加える
株式ポートフォリオに分散を加える目的なら、株式との相関が低い債券型ETFを選ぶと良い。
自身の保有資産を確認し、それらと異なる市場や通貨に分散投資できる銘柄を選ぶ。
ポートフォリオが日本の株式中心なら、「NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信(2511)」は良い選択肢だ。
投資対象が日本を除く世界主要国の国債であり、為替ヘッジを行わないため、日本株式との連動性が低いと考えられる。
新興国債券型ETFも、一つの選択肢となるだろう。「NEXT FUNDS 新興国債券・J.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(為替ヘッジなし)連動型上場投信(2519)」は、比較的低コストで新興国債券へのエクスポージャーを加えられる。
目的: ポートフォリオに安定性を加える
金利変動の影響を受けにくく、信用リスクが低い債券型ETFを選ぶことがポイントだ。
国内の国債やグローバルの国債を対象とした残存期間の短いETFをおすすめしたい。
「iシェアーズ 米国債1-3年 ETF(2620)」は、償還残存期間が1年以上3年未満の米国債に投資するETFだ。
短期債券は金利上昇局面でも価格変動が少ないため、安定した投資先となる。信託報酬が0.154%と低い点も魅力である。
「NEXT FUNDS 国内債券・NOMURA-BPI総合連動型上場投信(2510)」は、日本の幅広い残存期間の国債に投資するETFだ。
デュレーション(金利変動に対する債券価格の感応度)が短めに抑えられているため、金利変動リスクは低めである。
足元の価格は下落傾向にあり、直近1年のリターンもマイナスだが、長期的視点に立てば投資機会と捉えることもできる。
目的: 定期的な収入源とする
収入を目的として債券型ETFを組み入れるなら、高い利回りを提供する銘柄が適している。
「NEXT FUNDS ブルームバーグ米国投資適格社債(1-10年)インデックス(為替ヘッジあり)連動型上場投信(2554)」は、対象を投資適格社債でかつ残存期間が1年から10年の社債に絞ることで、リスクをコントロールしている。
為替ヘッジを施すことで、円ベースでの安定的なリターンを狙いやすくなっている。
「上場インデックスファンド海外債券(FTSE WGBI)毎月分配型(1677)」は、広範な海外債券に投資する毎月分配型のファンドであり、安定した収入の確保が期待できる。
債券型ETFをポートフォリオに組み込む
債券型ETFの検討を、より具体的にイメージしていただくため、ここでは「50代前半のAさん」の考え方や意思決定過程を辿っていく。
Aさんはこれまで、株式および株式投資信託で資産を運用してきた。
しかし、今後はリスクを抑えたいと考え、ポートフォリオの一部を債券型ETFに割り当てようと考えている。
早期リタイアを視野に入れていることもあって、安定的な収入確保にも関心がある。
そこで組み入れの目的を、「分散」と「収入確保」の2つと定め、株式と債券の割合を7:3にすると決定した。
債券部分の内訳は、20%を「NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信(2511)」に、10%を「上場インデックスファンド海外債券(FTSE WGBI)毎月分配型(1677)」とする計画だ。
購入価格を抑えるため、一度にすべてを購入するのではなく、1年ほどの時間をかけて、少しずつ積み立てていく予定である。どちらの銘柄も新NISA(成長投資枠)で、積立設定を行った。
分配金の再投資は行わず、生活費の一部に充てる計画である。
年1回はポートフォリオ全体を見直し、5年後は再び株式の割合を落とすことも視野に入れている。
債券型ETFに投資するなら誰に相談するべき?
債券型ETFは利点も多く、投資を検討する価値がある。
しかし、実際にポートフォリオに加える際には、銘柄選定や組み入れ比率の決定など、難しい点が多くある。
より良い選択をするためには、専門家への相談を強くおすすめする。
債券型ETF投資を専門家に相談するメリット
金利動向を見極め、投資判断をするのは難しい。
専門家なら、債券市場の動向や各種ETFの特性について深い知識を持ち、個々の投資家のニーズに合わせて最適なアドバイスを提供できる。
また、投資家ごとのリスク許容度に合わせ、目標に沿ったポートフォリオ構築や銘柄選定も支援する。
このとき、もっとも頼りになるのが、IFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)という存在だ。
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IFAは、特定の金融機関に属さず、中立的な立場で投資家に資産運用のアドバイスを行う。
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自立した投資判断ができるよう、金融リテラシー向上にも貢献してくれる点も魅力だ。
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本記事では、債券型ETFに関する基本的な情報を、広く解説した。
債券型ETFは、債券投資を身近にしてくれる流動性と透明性が高い金融商品だ。
しかし、ETF自体が比較的新しいものであるため、これが自分に合っているか迷ってしまう人も多いだろう。
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