※本コラムは2023年12月25日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社オートサーバーは日本最大級の中古車流通プラットフォーム「ASNET(エーエスネット)」を運営しています。
代表取締役社長の髙田典明氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社オートサーバーを一言で言うと
国内最大級の中古車ECプラットフォームを運営する会社です。
沿革
創業経緯
当社は1997年に現会長の萩原外志仁が設立しました。
萩原はそれ以前にも中古車販売業社を営んでいましたが、在庫リスクが高く、自動車の新車価格に非常に左右されやすい状況でした。
そこで、インターネットの普及とともにオンラインを通じて中古車の販売ができないかと考え、ASNETというWEBサービスを始めたのが創業のきっかけです。
ASNETの確立
初めにASワンプラという中古車売買の仲介サイトを立ち上げました。
しかし、当時の中古車業界では仕入れた中古車を業販するのではなく小売での販売が主流だったため、なかなか普及しませんでした。
そこで、当社が連携している国内の自動車オークションでの、オンライン取引を可能にするオークション代行というサービスを始めました。
このオークション代行を機に会員数を伸ばしてきました。
上場経緯
当社は2023年9月に東証スタンダード市場、および名証メイン市場に上場を果たしました。
過去、台湾での上場も経験している(既に上場廃止済み)ので内部の準備は滞りなく進み、日本国内でさらに事業を伸ばしていきたいという想いで上場しました。
事業の概要と特徴
概要
中古車ECプラットフォームのASNETの運営を行なっています。
ASNETでは主に2つのサービスを展開しています。
まず、オークション代行サービスです。
このサービスでは、国内160会場の自動車オークションと提携しており、顧客は本サービスを用いてオンライン上でオークションに参加することができます。
会員登録自体は無料で可能ですが、オークション参加時に各種手数料を頂いています。
次に、ASワンプラサービスです。
ASワンプラは固定価格(ワンプライス)で中古車を売買できるサービスです。
当社が会員間の取引を仲介する為、顧客にとっては安心して中古車売買を行うことができるというメリットがあります。
事業における優位性
中古車業販領域における網羅性
当社はASNETが展開する2つのサービスを通じ、オンラインでの中古車業販領域を網羅しています。
まず、主にオークション代行は中古車取扱事業者の仕入れに活用されています。
仕入れの為の自動車オークションは全国各地で開催されているものの、現地まで足を運ぶには時間も費用も含めコストがかかります。
しかし、オークション代行サービスを活用すれば、仕入れにかかるコストを最小化することが可能となります。
また、ASワンプラはメルカリのようなECのフリーマーケットに近い形で運営しています。
専門業者が多く取引の難易度が高いオークションとは異なり、価格が決められているため、特に取引経験の浅い事業者や新規参入してきた事業者に活用されています。
このように、2つのサービスで中古車業界を取り巻く事業者のニーズを網羅的にカバーし、取引機会を安定的に獲得できていることに我々の優位性があります。
会員の多様性と稼働率の高さ
当社の運営するASNETの会員登録は無料です。
そのため、2023年9月末時点で総ユーザー数は76,675人で年稼働ユーザー(AAU)は28,886人と非常に高い稼働率を誇ります。
これは、あらゆる中古車取扱事業者が会員となって当社のサービスを活用している証拠でもあります。
なかでも中心となるのは整備板金業者やガソリンスタンド事業者、小規模な販売業者などです。
例えば、整備板金業者に故障した自動車が持ち込まれた際、修理するのではなく買い替えの提案をするとしましょう。
整備板金業者は中古車販売を専門に取り扱っているわけではないため、仕入れのためにオークションで自動車を探し続けたり、オークションに参加することは容易ではありません。
この点、当社のASワンプラサービスを活用して固定価格で中古車を仕入れることができれば、自動車ユーザーに対して大体の見積もりや納期を示すこともできます。
また、このように、ASワンプラが専門業者以外の中古車取扱業者をカバーしていることは、大口利用者の動向に左右されることなく安定したフロー収益を得ることにも繋がっています。
この多種多様な会員と、それによる稼働率の高さが当社の事業の持つ2つ目の優位性と言えます。
中長期の成長イメージとそのための施策
安定した中古車流通市場と透明性
中古車業界において中古車の流通市場は安定して成長しています。
以前、ニュース等で中古車量販店の問題が取り上げられましたが、市場に出回る中古車の数に変化はありません。
他の中古車販売業者では売上が伸びたという話もあるくらいです。
やはり新車が手に入らず価格が高騰している現状において、中古車ニーズは依然として高いと考えています。
また、中古車業界のプラットフォーマーとして、当社ではOBD(On Board Diagnostics)という車載式故障診断装置の普及が中古車の流通において変化のきっかけになることを期待しております。
OBDとは自動ブレーキや車線維持システムなどの先進安全装置や排ガス関係装置、エンジンコンピューターなどの故障を診断するもので、2024年10月以降、初回車検を行う際はOBD検査をする必要があります。
車検のハードルが高まっていくことが予想されますが、このような検査機器が普及することで、将来的には中古車売買の信用度が高まり、オンライン上での取引が加速化していくと期待しています。
新規ユーザーの獲得と出品データの活用
国内15万以上の中古車取扱事業者に対して、更なるアプローチを行います。
現在123社ある代理店を活用し、これまでアプローチすることができていなかった層への施策や新業種に対するアプローチを行います。
また、当社が保有している「出品データ」の活用を行っています。
2022年9月には出光興産(株)とともに中古車リースサービスシステムを共同開発しました。
既に本サービスを通じて、ASワンプラの出品データを利活用するとともにガソリンスタンドという異業種分野へのアプローチを加速させることに成功しました。
このように、中古車業界へ新規参入を図る業者と協業していきながら、新たな収益源の確保を進めて参ります。
付帯サービスの拡充と手数料平均単価の引き上げ
ASNETにおける付帯サービスの拡充とマネタイズ化を図ります。
まず、サービス拡充についてはシステム開発に注力していきます。
既に、中古車の相場が分かる「相場情報」、中古車販売の営業担当者をサポートする「店頭商談NET」、かんたん買取査定の「みるクル」等を展開していますが、更なる開発も視野に入れています。
今後はASNET会員の満足度向上とともに、小売支援ツールの強化を行うことで取引の活発化と、ASワンプラサービスの利用比率引き上げにより、手数料単価UPを狙います。
注目していただきたいポイント
先ほども述べましたが、今後オンライン上での中古車取引は拡大すると見込んでいます。
OBDによる診断の強化とともに、物流の2024年問題も我々には追い風となっています。
働き方改革による法改正の影響で、運送業界全体が減益し、さらに賃金減少に伴う人材不足が見込まれるというのが物流の2024年問題です。
この問題は陸送を多く使う中古車業界にも大きく影響すると考えています。
この問題への対応策として、現在、運送業者が陸送価格の引き上げを行っており、中古車の運送代金が徐々に上昇しております。
そのような中、ASワンプラのようなサービスを使ってネット上で取引を行い、実際の自動車は売り手から買い手へダイレクトに輸送するスタイルが今後広がることが想定されます。
中古車業界は未だアナログな面が多く残る分野ですが、このような社会情勢や外部環境の変化を機にオンライン上での取引も増加していくと考えています。
そして、この過程で今後ニーズが高まっていくと考えられる、確立された当社の中古車ECプラットフォームの将来性に、是非注目していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
当社のビジネスは、成熟した国内中古車市場において、確立されたECプラットフォームであることの強みがございます。
今後はこの強みや安定的な成長を維持しつつ、成長を加速させ、国内での流通シェアを高めたいと考えております。
一方、長期的には国内でのノウハウを高めて海外展開も視野に入れておりますが、過去の海外事業での経験を踏まえ慎重な検討が必要と考えております。
投資家の皆様には、当社を取り巻く事業環境を含めた事業内容をご理解いただいた上で、ぜひ当社の成長に期待していただければと思います。
本社所在地:〒104-0053 東京都中央区晴海一丁目8番8号 晴海アイランド トリトンスクエアオフィスタワーW棟14階
設立:2015年11月13日 (創業1997年6月11日)
資本金:650,055,000円(2023年12月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場、名証メイン市場(2023年9月26日上場)
証券コード:5589