※本コラムは2023年12月26日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社スマサポは「smartなくらしをsupportする」という経営理念の下、不動産管理会社と入居者をつなぎ、双方のコミュニケーションを向上させていくことを目指しています。
代表取締役社長CEOの小田慎三氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社スマサポを一言で言うと
不動産管理会社と賃貸入居者のコミュニケーション領域をDXしていくことで、「smartなくらしをsupportする」会社です。
沿革
社内ベンチャーから設立、そしてスピンアウト
当社は私が宅都ホールディングスの経営企画室で室長を務めていた際に、社内ベンチャーとして2016年にスマサポの事業を開始しました。
当時、同社の収益をいかに伸ばすか、コストをどう削減するか等の不動産管理業の課題解決に従事する中で、他社にもこのノウハウを活用できるのではないかと考えるようになりました。
そこで2016年から入居者満足度調査サービス「スマサポサンキューコール」の提供を開始し、2019年には同社からスピンアウトする形で独立しました。
また、2020年からは不動産管理会社と入居者のコミュニケーションを円滑に進めるための入居者アプリ「totono」のリリースを開始しました。
そして、2022年12月に入居者向けアプリ「totono」の機能追加や機能向上等を目的としたソフトウエア開発のため、東証グロース市場に上場いたしました。
事業の概要と特徴
概要
当社は不動産管理会社の課題解決にフォーカスし、主に2つの事業を行っています。
1つ目が入居者に対して生活サポートを提供する「スマサポサンキューコール」です。
具体的には、入居者に対して入居の御礼・住み心地やお部屋の不具合などのアンケート調査・インターネット回線、ウォーターサーバー等のご案内をしています。
入居者が申し込みをした際には顧客紹介手数料が発生するため、当社と不動産管理会社の両社に収益が生まれます。
2つ目が不動産管理会社と入居者のコミュニケーションツールである入居者アプリ「totono」です。
これまで不動産管理会社は入居者に対するお知らせや連絡を物件の掲示板に掲示したり、各種手続きを電話やFAX等のアナログな方法で行っていました。
これらのアナログなやり取りに対して「totono」はアプリ上で入居者に対するお知らせを行い、各種手続きを電子化することで不動産管理会社の負担を軽減しています。
当社は「totono」を導入した不動産管理会社から利用手数料をいただき、ストック収入を得ています。
また、主要2事業の他にも内覧サービス「SKB」や家賃保証サービス「sumai保証」も展開しています。
事業における優位性
肥沃な市場と確かな利用実績
国内には約32,000社ほどの不動産管理会社が存在しますが、実は各社ともに入居者とのコミュニケーションに対して課題感を持っています。
皆様はご自身の住んでいるマンションやアパートをどのような会社が管理しているか知っていますでしょうか。
実際、ほとんどの方が自分の住んでいる物件の管理会社の実態を知らずに過ごしていると思います。
そのため、何かトラブルが発生した際に、管理会社と入居者間のコミュニケーション不足によって管理会社へのクレームに繋がるケースが非常に多いです。
当社は、この課題を解決するために「スマサポサンキューコール」と「totono」やその他サービスを展開しています。
既にスマサポサンキューコールは700社以上、入居者アプリ「totono」は104社の顧客に導入されています。
アプローチできていない不動産管理会社も多く、このようなブルーオーシャンの市場において当社の画期的なサービスは高い優位性を持っていると考えています。
顧客に寄り添った提案と高い満足度
創業メンバーをはじめ、当社は不動産管理会社の出身者を中心に構成されているため、顧客目線に立ったコンサルティング提案を行うことができています。
例えば、北海道にある物件は氷点下10度を下回ると水道管が破裂する恐れがあります。
そこで、天気予報等のデータから予測を行い、「totono」を活用して事前に入居者へのアナウンスを行うといったサポートを提供しています。
また、不動産管理会社は家族経営で行うことも多く、単なるシステムの導入だけでは本質的な課題を解決することはできません。
デジタルに疎くシステムに慣れていない顧客に対しては、伴走型で手厚く導入までをサポートしています。
このように、我々は地域毎の不動産管理会社の特徴や入居者への対応についてのノウハウを持っているため、適切な提案が可能になり、その結果として高い顧客満足度を実現しています。
入居者ビッグデータの利活用
これまで、ほとんどの不動産管理会社は入居者のデータをアナログで管理していました。
しかし、当社の「totono」であれば大量の入居者データをシステム上に蓄積し、管理することができます。
更に、「スマサポサンキューコール」を通じてアンケート調査や各種サービスの導入を行うため、それらの成約情報を含むデータについても蓄積することができます。
この入居者データは、今後新たなビジネスを展開する上で大きなメリットに繋がると考えています。
すでに、入居者からの問い合わせデータを活用して入居者対応チャットの開発や申請書類の準備、不動産管理会社の業務改善提案に繋げています。
直近ではCREI(東京大学不動産イノベーション研究センター)とのデータ分析での共同研究も進めています。
以上のような入居者ビッグデータの活用が3つ目の優位性です。
「totono」の成長性
現在、「totono」は2023年9月時点で15万ダウンロードを突破しました。
このサービスは入居者接点を活かした収益モデルです。
これまでアナログで管理していた不動産管理会社は、「totono」を導入することで入居者への告知をアプリ上で完結させることができます。
また、入居者の属性に合わせて広告などを発信することもできるので、不動産管理会社にとっては新たな収益獲得にも繋げることができます。
このように、これまでは単なるクレーム対応やトラブルの元としかならなかった入居者とのコミュニケーションを、収益の機会に変えていくことで「totono」の導入数は伸びていくと考えています。
この「totono」の持つ成長可能性が4つ目の優位性です。
中長期の成長イメージとそのための施策
安定収益の強化と収益基盤拡大
2023年8月から約126万戸の賃貸物件を管理している大東建託パートナーズ(株)にて「スマサポサンキューコール」を稼働しました。
更に2023年12月からは(株)リクルートとの業務提携のもと、電子申込システム「申込サポート by SUUMO」とも連携を開始しています。
現在、当社と「スマサポサンキューコール」を契約している不動産管理会社は700社以上ありますが、今後は安定収益の基盤でもある本事業を更に伸ばすため、(株)リクルートと営業協力しながら更なる獲得を目指します。
また、現在の「totono」導入社数は104社です。
今後は積極的な広告施策やサービス内容の強化を図り、導入社数の更なる増加を目指します。
「スマサポサンキューコール」と「totono」の両輪で、ベース収益を安定化させグロース収益の拡大に向けた顧客基盤の形成を行っていきます。
他社提携等による収益機会の拡大
「totono」を中心に、当社の持つ入居者との接点を活かして他業種との提携を積極的に行っていきます。
直近では内覧サービスである「SKB」を地方自治体に導入しています。
「SKB」では賃貸物件内覧時や施設利用時のカギの貸し借りの手間を解決する、「IoTキーボックス」のサービスを提供していますが、そのIoTシステムを公共施設の鍵の管理に活用しました。
このように、当社の持つサービスは不動産管理会社のみならず地方自治体を含む他業種への活用が見込まれます。
今後、「totono」を入居者のプラットフォームとして拡大していくとともに、派生事業として様々な分野に事業を展開していくことで、グロース収益の獲得を目指していきます。
注目していただきたいポイント
当社がターゲットとしている不動産管理業界はDXの拡大余地を残している業界だと考えています。
しかし、顧客や地域の特性を理解していなければ、アプローチがしにくい業界でもあります。
この点、当社は過去に不動産管理会社に属していたため、同業界の持つ課題に対して適切にアプローチをすることができます。
そのため、顧客とともに伴走しながら成長し信頼を獲得できる存在であると考えています。
不動産管理業界のDXの可能性と、当社が不動産管理業界で各社に寄り添いながら進めていくことができる会社であるということに注目していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
当社は不動産管理業界という、非常にニッチな業界でビジネスを展開しています。
そして、今後当業界はDXにおける重要なマーケットになると確信しています。
全社を挙げて事業拡大に向けて邁進していますので、今後の当社の成長に期待していただければと思います。
また、当社HPではIRに関する情報発信を都度更新させていただいておりますので、そちらもぜひご覧いただければと思います。
本社所在地:東京都中央区日本橋三丁目6番2号
設立:2012年4月
資本金:213,707,822円(2023年2月時点)
上場市場:東証グロース市場(2022年12月29日上場)
証券コード:9342