※本コラムは2024年1月17日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ドーンは防災・防犯分野でGIS1やクラウドを活用し、社会課題を解決していく「エッセンシャルカンパニー」です。
代表取締役社長の宮崎正伸氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ドーンを一言で言うと
社会課題を解決していく「エッセンシャルカンパニー」です。
ドーンの沿革
創業経緯
1991年に前代表が兵庫県神戸市で当社を創業しました。
そして、1994年10月に地理情報システム(GIS)の「GeoBase Ver1.1 」を発売しました。
その後、1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災の被害を受け、神戸市長田区復興支援GIS構築事業を、同年5月に神戸市地盤情報/震災被害解析事業をそれぞれ開始しました。
事業上のターニングポイント
まず1つ目が1999年5月の「GeoBase Ver4.1」の発売です。
当時日本では競合も少なく、他社の製品に比べて高速データ処理が可能であり、官公庁や地方自治体、民間企業へと導入が拡大していきました。
そして2つ目は、2000年代後半からのクラウド環境を活用したサービス提供の開始です。
当社の主力サービスとなった「NET119 緊急通報システム」は、音声による119番通報が困難な聴覚・言語機能障害者が、円滑に消防への通報を行えるようにするサービスです。
このシステムは2024年1月現在、全国の消防本部のうち約7割(人口カバー率ベース)に導入されています。
その後各種サービスを展開し、そのうち防災アプリ・DMaCSがデジタル庁の防災DXサービスカタログに掲載されています。
ドーンの事業の概要と特徴
概要
主にクラウド事業と受託開発事業の2つを行い、総売上の半分以上をクラウド利用料が占めています。
まず、クラウド事業では主に官公庁の業務に係る各種情報を地理情報に関連づけて配信するクラウドサービスを展開しております。
月額使用料を頂くストック型のビジネスで、そのクラウド事業の売上の約4割が「NET119 緊急通報システム」によるものです。
そして受託開発事業では、官公庁や企業から依頼を受けてクラウドサービスの構築や地理情報システムに係るアプリケーションソフトウェアの開発・保守業務をしています。
主要事業以外では、ライセンス販売やパッケージ商品の販売等も行っています。
事業における優位性
安定した顧客基盤とストック収入
当社のメイン顧客は官公庁です。
また、当社の提供しているサービスの多くは安心安全分野に関わるものです。
そのため、社会インフラ上不可欠な部分ですので予算削減や解約のリスクは少なく、安定してサービスを提供し続けることができます。
このような継続性の高いビジネスを展開し、コンスタントにストック収入を得ることができています。
導入コストの低さと高い継続率
当社の主な顧客層である官公庁は、業務のDX化を進めておりますが、一部でクラウド型のシステムの利用を開始している一方、従来のオンプレミス2主体のシステムを利用している官公庁が多いのが現状です。
安心安全分野に対するDX化の推進ニーズも高く、早急に対応したいと考えている自治体が多数あります。
大手ベンダーのオンプレミス型のシステムと比較し、当社のクラウド型システムは安価かつ大規模な作業なく導入が可能となっています。
また、当社は官公庁と実証実験を繰り返しながら、実装すべき機能を吟味しサービスを開発しておりますので、後からの手直しを極力なくす工夫をしております。
もちろん顧客に合わせてカスタマイズすることも可能ですが、基本的なシステムが共通しているためメンテナンスも容易です。
このように、比較的安価で顧客のニーズが多く反映されたサービスを提供することで高い継続率を保っています。
社会課題の解決のためのサービスと技術
我々の開発するサービスの出発点は社会課題、特に安心安全分野に対するアイデアです。
その課題に対して、当社の持つ技術とアイデアを用いて顧客と共同で実証実験を行ってきました。
そして現在では、クラウドの技術を活用した安心安全分野に関するサービスを多数展開しています。
また、防災や防犯に関するサービス以外にも、企業向けの業務効率や生産性、顧客満足度の向上につながる映像通話システム「Live-X」を展開しています。
我々は課題を抱える官公庁、企業に対して、クラウドサービスを提供することで社会課題の解決に貢献しています。
ドーンの中長期の成長イメージとそのための施策
Gov-tech市場の深耕
今後はGov–tech3(ガバメント・テクノロジー)市場に対してクラウドサービスを主軸に事業を展開していく予定です。
現在、全国1,700以上の自治体のうち多くの自治体が当社のサービスを導入しています。
防災や防犯のニーズは依然として高いと考えられるため、未開拓の自治体に対してLiveシリーズや防災、防犯アプリを拡販していきます。
また、新たな社会課題に対応していくために新サービスの開発やM&Aによる人材確保、技術力の向上も行っていきます。
社会課題解決サービスの創出
まず、社会課題の解決に向けた新サービスの開発についてお話しします。
通信環境の整備やIoT4の進化、AIといったテクノロジーの発展はあるものの、防災や防犯分野に活かしきれていないというのが現状です。
そこで当社はセンサー機器や産業機器、映像機器等との融合による防災・防犯のサービスを開発していきます。
足元では大阪府で防災のアプリケーションを構築しており、更なる新規サービスの展開も見込んでいます。
社内体制強化・クリエイティブ人材育成
当社はこれまで、従来のオンプレミス型のシステムの受託開発事業からクラウド事業へ注力をすることで、省力化を実現してきました。
しかし、今後の更なる成長において人材確保と技術力向上は欠かせません。
まず、採用に関しては社員数80名を目標として、新卒・中途者に対する積極的な採用活動だけでなく、M&Aによる社員の受入れも含め、人材確保に努めて参ります。
また、研究開発の活性化を図るため、課題解決型クリエイティブ人材の登用や育成をしていく方針です。
M&A・事業提携
これまでお話しした3つの戦略を推進するために、M&Aや事業提携を行っていきます。
シナジーの高い企業とのM&Aによって、人材確保や技術力向上を見込んでいます。
また、IoT関連企業等を中心に業務提携を行うことで新たなサービスの開発や新しい取引先の開拓に繋がると考えております。
M&Aや事業提携を通じ、Gov-tech市場を深掘りしていくことで、当社は安定的に成長することができると考えています。
注目していただきたいポイント
当社のビジネスは、長年培ってきたGIS技術に加え、官公庁・企業と協業して開発したクラウド技術の上に成り立っています。
しかし、高い技術力があったとしても、他の企業に流用されてしまえば当社の価値は減少し、優位性が損なわれてしまいます。
そこで、ここ数年当社は積極的に特許の出願を行なっており、2023年には2件の特許を取得し、現在も数件の特許を出願している状況です。
特許取得による当社のビジネス展開にも注目していただきたいです。
投資家の皆様へメッセージ
防災・防犯分野含め、世の中に必要とされているにもかかわらず、まだ生み出されていないサービスを創り出していくことが当社の使命だと考えています。
また、企業の売上や利益だけではなく、環境や社会課題の解決に対する姿勢や取り組みにも注目していただける世の中になってきたことを非常に嬉しく思います。
当社は社会課題に対して新しい価値を創造し、安定した利益を生み出し続けることができる会社です。
今後も温かいご支援のほどよろしくお願いいたします。
本社所在地:〒651-0086 兵庫県神戸市中央区磯上通 2-2-21 三宮グランドビル5F
設立:1997年3月24日
資本金:363,950,000円(2024年2月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場 (2002年6月12日上場)
証券コード:2303
- 地理情報システムGIS(Geographic Information System) とは、デジタルデータ化された空間情報(デジタル地図等) と属性データとを統合的に処理、分析、表示するシステム。紙に印刷された地図と違い、さまざまなデータを関連づけて表示したり、必要なデータだけを表示したりと、自由度が高く、またデータの更新にすばやく対応できることが特徴です。公共機関等では、防災、都市計画、医療、福祉、教育等の分野で利用される。また、民間企業においてもインフラ整備、施設管理、マーケティング等に利用の範囲が広がっている。
出典:株式会社ドーン 投資家の皆様へ FAQ ↩︎ - オンプレミスとは、システムの稼働やインフラの構築に必要となるサーバーやネットワーク機器、あるいはソフトウェアなどを自社で保有し運用するシステムの利用形態。
出典:オンプレミスとは?意味・定義 | ITトレンド用語 | ドコモビジネス | NTTコミュニケーションズ ↩︎ - GovTechとは、政府(Government)と技術(Technology)を組み合わせた造語。
出典:GovTech(ガブテック)とは 関連企業や最新ニュースも | NIKKEI COMPASS ↩︎ - IoT(Internet of Things)は、あらゆるモノをインターネット(あるいはネットワーク)に接続する技術であり、日本語ではモノのインターネットと訳される。
出典:IoTとは?意味・定義 | ITトレンド用語 | ドコモビジネス | NTTコミュニケーションズ ↩︎