※本コラムは2024年2月16日に実施したIRインタビューをもとにしております。
AnyMind Group株式会社はアジアを代表するインターネットテクノロジーカンパニーを目指し、アジア市場を中心に15ヵ国・地域に拠点を構え、Eコマース支援やマーケティング事業を行っています。
代表取締役CEOの十河宏輔氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
AnyMind Group株式会社を一言で言うと
アジアを代表するインターネットテクノロジーカンパニーを目指す会社です。
AnyMind Groupの沿革
創業経緯
当社は2016年、シンガポールにて創業しました。
シンガポールを選んだ理由は、私が前職で東南アジアの新規事業立ち上げに携わっていた経験から、この地域でのビジネスチャンスと成長機会を高く評価していたからです。
またシンガポールはアジアの中心地として、グーグルやフェイスブックなどの大手外資系テクノロジー企業がAPAC地域の本部を置いており、東南アジア全域へのアクセスが非常に良い点も魅力でした。
そして東南アジアには、日本のソフトバンクや楽天のような代表的なテクノロジーカンパニーがまだ少なかったため、2016年の創業は絶好のタイミングでした。
そして事業領域として選んだのは、マーケティングプラットフォーム、Eコマース、D2Cプラットフォーム、そしてクリエイターやメディアのコンテンツ収益化支援です。
我々はこの「王道」とも言えるビジネス分野で、アジアを中心にグローバルに展開しています。
コロナ禍での成長
特に重要なターニングポイントは、コロナウイルスの流行でした。
2020年4月の緊急事態宣言直前、日本法人の本格稼働と共に、六本木ヒルズへのオフィス移転を決めていました。
この時期は、アジアでの成功を背景に日本市場での成長を加速させようとしていた矢先でした。
この危機を機にコスト削減や事業の見直しを行い、結果的に事業は回復し、より強固で効率的な事業体へと変化することができたと自負しています。
また、この期間に六本木ヒルズでのオフィス拡張を決断し、現在では更に大きなスペースを確保しています。
この一連の経験は、我々にとって大きな学びとなり、上場に向けた強い基盤を築くことに貢献しました。
上場までの経緯
実際、上場には3回の挑戦を要しました。
初回と2回目の上場延期は外部の不確定要因によるものでした。
具体的には、初回の延期はウクライナとロシアの戦争が新規市場への不安定さから、2回目は上場審査中に確認すべき新たな項目が見つかったためです。
しかし、その項目については早期に解決し、2023年3月29日に上場を果たしました。
AnyMind Groupの事業の概要と特徴
概要
アジアを中心にインターネット業界におけるリーダー企業を目指し、マーケティング、Eコマース、D2C、コンテンツ収益化の各分野で事業を展開しています。
創業以来、我々はグローバルに事業を拡大し、15カ国・地域でビジネスを展開し、約1500名の従業員を擁するまでに成長しました。
また、海外売上が全体の50%を超える点は他社と比較してもユニークな強みです。
事業における優位性
グローバル統一プロダクトとローカライゼーションの両立
グローバル展開において重要なのは、統一されたプロダクト開発とローカライゼーションです。
これは現地の市場や人材の理解、商習慣の違いへの適応方法など、ローカライズに必要な知識は、前職で東南アジア各国で現地法人を立ち上げた経験が活きています。
まず我々は、グローバルマーケットでのスケールメリットを最大限に活かすために、一貫性のあるプロダクトを提供しています。
またアジア15カ国・地域をターゲットにする際、各国の文化や言語の違いに適応するローカライズが必要です。
例えばベトナムでの営業活動がベトナム語であるため、現地採用をすることでセールスマーケティングのローカライズを実現しています。
このように、グローバル基準のプロダクト開発能力と、各国でのローカライズ能力のバランスが強みです。
アジア全域でブランド、パブリッシャー、クリエイターの成長を支援
当社は大手ブランドの獲得に重点を置いており、これがクリエイターやインフルエンサーへの魅力となっています。
実際、大手クライアントを確保することで、トップクラスのインフルエンサーが集まります。
現在アジア全域に約63万人のインフルエンサーネットワークとデータを活用したプラットフォームを提供しております。
このアプローチにより、マイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーも引き寄せることができ、幅広いネットワークを構築しています。
またアジアの市場は若く、成長ポテンシャルが高いため、デジタルマーケティングとインフルエンサーマーケティングは重要です。
当社はブランド、パブリッシャー、クリエイターそれぞれに対して支援を行うことが可能で、ローカルプレイヤーや外資系の企業とは一線を画しています。
特にデータ分析や透明性の確保は基本であり、そのシステム人材やオペレーション人材を現地で提供することで、実質的にDX化を推進しています。
以上のような点で我々のサービスはアジアの大手ブランドにとって非常に魅力的であり、企業のビジネス成長を全面的に支援することが可能です。
多国籍なメンバーの組織化とマルチカントリーオペレーションの強化
当社の従業員は多国籍なメンバーで、各国が連携して事業開発を行っています。
例えば開発チームは、東京、ホーチミン、バンコク、バンガロールの4つの主要拠点に配置されています。
これらの地域は、高い競争力を持ったエンジニアを採用するのに理想的な場所です。
中でも日本は国内外から多くのエンジニアが働きたいと考えており、英語を共通言語として採用しています。
またベトナムやタイでは、特に外国人エンジニアの採用がしやすく、バンガロールは優秀なエンジニアの宝庫です。
これらの拠点が連携し、主要プロダクトAnyXなどの各種ソフトウェアの開発を行っています。
その開発プロセスでは、アジア各国のニーズを把握し、グローバルでの優先順位を定めてチームに割り当てています。
このようにして、各地のエンジニアとプロジェクトマネージャーが協力しながら、グローバル市場で競争力のある製品を生み出しています。
AnyMind Groupの中長期の成長イメージとそのための施策
グローバル展開
現在、私たちはアジア15カ国・地域に事業を展開しており、約40億人という膨大なマーケットを対象にしています。
今の段階では、これらの国々での事業をさらに成長させることに集中しています。
特にアジアではクロスボーダー取引の需要が急増しており、例えば日本やアメリカの消費財メーカーが、異なる国々で一貫したサービスやデータ分析の基盤を求めています。
また、韓国のコスメブランドが東南アジアや日本市場に積極的に進出しているのも非常にチャンスです。
この市場への追い風と事業の強みを活かし、引き続きグローバル展開を強化し、安定的な成長を目指していきます。
ローカルネットワーク拡大
長年に渡り、アジア各国でのローカルチームを強化することに注力しています。
特に言語や商習慣をはじめとする文化の異なる多様なアジア経済界においては、彼らの活躍が不可欠です。
また、ブランド、クリエイター、パブリッシャーをトータルでサポートすることで、他ビジネスとの連携による相乗効果も期待できます。
今後は現地でどのようなアプローチが足りないのか、どうすれば事業を拡大できるかを考え、M&Aも活用しながら中長期的な成長を目指します。
ECソリューションの拡大
アジア市場におけるBPaaS(Business Process as a Service)モデルを推進していきます。
我々のビジネスモデルは、国と事業のマトリックスに基づいています。
例えば、ベトナムのインフルエンサーマーケットやEコマース事業など、事業ごとに詳細なパフォーマンス検証を行っています。
このプロセスで、収益性の向上や効率化の必要性など、多くの改善点が浮き彫りになってきました。
そこで当社はSaaSの提供だけではなく、オペレーションのDX化やAI活用が効果的になるように業務プロセスそのものを提供するBPaaSモデルを推進していきます。
また、これらは事業成長のための潜在的な機会と捉えており、具体的なKPIのトラッキングを通じて、課題を一つずつ克服することで、より安定した収益性の向上を目指しています。
注目していただきたいポイント
アジア市場の成長性に注目していただきたいです。
日本を代表するIT企業は未だ東南アジアでの事業拡大については当社が一歩先を進んでいると考えています。
特に東南アジアの地域は継続的な人口成長も見込め、2040年まで増加し続けると予測されています。
そのような観点から皆様には当社がグローバルに展開可能なサービスを展開できる事業基盤があることをご理解いただき、マーケットの成長性に注目していただきたいです。
投資家の皆様へメッセージ
アジア市場は莫大なチャンスに満ちており、特にインターネット関連のビジネスにおいては、これからの成長ポテンシャルは非常に大きいと確信しています。
我々の目標は、この急速に成長するアジアのインターネット市場をリードする企業へと進化することです。
アジアでの事業拡大とイノベーションを推進し、将来にわたって持続可能な成長を実現するために、ぜひともご支援いただけますと幸いです。
本社所在地:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー31F
設立:2019年12月26日
資本金:586百万円(2023年12月時点)
上場市場:東証グロース市場 (2023年3月29日上場)
証券コード:5027